安全保障法制改定法案に反対する会長声明
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安倍内閣は今月14日,自衛隊法,武力攻撃事態法,周辺事態法,国連平和維持活動協力法等を改正する「平和安全法制整備法案」及び他国軍の後方支援を随時可能とする恒久法を新設する「国際平和支援法案」(以下併せて「本法案」という。)を閣議決定し,翌15日,国会に提出した。 本法案は,昨年7月1日の閣議決定を受け,また本年4月27日の新たな日米防衛協力のための指針の合意に合わせて,自衛隊が,その活動範囲を大幅に拡大し,平時から緊急事態に至るまで,地理的限定なく世界のどこででも,切れ目なく,自らの武力の行使や,戦争を遂行する他国の支援,停戦処理活動等を広汎に行うことを可能とするもので,以下のとおり極めて重大かつ多岐にわたる問題点をはらんでいる。まず,わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これによりわが国の存立が脅かされ,国民の権利が根底から覆される明白な危険があるなどの要件を満たす事態を「存立危機事態」(武力攻撃事態法改正案2条4号)と称し,この場合に,自衛隊が地理的限定なく出動し,米国及び他国軍隊とともに武力を行使することを可能としている(自衛隊法改正案76条1項2号,88条1項)。これは憲法9条のもとで,歴代政府においても許されないとしてきた集団的自衛権の行使を容認するもので,同条に違反する。次に,わが国の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」(重要影響事態法案(周辺事態法改正案)1条)や,国際社会の平和と安全を脅かす「国際平和共同対処事態」(国際平和支援法案1条)において,自衛隊が,現に戦闘行為が行われている現場以外であればどこででも,米国に限らず戦争を遂行する他国軍隊に対し弾薬の提供等までも含む支援活動を行うことを可能としている。これは,これまで自衛隊の後方支援活動の内容を限定したり活動範囲を「後方地域」や「非戦闘地域」に限定したりすることで他国の武力行使との一体化を避けてきた歯止めをなくすものであり,憲法9条が禁止する海外での武力行使に道を開くものである。さらに,これまでの国連平和維持活動(PKO)のほかに,国連が統括しない有志連合等の「国際連携平和安全活動」(PKO協力法改正案3条2号)にまで自衛隊の業務範囲を拡大し,従来PKOにおいてその危険性ゆえに禁止されてきた安全確保業務や「駆け付け警護」を行うこと,及びそれに伴う任務遂行のための武器使用を認めている。しかし,この武器使用は,自己保存のための限度を超えて,相手の妨害を排除するためのものであり,自衛隊員を殺傷の現場にさらし,さらには戦闘行為から武力の行使に発展する道を開くものである。その危険性は,新たに自衛隊の任務として認められた在外邦人救出等の活動(自衛隊法改正案84条の3)についても同様である。これらに加え,本法案は,武力攻撃に至らない侵害への対処として,新たに他国軍隊の武器等の防護を自衛官の権限として認めている(自衛隊法改正案95条の2第1項)。これは,現場の判断により戦闘行為に発展しかねない危険性を飛躍的に増大させるものである。憲法は,前文で平和的生存権を宣言するとともに,9条で戦争を永久に放棄し,戦力は保持せず,交戦権も認めないとして,徹底した恒久平和主義を定めているが,以上のとおり,本法案はこれらに反し,自衛隊が海外で武力行使をする道を開き,平和国家としてのわが国の在り方を根本から変えるものである。また,立法により実質的な9条改正を行おうとするもので,立憲主義の基本理念に真っ向から反する。さらに,憲法の改正手続を踏むことなく実質的改憲をしようとするのであるから,国民主権の基本原理にも反する。よって,当会は,基本的人権の擁護を使命とする法律家の団体として,本法案に反対し,今後国会においてこれを成立させることのないよう強く訴えるものである。
2015年(平成27年)5月26日 山形県弁護士会 会 長 安孫子 英彦
憲法記念日にあたり集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明
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本日,日本国憲法が施行されてから満68年となる憲法記念日を迎えた。日本国憲法は,前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」,「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して,われらの安全と生存を保持しようと決意した」とし,平和的生存権を宣言するとともに,第9条において,戦争を永久に放棄し,戦力は保持せず,交戦権も認めないとする徹底した恒久平和主義を規定している。そして,これまで政府は,憲法第9条のもとでも日本を防衛するため必要最小限度の自衛権の行使は許されると解しながらも,「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を,自国が直接攻撃されていないにもかかわらず,実力をもって阻止する権利」である集団的自衛権については,必要最小限度の範囲を超えるものであって憲法上許されない旨表明し,この憲法解釈を30年以上にわたって一貫して維持してきた。本年8月には戦後70年を迎えるが,日本国民は,この恒久平和主義に基づく憲法のもとで,国際社会において戦争をしない平和国家としての地位を築くべく努めてきたのである。ところが,安倍内閣は,昨年7月,従来の憲法解釈を変更し,集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行い,これに基づく安保関連法案を今月中にも現在開会中の国会に提出する予定と伝えられている。しかし,集団的自衛権の行使容認は,自国が攻撃されていないにもかかわらず他国のために戦争することを可能とし,平和国家としての日本の国の在り方を根本から変えるものであり,恒久平和主義を基本原理とする憲法に明らかに違反する。また,日本国憲法には憲法改正の手続が規定されているにもかかわらず,このような憲法の基本原理の変更を憲法改正手続を経ずに行うことは,憲法を最高法規と定め(憲法第98条),国務大臣や国会議員に憲法尊重擁護義務(憲法第99条)を課して政府や国会を憲法による制約のもとに置こうとする立憲主義にも反し,到底許される行為ではない。よって,当会は,憲法記念日を迎えるにあたり,法律家の団体として,恒久平和主義を守り立憲主義を堅持する観点から,集団的自衛権の行使容認に反対する意思をあらためて表明するとともに,関係法律の改正等を行わないよう強く求めるものである。
2015年(平成27年)5月3日 山形県弁護士会 会長 安孫子 英彦
商品先物取引法における不招請勧誘禁止規制を緩和する省令の廃止を求める会長声明
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経済産業省及び農林水産省は,2015(平成27)年1月23日,商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令(以下「本省令」という。)を定めた。当会は,2014年(平成26年)4月5日付けで公表及び意見募集がなされた商品先物取引法施行規則に対し,同年5月1日付け会長声明において,これに反対する意見を表明してきた。ところが,本省令は当初の公表案を若干修正し,同規則第102条の2を改正して,ハイリスク取引の経験者に対する勧誘以外に,顧客が65歳未満で年収800万円以上又は2000万円以上の金融資産(現金,預貯金等)を有する者である場合に,顧客の理解度を確認するなどの要件を満たした場合を例外とする規定(本省令第102条の2第3号)を,不招請勧誘の禁止の例外として盛り込んだものである。しかし,上記の要件を満たすかどうかの顧客の適合性の確認自体が勧誘行為の一環としてなされるものであるから,本省令は,商品先物取引契約の締結を目的とする勧誘を不招請で行うことを許容するものというほかなく,実質的に不招請勧誘を解禁するものである。すなわち,本省令は,商品先物取引法第214条第9号の「委託者等の保護に欠け,又は取引の公正を害するおそれのない行為」に該当せず,法律の委任の範囲を逸脱した違法なものであり,省令によって,法律の規定を骨抜きにするものと言わざるを得ない。本省令は,透明かつ公正な市場を育成し委託者保護を図るべき監督官庁の立場と相容れないものである。さらに,委託者に年収や資産の確認の方法として申告書面を差し入れさせたり,書面による問題に回答させて理解度確認を行う等の手法は,いずれも,現在も多くの商品先物取引業者が事実上同様の手法を採っており,その中で業者が委託者を誘導して事実と異なる申告をさせたり,正答を教示するなどの不正行為が蔓延し,被害が生じていることからすると,これらの手法が委託者保護のために機能するものとは評価できない。そもそも,商品先物取引法における不招請勧誘を禁止する規定は,長年,同取引による深刻な被害が発生し,度重なる行為規制強化の下でもなおトラブルが解消しなかったため,与野党一致の下,2009年(平成21年)7月にようやく法改正が実現し2011年(平成23年)1月に施行されたばかりである。しかし,その後においても,個人顧客に対し,金の現物取引やスマートCX取引(損失限定取引)を勧誘して接点を持っておき,すぐさま通常の商品先物取引を勧誘し,多額の損失を与える被害が少なからず発生している実情がある。本省令はかかる立法経緯及び被害実態を軽視し,商品先物取引の不招請勧誘を事実上解禁するものであり,消費者保護の観点から許容できず,当会はこれに強く抗議し,本省令を直ちに廃止することを求める。
2015年(平成27) 3月30日 山形県弁護士会会長峯田 典明
集団的自衛権の行使容認に反対する決議
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2014(平成26)年7月1日,安倍内閣は,従来の憲法解釈を変更し,集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行った。日本国憲法は,第二次世界大戦の反省から,前文で平和的生存権を宣言するとともに,第9条において,戦争を永久に放棄し,戦力は保持せず,交戦権を否認し,恒久平和主義に基づく平和国家の建設を目指してきた。そして,これまで政府は,憲法第9条のもとでも日本を防衛するため必要最小限度の自衛権の行使は許されると解しながらも,「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を,自国が直接攻撃されていないにもかかわらず,実力をもって阻止する権利」である集団的自衛権については,必要最小限度の範囲を超えるものであって憲法上許されない旨表明し,この憲法解釈を30年以上にわたって一貫して維持してきた。ところが,安倍内閣は,「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず,我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これにより我が国の存立が脅かされ,国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において,これを排除し,我が国の存立を全うし,国民を守るために他に適当な手段がないときに,必要最小限度の実力を行使すること」は,憲法上許容されるとの閣議決定を行った。これは,従来政府が許されないとしてきた集団的自衛権の行使を容認するもので,自国が直接攻撃されていないにもかかわらず他国のために戦争することを可能とし,平和国家としての日本の国の在り方を根本から変えることになり,恒久平和主義を基本原理とする憲法に明らかに違反する。また,日本国憲法には憲法改正の手続が規定されているにもかかわらず,このような憲法の基本原理に関わる重大な解釈の変更を憲法改正手続を経ずに行うことは,憲法を最高法規と定め(憲法第98条),国務大臣や国会議員に憲法尊重擁護義務(憲法第99条)を課して政府や国会を憲法による制約の下に置こうとする立憲主義にも反し,到底許される行為ではない。政府は,本年の通常国会に,閣議決定を踏まえた関連法案を提出する予定と伝えられているが,当会は,恒久平和主義を守り,立憲主義を堅持する観点から,安倍内閣が憲法解釈を変更し集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行ったことにあらためて抗議し,その撤回を求めるとともに,今後の関係法律の改正等に反対し,これを行わないよう強く求めるものである。 以上のとおり決議する。
平成27年2月27日 山形県弁護士会
山形県弁護士会
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「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明
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第1 はじめに
国際観光産業振興議員連盟(通称「IR議連」)に属する有志の国会議員によって,「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」,以下「本法案」という。)が,昨年の臨時国会に提出された。本年の通常国会では継続審議となり,IR議連は,今臨時国会での成立を目指している状況にある。
第2 法案の概要
本法案は,刑法第185条及び第186条で処罰の対象とされている「賭博」に該当するカジノについて,一定の条件の下に設置を認めるために必要な措置を講じるとするものである。しかし,本法案には,以下に述べるような多くの問題点があり,国会においても,与野党を問わず慎重な意見が根強く存する。
第3 本法案の問題点
1. 暴力団対策,マネー・ローンダリング対策上の問題
暴力団排除条例の全都道府県での施行等によって,暴力団の資金源は逼迫しつつある。そこで,暴力団が,資金獲得のため,カジノへの関与に強い意欲を持つことは容易に想定される。 例えば,カジノ利用者をターゲットとしたヤミ金融,カジノ利用を制限された者を対象とした闇カジノの運営,VIP顧客送客に伴う紹介料徴収等,カジノ事業周辺領域での活動に参入し,資金を獲得する可能性がある。暴力団が関与することで,襲撃やけん銃発砲等の威力が行使され,カジノの従業員や利用客に被害が及ぶ危険性もある。カジノの健全な運営を確保するためには,カジノ入場者からの暴力団排除も不可避であるが,暴力団の潜在化傾向に鑑みれば,入口でどこまでチェックできるのか疑問も残る。また,我が国も加盟している,マネー・ローンダリング対策・テロ資金供与対策の政府間会合であるFATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)の勧告において,カジノ事業者はマネー・ローンダリングに利用されるおそれの高い非金融業者として指定されている。仮に,カジノ事業者に対し,「犯罪による収益の移転の防止に関する法律」に基づく取引時確認,記録の作成・保存,疑わしい取引の届出を求めたとしても,マネー・ローンダリングを完全に防ぐことができるとは考えられない。
2.多重債務者・ギャンブル依存症の増大
カジノ解禁により予想される弊害の中でも,多重債務者・ギャンブル依存症の増大は特に深刻である。2010年(平成22年)6月の改正貸金業法の完全施行及び近時の政府等による多重債務者対策の拡充により,近年多重債務者は激減し,その結果として破産等の経済的に破綻する者や,経済的理由で自殺する者も大きく減少した(平成26年版自殺対策白書)。 しかし,カジノが解禁されれば,賭け金を捻出するために前述したヤミ金融から借入をするなど,経済的に破綻する者が増えることは容易に想像でき,多重債務問題の再燃が大きく懸念されるところである。経済的に破綻する者が増加すれば,経済的理由による自殺者や犯罪の増加など,本人のみならず,その家族・友人・無関係の第三者にも深刻な影響を及ぼすことからすると,社会に及ぼす損失は非常に大きい。また,日本には,既にパチンコ・競馬・競輪・競艇などのギャンブルが存在し,本年8月20日に発表された厚生労働省研究班の調査によれば,日本国内でギャンブル依存症の疑いがある者は,男性8.7%,女性1.8%とされ(推定536万人),諸外国が1%前後に過ぎない中で,有症率は世界的にみても極めて高い。この調査結果からしても,日本において,ギャンブル依存症が深刻な社会問題であることは明らかであ る。その一方で,現在の日本では,治療施設や相談機関の設置,社会的認知への取組みなど,ギャンブル依存症に対する治療体制や予防施策が不十分な状況である。以上のような 状況下でカジノを解禁した場合,ギャンブル依存症のさらなる拡大を招くおそれが極めて大きい 。
3.青少年の健全育成への悪影響
本法案で想定されているカジノ施設は,宿泊施設や飲食施設,物品販売施設,エンターテイメント施設等と一体となって設置され複合的観光施設とされ,「統合型リゾート(IR)」と呼ばれるものである。IRでは,様々な施設がカジノと一体となっており,カジノそのものに青少年が入場することができないとしても,青少年が家族や友人と一緒に出かける先にカジノが存在するという環境になる。こうした環境では,青少年の賭博に対する抵抗感が喪失してしまうおそれがあり,青少年の健全育成という観点からも大きな問題がある。
4.経済効果への疑問
本法案の立法目的には,経済の活性化が掲げられている。しかし,経済効果については,プラス面のみが喧伝され,マイナス面の客観的な検証はほとんどなされていない。暴力団対策,マネー・ローンダリング対策,多重債務者やギャンブル依存症患者の救済などに要する社会的コストの発生も考慮すると,これを上回る経済効果が発生するかは甚だ疑問である。実際,韓国,米国等では,カジノ設置自治体において,人口が減少したり,多額の損失を被ったという調査結果も存在する。仮に経済効果があったとしても,それにより地域経済がカジノ依存体質に陥れば,弊害を押さえ込むためにカジノ規制が必要となった場合でも,自治体財政を脅かす行為として忌避されてしまいかねない。
第4 結語
以上のとおり,本法案には,多くの問題点があり,防止及び排除の具体策が何ら示されていないばかりか,それらの問題点の中には,一旦カジノが解禁されてしまえば防止及び排除が極めて困難なものも存する。したがって,現在刑法上禁止されているカジノを合法化するような正当な理由はなく,本法案を容認することはできない。IR議連は,与野党を問わず慎重な意見が根強く存することを踏まえ,日本人の利用に資格要件を設ける規定を盛り込む修正を行う方向である旨が報道されているが,仮にそのような限定を付したとしても,多重債務者・ギャンブル依存症の増大を含め,上記の問題点が払拭されるわけではない。よって,当会としては,本法案に強く反対し,その廃案を求める。
2014年(平成26年) 11月4日 山形県弁護士会 会長 峯田 典明
集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明
ttp://www.yamaben.or.jp/html/semei_ketsugi/s020.html
今月1日,安倍内閣は,集団的自衛権に関する従来の憲法解釈を変更し,集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行った。日本国憲法は,第二次世界大戦の反省から,前文で平和的生存権を宣言するとともに,第9条において,戦争を永久に放棄し,戦力は保持せず,交戦権を否認し,恒久平和主義に基づく平和国家の建設を目指してきた。そして,これまで政府は,憲法第9条のもとでも日本を防衛するため必要最小限度の自衛権の行使は許されると解しながらも,「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を,自国が直接攻撃されていないにもかかわらず,実力をもって阻止する権利」である集団的自衛権については,必要最小限度の範囲を超えるものであって憲法上許されない旨表明し,この憲法解釈を30年以上にわたって一貫して維持してきた。ところが,安倍内閣は,「わが国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず,わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これによりわが国の存立が脅かされ,国民の生命,自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において,これを排除し,わが国の存立を全うし,国民を守るために他に適当な手段がないときに,必要最小限度の実力を行使すること」は,憲法上許容されるとの閣議決定を行った。行使の要件を限定しているとはいえ,その文言は極めて幅の広い不確定概念であり,恣意的な解釈がされる危険性が極めて大きい。この集団的自衛権の行使容認は,自国が直接攻撃されていないにもかかわらず他国のために戦争することを可能とし,戦争をしない平和国家としての日本の国の在り方を根本から変えるもので,恒久平和主義を基本原理とする憲法に明らかに違反する。また,このような憲法の基本原理に関わる重大な解釈の変更を憲法改正手続を経ず,また,国会での議論に先立って時の政府の判断で行うことは,憲法を最高法規と定め,国務大臣や国会議員に憲法尊重擁護義務を課して,政府や国会を憲法による制約の下に置こうとする立憲主義にも反し,到底許される行為ではない。よって,当会は,恒久平和主義を守り,立憲主義を堅持する観点から,安倍内閣が憲法解釈を変更し集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行ったことに強く抗議し,その撤回を求めるとともに,今後の関係法律の改正等が許されないことを明らかにし,反対するものである。
2014年(平成26年)7月8日山形県弁護士会 会長 峯田 典明