あしながおばさん
≪市区町朝鮮学校補助金:支出ゼロだけど?編 その1≫
赤池議員の一覧で、支出がゼロとなった自治体の経緯が気になったので、勢いついでに調べてみました。
その結果を、以下に対象市をH27年度の補助金額の多い順に挙げ、補助金対象と処理状況を示します。
和歌山県和歌山市 180万 ⇒学校交付/文科省通達により停止
千葉県千葉市 45万 ⇒学校交付/市長が中止を表明
大阪府岸和田市 30万 ⇒状況不明
大阪府池田市 9万 ⇒状況不明
埼玉県北本市 6万 ⇒個人交付/存続
東京都武蔵村山市 6万 ⇒個人交付/存続?
茨城県ひたちなか市 3万 ⇒個人交付/おそらく停止
茨城県日立市 2万 ⇒学校交付/おそらく停止
愛知県あま市 1万 ⇒個人交付/存続
結論は、文科省通達がすんなり効いたのが明らかなのは今のところ1例だけでした。以下個別に詳しく見ていきます。
▼ケース1:和歌山県和歌山市 学校交付/文科省通達により停止
「事務事業チェックシート」より抜粋。
・事業名:教育振興補助金交付事業
・事業目的:学校法人和歌山朝鮮学園(和歌山朝鮮初中級学校)の教育水準の維持向上と教育条件の改善を図り学校振興を図る
・事業期間:S61~
・根拠法令:地方自治法、和歌山市補助金等交付規則
・担当課:教育政策課
・事業内容:学校法人和歌山朝鮮学園(和歌山市中島3-1)に対して補助金を交付する
・実施内容:H25年度250万→H26年度210万→H27年度180万→H28年度補助金停止
・担当課評価の根拠:本補助金は、学校法人和歌山朝鮮学園の教育条件の維持向上及び生徒に係る経済的負担の軽減を図る目的から実施してきた。平成28年3月29日付け27文科際第171号の文部科学大臣通知を踏まえ検討し、補助金の停止を決定した。
▼ケース2:埼玉県北本市 個人交付/存続
H29年度予算に「外国人学校通学助成金 9万6千円」が計上されていました。
トップページからはお知らせが見つからず、ヒットしたのは市報(2016.6.1)の記事でした。
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「平成28年度 外国人学校通学助成金の申請受付」
北本市から他市の外国人学校に通う児童生徒の保護者に、外国人学校通学助成金を支給しています。
・対象 市内在住で、公立義務教育諸学校に在籍せず、外国人学校に在籍する児童生徒の保護者
・補助金の額 小学校 月額3,000円以内 中学校 月額5,000円以内
・申請手続き・問合せ 6月30日までに学校教育課学事担当へ
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今年の5~7月の市報にはこのお知らせは載っていませんでした。
▼ケース3:東京都武蔵村山市 個人交付/存続?
サイトに以下のお知らせが出ていました。
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・武蔵村山市外国人学校就学児補助金 更新日平成29年2月28日
武蔵村山市では、外国人学校(学校教育法に基づき認可を受けた学校法人が設置する各種学校で、義務教育を受けるべき年齢に相当する児童等を教育するもの)に在学している児童・生徒の保護者のかたに補助金をお支払いします。
・補助金を受けられるかた
保護者が、以下のすべてにあてはまる場合に、支給対象となります。
○武蔵村山市内に住所を有し、住民基本台帳に記録されている者であること。
○外国人学校に通学する児童等の授業料を負担している者であること。
○他の地方公共団体から外国人学校就学児補助金と同種の補助金を受けることができない者であること。
・補助金額 児童等1人につき、月額2,500円
・申請手続き
『外国人学校就学児補助金交付申請書』等の書類に必要事項を御記入のうえ、3月1日以降に学校による在籍証明を受けた後、子育て支援課へ申請してください。
・受付期間 3月1日~15日
ただし、児童等が退学、又は保護者が武蔵村山市内に住所を有しなくなったときは、3月1日前であっても申請をすることができます。
・問い合わせ 健康福祉部子育て支援課手当・医療グループ
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H28年度の申請期間が過ぎ、調査時点では申請がなかったということになろうかと思います。H29年度予算は詳細なものはサイトでは探せませんでした。現時点で上記のお知らせが掲載されているので、存続の疑いということになります。
ただ、行政評価の観点から、おもしろい議事録がありましたので、掲載します。
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※必要なところのみ抜粋
・会議名:平成25年度第4回武蔵村山市行政評価委員会
・開催日時:平成26 年2 月4 日(火)9:57~11:47
・出席者及び欠席者
出席者:坂野委員(委員長)、榎本委員(副委員長)、大澤委員、笹本委員、矢島委員、米原委員
欠席者:な し
・事務局:企画財務部長、企画政策課長、企画政策課主査(行政管理G)、同課主事(行政管理G)
・説明員:子育て支援課長、子育て支援課主査(児童手当G)、道路公園課長、道路公園課主査(公園緑地G)、教育総務課長、教育総務課主査(教育政策G)
・報告事項 ○ 平成25 年度第3 回行政評価委員会の会議結果について
・議題
1 行政評価の評価結果の審議について
2 その他
<議題1(1)外国人学校就学児補助金>
【質疑・意見等】
○ 毎年交付を受けている2 名は同一人物か。
● 同一である。
○ この2 名以外に、本市には外国人の子どもはいないのか。
● いると思われるが、市報等で本補助金のことを周知しても申請がないので、一般の公立学校に通学していると思われる。
○ 近隣に外国人学校はあるのか。
○ こちらの2 名は立川市にある西東京朝鮮第一初中級学校に通っている。
○ 補助金の開始当時は朝鮮人学校に通う児童生徒への補助金だったようだが、いつから外国人学校の児童生徒を対象としたのか。
● 平成17年度からである。
○ 朝鮮人の方も一般の公立学校に通えるのではないか。
● 通える。
○ 外国人学校に通う生徒のみに補助をするというのは、逆差別とならないのだろうか。
○ 朝鮮学校は、学校法人としての認可を受けているのか。
● 受けている。
○ 一般の私立学校と同様の位置付けなのだろうか。
● 手元の資料では分からない。
○ 学校法人として認可をされているのであれば、私立学校と区別はないのではないか。法律上、特別な位置付けがされているとは思えない。
○ 前述の朝鮮学校以外に、本市の近隣に外国人学校はないのか。
● ない。
○ 補助金の交付には公平性の確保が必要である。本補助金に関する請願とはどのような内容だったのだろうか。議会が認めた理由を知りたい。
● 本請願は、平成7年の第四回市議会定例会において、朝鮮学校等を取りまとめている協会の会長から提出されており、朝鮮学校に通う児童生徒の保護者に対して補助金を交付してほしいという内容であった。なお、本請願は全員の賛成によって採択されている。
○ 他の学校の保護者も補助金をもらっているならいいが、この補助金は特定の個人への補助金となっている。
○ 市から外国人学校以外の学校に通う児童生徒の保護者に対して補助金を交付している例はあるのか。他の保護者との公平性が気になる。
● ない。
○ 補助金の開始当時とは時代が変化している。
○ 朝鮮学校へは修学旅行に係る費用の補助は行っているのか。
● 行っていない。
○ あくまで、保護者の希望によって児童生徒が公立学校ではなく外国人学校に通っているということを前提として議論をしなくてはならないのではないか。
○ 公平性の確保が必要であり、補助金を交付するには理由が求められる。
○ 学校を通じて補助金は交付されているのか。
● そのようにすることも可能である。
○ 各市からくる補助金を学校が調整して交付しているということはないのだろうか。
● それはない。
○ 日野市は交付額が5,000 円と他市よりも高額であるが(注:もっと高いところは都内にある)、自治体間のばらつきに理由はあるのか。
● 把握していない。
○ 本市だけではなく他市からも交付されているということはないか。
● そのようなことはない。
○ 開始当時の補助件数はどのくらいか。
● 一桁の件数である。その後、朝鮮学校の児童生徒にだけ補助金を出すのは問題であるということで、対象範囲を外国人学校へと拡大した。
○ 市内には他のインターナショナルスクールに通っている子どもがいるかもしれないが、2,500 円のために申請をしないのだろう。
○ 廃止には問題があるのか。
● 今は、外国人学校への補助金の実施状況について、外部からの調査がくることもある。以前には、三鷹市に在住の方から増額の要望がきた。
○ 組織的なものだろう。
○ 本補助金には、妥当性や公平性の問題があるのではないか。
○ 門戸が開かれた補助金ではあるが、実際には1 つの学校のみが対象となっており、公平性に疑問が残る。
○ これまでの議論をまとめると、外国人に対して門戸を開いてはいるが、実績は1つの学校のみであるので公平性に問題があり、これを検証した上で抜本的に見直したほうがいいということだろう。委員会としては2 つの考え方がある。
一つ目は、一般の私立学校と区別する必要はあるのかということであり、二つ目は、1 つの学校のみに補助金を交付し続けることが公平性の観点から問題ないのかということである。もし今後も交付するのであれば、公平性だけではなく必要性などの他の理由も明確にしたほうがいいのかもしれないが、まずは、公平性を検証した上での抜本的な見直しが必要である。児童生徒の保護者の生活が厳しいのであれば、その困窮度に応じた対応などをするべきだろう。
○ 朝鮮学校は都内に何校あるのか。
● 把握していない。
○ 小平などにあったと記憶している。
○ 1 校のみが補助金を交付されている現状は問題である。
○ 請願があった当時とは時代が変化していることも考慮すべきだろう。
○ 公平性の観点から抜本的見直しだろう。
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補助金導入の経緯がわかってなるほどと思いました。ただ、H7に請願が出ていて、実施がH17年度からというところ、コピーミスかと確認しましたが、確かにそう書いてあり、なんで10年かかっているのか不思議です。
また、今回お勉強して「請願」と「陳情」の違いがわかってひとつおりこうになりました。地方自治体では議員の紹介があるのを請願と呼ぶということなので、どこの党のだったのかな、と思いましたが、議員全員賛成では些細なことかもしれませんね。
▼ケース4:茨城県ひたちなか市 個人交付/おそらく停止
詳しい経緯はわかりませんが、H28年度に計上されていた「朝鮮学校児童生徒助成金3万円」が、H29年度予算に計上されていないようなので、おそらく停止となっていると思われます。
▼ケース5:茨城県日立市 学校交付/おそらく停止
同様に、H28年度に計上されていた「茨城県朝鮮学園運営費補助 2万円」はH29年には項目の「教育振興経費」ごとなくなっていました。この経費は、朝鮮学園への支出のみに充てられていました。
▼ケース6:愛知県あま市 個人交付/存続
H29年度予算に「外国人学校修学援助補助金 10万円」が計上されています。
サイトには次のようなお知らせがありました。
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「外国人学校修学援助補助金」更新日 平成29年9月8日
あま市では、外国人学校に修学する幼児または高等学校生徒の保護者負担を少しでも軽減するために、修学費の一部を補助する事業を実施しています。
下記の要件に該当する方で補助を希望される方は、期限までに申し込みをしてください。
・補助対象者
本年10月1日において、外国人学校に修学する幼児または高等学校生徒の保護者等(※1)で、次の要件に該当する方
1.本年10月1日において、幼児または高等学校生徒及びそれらの保護者が本市に住所を有していること。
2.高等学校生徒の保護者等に対する補助金においては、保護者等の当該年度の市民税の算定に用いた課税標準額の合計が500万円を超えないこと。
(※1)保護者等とは、幼児または高等学校生徒の保護者(親権者または未成年後見人をいう。)または高等学校生徒本人(当該高等学校生徒が成人の場合に限る。)をいう。
・補助金額
幼児 年額12,000円 高等学校生徒 年額10,000円
・申請期間 平成29年10月2日~11月30日
・申し込み先 あま市役所本庁舎 教育部 学校教育課
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小・中は別な方法で援助しているということなのかどうなのか、そこは突っ込んで調べていません。H27年度が1万円の支出、H28年度がゼロということは、朝鮮学校生に限っての数字なのか、単にそれしか申請がなかったのかということは詳細な決算書が出ていなかったため調べていません。
▼大阪府岸和田市および池田市
サイトから補助金に関する情報は見当たりませんでした。
岸和田市は予算書は概要のみで、決算書があったので見ましたが、教育費と民生費で見たのですが、H27年度の30万円の支出の項目が探せませんでした。
池田市は決算は概要、予算は資料なし、と情報公開に難がありました。
▼千葉県千葉市
2017.4.27に熊谷市長が記者会見し、本年度の支給を凍結、今後廃止を含めて検討する方向であることを表明しました。
このケースは、有志により住民訴訟となっていることもあり、別立てで詳しく見ていこうと思います。読みこなすのに少しお時間をくださいませ。