法曹年間3000人育成
早期の新規法曹育成年間3000人を目指し、法科大学院創設とともに給付型学費一人あたり月額22万円を計画。単純に計算しても年間予算79億2千万円。法曹教育は9年間必要である。このあまりにも莫大な金額の給付型学費予算は当然ながら実現されなかった。
仮に1年あたり3000人の法曹人口増を果たした場合、10年間で法曹人口は約3万人増となる。これらの法曹を彼らはいったいどこへ送り込むつもりだったのか。おなじみ土屋委員の著書のなかにその答えがある。
-将来の法曹は裁判所だけではなく、国会、官公庁、企業、民間団体など幅広い分野で活躍するのが理想的だ。そうなってこそ司法が本当に市民のものになる。
(出典 土屋美明(共同通信記者・司法制度改革推進協議会委員)『市民の司法は実現したか -司法改革の全体像ー』192ページ)
-「韓国弁護士会の会長が聞くのですよ。日本は世界に誇る経済大国なのに弁護士がそんなに少なくて、どうしてやっていけるのかと。」日弁連の久保井一匡会長は「韓国の人口は日本の三分の一なのに、司法試験の合格者は日本と同じ年間千人にするのです。司法制度改革審議会の三千人という数字は韓国と同じ水準であって十分受け入れができるのではないか」
(中略)改革審委員の中坊公平元日弁連会長は二〇〇〇年二月の審議で「日本もフランス並みは必要。当面五、六万人程度まで増員する必要がある」と意見を述べた。(同著 140ページ)
しかし改革審の中間報告において年間3000人程度の新規法曹増について算定の根拠は述べられていない。
同著 141ページ 佐藤幸治・改革審会長インタビューにおいて、
「司法改革は国の在り方の基本に関わる事です。行政改革など一連の改革を〝法の支配〟によって結び付ける必要があり、〝最後のかなめ〟と言えます。自律的な個人を基礎として自由で公正な力強い社会を築くことが根底にあります。行革は政治主導の意義を強調しましたが、同時に政治の行き過ぎを司法がチェックする〝権力分立〟の考え方が大事です。」(後略)
と語っているが、日本は国家権力を三権分立で担っているはずだが、現在の司法は立法・行政を厳しくチェックすることはあっても、立法からも行政からも自分たちの権力の行き過ぎをチェックされることはない。弁護士自治を盾にまさに自らを法とする〝絶対王政〟を目指しているかのようだ。
これらの改革案について担当官僚らは日弁連・労組・御用学者の意見を丸呑みで調整し、参事官たちは法案を作成していった。その尻馬に乗って自由法曹団も言いたい放題の意見書を多数提出している。主に労働争議・労働裁判に関するもので三審制についての意見書や、裁判官ではなく弁護士が審判官となり日本企業と日本人を裁くシステムづくりの要求であったようだ。日弁連から送り込まれた参事官ですらこれはさすがにまずいと思うような内容であったようで、これらの意見書は議事録に意見内容が残る『資料』ではなく、意見内容が証拠として残らぬ『参考資料』として扱い隠蔽している。
皆さんもすでにおわかりのとおり、日本には外国人弁護士が多数存在している。朝鮮総聯も朝鮮学校卒業生を積極的に日本の法曹とすべく教育している。もしも、これらの外国人弁護士が外国籍のまま日本人の権利を制限し、合法的に裁く地位に就いたなら、どのようなことが起こるだろうか。例えば裁判官・裁判員・調停官・国税審判官・特許審判官・労働審判官等・・・。
ここで先述した土屋委員の言葉を思い出してほしい。
-将来の法曹は裁判所だけではなく、国会、官公庁、企業、民間団体など幅広い分野で活躍するのが理想的だ。そうなってこそ司法が本当に市民のものになる。-
・・・人権と権利が日本国民ではなく、市民のものになる? この〝市民〟とは一体、どんな存在のことであろうか。
平成の司法制度改革参画者
顧問や委員として司法制度改革に参画したのは日弁連だけではない。日本の政財界・最高学府のリベラル教授たちもそのメンバーとして名を連ねている。彼らは現在、自分たちが立案した法科大学院の院長・教授などの地位に就いている。森友どころではないまさにお手盛りの制度改革である。このような自分たちのポストと利権ありきの改革では結果など出せるはずもなく、『優秀な法曹育成計画』も著しい学力低下を引き起こし、失敗に終わっている。
ちなみにブラック弁護士・西川治弁護士はこの法科大学院中退・予備試験合格組だそうだが、彼が給付型学費にこだわり続けているのはこの点にあるのかもしれない。
これら平成の司法制度改革に携わったメンバーは官邸ホームページや関連書籍で公開されており、その名を見ていくと興味深いものが見えてくる。
【司法制度改革推進準備室】
(幹部)
樋渡 利秋(司法制度改革推進準備室長 併・内閣官房内閣審議官)
松川 忠晴(司法制度改革推進準備室副室長 併・内閣官房内閣審議官)
大野恒太郎(司法制度改革推進準備室副室長 併・内閣官房内閣審議官)
(顧問・審議会委員)
佐藤 幸治(京都大学名誉教授 ・近畿大学法学部教授)
竹下 守夫(一橋大学名誉教授・駿河台大学長)
井上 正仁(東京大学法学部教授)
(推進準備室・参事官)
稲田 伸夫(法務省)
黒川 弘務(法務省)
加藤 朋寛(法務省)
片岡 弘(法務省)
小林 徹(経済産業省)
近藤 昌昭(法務省)
齊藤 友嘉(日弁連)
辻 裕教(法務省)
松永 邦男(総務省)
【司法制度改革審議会】(委員14人)
佐藤 幸治(会長 近畿大学法学部教授・京都大学名誉教授)
竹下 守夫(会長代理 一橋大学名誉教授・駿河台大学長)
石井 宏治(委員 石井鐵工所代表取締役社長)
井上 正仁(委員 東京大学法学部教授)
北村 慶子(委員 中央大学商学部長)
曽野 綾子(委員 作家)
高木 剛(委員 日本労働組合総連合会副会長・UIゼンセン同盟会長)
鳥居 泰彦(委員 慶應義塾大学学事顧問・前慶応義塾長)
中坊 公平(委員 弁護士・元日本弁護士連合会会長)
藤田 耕三(委員 弁護士・元広島高等裁判所長官)
水原 敏博(委員 弁護士・元名古屋高等検察庁検事長)
山本 勝(委員 東京電力取締役社長)
吉岡 初子(委員 主婦連合会事務局長)
樋渡 利秋(事務局長 司法制度改革推進準備室長、併・内閣官房内閣審議官)
【顧問会議】(顧問8人)
佐藤 幸治(座長 京都大学名誉教授・近畿大学法科大学院長)
今井 敬(顧問 日本経済団体連合会名誉会長)
大宅 映子(評論家)
奥島 孝康(早稲田大学学事顧問)
小島 明(日本経済新聞社論説特別顧問・日本経済研究センター会長)
佐々木 毅(東京大学総長)
笹森 清(日本労働組合総連合会会長)
志村 尚子(津田塾大学学長)
司法制度改革推進協議会 検討会委員・説明者等
■労働検討会
(委員)
石嵜 信憲(弁護士)
鵜飼 良昭(弁護士)
岡崎 淳一(厚生労働省労政担当参事官)
春日偉知郎(筑波大学教授)
菅野 和夫(東京大学教授)
後藤 博(法務省民事局商事課長)
高木 剛(日本労働組合総連合会副会長)
村中 孝史(京都大学教授)
矢野 弘典(日本経済団体連合会専務理事)
山川 隆一(筑波大学教授)
山口 幸雄(東京地方裁判所判事)
熊谷 毅(厚生労働省労政担当参事官)
小島 浩(矢野弘典委員代理)
(説明者)
高﨑 真一(厚生労働省地方課労働紛争処理業務室長)
田村 定(厚生労働省地方課労働紛争処理業務室長補佐)
根岸 克子(東京労働局総務部企画室長)
村山 隆(東京労働局総務部企画室労働紛争調整官)
山口浩一郎(中央労働委員会会長)
藤田 耕三(東京都地方労働委員会会長)
定塚 誠(最高裁判所事務総局行政局第一課長)
小林 宏司(最高裁判所事務総局行政局参事官)
三代川三千代(東京地方裁判所民事第11部部総括判事)
井上 幸夫(弁護士)
鴨田 哲郎(弁護士)
角山 一俊(弁護士)
八代 徹也(弁護士)
岩城猪一郎(社会保険労務士)
大野 実(社会保険労務士)
小山 正樹(JAM副書記長)
古山 修(日本労働組合総連合会東京都連合会組織局次長)
小島 浩(IBM World Trade Asia Corporation Director of Employee Relations)
杉山 幸一(三菱重工業株式会社特別顧問)
○配布資料 作成者
毛塚 勝利(専修大学教授)
小宮 文人(北海学園大学教授)
中窪 裕也(千葉大学教授)
矢野 弘典(日本経済団体連合会専務理事)
資料194-1 ドイツ・イギリスの労働裁判官との懇談会議事録
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/roudou/dai27/27siryou194.pdf
主宰 日本弁護士連合会 労働法制委員会
出席者一覧
カーリン アウスト・ドーデンホフ裁判官(ドイツ)
ピーター クラーク裁判官(イギリス)
(労働検討会委員)
菅野 和夫
石嵜 信憲
鵜飼 良昭
春日偉知郎
熊谷 毅
髙木 剛
村中 孝史
山川 隆一
山口 幸雄
小島 浩
(通訳)
毛塚 勝利 教授(専修大学法学部)
山川 隆一 教授(筑波大学)
(推進本部事務局)
古口 章 事務局次長
齊藤 友嘉 参事官
松永 邦男 参事官
川畑 正文 参事官補佐
黒田 修 参事官補佐
内堀 宏達 参事官補佐
矢野 正枝 主査
(最高裁)
定塚 誠 行政局第一課長
男澤 聡子 行政局局付
(日弁連)
木村 靖 副会長
松本 修二 副会長
横溝 正子 労働法制委員会委員長
豊川 義明 労働法制委員会副委員長
水口 洋介 労働法制委員会事務局長
棗 一郎 労働法制委員会事務局次長