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産経新聞
厚生年金と会長報酬をめぐる問題のイメージ
神奈川県弁護士会が、毎月報酬を受けていた弁護士会会長の厚生年金加入漏れを年金事務所に指摘され、経済的負担を避けるため無報酬にして加入を免れたとみられることが10日、関係者への取材で分かった。弁護士会が1年の任期を終えた会長経験者2人に対し、本来受け取るはずだった報酬と同額を顧問料名目で支払うよう決議したことも判明。会長報酬を顧問料に変えて社会保険を逃れようとしたともとれ、弁護士会の一部会員は「脱法的な行為だ」と反発、決議の無効を求め横浜地裁に提訴した。
弁護士会は産経新聞の取材に「訴状の内容や個人情報に関わる事項であり、現時点でお答えができない」などとしている。会長経験者の1人は「お答えを差し控えさせていただく」とし、もう1人は取材に応じなかった。弁護士組織が社会保険の回避を指摘されるのは異例だが、年金事務所から指摘を受けていない「社保未加入」の業界団体は他にもあるとみられ、問題は波及しそうだ。
訴状などによると、神奈川県弁護士会は昨年2月、毎月30万円の報酬を得ていた平成30年度の会長について、厚生年金への加入義務があると地元の年金事務所から指摘された。弁護士の多くは自営業者として国民年金基金に加入、厚生年金には加入していない。一方で国の通知では「法人の代表者でも法人から報酬を受けていれば、社会保険の被保険者の資格を取得」するよう定められている。
これに対し、弁護士会は厚生年金に1年だけ加入した場合、年金の掛け金が割高となって会長に不利益が出ることを懸念。会長の報酬を全額返上して厚生年金に加入しないと決めた。報酬返上を報告された事務所は調査を打ち切った。
一方、昨春就任した昨年度の会長は厚生年金にすでに加入しており不利益は生じないが、弁護士会は前年度の会長と同様に無報酬にした。弁護士会は今年2月、会長経験者2人が無報酬のままでは負担が大きいとして、退任後の2人と弁護士会が顧問契約を結ぶことを決議。それぞれ顧問料月15万円を2年間支払う契約で、現職会長への助言や会合参加などこれまで無償で行っていた業務が想定されている。
厚生年金の加入を免れるため、会長報酬を後払いするとも受け取れる契約内容に異論が続出。会員弁護士4人が提訴した。原告の吉川晋平弁護士らは「本来は報酬を全て受け取らないか、厚生年金に入るかのどちらかを選ぶべきだ。年金事務所を欺く形で法律の義務を免れるのは、社会正義を使命とする弁護士法の趣旨に反する」としている。
■年金切り替えの負担回避…厚労省も問題視
神奈川県弁護士会が会長を無報酬にして社会保険加入を回避したととれる措置を講じたのは、年金の切り替えに伴う経済的負担が大きいためとみられる。ただ、受け取れなかった報酬を退任後に顧問料で補填(ほてん)するような措置に対し、厚生労働省も「加入逃れではないか」と問題視する。
法曹関係者によると、法律事務所に所属する弁護士は、多くが自営業者として国民年金基金に加入。弁護士会のような法人から報酬を受けることになれば、国民年金基金を脱退して厚生年金に切り替える必要が生じる。
神奈川県弁護士会は年金事務所から指摘された後、会長が厚生年金に加入して退任後に国民年金基金に入り直す場合を検討。ただ、国民年金基金は若いうちに加入するほど低負担で高額受給できる一方、高齢で再加入すれば掛け金が高くなる仕組みで、継続加入の場合と比べて再加入は経済的に不利になると判断したという。
このため、退任後の顧問契約をひねり出したとみられるが、顧問契約を検討した弁護士会内のワーキングチームも、内部の批判を踏まえ「これが最上の方策とは言い切れない」と指摘。平成30年度からの「暫定措置」と位置付けている。
これに対し、厚生労働省年金局の担当者は、顧問料について「会長報酬の支払いを形だけ変えたものならば、社会保険の加入逃れのようにもみえる」と弁護士会の対応に疑問を呈した。