こめびつわさび茨城県弁護士会②
茨城県弁護士会のサイトに、2009年から2017年にまで、67の声明・決議が掲載されています。そのうち、朝鮮学校補助金要求を直接取り上げているのが2016年、2017年の2件です。しかし、上記2件を含め、7件が外国人のために日本の社会保障を奪いとろうと目論んだ声明と思われるので、まとめて投稿いたします。まず、7件について声明の発出日・題目・発出者名を列挙し、後に各声明・決議文を記します。
2017年(平成29年)5月18日 茨城県による茨城朝鮮初中高級学校への補助金打切りに抗議し茨城朝鮮初中高級学校への補助金の交付再開を求める会長声明 阿久津正晴
2016年(平成28年)9月28日 朝鮮学校に対する補助金交付に関して,政府通知の撤回及び適正な補助金交付を求める会長声明 山形学
2017年(平成29年)5月18日 東日本入国管理センターにおける被収容者の死亡事件に関する会長声明 阿久津正晴
2015年(平成27年)8月4日 「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」における罰則の強化等に反対する会長声明 木島千華夫
2014(平成26年)12月22日 東京入国管理局における被収容者死亡事件に関する会長声明 リンク削除
2014(平成26年)4月24日 入管施設収容中の外国人の相次ぐ死亡に関する会長声明 後藤直樹
2012(平成24年)12月19日 生活保護基準引下げに反対する会長声明 安江祐
茨城県による茨城朝鮮初中高級学校への補助金打切りに抗議し茨城朝鮮初中高級学校への補助金の交付再開を求める会長声明2017年(平成29年)5月18日
ttp://www.ibaben.or.jp/wp-content/uploads/2017/05/5eade06afa0ba5db4678288dce9aa4a7.rtf
茨城県による茨城朝鮮初中高級学校への補助金打ち切りに抗議し,茨城朝鮮初中高級学校への補助金の交付再開を求める会長声明
橋本昌茨城県知事は,平成29年2月20日の定例記者会見で茨城朝鮮初中高級学校への平成28年度の補助金の交付を執行せず,同29年度の予算に計上しないことを発表した。そして,実際に,今年度の予算には,同校への補助金は計上されていない。
当会は,平成28年9月28日付で「朝鮮学校に対する補助金交付に関して,政府通知の撤回及び適正な補助金交付を求める会長声明」を発表し,朝鮮学校への補助金交付にあたっては,教育上の観点から客観的に判断されなければならず,外交上の理由で補助金を停止することは,子どもの教育を受ける権利や民族教育を受ける権利を侵害し,不当な差別に該当するものであることを指摘した。
前述の本年2月20日の会見において,橋本知事は,「基本的には,文部科学省から通知が来ているし,相変わらず我が国の安全を脅かすような行為が続いている。それが一番の要因です。」と発言しており,茨城県が朝鮮学校への補助金の交付を停止したのは,朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との外交上の理由によることを明らかにしているものといえる。
朝鮮学校は,学校教育法第134条第1項で規定された「各種学校」であるが,補助金交付を停止すること,とりわけ朝鮮学校のみを他の「各種学校」と区別して,外交上の理由で補助金の交付を停止することは,朝鮮学校に通う生徒たちの教育を受ける権利,民族教育を受ける権利を不当に侵害し,朝鮮学校に通う生徒のみを不当に差別するものである。
また,茨城朝鮮初中高級学校には,韓国籍の生徒も在籍している。茨城県が同校に対して補助金交付を停止したのは,単に「朝鮮学校」であることを理由とするものであって,補助金交付を停止するにあたって,教育上の観点から十分な検討がなされていないことが明らかであるといえる。
さらに,茨城県が外交上の理由で茨城朝鮮初中高級学校のみに対して補助金の交付を停止することは,差別意識を醸成し,助長することにもなりかねない。
当会は,茨城県に対し,茨城朝鮮初中高級学校への補助金の交付を早急に再開することを強く求めるものである。
平成29年5月18日
茨城県弁護士会 会長 阿久津 正晴
■朝鮮学校に対する補助金交付に関して,政府通知の撤回及び適正な補助金交付を求める会長声明 2016年(平成28年)9月28日
ttp://www.ibaben.or.jp/wp-content/uploads/2014/09/2c83317b132a34f6edb6e3d524c14a80.pdf
声明の趣旨
当会は,文部科学省に対し,2016(平成28)年3月29日に同省が発出した「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について(通知)」の速やかな撤回を求めると共に,各地方公共団体に対し,朝鮮学校に対する適正な補助金交付がなされるよう求める。
声明の理由
1 文部科学省は,本年3月29日,朝鮮学校を各種学校として認可している28都道府県に対し,「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について(通知)」を発出した(以下「本件通知」という。)。
本件通知は,「北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総聯が,その教育を重要視し,教育内容,人事及び財政に影響を及ぼしている」という政府の認識を明確に示した上で,朝鮮学校を各種学校として認可している28都道府県に対し,補助金交付に関し,「朝鮮学校の運営に係る上記のような特性も考慮」することを求めているものである。
本来,補助金交付は,各地方公共団体の判断と責任において行われるものであるにもかかわらず,政府がこのような通知を発出することは,政府が外交上の理由から朝鮮学校に対する補助金交付の中止を促している趣旨であると受け止めざるを得ないものである。
現に,報道によれば,茨城県知事は本年4月8日の定例記者会見において,「文部科学省に,通知の主旨をしっかり確認しながら対応をしていきたいと思っております。」と述べつつも,「相手方(学校法人茨城朝鮮学園)には,今のような状況が続くようであれば,今年度の補助金については,交付することは大変困難なのではないかということをお伝えしてあります。」と述べ,「今のような状況」とは,「弾道ミサイルを発射したりとか,そういった活発な活動が行われておりますので,そういった状況が続いているようであればということです。」と述べている。
このように,一部地方公共団体では,本件通知を受けて,外交上の理由から朝鮮学校に対する補助金の交付について停止の方向で検討を余儀なくされているものである。
2 そもそも,朝鮮学校に対する補助金交付は,子どもの教育を受ける権利や民族教育を受ける権利を実質的に保障するために行われている措置であって,補助金交付にあたっては,教育上の観点から客観的に判断されなければならない。
それにも関わらず,北朝鮮のミサイル発射等の外交上の理由で,朝鮮学校に対して補助金交付を停止することは,子どもの教育を受ける権利や民族教育を受ける権利を侵害するものであって,憲法26条,子どもの権利に関する条約第30条,経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)第13条,あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する条約(人種差別撤廃条約)に違反するものである。
また,朝鮮学校に在籍する生徒とは無関係な外交問題を理由として朝鮮学校への補助金を停止することは,憲法第14条,市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約),経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約),あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する条約(人種差別撤廃条約)及び子どもの権利条約が禁止する不当な差別に該当するものである。
3 とりわけ,朝鮮学校に対しては,昨今,ヘイトスピーチをはじめとする人種差別的攻撃が多数加えられており,深刻な事態が生じている。
かかる状況において,政府が本件通知を発出することは,朝鮮学校に対する人種差別を助長することにもなりかねない。
本年6月3日に公布・施行された「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」では,不当な差別的言動が許されないものであることを明らかにし,国が差別的言動の解消のための取組に関する施策を実施する責務が規定されているのであって(同法第4条1項),政府が本件通知を発出することは,同条1項にも明確に矛盾するものである。
4 当会は,以上の理由から,文部科学省に対しては,本件通知の速やかな撤回を求めるとともに,都道府県及び市町村を含む各地方公共団体に対しては,朝鮮学校に対する補助金の支出について,上記の憲法及び各種人権条約の趣旨を踏まえ,適正な交付がなされるよう求めるものである。
2016(平成28)年9月28日 茨城県弁護士会 会長 山形 学
■東日本入国管理センターにおける被収容者の死亡事件に関する会長声明2017年(平成29年)5月18日
ttp://www.ibaben.or.jp/wp-content/uploads/2017/05/e16c564d4318b8621b4be4b7cf7c1224.rtf
1 平成29年3月25日,東日本入国管理センター(茨城県牛久市)に収容中のベトナム人男性がくも膜下出血により死亡するという事件が発生した。
報道によれば,男性は,同年3月半ばに同センターに入所後,数日してから頭や背中などに痛みを訴え,センター内で医師の診察を受け,痛み止めを処方されたものの,外部医療機関での診察を受けることなく,同月25日午前1時ころ,意識不明の状態で見つかり,搬送先の病院で死亡が確認されたとのことである。
2 被収容者が人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重され取り扱われるべきことは,自由権規約10条1項で保障されており,国連の被拘禁者処遇最低基準規則において,被拘禁者に対する医療の提供は国家の責任であり,必要な医療を受けさせなければならないことが規定されている。
また,法務省令である被収容者処遇規則30条1項においても,「所長等は,被収容者がり病し,又は負傷したときは,医師の診療を受けさせ,病状により適当な措置を講じなければならない」と規定しており,入国者収容所長は,被収容者に適正な医師の診察を受けさせ,被収容者の心身の健康を保たせる法的責務を負うものである。
しかるに,同センターにおける医療体制は,繰り返し問題点を指摘されており,法務省入国者収容所等視察委員会も,平成25年4月30日に,「診療の申出から診療を受けるまでの期間を短縮し,迅速な診療ができるよう改善願いたい。」,「常勤医師を確保するように努めるとともに,多様な診療に対応できるように地域の医療機関との緊密な連携をいっそう深めるべく引き続き検討し,改善願いたい。」などといった意見を述べている。
同センターでは,平成26年3月28日,同月30日に,被収容者の死亡事件が発生しており,その際,当会では,法務省入国管理局及び東日本入国管理センターに対し,同死亡事件について,その真相を究明すべく,第三者による調査委員会を設置した上で,詳細な調査及びその結果の公表を求め,少なくとも東日本入国管理センターに24時間体制で常勤医師を配置するよう求めるとともに,本件事故のような悲劇が二度と起こらないよう,医療体制を抜本的に見直すことを強く求めた(平成26年4月24日付け会長声明)。
それにもかかわらず,本件死亡事件発生当時,同センターには常勤の医師はおらず,平日の午後1時から午後5時まで非常勤医が診察を行っているのみであり,亡くなった男性が数日間にわたって痛みを訴え続けていたにもかかわらず,同センターは外部の医療機関を受診させることもしていないのである。
再びこのような事件が発生したことは誠に遺憾であり,医療体制に対する問題点を繰り返し指摘されていながら,同センターにおいて十分な改善がなされていない現状に対して,抗議の意を示すものである。
3 よって,当会は,法務省入国管理局及び東日本入国管理センターに対し,これ以上尊い命が失われることがないよう,まずは今回の事件について第三者機関による詳細な調査を実施して原因解明を行い,その調査結果を公表することを求める。また,職員の意識改革をはじめ,24時間体制の常勤医師の配置,外部医療機関への迅速な受診体制の整備といった医療体制の抜本的改革を含む,実効性のある再発防止の策を速やかに講じることを求める。
平成29年5月18日
茨城県弁護士会 会長 阿久津 正晴
■「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」における罰則の強化等に反対する会長声明2015年(平成27年)8月4日
ttp://www.ibaben.or.jp/wp-content/uploads/2015/08/20150805_2.pdf
第1 声明の趣旨
当会は,政府が2015年3月6日に提出した出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)の一部を改正する法律案(以下「本改正案」という。)に対し,以下のとおり反対する。
1 罰則の新設・強化について
「偽りその他不正の手段により」上陸許可や在留資格変更許可等を受けた場合に「3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金」等を科する規定,及び営利目的で上記行為の「実行を容易にした者」に「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」等を科する規定を新設することについて反対する。
2 在留資格取消事由の拡大について
在留資格取消の対象について,所定の活動を継続して3か月以上行わないで在留している場合(現行法)に加え,所定の活動を行わず,「他の活動を行い又は行おうとして在留している」場合も在留資格取消事由とすることについて反対する。
第2 声明の理由
1 罰則の新設・強化について
(1)立法事実の不存在
本改正案にかかる立法の背景について,政府は,2014年12月10日に閣議決定した『「世界一安全な日本」創造戦略』が,「不法滞在対策,偽装滞在対策等の推進」を掲げ,不法滞在者及び偽装滞在者の積極的な摘発など取締りを強化するとしていることを挙げる。
しかし,政府統計によれば,不法残留者数は,1993年の29万人強に比し,2015年1月には約6万人と,この20年間強でおよそ5分の1までに減少している。また,2014年末時点での中長期の外国人在留者は176万人強であるのに対し,上陸と在留関係手続での不正行為を理由に在留資格を取り消された者の数は,2014年の1年間で200名弱である。
これらの事実に鑑みれば,不法滞在者及び偽装滞在者の積極的な取締りを強化し厳罰化を図る必要性は見出せず,本改正案について立法事実が存在しない。
(2)濫用の可能性
本改正案に定める「偽りその他不正の手段により」との要件は不明確であり,申請書等の記載事項の真実性が証明できなかった場合にも処罰の対象となる等,濫用的な告発によって処罰の対象者が不当に拡大するおそれがある。
すなわち,入国在留関係手続の記載事項の裏付け調査は困難な場合があり,勤務内容の専門性や内縁関係などの生活事実のように評価を含んだ事実を記載した場合,判断者により真実性の判断が異なるおそれがある。そのため,濫用的な告発により,申請者本人だけでなく,親族や雇用主,申請代理・取次を行う弁護士や行政書士,その他多数の関係当事者に対しても「共犯」として捜査及び訴追が及ぶおそれがある。
また,申請行為を代理する弁護士等の調査能力にも限界があるところ,記載事項に事実と違う記載があった場合に,「営利の目的」で「実行を容易にした」とされ,未必の故意があるとして訴追される危険性がある。このことは,弁護士等の職務行為に対する不当な介入を招くおそれが大きい。
(3)難民認定申請を萎縮させる危険性
本邦へ入国する難民申請者は,観光や親族訪問等の上陸目的を入国審査官に告げて,「短期滞在」等の在留資格を一時的に取得し,その後に難民認定申請をする場合が多い。迫害を逃れてきた者がまず安全な場所を得ようとするこのような行動は,一概に非難することはできないが,本改正案によれば,かかる場合にも「偽りその他不正の手段により」上陸許可を得たとして処罰の対象となるおそれがある。
本改正案によれば,このような場合であっても難民に該当すること等の証明があった場合には刑が免除されるとしているが,その証明に失敗すれば処罰の対象となることになる。この点に関連して,本邦における難民認定者数は極めて僅少であることに鑑みれば,難民認定申請をすることが結果として処罰を受ける危険性を増大させることとなり,申請に対する不当な萎縮効果を与えるおそれがある。さらに,難民該当性は否定されたが,国際条約や人道的理由に基づいて在留が許可されるいわゆる「補完的保護」を受ける者も処罰の対象となり,明らかに不合理である。
2 在留資格取消事由の拡大について
本改正案は,入管法「別表第一」の就労等の在留資格を有する外国人の在留資格取消事由につき,活動を継続して3か月以上行わないで在留している場合(現行法)に加え,所定の活動を行わず,「他の活動を行い又は行おうとして在留している」場合も在留資格取消事由とする。
本改正案によれば,例えば,就労等の在留資格を有する者が,退職等によって所定の活動を行わなくなったとされた場合は,新たな勤務先を探す暇もなく在留資格取消の対象となり得ることとなり,明らかに不合理である。
また,他の活動を「行おうとしている」という要件は極めて不明確であり,入国当局の恣意的な判断によって在留資格取消の対象となり得る。
そもそも,在留資格が予定する活動を行わない者に対しては,在留期間更新許否の審査や現行規定に基づく在留資格取消制度の適切な運用によって十分対応が可能であり,本改正案のような在留資格取消事由の拡大の必要性はない。
3 結論
以上の理由より,当会は本改正案に対して反対する。
平成27年8月4日
茨城県弁護士会 会長 木島 千華夫
■東京入国管理局における被収容者死亡事件に関する会長声明2014(平成26年)12月22日
ttp://www.ibaben.or.jp/wp-content/uploads/2014/09/20141222.pdf
※リンク先は茨城県弁護士会トップページになり、声明を読むことができません。
■入管施設収容中の外国人の相次ぐ死亡に関する会長声明2014(平成26年)4月24日
ttp://www.ibaben.or.jp/wp-content/uploads/2014/09/20140425.pdf
※「入国者収容所」という名称に違和感がありますがこれが法務省の正式名なのでしょうね。
1 東日本入国管理センターは,①平成26年3月28日午後7時50分ころ,30歳代のイラン人男性の被収容者が,食事中に食物を喉に詰まらせ,意識不明になったため,救急車の出動を要請したが,同男性が翌29日に病院にて死亡した,②平成26年3月30日午前7時ころ,40歳代のカメルーン人男性の被収容者が呼びかけに応じず,意識及び呼吸がない様子であったことから,救急車の出動を要請したが,同男性が同日中に病院にて死亡した,と発表した。
これら2件の死亡事件(以下「本件死亡事件」という。)は,東京新聞平成26年4月6日朝刊をはじめ,新聞各紙等でも報道されており,国内外から,2名の被収容者が連日亡くなったことが異常事態であると認識され,強い関心の目が向けられている。
2 東日本入国管理センターでは,現在,約300人もの外国人が収容されており,その収容期間は時に1年以上,長い者では2年を超えていることもある。
閉鎖的空間での収容生活は,被収容者の心身に多大なる負担を強いるものであることから,収容施設は,当然に,被収容者の生命身体(精神状態も含む)に対して適正な安全配慮を行う責務を負う。
被収容者処遇規則30条1項は,「所長等は,被収容者がり病し,又は負傷したときは,医師の診療を受けさせ,病状により適当な措置を講じなければならない」と規定しており,入国者収容所長は,被収容者に適正な医師の診察を受けさせ,被収容者の心身の健康を保たせる法的責務を負う
ものである。
同センターでは,これまでも,被収容者の自殺や,処遇改善を求める被収容者による大規模なハンガーストライキなどが発生しており,収容環境および処遇について問題点が指摘されてきた。
とりわけ,同センターにおける医療体制は,繰り返し問題点を指摘されており,法務省入国者収容所等視察委員会も,平成25年4月30日に,「診療の申出から診療を受けるまでの期間を短縮し,迅速な診療ができるよう改善願いたい。」,「被収容者と医師等との間のコミュニケーションの改善を図るために,多言語での医療問診の支援が可能な翻訳システムの導入などを検討し,被収容者の申出に対応できるように努められたい。」,「常勤医師を確保するように努めるとともに,多様な診療に対応できるように地域の医療機関との緊密な連携をいっそう深めるべく引き続き検討し,改善願いたい。」などといった意見を述べている。
3 現在,同センターには常勤の医師はいない。平日の午後1時から午後5時まで非常勤医が診察を行っているのみである。
被収容者の生命身体の安全について,一刻を争う緊急事態が発生した場合,医師が,医学的な専門的知見をもって対応しなければならないことは当然である。
300人もの外国人が収容されている施設において,限られた診療時間,限られた診療科では,被収容者の重篤な病態を看過しかねない。
そもそも外国人に対する生命身体の安全配慮を適正に行うことは,日本国の文化レベルを示す指標ともなるというべきであり,入国管理センターは,世界に恥じない施設であるべきである。
二度と本件事件のような悲劇を起こさないために,まずは,本件死亡事件が発生した背景,2名の方が亡くなった経緯について,原因解明を行うことが必要不可欠である。
それに加えて,これまで繰り返し問題点が指摘されているとおり,早急に同センターの医療体制を抜本的に見直し,改善する必要がある。
4 そこで,当会では,法務省入国管理局及び東日本入国管理センターに対し,本件死亡事件について,その真相を究明すべく,第三者による調査委員会を設置した上で,詳細な調査を求め,その結果の公表を求める。
また,少なくても東日本入国管理センターに24時間体制で常勤医師を配置するよう求めるとともに,本件事故のような悲劇が二度と起こらないよう,医療体制を抜本的に見直すことを強く求める。
平成26年4月24日
茨城県弁護士会 会長 後藤 直樹
■生活保護基準引下げに反対する会長声明2012(平成24年)12月19日
ttp://www.ibaben.or.jp/wp-content/uploads/2014/09/20121227.pdf
1 本年(平成24年)8月10日,社会保障制度改革推進法が成立し,その附則において,「給付水準の適正化」を含む生活保護制度の見直しが明文で定められ,同月17日に閣議決定された「平成25年度予算の概算要求組替え基準について」では,「特に財政に大きな負担となっている社会保障分野についても,これを聖域視することなく,生活保護の見直しをはじめとして,最大限の効率化を図る。」「生活保護の見直しをはじめとして合理化・効率化に最大限取り組み,その結果を平成25年度予算に反映させるなど極力圧縮に努める」とされている。
そして,厚生労働省は,本年10月5日,生活保護の保護基準の妥当性を検証する社会保障審議会生活保護基準部会に対し,「第1十分位層」(全世帯を所得の順に並べた場合の下位10%の階層)の消費水準と現行の生活扶助基準額とを比較すべきであるとの見解を示した。
また,財務省主計局は,本年10月22日,財政制度等審議会財政制度分科会に対し,現行の生活扶助基準額との比較対象を「第1五十分位」(全世帯を所得の順に並べた場合の下位2%の階層)の消費水準とすることや医療費抑制のために医療費の一部自己負担を導入することなど,上記の厚生労働省案よりも厳しい生活保護基準引下げに向けた提案を行った。
さらに,本年11月8日の内閣府行政刷新会議では,生活保護制度が「新仕分け」の対象とされ,同月17日の「新仕分け」において,生活費などの現行保護額については,低所得者の生活水準などを考慮しながら「(受給者の)就労意欲をそがない水準にすべきだ」と指摘し,医療費についても,後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用を原則義務化するよう提言した。
したがって,このような一連の経過からすれば,政府が,平成25年度予算編成において,財政事情を理由に,生活保護基準の引き下げに向けた動きをとることは必至の情勢にある。
2 しかしながら,生活保護基準は,憲法が保障する生存権の水準を決する極めて重要な基準である。
現在の生活保護基準でさえ充分な水準と言えない中で,生活保護受給者の多くは,生活費をぎりぎりまで切り詰めるなどして余裕のない生活を送ることを余儀なくされている。このような中で,現在の生活保護基準が引き下げられるようなことになれば,生活保護受給者の生活はさらに苦境に追い込まれ,憲法が定める「健康で文化的な最低限度の生活」の保障は一層危ういものとなる。
さらに,わが国の生活保護捕捉率(制度の利用資格のある者のうち,現に利用できている者が占める割合)は,平成22年4月9日付けの厚生労働省発表によれば,所得のみを考慮した場合が15.3%で,資産を考慮した場合でも32.1%と推計されており,生活保護基準以下の低所得であるにも関わらず,生活保護を受給していない多くの人たちが存在することがわかり,これが,餓死,孤独死と決して無関係ではないという事実も忘れてはならない。
3 また,生活保護基準の引き下げは,生活保護受給者ばかりでなく,市民全体にも大きな影響を及ぼすものでもある。地方税の非課税基準,介護保険の保険料・利用料や障害者自立支援法による利用料の減額基準,就学援助の給付対象基準,さらには法律扶助の償還の猶予・免除の要件など,生活保護基準は,税制,福祉,教育など多様な分野の適用基準にも連動している。よって,その引下げは,市民全体,特に低所得者層の負担増につながり,結局はその者たちの生活レベルを低下させることにつながる。
4 茨城県においても,被保護世帯数は,平成4年度以降増加傾向にあり,特に平成21年度からは伸び率が増加している。茨城県内の被保護世帯数及び被保護人員は,平成23年10月が18,215世帯,24,452人であったのに対し,本年10月は,速報値であるが,19,210世帯,25,743人となっている。保護率に関しても,人口1000人あたりの比でみると,8.7人となる。
また,当会でも,本年11月28日に全国一斉生活保護ホットラインを実施し,生活保護に関して電話による無料相談を受け付けたが,その実施結果を見ると,相談件数のうち,その3分の2以上が未受給者からのもので,生活保護を受けられるかどうかといった不安の訴えや,福祉事務所の対応に対する不満の声が聞かれたのが特徴的であった。
したがって,このような状況の中,生活保護基準の引下げがなされれば,市民生活に深刻な影響が及ぶことは明らかである。
5 他方,生活保護基準引下げの動きの背景には,生活保護受給者数の増加があると言われている。しかし,そうなった原因は,長引く不況の中での貧困の深刻化や高齢化社会の進行,不充分な社会保障制度など,日本の社会構造にこそ問題があるからであり,これらの問題の解決に向けた方策を練ることもなく,生活保護基準の引下げを図るのは,あまりにも拙速な議論と言わなければならない。
また,生活保護の不正受給が増加しているとの見方もある。しかし,金額ベースで見る限り,それが近年目立って増加しているという事実はないし,ましてや,不正受給があるからといって,国民の生存権保障につながる生活保護基準を引下げていいということにはならない。
6 よって,当会は,生活保護基準の引下げに強く反対するものである。
2012年(平成24年)12月19日 茨城県弁護士会 会長 安江祐