弁護士は特別なんだと言いたいようです。
秋田弁護士会所属弁護士の刺殺事件に関する会長声明
11月4日午前4時5分頃、秋田弁護士会所属の津谷裕貴弁護士が自宅に浸入した男性に襲撃され刺殺されるという痛ましい事件が発生した。
報道によると、現場で逮捕された被疑者は、同弁護士が妻側の代理人を務めた離婚調停事件の相手方であって、同弁護士を恨んでいたということである。これは、弁護士の正当な業務遂行に対する逆恨みによる蛮行であり、法治国家においては決して許されないものである。
本年6月2日、横浜弁護士会所属の前野義広弁護士がその業務に関連して殺害された事件の記憶も薄れないこの時期に、こういった事件が繰り返されることについて、当会は激しい憤りを覚えるものである。
基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とし、市民の権利と自由の実現のために日々奮闘する弁護士に対する業務妨害・犯罪行為は、決して許されない。
当会は、津谷裕貴弁護士のご冥福を祈り、ご遺族に対して心からの哀悼の意を表するとともに、日本弁護士連合会及び全国の弁護士会連合会・弁護士会と連携して、弁護士に対するいかなる暴力行為に対してもひるむことなく毅然として対応していくことを誓うものである。以上
熊本県弁護士会 熊本県弁護士会会長 高木絹子
言うことが日本人の感覚ではないです。
民法(家族法)の差別的規定等の早期改正を求める会長声明
選択的夫婦別姓や非嫡出子の相続分差別撤廃等に関する民法改正案は,1996年に法制審議会の答申が出されているにもかかわらず,14年が経過した現在に至っても,未だ法改正は実現していない。しかし,家族法部分に関する民法改正は,いまや喫緊の課題である。
現行の夫婦同姓制度のもと,婚姻に際し96%もの夫婦が夫の氏を選択しているという現状において,多くの女性が改姓を事実上強制され,社会生活上,職業上の不利益を被るだけでなく,精神的苦痛をも負わされている。女性の社会進出が進む中,自己のアイデンティティとしての氏を婚姻後も継続して使用したいという女性たちの希望は,氏名が人格権の一内容を構成すること(最高裁第二小法廷昭和63年2月16日判決)に鑑み,また憲法13条,24条等の趣旨からも,法制度上十分に尊重されなければならない。また,①夫婦の同姓を強制する国は,先進国においてはすでに日本のみとなっていること,②2006年の内閣府調査では,60歳未満の年齢層では男女とも選択的夫婦別姓制の導入に賛成する者が反対する者を上回ったこと,③2009年9月以後に複数の新聞社により実施された調査では,いずれも選択的夫婦別姓制の導入に賛成する者の数が反対する者の数を上回ったことなどから,すでに選択的夫婦別姓制の導入についての社会的な合意も形成されている。もはや,選択的夫婦別姓制の導入を躊躇う理由はどこにもない。
また,非嫡出子の相続分差別は,出生時に父母が婚姻しているか否かという子自身には変更不可能な事実をもって行われる差別であり,最高裁判所においても,憲法14条,24条2項との関係で非嫡出子の相続分差別撤廃を求める意見が繰り返し述べられている。また,このような差別をしないことが国際的にも趨勢になっており,早急に改正すべきである。
さらに,女性にのみ再婚禁止期間を課している規定についても,今日の科学技術の発達によって父性推定の衝突回避という立法事実はすでに失われており,早期に撤廃すべきである。婚姻年齢の統一についても,憲法14条及び24条2項から当然に要請されるところであり,早期に改正すべきである。
日本における民法(家族法)改正の遅れは,度々国連においても問題視され,1993年以来,日本政府は国連の各委員会から家族法の早期改正を行うよう繰り返し勧告を受けている。とりわけ2009年の女子差別撤廃委員会は,家族法改正を最優先課題と指摘し,2年以内の書面による詳細な報告を求め,再度早期改正を行うよう厳しく勧告している。
政権交代後の政府においても,千葉景子法務大臣は,選択的夫婦別姓制等を導入する民法改正案を2010年の通常国会に提出することを目指すと明言しており,法改正を待ち望んだ国民の期待はいっそう大きくなっている。
当会は,選択的夫婦別姓制の導入や非嫡出子の相続分差別撤廃等をはじめとする民法(家族法)の差別的規定等の改正が早期に今国会に提出され,速やかに審議成立することを強く求めるものである。
2010年5月13日
熊本県弁護士会 会長 高木絹子
このころから外患罪を意識していたのでしょうか?
死刑執行に関する会長声明
熊本県弁護士会 会長 三藤省三
1 本年2月1日、福岡拘置所、大阪拘置所及び東京拘置所において各1名、合計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。今回の執行は、昨年12月の死刑執行から僅か2か月足らずの間に更なる執行がなされたものである。このような相次ぐ死刑の執行は、積極的に死刑を執行していこうという政府の姿勢を示したものというべきであり、誠に遺憾である。
2 私たちの社会は、免田・財田川・松山・島田各事件という4つの死刑確定事件について再審無罪判決が確定し、死刑判決においても誤判を犯してしまったという経験を持っている。そうであるにもかかわらず、このような誤判を生じるに至った制度上・運用上の問題点については、未だ抜本的な改善が図られていない。死刑事件についての誤判の危険性は、今もなお存在するのである。
また、死刑と無期刑の量刑につき、裁判所によって判断の分かれる事例が相次いで生じている。このような判断のぶれは、死刑についての確固とした明確な基準が存在しないことを明らかにしているのである。
さらに、我が国の死刑確定者は、国際人権(自由権)規約、国連決議に違反した状態におかれている。特に面会・通信の過剰な制限は、死刑確定者の再審請求、恩赦出願などの権利行使の大きな妨げとなっており、看過できない。今般、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律の施行により、実務の改善が期待されているものの、いまだに死刑確定者と再審弁護人との接見に立会いが付されるなど、死刑確定者の権利行使が十全に保障されているとは言いがたい状況である。
以上のような状況下において、直ちに死刑を執行してしまうことには重大な問題がある。
3 国際的にも、死刑廃止条約が1989年12月15日の国連総会で採択され(1991年発効)、1997年4月以降毎年、国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)が「死刑廃止に関する決議」を行うなど、死刑に対する慎重な姿勢は国際的な潮流となっている。
また、昨年5月18日に示された国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告においては、我が国の死刑制度がはらんでいる多くの問題が端的に指摘された上で、死刑の執行を速やかに停止するべきことなどが勧告された。
さらに、昨年12月18日には、国連総会本会議において、すべての死刑存置国に対して死刑執行の停止を求める決議が採択されたところである。
4 我が国においては、現在、死刑制度に対する国民的議論が十分に尽くされたとはいいがたい状態にある。今後、とりわけ2009年から開始される裁判員制度においては、裁判員も死刑を含む量刑判断に関与することになっている。死刑制度及びその運用について国民的な議論が必要とされるところである。
このような議論が必要とされている最中に、あたかもベルトコンベアに載せるが如くに次々と死刑執行を行うことは、余りに拙速にすぎると言わざるをえない。
5 当会は、今回の死刑執行に遺憾の意を表明するとともに、政府に対し、死刑制度の存廃、運用について国民的議論が尽くされるまでの一定期間、死刑の執行を停止することを強く求めるものである。
韓国朝鮮籍の犯罪者が多いこの日本で一体、何を考えているのでしょうか?
犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる 被害者参加制度に反対する会長声明
熊本県弁護士会 会長 三藤省三
平成19年3月13日、被害者参加制度の新設を含む「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、本国会に上程されている。
被害者参加制度は、裁判員裁判対象事件や業務上過失致死傷等の事件について、裁判所に参加を申し出た被害者やその遺族(以下「犯罪被害者等」という。)に対し、公判への出席、情状に関する事項についての証人に対する尋問、自ら被告人に対して行う質問、証拠調べ終了後の弁論としての意見陳述(求刑を含む)を認める制度である。
犯罪被害者支援に関しては、これまで、犯罪被害者等は「事件の当事者」でありながら、刑事手続の蚊帳の外に置かれて情報から遮断され、精神的ケアの面でも経済的補償の面でも十分な支援を受けられずにきている。近時関係各位の尽力によって犯罪被害者基本法の制定をはじめ、各種支援策が講じられるようになってきたものの、現行の刑事司法制度が、犯罪被害者が抱いている不満に十分に答えているとはいえず、さらなる犯罪被害者支援策が求められる。
しかしながら、今般の改正法で導入が予定されている犯罪被害者の刑事手続参加制度は、以下のとおり、刑事裁判の構造を根底から変容させ、被告人の防御権を危うくさせるばかりか、来る裁判員制度の実施にも深刻な悪影響を与える虞があることから、当会としては、かかる制度の導入には、反対せざるを得ない。
1 犯罪性の有無や犯人と被告人との同一性が争われている否認事件において、応報感情に駆られた犯罪被害者等ないしその代理人による、被告人の犯人性を前提とした証人尋問・被告人質問や意見陳述は、被告人に不必要且つ多大な負担を強いることになるばかりか、犯罪被害者等の意見が過度に重視され、証拠に基づく冷静な事実認定や公平な量刑に強い影響を与えることが憂慮される。
犯罪被害者等の刑事手続への参加は、被告人の無罪推定の原則にも抵触し、被告人の防御権を侵害する懸念を払拭できない。
2 犯罪被害者等による被告人質問権・意見陳述権(求刑を含む)等の目的とするところは、畢竟、被告人に対する糾弾に収斂せざるを得ない。しかも、平成21年から施行される裁判員制度下で、法律の専門家でもなくしかも事件毎に関与する裁判員において、量刑の社会復帰理念等が十分に理解されないまま、被告人質問や意見陳述等を通じた犯罪被害者らの被害感情が過大評価されることになれば、徒に過度の重罰化を招き、行刑の理念のみならず、刑事司法手続の適正すら変質せしめる危険がある。
とりわけ裁判員制度の制度設計に際しては、被害者参加制度が考慮されていなかったことから、被害者参加制度が及ぼす影響も大きいものとなろう。
3 代用監獄の温存による自白強要の危険、伝聞法則の形骸化、接見交通権の侵害、人質司法、調書裁判等被疑者・被告人の人権が極めて脆弱な現状において、さらに被害者保護の名目の下に、被害者らからの私怨による責任追求まで許容されるならば、危殆に貧した被疑者・被告人の人権保障など風前の灯となる。
諸外国の犯罪被害者参加制度と雖も、被疑者・被告人の無罪推定の原則等を侵害しないよう各種の法的手当が講じられており、歴史的・制度的・社会的背景の相違を無視して、我が国でそのまま制度化するのは、妥当ではない。
4 一方、悲惨な状況におかれた犯罪被害者等の救済が緊急且つ重要な課題であり、経済的、社会的、医療的措置等を通じ、国家・社会の責任において、十分な手当てが講じられるべきこともまた論を俟たない※。
しかし,犯罪被害者等の刑事手続参加によって、刑事司法が被害者等の癒しの場になり、被害者等の立ち直りや回復に寄与することは実証性がなく、被告人の反駁等により、却って犯罪被害者等の精神的被害を増幅する危険すらある。
5 多くの犯罪被害者等が刑事裁判に対して抱いている不満は、捜査結果や事件内容、手続について十分な情報提供がなされていないため、なぜこうした事態に巻き込まれているのか「知りたい」という願いが充たされないことや、検察官の訴訟活動に自らの思いが十分に反映されないことなどに起因している。これらの犯罪被害者等の不満に対応するためには、刑事訴訟の諸原則との重大な矛盾を孕む被害者参加制度の方法によらなくとも、
【1】 被害者等の検察官に対する質問・意見表明制度の導入
【2】 犯罪被害者等に対する公費による弁護士支援制度の導入
によって、現行刑事訴訟の構造と矛盾を来すことなく犯罪被害者等の要望に応えることが可能である。
6 2007(平成19)年4月14日、「被害者と司法を考える会」は、今回の被害者参加制度の功罪を指摘し、全国の各弁護士会に対し、上記法案に反対の決議を求める要望書を提出しており、被害者参加制度が必ずしも犯罪被害者等の不満に応えるものでないことが明らかである。
このように、被害者参加制度は、犯罪被害者等の支援にはつながらない上に、刑事裁判の構造を根底から変容させ、被告人の防御権を危うくさせるものであり、当会は、この法案について、深く憂慮し、強く反対の意見を表明するものである。
「ゲートキーパー」立法に反対する会長声明
熊本県弁護士会 会長 坂本邦彦
政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部は、平成16年12月、「テロの未然防止に関する行動計画」を策定し、その中でFATF(OECD加盟国を中心とする政府機関である「金融活動作業部会」の略称)勧告の完全実施を決め、弁護士に対しても、依頼者の疑わしい取引に関する報告義務を課し、これを立法(ゲートキーパー立法)化する準備をしている。
その一方で、政府は、平成17年11月17日、FATF勧告実施のための法律の整備の一環として、金融情報機関(通称FIU)を金融庁から警察庁に移管することを決定した。
しかし、そもそも弁護士に依頼者の疑わしい取引に関する報告義務を立法により強制すること自体、弁護士の依頼者に対する守秘義務を侵すものであり、弁護士制度の根幹を覆すもので、到底認め難いことである上、この報告先を警察庁に移管することは、更に、これまでの弁護士自治自体を国が否定し、弁護士、弁護士会を国の監督下に置くことにつながるもので現在の弁護士法の否定であって絶対に容認できない。
弁護士は、たとえ相手が国家権力であっても、その対抗の中で市民の人権を擁護することを職責としており、弁護士の秘密保持の原則は、このような国家とも対抗関係に立つことがある弁護士の職業の本質に根ざすものである。時の政府又は政治権力から独立していることが(弁護士自治)、人権の擁護と社会正義の実現の基盤である。そして、この基盤を支える義務として、守秘義務は国民の弁護士制度・司法制度への信頼の基礎ともなっている。政府が検討しているゲートキーパー立法は、この基盤を文字どおり根底から覆すものである。
また、弁護士の報告義務制度が導入されれば、弁護士のこれまでのような依頼者との秘密保持義務は、国家との関係で解除されるとはいえ、弁護士は自らの依頼者のことを告げ口するような不本意な行動を強いられ、通報した事実を依頼者に開示することも禁止された状態で仕事を続けなければならない。そのため、依頼者は何を通報されるかわからないので真に重要なことは弁護士に話せなくなる。また、「疑わしい」というレベルで弁護士に通報義務を課せば、トラブルに巻き込まれたくないと思う弁護士による誤った通報が発生するおそれもあり、これによって自らの依頼者に経済的な破滅をもたらすおそれもあり、依頼者にも多大の損害を与える可能性が大きい。
更に、この制度の導入によって依頼者が弁護士に真実を話さなくなれば、弁護士は依頼者が法律を遵守して行動するように適切な援助をすることもできなくなり、このことによって、逆に、依頼者による違法行為という結果を招くリスクも生まれる。
要するに、依頼者の違法な行為を金融監督機関に通報することによる違法行為の予防、抑止の効果よりも、多くの依頼者が適切な法的アドバイスを受けられなくなるリスクの方が格段に大きいと言わざるを得ない。
このように、弁護士に対するゲートキーパー立法を認めれば、弁護士は、正当な依頼者の利益を守ることができなくなり、依頼者も多大の損失を蒙るおそれがあるのである。
もちろん、マネーロンダリング等の防止が重要であることはいうまでもないことであり、当会としてもこの防止のための対応、努力は常に続けていかなければならず、弁護士の職責上も国際組織犯罪、国際テロを防止する行動をとることが当然必要である。
しかし、現在、政府が法律の整備を検討している弁護士に通報義務を課す制度を立法化することは、これまでの永い歴史の中で構築された弁護士自治制度の根幹を崩壊させるもので、弁護士と依頼者との信頼関係を根底から脅かし、かつ、国民が国家からの監視を受けるという重大な人権侵害の結果を招くことにもなり、到底容認できない。
よって、当会は、ゲートキーパー立法に強く反対するものである。以上
もう「アウト」「アウト」「アウト」。これしか出てこない。
共謀罪の新設に反対する会長声明
「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(以下,「本法案」といいます)は,先の衆議院解散に伴って廃案となりましたが,今国会において同様の内容で再上程されることが決定しました。
本法案において新設される「共謀罪」は,長期4年以上の刑を定める罪に当たる行為について,団体の活動として,当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者を,前提犯罪の軽重にしたがって5年以下又は2年以下の懲役・禁錮に処するというものです。
しかし,この「共謀罪」は,犯罪の実行に着手することはおろか,何らの予備行為をすることも必要なく,単に犯罪の共謀をするだけで処罰するものであって,近代刑法の大原則である罪刑法定主義に反するものです。しかも,対象となる罪は600以上と広範囲に及び,共謀という概念自体が曖昧であって,思想自体を処罰するおそれが強く,思想の自由や表現の自由などの憲法上の基本的人権に対する重大な脅威となることが危惧されます。そして,共謀の存在を立証するために,捜査における自白偏重を招く危険性が予想され,また,共謀の内容を構成する会話,電話,電子メールの傍受などの捜査手法が拡大することも十分懸念されます。
また,この「共謀罪」は,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」の締結に伴う国内法整備として必要なものであると説明されていますが,同条約で規定されているいわゆる顕示行為(準備行為)を要件とすることもせず,それどころか,同条約が取締の対象として予定していた越境性(国際性)や組織的犯罪集団による行為も要件から欠落させています。その結果,「共謀罪」の対象範囲は同条約が要求する以上に拡大し,一般市民団体,企業,労働組合の活動にさえ及ぶことになると思われます。
このように,本法案に新設されている「共謀罪」は,国民の基本的人権を侵害し,市民生活にとって重大な脅威となるものであることから,当会は,その新設には強く反対するものです。
平成17年11月4日
熊本県弁護士会 会長 坂 本 邦 彦
個人情報保護法案に対する会長声明
平成15年(2003年)4月24日
政府は個人情報保護関連5法(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案、個人情報の保護に関する法律案、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案、情報公開・個人情報保護審査会設置法案、同法案要綱)を今国会に提出し、現在衆議院の「個人情報の保護に関する特別委員会」で審議されている。
これらの法案は昨年12月に廃案になり、今回改めて提出されているが、個人情報保護法案についてはメディア規制にならないように文言上の配慮をし、行政機関個人情報保護法案については公務員に対する罰則規定を若干強めてはいるが、なお個人情報の保護について看過できない重大な問題のある法案といわざるを得ない。
1.個人情報保護法案について
法案は、「個人情報取扱事業者」にさまざまな義務を課し、主務大臣が、事業者の個人情報の取り扱いに問題があると認定したときには報告を徴収し、必要があれば助言し、勧告、命令し、緊急な場合には違反行為中止等の措置命令を課し、命令違反に対しては刑罰を課す構造となっている。
そして、法案によると、ある者が「個人情報取扱業者」に該当するか否かは「取り扱う個人情報の量及び利用方法」により政令で定められることになっており、その定め方如何ではメディア、弁護士・弁護士会、NGOから団地自治会、同窓会、著述家の団体、労働組合、生活協同組合までもが、個人情報を悪用する名簿業者等と同列に扱われ、主務大臣が個人情報保護を口実に市民団体等の活動や弁護士・弁護士会の行動に干渉し、その情報収集、意見表明の妨げとなる危険性がある。
そこで当面は、「個人情報取扱業者」に該当するか否かで一律に扱うのではなく、個人情報の侵害の危険性の高い金融、情報通信、医療などの分野についてだけ、その特性を考慮した上で、必要な限りで罰則を伴った分野別個別法の立法がなされるべきである。
2.行政機関個人情報保護法案について
法案では、行政機関が必要に応じて広汎に国民の情報を収集・管理・統合・行政内部で流通させることに法的根拠を与える内容になっており、ほとんどの自治体の個人情報保護条例では規制されている思想、信条、病歴、犯罪 歴などの他人に知られたくないセンシティブ情報を規制しておらず、また、行政機関には「相当な理由」という曖昧なかつ緩やかな基準で、しかも第三者機関ではなく当該行政機関が自ら判断するという方法で目的外利用、他の行政機関による利用を認めているのであって、住民基本台帳ネットワークシステムの住民票コードで識別管理されることにより、国民が行政の前に透明化されてしまいかねない。
そして、個人が、そもそも収集の許されない情報(思想・信条等)を収集されていないかをチェックしたり、誤った情報の訂正・削除を求めたりすることは個人の尊厳を保障するため当然必要不可欠であり、その為には、国の行政機関等が保有している個人情報についてはすべてファイル簿を作成し、公表することが求められるが、その様な規定は法案には設けられていない。
また、行政機関が保有する個人情報の訂正請求などに関する所轄大臣の決定に不服があった場合の訴訟についても、権利の実効性という観点からすれば、原告の住所地を管轄する地方裁判所に提訴できるという規定が必要であるにもかかわらず、法案には管轄に関する規定が設けられておらず、東京地方裁判所でしか訴訟が提起できないという事態が起きかねない。
そこで今般の法案について、当弁護士会としては、現在特別委員会による集中的な審議が進められているが、委員会において以上の点を十分審議検討されて政府案を修正されるよう強く期待する。
熊本県弁護士会 会長 塚本 侃