「憲法改正国民投票法案」に反対する決議
ttp://akiben.jp/statement/2006/09/post-46.html
2006年9月12日 公開
本年5月26日,政府与党と民主党は,それぞれ憲法改正手続きのための国民投票法案,いわゆる「憲法改正国民投票法案」を衆議院に提出した(以下,それぞれ「与党案」「民主党案」という)。憲法改正国民投票は,主権者である国民が,国の最高法規である憲法のあり方について意思を表明するというもので,主権者の基本的な権利行使にかかわる国政上の重大問題であるから,あくまでも国民主権及び基本的人権の保障の原理に立脚して定められなければならない。とりわけ,国民投票にあたっては,何よりも投票者各人が自由かつ適切に意思形成できるため,公正・公平で十分な情報提供がなされ,広く国民的議論が不当な干渉なしに自由になされることが必要である。そのためには,国民投票に関する運動は自由でなければならないし,表現の自由が最大限保障されなければならない。また、憲法改正案やそれに対する賛成・反対の意見についての周知・広報が公正・公平になされ、情報が国民に十分伝わるようにされなければならない。更に、国民投票の投票結果に国民の意思が正確に反映される方法が採用されなければならない。しかしながら,与党案は,①裁判官等特定公務員等の運動の全面禁止,②公務員の地位利用による運動の制限,③教育者の地位利用による運動の制限等,国民投票運動について罰則付きの禁止制限規定を定め,さらに組織的多数人買収及び利害誘導罪等の罰則を設けている。かような禁止制限規定や罰則は,主権者の基本的な権利行使である国民投票運動の自由の制限としては広範に過ぎるし,構成要件が不明確なため,国民投票運動に甚だしい萎縮効果をもたらしかねない。したがって、投票者各人の自由な意思形成に不可欠な国民的議論が保障されない与党案には重大な問題があるといわざるを得ない。また,与党案及び民主党案は,各議院の議員数を踏まえて広告放送時間数や新聞広告の寸法及び回数を割り当てるとしている。しかし、本来、憲法改正案やそれに対する賛成・反対の意見については、議会の多数意思とは別に、公平・中立に国民に提示される必要がある。与党案等では、改正案の広報に各議院の多数意思が強く反映されることになって、その広報が公正・公平になされると言えず,国民の自由かつ適正な意思形成を阻害する危険性がある。さらに,与党案は,賛成投票の数が有効投票総数の2分の1を超えた場合に国民の承認があったものとするとしている。しかし,最高法規である憲法の改正という重大性を考えれば,少なくとも改正に賛成する投票数が総投票数の2分の1を越えるか否かで決すべきである。また,与党案及び民主党案は最低投票率制度を導入していないが,国民の意思を十分かつ正確に反映させるためには国民投票が有効となるための最低投票率に関する規定を設けるべきである。このように,与党案及び民主党案は,投票結果に国民の意思を正確に反映させる制度的保障が不十分である。「憲法改正国民投票法案」の与党案及び民主党案には,以上に述べたとおり,国民主権とそれを担保するための表現の自由の保障の観点からみて重大な問題がある。当会は,「憲法改正国民投票法」が国民の主権行使という重大事に関わることから,上記のような看過できない問題点を含んだ与党案,民主党案いずれに対しても,これに反対する意思を表明するものである。 以上決議する。
2006年(平成18年)9月12日秋 田 弁 護 士 会
日本国憲法施行70周年にあたり立憲主義及び憲法の基本原理の堅持を求める会長声明
ttp://akiben.jp/statement/2017/05/post-113.html
2017年5月3日 公開
1947年(昭和22年)5月3日に日本国憲法が施行されてから70周年を迎えた。日本国憲法は、多くの国民が犠牲となった先の大戦を真摯に反省し、二度と同じ過ちを繰り返さないという決意に基づき、個人の自由及び権利を保障するために国家権力を憲法によって制限するという立憲主義を基本理念とし、基本的人権の尊重、恒久平和主義、国民主権を基本原理として制定され、施行後70年にわたり、多くの国民から支持されてきている。しかし、以下のように、近年の日本国憲法を取り巻く状況は深刻であり、現在、大きな試練にさらされている。第一に、安保法制の問題である。政府は、2014年(平成26年)7月の閣議決定で、歴代内閣が踏襲してきた、憲法第9条の下においては集団的自衛権は行使できないとする憲法解釈を変更し、その行使が容認されるとの解釈改憲を行った。そして、同閣議決定に基づき、政府及び与党は、2015年(平成27年)9月19日、集団的自衛権の行使を可能とする安保法制を成立させた。同法制に対しては、憲法学者の大多数に加え、内閣法制局元長官、最高裁判所元長官及び同元判事からも違憲であるとの指摘がなされ、多くの国民も反対の意思を表明していたにもかかわらず、国会では十分な審議がなされないまま、強行的に採決された。このような解釈改憲及びこれを根拠とする安保法制の強行採決は、国家権力を憲法によって制限するという立憲主義の基本理念をないがしろにする行為であるばかりか、集団的自衛権の行使は、恒久平和主義の原理から認められず、安保法制は違憲である。当会は、2016年(平成28年)2月26日付けの総会決議により、国会に対してかかる安保法制を廃止する立法措置を求めるとともに、政府に対して同法制に基づく措置を発動しないことを求めている。第二に、緊急事態条項(国家緊急権)の問題がある。2016年(平成28年)11月から開かれた衆参両院の憲法審査会において、創設の必要性が主張されている。この緊急事態条項は、戦争、内乱、恐慌、大規模な自然災害等、平時の統治機構をもってしては対処できない非常事態において、国家秩序維持のために、立憲的な憲法秩序を一時停止する非常措置をとる権限(国家緊急権)を行政府に認めるものである。しかし、どのような場合に緊急事態宣言を発するかの判断が基本的に行政府に委ねられ、その宣言がなされた場合には、立法権限の一部を行政府が行うばかりか、行政府の判断で国民の権利をも制限することが可能となってしまい、立憲主義の崩壊を招きかねない。かかる条項については、ナチス、ヒトラーがこれを濫用して権力を掌握した上で、全体主義の下で多くの人命を奪い人権侵害を招いたという悲惨な歴史を忘れてはならない。そもそも、このような緊急事態への対処は、事前に綿密な対応体制を検討し、法律を制定することによって十分に対応できるものであって、憲法に新たな規定を創設する必要性は全く認められない。当会は、日本国憲法施行70周年にあたり、国会及び政府に対して、個人の自由及び権利を保障するために国家権力を憲法によって制限するという立憲主義並びに日本国憲法の基本原理を堅持することを求める。
2017年(平成29年)5月3日秋田弁護士会 会長 三 浦 広 久
陸上自衛隊情報保全隊による監視活動に抗議し、監視活動の中止と調査結果の全容公開を求める会長声明
ttp://akiben.jp/statement/2008/02/post-39.html
2008年2月13日 公開
1 平成19年6月6日、陸上自衛隊情報保全隊及び陸上自衛隊東北方面情報保全隊が、自衛隊のイラク派兵に反対する市民や団体の集会等を監視し、その情報を「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」「情報資料について」といった資料にまとめ分析していたことが明らかとなった。当時の久間防衛大臣も、国会における答弁において、情報保全隊がこのような情報収集活動を行っていたことを認めているが、上記資料には、参加者の個人名や発言内容だけでなく、参加者の写真も情報として収集されていた。上記のうち、陸上自衛隊東北方面情報保全隊が作成した「情報資料について」には、平成15年10月から平成16年2月までの、秋田県を含む東北地方における市民や団体による集会、街頭宣伝、ビラ配布等の活動や動向に関する情報が収集・記載されており、自衛隊のイラク派遣に反対する活動や、消費税値上げや年金制度に関する集会等も含まれ、さらには東北地方の市町村議会、国会議員の発言やマスコミ記者の取材活動までもが監視対象とされていたことが判明している。
2 このように、陸上自衛隊情報保全隊が組織的・系統的・日常的に市民や団体の活動を監視してその情報を収集・分析・管理保管することは、国民の自由な意見表明に対する不当な圧力となりかねず、表現の自由・集会の自由に対する強い萎縮効果をもたらすものであるから、憲法21条の趣旨に反する。また、陸上自衛隊情報保全隊が、上記集会等の参加者の個人名や発言内容を記録したり写真撮影を行って、これら情報を収集・分析・管理保管することは、国家権力が市民の政治的思想に関する情報を取得するもので、思想及び良心の自由を保障した憲法19条の趣旨に反するだけでなく、個人のプライバシーや肖像権を侵害するもので憲法13条の趣旨に反する。そもそも、陸上自衛隊情報保全隊は、自衛隊の保有する内部情報の保全のための組織であり、この目的に必要な限定された範囲での情報収集活動しかなしえないと考えられるので、上記のような市民や団体に対する監視や情報収集活動は与えられた権限を逸脱したものと言える。また、上記監視活動は、陸上自衛隊情報保全隊の情報保全業務のために必要なものでないことも明らかであるから、法令の定める掌握事務を遂行するために必要な場合に限って個人情報の保有が許されるとした行政機関個人情報保護法3条1項にも反する。さらに、陸上自衛隊情報保全隊が、このような違憲・違法な監視活動を行ってきたことは、国家権力の濫用を抑制し国民の権利・自由を保障するという立憲主義にも違反する。
1 以上のとおり、陸上自衛隊情報保全隊及び同東北方面情報保全隊による市民や団体に対する監視や情報収集は、違憲・違法なもので許されない。当会は、政府及び防衛省に対して厳重に抗議するとともに、このような監視行為を直ちに中止し、第三者機関を設置するなどして陸上自衛隊情報保全隊の監視活動について調査をしたうえで、その調査結果をすべて公表することを強く求めるものである。
2008年(平成20年)2月13日 秋田弁護士会会長 木 元 愼 一
憲法違反の安全保障関連法による南スーダンPKOに対する新任務付与に反対する会長声明ttp://akiben.jp/statement/2016/11/post-109.html
2016年11月22日 公開
2015年??(平成28年)11月15日、政府は、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣する陸上自衛隊の部隊に、昨年9月に成立した安全保障関連法に基づく新任務である駆けつけ警護を付与することを盛り込んだ実施計画を閣議決定し、あわせて国家安全保障会議において宿営地の共同防護ができることを確認した。駆けつけ警護は、離れた場所で襲われた国連職員やNGO職員らを助けに向かう任務であり、宿営地の共同防護は、他国のPKO要員らとともに武装勢力から宿営地を守る任務である。駆けつけ警護では、襲撃されている他国要員等を守るための武器使用が認められ、宿営地の共同防護では、外国の軍隊の部隊の要員とともに、宿営する宿営地に攻撃があったときに当該宿営地に所在する者の生命又は身体を防護するために武器使用が認められている。これらの任務は、敵対勢力の反撃次第で戦闘行為に発展する可能性があり、その場合には憲法第9条が禁止する武力の行使又は武力による威嚇に抵触するものである。また、陸上自衛隊の派遣先となっている南スーダンは、2013年12月の大統領派と副大統領派の戦闘を機に激しい戦闘状態が続き、2015年7月には首都ジュバで両派による大規模な戦闘が発生し、多数の市民が死亡したと報道されており、国連南スーダン派遣団も「暴力や武器衝突の報告が増加していることを非常に懸念している」と認めている。このような状況下において「駆けつけ警護」などの危険な任務を付与された陸上自衛隊が派遣されようとしているのであり、その任務遂行のために武器を使用することになれば、自衛隊員が政府軍や反政府軍の兵士を殺傷したり自らも犠牲になる可能性が極めて高く、自衛隊が戦闘行為に巻き込まれることになる。このような事態は、当会がこれまで安全保障関連法が憲法違反であると主張し、日本が戦争に巻き込まれることになると懸念してきたことの現実化であって、到底容認するはできない。よって、当会は、政府に対し、改めて憲法違反の一連の安全保障関連法の廃止を求めるとともに、南スーダンに派遣する陸上自衛隊に対し「駆けつけ警護」「宿営地共同防護」の新任務を付与することとした閣議決定等の撤回を求める。
2016年(平成28年)11月22日秋田弁護士会 会長 外山 奈央子
オスプレイの普天間基地配備の撤回を求める会長声明
ttp://akiben.jp/statement/2013/02/post-62.html
2013年2月13日 公開
垂直離着陸輸送機MV-22オスプレイ(以下,「オスプレイ」という。)が沖縄普天間基地に配備されたことについて,沖縄県では,全県をあげて強く反対し,配備撤回を求めている。オスプレイは,「オートローテーション機能」(エンジン停止時に,機体が落下する際に生じる気流を利用して安全に着陸する機能)に欠陥があり,また,回転翼機モードと固定翼機モードの飛行モードの切替時に不安定さがあるなど,専門家から,構造上重大な危険をはらんでいるとの指摘がなされている。現に,オスプレイは,開発段階から重大事故を繰り返し,量産体制に移行した後も事故が絶えず,2006年からの5年間で58件の大小の事故が発生していることが,米軍資料で明らかになっている。ごく最近も,2012年4月にはモロッコでの訓練中に墜落し,搭乗員2名が死亡する等の事故を起こし,同年6月にもフロリダ州で訓練中に墜落して乗員5名が負傷する事故を起こしている。オスプレイの配備は,現状においてさえ「世界一危険な飛行場」と評されている普天間飛行場の危険性をより一層増大させるものであり,同飛行場周辺住民の生命・身体の安全という見地から決して許されるべきものではない。のみならず,アメリカ海兵隊環境審査報告書によると,配備後のオスプレイは,沖縄本島のほぼ全域を飛行するだけでなく,全国7ルートで低空飛行訓練をすることが予定されていることも明らかになっている。東北においても,青森県,秋田県,山形県の奥羽山脈沿を飛行する「ピンクルート」,青森県,岩手県,福島県の奥羽山脈沿いを飛行する「グリーンルート」を,高度150メートルという低空での飛行訓練が計画されている。そのため,オスプレイの飛行による墜落の危険,爆音や風圧による生態系を含む環境破壊などが危惧される事態は,沖縄県だけではなく,日本全国に広がっているといわねばならない。よって,当会は,このようなオスプレイ配備に対して強く抗議し,アメリカ政府に対して,オスプレイの普天間飛行場のみならず,我が国への配備の即時撤回と全ルートでの低空飛行訓練の中止を強く求めるとともに,日本政府に対して,オスプレイの我が国への配備と全ルートでの低空飛行訓練計画を白紙に戻すべく,アメリカ政府と交渉するように強く求めるものである。
2013年(平成25年)2月13日 秋田弁護士会 会長 近 江 直 人
少年法「改正」法案に反対する会長声明
ttp://akiben.jp/statement/2008/03/post-38.html
2008年3月17日 公開
本年3月7日に国会に提出された、少年法の一部を改正する法律案は、①一定の場合に犯罪被害者等による少年審判の傍聴を認めると共に、②犯罪被害者等による記録の閲覧・謄写の要件を緩和することを主たる内容としている。しかし、同法案には、下記に述べるような重大な問題が存在することから、本法案には反対の意思を表明する。
1 犯罪被害者等による少年審判の傍聴を認める点について
本法案は、被害者等の傍聴を許す家庭裁判所の判断基準について「少年の年齢 及び心身の状態、事件の性質、審判の状況その他の事情を考慮して相当と認めるとき」としている。しかし、これでは、少年の更生の観点から相当とはいえない場合にまで犯罪被害者等の審判傍聴を許すという運用になりかねず、問題である。そもそも少年審判は、事件からそれほど時間を経過していない段階で行われるものであることから、少年の反省を深める機会が必ずしも十分とはいえないことは関係者の了解するところであって、そのような中でも少年に発言を促し、事件の内容や少年の認識などの点について聴取し、「懇切を旨として、和やかに行うとともに、非行のある少年に対し自己の非行について内省を促す」(少年法22条)ことができるようにすることを目的としている。しかし、犯罪被害者の傍聴を認めるとすれば、年齢的にも未熟な少年が、犯罪被害者等の目を気にするあまり発言を控えることになりかねず、その結果間違った事実認定が行われる危険があると共に、表層的な反省の態度を示すにとどまってしまうなどの事態が危惧され、少年審判の目的を達成することができないおそれがある。また、このように時期的にも早い段階での傍聴は、被害者の心情を害する危険も存在するのであって、実際にも、本年3月4日には、大阪で逆送された刑事事件の公判で遺族が少年に暴言を吐き、あまつさえ暴力もふるった事件があったばかりであり、上記弊害の蓋然性は極めて高いといえる。犯罪被害者が事実を知りたいという心情には配慮する必要があるが、必ずしも審判傍聴という方法ではなく、例えば家庭裁判所調査官が説明するなどという、より被害者の心情に配慮した方法なども考えられるところであって、審判の被害者傍聴はその弊害の方が大きいというべきである。
2 犯罪被害者等による記録の閲覧・謄写の要件を緩和する点について
法案は、従前の法律記録の閲覧・謄写に関する規定のあり方を逆転し、原則としてこれを公開するものとする内容になっている。しかし、これでは、少年の身上経歴等の少年のプライバシーに関わる事項まで閲覧謄写の対象となり、少年のプライバシーが侵害されるだけではなく、その後の少年の更生を困難にしかねない。また、近時マスメディアが過剰な報道を繰り広げる事態も生じており、このような改正の結果、被害者がマスメディアから過剰な取材を受け、個人情報が漏出し、思わぬ利用のされ方をする危険性があることに鑑みるならば、その弊害は大きいものと言わなければならない。他方で、現状のもとでも正当な理由がある場合であって、裁判所が相当と認めるときは閲覧・謄写が可能なのであるから、被害者等の権利を守るという点は現状の仕組みをより丁寧に被害者等に知らせることや、各種支援制度の拡充をすることによって達成することが可能である。よって、上記の問題点を含む本法案に対しては、強く反対するものである。
2008年(平成20年)3月17日 秋田弁護士会 会長 木 元 愼 一
「少年警察活動規則の一部を改正する規則案」に対する意見
ttp://akiben.jp/statement/index.html
2007年(平成19年)10月2日 秋田弁護士会 会長 木 元 愼 一
少年法「改正」法案の参議院における修正を求める声明
ttp://akiben.jp/statement/index.html
2007年(平成19年)5月14日 秋田弁護士会 会長 木 元 愼 一
2005-07-07少年法等「改正」法案に反対する会長声明
ttp://akiben.jp/statement/2005/07/post-52.html
2005年7月7日 秋田弁護士会 会長 面 山 恭 子
少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
ttp://akiben.jp/statement/2015/07/post-96.html
2015年7月29日 公開
1 平成27年6月17日に公職選挙法の一部を改正する法律が可決・成立し,選挙権年齢が18歳に引き下げられることになった。同法附則11条は,「民法,少年法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとする」と定めており,少年法の適用年齢について,18歳に引き下げる方向での議論が進められている。しかしながら,選挙権年齢と少年法の適用年齢を法的に一致させなければいけない必然性はない。たとえば,現行民法は,行為能力を認める年齢として,「20歳をもって成年とする」と定めているが,身分行為である養子縁組行為や遺言能力は15歳で認めており,制度の目的や子どもの判断能力により適用年齢を区別している。さらに,喫煙や飲酒は20歳を区分年齢としているが,パチンコ店の入店は18歳,サッカーくじの購入は19歳を区分年齢としており,子どもの成熟度を考慮した年齢区分がなされることもある。したがって,少年法の適用年齢を18歳に引き下げるべきかどうかは,「成年年齢を18歳と定めた」という理由で単純に決せられるものではなく,18歳,19歳の者による犯罪の現状,その者の成熟度,現行少年法制が果たしてきた役割を踏まえた上で,犯罪予防や更生の仕組みなど社会全体の利益の視点から,詳細かつ具体的に検討し,決せられるべきである。
2 この点,年長少年(18歳以上20歳未満の少年)の,平成25年における一般刑法犯検挙人員の総数は1万1234人であるところ,罪名別に見ると,殺人20人(0.2%),強盗192人(1.7%),強姦56人(0.5%),放火18人(0.2%)など凶悪犯罪が占める割合は成人と比べて極めて低く,窃盗5320人(47.4%),遺失物等横領2681人(23.9%)など,大半は比較的軽微な犯罪で占められている。 現在は大学進学率が向上したことなどもあって,18歳,19歳になっても経済的に自立できる年長少年は多くなく,社会経験も豊富とはいえない場合が多い。また,若年層は,未だ人格形成の途上にあり,対人関係を構築するのが不得手なこともあり,他者に共感する感情や想像力に乏しい場合も見られる。これまでの少年法制では,保護主義の見地から年長少年の事件については,全件家庭裁判所に送致するものとし,必要に応じ観護措置決定を行い,鑑別所や家庭裁判所調査官により専門的科学的知見に基づいて少年の行動鑑別,心理鑑別を行った上で,審判を行い,個々の少年の要保護性に応じた処分を行ってきた。その趣旨は,このような若年者の犯罪の特徴を踏まえると共に,特に非行少年の場合,家庭で虐待を受けていたり,学校や地域で疎外されていたりするなど,自らの力ではどうにもならない事情により厳しい環境に置かれるケースも見られること,他方で若年者は未だ人格形成の途上にあって,可塑性に富み,犯罪傾向は進んでいないことが多いことから,犯罪の軽重だけではなく,少年の課題に沿った対応を行い,その立ち直りの機会を与えるためであった。
3 仮に,少年法の適用年齢を引き下げることとすると,比較的軽微な罪を犯した18歳,19歳の者の資質・環境上の問題点が十分に解消されないまま,大半が起訴猶予により何らの対応もなされないまま社会に戻ることになり,問題点を一層増幅させ,重大な犯罪に発展させかねないケースも生じかねない。さらに,若年者が実名報道され,起訴猶予されずに公開の裁判にさらされた上で,前科者となることもあり,その結果人生の早い段階において将来における就職等の機会を失わせてしまい,更生の機会を奪う結果にもなりかねない。なお,現行の少年法下においても,16歳以上の少年が故意に人を死亡させた場合には,原則として検察官に送致され,成人と同じ刑事手続により処罰されるのであり,18歳以上であれば死刑の言い渡しを受ける場合もあり,少年法の適用があるからといって,重大事案への対応ができないということはない。
2 以上のとおり,成人年齢の引き下げがなされたとしても,人格形成途上の若年者の犯行であるということについては何ら変わりがなく,これまで少年法が対象としてきた,個別の事案に応じた保護処分を中核とする対応の必要性については全く変わるものではない。このような実態を踏まえずに,少年法の適用年齢を一律に引き下げることは社会全体の利益という視点からも相当とは言い難く,少年犯罪の実情の把握が欠けており,有効に機能している少年法制を理由もなく覆すものにほかならない。よって,当会は,少年法の適用年齢の引下げに強く反対するものである。
2015年(平成27年)7月29日 秋田弁護士会 会長 京 野 垂 日
東日本大震災等の被災者への「法的支援事業」特別措置法の制定を求める会長声明
ttp://akiben.jp/statement/2012/02/post-18.html
当会は、東日本大震災の被災者を支援するため、日本弁護士連合会、日本司法支援センターなどと協力しながら、被災地での法律相談活動に弁護士を派遣し、県内の避難者のための法律相談活動を行うなど、被災者の法的ニーズに応えるための活動をしてきた。被災地での法律相談の際には総合法律支援法に基づく民事法律扶助を利用して活動を行ったが、同法に基づく現行の民事法律扶助を利用しての活動には限界があることが判明した。同法は、弁護士等による法的サービスをより身近に受けられるようにするための支援について定めており、資力の乏しい者にも民事裁判等手続の利用をより容易にする民事法律扶助事業をひとつの中核の事業と定めているところ、民事法律扶助の利用のためには資力要件が課されており、支援の対象も裁判所による民事裁判手続に限定されている。しかし、被災者に対して資力の有無を申告させ確認することは、震災により苦しんでいる被災者への配慮に欠け、法的救済を求める被災者に対して大きな負担を強いることになりかねない。また、今回の東日本大震災の被災地においては、「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」、原子力損害賠償紛争解決センターといった、裁判外の法的問題の解決手続きが作られているところ、民事法律扶助事業では裁判外の手続の利用を正面から認めてこなかったが、被災地の法的問題の解決のためには、このような手続の利用を促進させる必要がある。 以上から、当会は、東日本大震災の被災者支援のため、
(1)資力で被災者を選別しない法的支援事業の創設
(2)民事裁判に限定されない柔軟な支援の実現
を内容とする「法的支援事業」特別措置法が早急に制定されることを求める。2012年2月9日 秋田弁護士会 会長 三 浦 清
特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆる「カジノ解禁推進法」)の成立に強く抗議し,廃止を求める会長声明
ttp://akiben.jp/statement/2017/06/post-117.html
2017年(平成29年)6月30日 秋田弁護士会 会長 三 浦 広 久
「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明
ttp://akiben.jp/statement/2014/07/post-84.html
2014年(平成26年)7月1日 秋田弁護士会 会長 加 藤 謙
消費者庁・国民生活センターの地方移転に反対する会長声明
ttp://akiben.jp/statement/2016/01/post-101.html
2016年(平成28年)1月19日 秋田弁護士会 会長 京野垂日