アメリカ上院外交委員会は、21日に「2021年の戦略的競争法」を可決し、上院に送られました。立法化は確実と見られています。
日本では可決後のニュースはロイターから配信されてヤフーに掲載されましたが、他のメディアではほとんど報道されていません。法案公表後には読売新聞、毎日新聞などが伝えていました。
読売新聞 4月9日
中国は「ほぼ同等の競争相手」…米上院、対抗策まとめた戦略的競争法案を公表
https://www.yomiuri.co.jp/world/20210409-OYT1T50167/
2021/04/09 13:14
このような日本では報道されないニュースを伝えていくことにも、余命ブログは力を入れていました。本稿ではこの対中制裁(戦争)法案ともいえる戦略的競争法について余命ブログが伝えてきたこととのかかわりを見ていきます。
大きなポイントとしては以下の二つがあげられます。
北朝鮮への違法な援助は制裁対象となる
制裁措置が承認される行動に「北朝鮮への違法な援助と貿易」が入っている。「中国からの」ではありますが、同盟国の日本が無関係で済ませられるものではありません。(下部の画像2番目参照)
米国は核を含むあらゆる種類の能力で日米安保に基づき日本を防衛する
発表された共同声明「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」では、「米国は核を含むあらゆる種類の能力で日米安保に基づき日本を防衛する」と述べられている。
【日米共同声明】 両首脳が発表した共同声明は次の通り
朝日新聞デジタル2021年4月17日 18時00分
https://www.asahi.com/articles/ASP4K5W7LP4KUTFK016.html
以下に法案可決の記事と法案の概要を説明する記事を引用します。
なお余命ブログでは潜水艦に搭載する核弾頭について繰り返し解説されていました。それについては、本稿の最後に2019年に米国で配信された記事を引用します。内容はトランプ大統領が報告を指示した核兵器最新化の弊害と、古くなった弾頭を安全に保管することに困難が生じつつある現状を述べています。この記事で例に上がった弾頭はトライデントに搭載されるものです。
法案可決の記事
米上院外交委、中国対抗法案を可決 対中戦略の動き加速
By Reuters Staff
https://jp.reuters.com/article/usa-china-senate-idJPKBN2C82XL
[ワシントン 21日 ロイター] - 米上院外交委員会は21日、人権や経済競争において中国に圧力をかけることを目的とする法案「2021年の戦略的競争法」を賛成21、反対1で可決し、上院に送付した。米議会では超党派による中国への対抗を強める動きが加速している。
同法案では「インド太平洋地域における米国の政治的目的を達成するために必要な軍事的投資を優先する」必要性を強調。2022─26年度にインド太平洋地域への対外軍事融資として総額6億5500万ドル、インド太平洋の海上保安に関するプログラムなどに総額4億5000万ドルの拠出を求めた。台湾との関係強化も訴えている。
外交委は法案に複数の修正を加えた。その中には2022年の北京冬季五輪への米政府関係者の参加を禁止する内容も含まれている。政府系機関である米国際宗教自由委員会(USCIRF)も21日、中国が新疆ウイグル自治区でイスラム教少数民族ウイグル族を迫害しているとして、バイデン政権に対し、北京五輪に政府関係者を派遣しないよう求めた。(全文はリンク先を参照)
法案の概要(SBIFXトレードHPより引用)
ジョセフ・クラフト 特別レポート
https://www.sbifxt.co.jp/market/resultanalysis109.html
① 米上院外交委員会が「戦略的競争法」を発表 ~ バイデン政権に対中制裁を要求か
掲載日:2021年04月12日
米8日(木)に上院外交委員会が、中国との競争環境を整備する「戦略的競争法」を発表した。先ず、この法案で印象的なのは、中国政府(中国人民共和国)を名指し、焦点を定めていることと、超党派指示をアピールしていること。しかしこの法案の最も重要ポイントは2つ:①同盟国連携と②制裁の(積極的)活用(詳しくは下記参照)。通常、法案の表紙の冒頭に趣旨が明記されるが、同法案では「中国人民共和国が関与する問題に対処するために」と書かれている。法案表紙に共産党政権を名指するのは極めて珍しいというか記憶に無い(下記①表を参照)。これまで、「香港自治法」、「ウイグル人権政策法」や「香港人権・民主主義法案」でも中国人民共和国と明記されず、何も書かないかせいぜい「中国」とだけの表記に止めている。次に法案が超党派であることも重要なメッセージである。法案には、外交委員会議長のボブ・メネンデズ(民主)と副議長のジム・リッシュ(共和)の連名で提出されており、大多数の指示で可決されることが予想される。
出所:ロールシャッハ・アドバイザリー
本題の注目ポイントに入る前に、上院外交委員会が示す法案の概要を下記に紹介したい。
「戦略的競争法」の概要 (上院外交委員会ホームページ訳)
▶ 中国が定期した課題に対応するため、米国の外交戦略を強化し、インド太平洋地域及び世界の同盟国やパートナーに米国のコミットメントを再確認、そして国際社会及び多国間での米国のリーダーシップの強調を求める。インド太平洋地域の安全保障支援を優先することによりインド太平洋地域及び世界の同盟国やパートナーに米国のコミットメントを再確認、西半球、欧州、アジア、アフリカ、中東、北極そしてオセアニアでの中国が及ぼすチャレンジに対して外交努力を持って対処する。
▶ 普遍的な価値に投資し、香港での民主主義活動やウイグル地区における強制労働、強制不妊術およびその他の虐待などに対する制裁措置や幅広い人権と公民権保護措置を承認する。
▶ 中国の略奪的な国際経済行動に対処と対抗すべく、知的財産権侵害者の追跡、中国政府の補助金、香港を利用した米国輸出管理規制の回避そして米国資本市場での中国企業行動の把握と追跡などの措置などを求める。米国政府は、腐敗行動に対抗する国々に技術支援を提供し、 要請があればコロナ禍によって被害を受けた最貧国に債務救済を行うことを指示する。
▶ 中国の軍事拡大と近代化に直面した現状を踏まえ、同盟国との軍事面での協力と調整の強化を求めると同時に、中国の弾道、超音速グライドと巡航ミサイル、在来軍、核、宇宙、サイバースペース、その他の戦略的領域についての報告も求める。
法案の注目ポイント
281ページに及ぶ法案の中身を検証した結果、二つのポイントが浮かび上がる:①同盟国連携と②制裁の(積極的)活用。同法案が日米首脳会談の直前に発表されたのは偶然としてはタイミングが良過ぎる。つまり、バイデン政権は中国に対してより強硬策(制裁)を課すことを考えているとしたら、同盟国(先ず日本)にも賛同・参加を求めることが想定される。連携・協力は単に制裁支持に止まらず、ミサイル配備や太平洋海域の防衛巡回など集団自衛権の拡充に及ぶ可能性も考えられる。この「戦略的競争法」は、アメリカが対中強硬姿勢にコミットする一方で同盟国にも同様のコミットメントを求めるものである。バイデン政権がこの法案を意識しているとすれば、日米首脳会談である程度の責任共有・分担を求めて来ることは避けられないのではないか。下記に2つの注目ポイントを取り上げてみたい。
1.同盟国連携 ~ 法案の中で162ページ(約6割)を同盟国連携に宛がっている。注目なのは抽象的な連携では無く、地域別そして更に国別での対応に詳しく言及していること。先ず、法案は五つの項目に分けられている: ①競争力のある未来に投資、②同盟国とパートナーシップに投資、③我が国の価値観に投資、④我が国の経済技術に投資と⑤戦略的安全保障の確保。この中で2番目のテーマに影響している国別の注目部分を紹介したい。
A) 台湾 ~ 法案が台湾との関係強化にかなり踏み込んだことに驚いた。例えば212条に、「to recognize Taiwan as vital part of the U.S. Indo-Pacific strategy」と米国のインド太平洋戦略において台湾は不可欠であると宣言している。更に「to reinforce commitments to Taiwan under the Taiwan Relations Act(台湾関係法へのコミットメントを強化)」や「to support Taiwan's implementation of its asymmetric defense strategy(台湾の『非対処防衛戦略』の導入をサポート」そして「to advocate and actively advance Taiwan's meaningful participation in the United Nations(国連での台湾の意味ある参加を提唱そして積極的に前進させる)」と明らかに中国を逆なでする文言が満載。最後に、これまでの台湾との協定や政策は変わらないとしつつも、「the State Department and other agencies shall engage with the government of Taiwan on the same basis as the U.S. government engages with other foreign governments.」と国務省及び他の省庁は他の外国政府と同様に台湾と従事・接することと指示している。これは、米政権の閣僚訪問の可能性に繋がるとも受け取れる。
B) 自由で開かれたインド太平洋 ~ インド太平洋地域と言及するも、バイデン政権は「自由で開かれたインド太平洋」自体に言及することが少ない。しかし法案では、自由で開かれたインド太平洋と明記されており、外交委員会としての支持が確認出来る。「自由で開かれたインド太平洋」の前進には日本、韓国、フィリピン、オーストラリアそしてタイとの連携が不可欠と同盟5ヶ国(つまり優先グループ)との関係を強調した。これら同盟国とは、エネルギー政策、化学と医療研究、ミサイル防衛、軍事情報共有、宇宙・サイバーその他の防衛イニシアチブなど経済・軍事の両面で協力を深めるよう指示。次に第2グループまたはパートナー国としてインド、シンガポール、インドネシア、台湾、ニュージーランドそしてベトナムとの協力・関係強化を推奨。ここでのポイントは、アメリカとして同盟国対パートナー国に期待している協力・責任分担のレベルが違うこと、つまり日本など同盟国にはより重い責任・協力が求められ可能性が示唆される。
C) 日本 ~ 各同盟国との防衛協定に触れており、「Defending Japan, including all areas under the administration of Japan, under article V of the Treaty of Mutual Cooperation and Security Between the United States of America and Japan.」と日米安保5条の担保に言及されている。16日の日米首脳会談の声明文にも第5条へのコミットメントが明記されるようだが、その見返りの請求書が気になる。
D) QUAD ~ クワッドへのコミットメントを再認識して枠組みの拡充が推奨されている。ただ気になる点として、「the United States should reaffirm our commitment to "Quad" to enhance and implement a shared vision to meet shared regional challenges and to promote a free, open, inclusive, resilient, and healthy Indo Pacific...」 とクワッド諸国への責任共有と分担を意識した文が目立つ。取り分け、「the United States should seek to expand avenues of cooperation with the Quad, including more regular military-to-military dialogues, joint exercises, and coordinated policies related to shared interests such as protecting cyberspace and advancing maritime security」と明記、この文言は日本の集団自衛権の拡大を要請する可能性が想定される。
2.制裁 ~ 法案は、制裁やその他規制措置の適用を積極的に求めている。「Sanctions and other restrictions when used as a coordinated and comprehensive strategy are a powerful tool to advance U.S. national security interests」と、制裁や他の規制措置はアメリカの安全保障を遂行する強力なツールと位置付けている。法案は更に踏み込んで、対中制裁を承認するための具体的な行動・行為を明記している(下記②の左列参照)。次に、制裁発動に値する行動は具体的に明記する一方、制裁措置自体に関しては柔軟な枠組みを設けている(下記②右列参照)。即ち政権が適用できる制裁措置は、下記にある9つ((A)~(I))の法案に明記しているものあれば何でも良い(複数も可)ということ。
制裁に関する文書で最も驚いたことは、議会としてバイデン政権が対中制裁やその他規制措置を実施していない、不十分であることに言及どころか批判したこと。その文面が、「It is the sense of Congress that the executive branch has not fully implemented sanctions and other restrictions described in section (a) (4) despite statutory and constitutional requirements to do so(法定または憲法に定められているにも関わらず、行政機関は制裁及びその他規制措置を実施していないと議会は認識している)」。つまり、この法案が可決されればバイデン政権としては積極的な制裁行動に踏み切らざるを得なくなり、中国は当然報復措置に打って来る。
出所:ロールシャッハ・アドバイザリー
米政府監視人による、米核兵器の最新化を妨げる3つの問題
Defense News 2019年6月19日 ケルセイ・ライヒマン
ワシントン発
米国の爆発性物質を使用している核兵器格納庫が国家計画による最新化に影響を与える局面にあると、政府の関係機関(以下、GAO)が報告した。
国家核安全保障局は半民半官のエネルギー省の組織であるが、今、現在、三つの困難に直面している。
報告によると、漸減する爆発性物質の供給、設備の老朽化と劣化、そして熟練した有資格者労働者の確保である。
この報告は、トランプ大統領の指示により開かれた核兵器格納庫の最新化にかかるコストについての議会の議論に使用された。
国家核安全保障局の物資の供給は「高度に特殊化された」特有の化学物質と物理的な特徴を持ち、供給率が低くなっている。
それに加えて、国家核安全保障局は物資の製造の基礎的知識に欠けており、この製造法は十分に書面化されていなく、訓練もなされていない。
物資の供給が滞ることについては国家核安全保障局にとって新しい問題ではなく、Fogbankと呼ばれる物資に対して供給が不足する事態を経験しており、2009年三月のGAO報告によると、Fogbankの製造に対する知識がなく、25年近くこの問題は放っておかれた。
FogbankはW76-1の製造に用いられ、海軍のトライデントの弾道ミサイルの弾頭となる。トランプ政権においては、新型の小型核兵器である、W76-2 の変種として今年度から製造されている。
GAOによると、国家核安全保障局が物資のフォーミュラを模倣できたならば、製造側に不規則で少量のオーダーのスペックが供与でき、物資の供給は保証される。
しかしGAOによると、インフラの老朽化は国家核安全保障局の最大のリスクとなる。
国家核安全保障局の2019年度のマスターアセットプランでは、全体の40%の爆発性物質のインフラが安全基準を満たしておらず、爆発性物質の汚染や、施設の利用の制限にかかわってくる。一部の爆発性物質の汚染は天井からの錆の落下や、壁の割れ目からの草の侵入によって起こっている。
老朽化した施設は従業員保護のためにも最新の安全基準に沿った改築を行わなければならない。 例えば、ロスアラモスの高爆発性化学物質研究所では、1950年代に建てられた施設を新築するため懸命になっていると、報告は伝えている。
施設の保管所も限られており、爆発性物質が一か所に保管されており、化学反応を起こしてしまう可能性もある。
また、秘密文書取り扱い許可証を持つ、資格を持ったスタッフの確保にも触れている。 例えば、Pantex、安全局に採用された製造業者だが、2018年に、211人の有資格者が必要とされるとしたが、その年の11月に172人の雇用者しかいなかった。 関係者によると、競合するのはテキサスなどの石油、ガスの会社となる。 Pantexは地方の大学などに赴いて雇用者を探しているとのこと。
国家核安全保障局の局長である、リサ・ゴードン・ハガティー氏の書面による回答によると、GAOの観察と推奨はエネルギー省と国家核安全保障局のエネルギー物質の集中管理化と一貫したものである、とのこと。
安全インフラ運用局ではすでにインフラに関するデータは個別に報告され、改善の方向に向かっている。このような尽力はすでに改善されたデータに現れており、正確で一貫性のあるデータはさらなる改善につながるだろう。
Government watchdog finds 3 issues disrupting US nuclear modernization efforts
By: Kelsey Reichmann June 19
WASHINGTON — The U.S. agency responsible for making explosive materials used in nuclear weapons is facing challenges that could impact the country’s planned modernization of its nuclear arsenal, according to a report by the Government Accountability Office.
The National Nuclear Security Administration, a semiautonomous agency within the Energy Department, is facing three main challenges, according to the report: a dwindling supply of explosive materials, aging and deteriorating infrastructure, and difficulty in recruiting and training qualified staff.
This report comes amid congressional debate over the cost of modernizing the U.S. nuclear arsenal, an effort driven by President Donald Trump.
NNSA’s supply of materials, which are “highly specialized” with specific chemical and physical characteristics, are in low supply, the report says. Furthermore, the NNSA is lacking the knowledge base to produce the materials, as the recipes to make them were not well-documented, or the processes themselves infrequently practiced, the report notes.
Challenges in obtaining materials is not a new issue for the NNSA, the watchdog notes. The agency experienced a similar situation with a material known as “Fogbank,” and the GAO reported in March 2009 that the NNSA lacked the knowledge to manufacture the material — leaving the process for Fogbank “dormant for about 25 years."
Fogbank is used in the production of the W76-1, a warhead for the Navy’s Trident ballistic missile. Under the Trump administration’s plans for a new low-yield nuclear weapon, the U.S. is making a W76-2 variant, which entered production earlier this year.
The GAO notes that when the NNSA is actually able to replicate formulas for materials, procuring those materials has proved challenging, given the irregular and small order specifications to contractors.
But the GAO identifies aging infrastructure as the greatest risk to the NSSA.
“The NNSA 2019 Master Asset Plan states that 40 percent of the explosives infrastructure of NNSA’s sites is insufficient to meet mission needs, which can lead to contamination of explosive products or limit the use of facilities,” the report says. It notes that contamination has already occurred from rust falling off rafters and grass blowing through cracks in the walls, contaminating batches of explosives.
Aging facilities must receive updates to modern safety standards to protect employees, the GAO says. The Los Alamos High Explosives Chemistry Laboratory, for example, was built in the 1950s and has struggled to adopt to modern instrumentation, according to the report.
Facilities also deal with limited storage, the report says, meaning explosives can be stored in a single location where they could potentially cause a chemical reaction.
The report also cites NNSA documents that describe challenges in recruiting qualified staff, who often must have a security clearance. For example, Pantex, a contractor hired by the agency, in 2018 estimated it would need 211 full-time staff members. However, in November that year, it reported only 172 full-time employees. Officials with agency contractors told the GAO that the problem is largely due to the competitive industry; in particular, Pantex competes with oil and gas companies in Texas. The company has now expanded its recruitment efforts to include local colleges and universities, the report says.
In a written response to the report, the head of the NNSA, Lisa Gordon-Hagerty, said the “GAO’s observations and recommendations are consistent with [the Department of Energy]/NNSA’s recent efforts to centralize management of energetic material."
The Office of Safety, Infrastructure, and Operations previously identified many of the infrastructure data issues presented in the report and developed a series of actions aimed at improving the accuracy of asset data,” she wrote. “These efforts have already resulted in improved data quality, and the accuracy and consistency of data will continue to improve as additional actions are completed.”