匿名希望
外国人の在留管理を強化する新しい外国人雇用状況報告制度に対する意見書
2007年2月15日
日本弁護士連合会
本意見書について
第166回国会に提出された雇用対策法の改正案により、新しい外国人雇用状況報告制度が設けられようとしています。
この制度は、すべての事業主などに対して、新たに雇い入れた外国人の氏名・在留資格・在留期間・国籍などの個人情報を厚生労働大臣に報告することを義務づけるもので、報告を怠ったり、虚偽の報告を行った事業主には、罰金が科されることになります。
また、このようにして把握された情報は、在留管理に関する事項の確認のため、厚生労働大臣から法務大臣に提供されるものとされています。
制度の目的は、「外国人労働者の適正な雇用管理の推進、再就職の促進を図り、不法就労の防止によって労働市場の健全性を保持すること」と説明されていますが、就労に制限のない永住者などを含むすべての外国人(特別永住者を除く)を報告の対象とすることが予定されており、外国人の在留状況を全般的に管理・監視するという目的を含んでいます。
日弁連はこれまで、外国人の在留管理を強化する動きに対し、繰り返し意見を述べてきましたが、この新しい報告制度には
雇用対策法の目的を逸脱し、健全な雇用関係の成立を阻害するおそれがある
外国人のプライバシー権や自己情報コントロール権を侵害するものである
人種差別撤廃条約に抵触するものである
という問題点があることから、2007年2月15日付けでこの制度に反対する意見書をとりまとめ、同月21日に厚生労働大臣・衆参両院の厚生労働委員会などに宛てて提出しました。
匿名希望
多民族・多文化の共生する社会の構築と外国人・民族的少数者の人権基本法の制定を求める宣言
2004-10-7, 第47回人権擁護大会シンポジウム第1分科会基調報告書「多民族・多文化の共生する社会をめざして~外国人の人権基本法を制定しよう~」(本編)(PDF形式8.8MB)
現在の日本には、朝鮮や台湾などの旧植民地出身者とその子孫、移住労働者とその家族などの外国人が、多数居住し生活している。また、外国籍であったがその後日本国籍を取得した人々、国際結婚などにより出生し日本国籍を取得した子ども達など、民族的少数者の地位にある人々も増加し、多民族・多文化への傾向は急激に進展している。
ところが、戦後日本の外国人法制は、出入国管理法や外国人登録法などにより外国人を管理することを主眼とし、また、民族的少数者の人権に関する法整備はなされてこなかった。
このような状況下で、日本においては、極めて少ない難民認定者数に象徴されるように国際人権条約上も保護されるべき外国人が入国や在留を認められなかったり、入店・入居拒否などの差別や公人による差別発言が問題となったり、民族的アイデンティティを保持するための教育が十分に保障されていないなど、外国人や民族的少数者の人権が多くの場面で侵害されている。
よって、当連合会は、国及び地方自治体に対し、下記の内容を骨子とする外国人・民族的少数者の人権基本法や条例を制定するとともに、多民族・多文化の共生する社会を推進するための部局を設置して必要な施策を実施することを求める。
なお、上記施策を実施するにあたっては、植民地支配の結果として日本での生活を余儀なくされた旧植民地出身者とその子孫についての歴史的経緯を考慮し、併せて、戦後補償をはじめとする植民地支配の清算を早急に実行すべきである。
外国人に対しても基本的人権を原則として等しく保障し、さらに、民族的少数者固有の権利を確立すること。
永住外国人等への地方参政権付与をはじめとする立法への参画、公務員への就任などの行政への参画、司法への参画を広く保障すること。
医療・年金・生活保護その他社会保障制度全般について、外国人に対しても可能な限り日本人と同様の保障を及ぼすこと。
外国人労働者につき、労働法制に基づく権利を実質的に保障すること。
外国人女性などの人身取引、ドメスティック・バイオレンスなどの被害を防止し、被害を受けた人々の救済のための施策を充実すること。
国際人権条約上保護されるべき難民、家族、女性、子ども及び人道上の配慮を要する外国人の在留の安定に向けた諸施策を講じるとともに、入管手続全般につき適正手続保障と透明性確保に努めること。
外国人の子どもへの日本語教育の充実等の施策を行うとともに、公教育における母語・母国語等の教育の機会や、民族学校、外国人学校を含む多様な教育の機会を制度的に保障すること。
人種差別禁止のための法整備を行い、その実効性を確保するために政府から独立した人権機関を設置するとともに、差別禁止と多文化理解に向けた人権教育を徹底すること。
当連合会は、上記の施策の実施に積極的に関与・協力するとともに、外国人及び民族的少数者の基本的人権を確立することを通じて、お互いの違いを認め合う豊かな多民族・多文化の共生する社会を築き上げるべく全力を尽くす決意である。
以上のとおり宣言する。
2004年(平成16年)10月8日
日本弁護士連合会
匿名希望
北星学園大学及びその教員等に対する脅迫行為に関する会長談話
過去に日本軍「慰安婦」問題に関する記事を執筆した元朝日新聞記者が教員として勤務する北星学園大学(北海道札幌市)に対し、学生に危害を加えることを告げて元記者の解雇を求める等の脅迫が行われていることに関して、同大学は、2014年12月17日、2015年度も元記者の雇用を継続する見解を公表した。
元記者が日本軍「慰安婦」問題に関して過去に記事を書いたことをとりあげ、勤務先である同大学に対し、元記者を「なぶり殺しにしてやる」「辞めさせろ。辞めさせなければ、学生を痛めつけてやる」等と記載された文書が送付され、要求に応じなければ大学の学生にまで危害を加える旨の脅迫が行われていた。また、脅迫行為は、元記者のみならずその家族の実名や顔写真等がインターネット上に晒され、脅迫的文言までもが書き込まれる事態となっていると報じられている。
これらの行為は、刑法上の脅迫罪や威力業務妨害罪に該当する犯罪行為であるにとどまらず、大学教員としての教育・研究活動とは何ら関係のない理由により元記者の解雇を求めるものであり、学問の自由や大学の自治を脅かすものである。さらに、元記者が過去に書いた記事を言論により批判するのではなく、記事の内容を理由に脅迫することは、記者の取材・報道を萎縮させかねず、そのことは国民の知る権利も侵害し、ひいては民主主義社会の基盤そのものを崩壊させるおそれがあるものであり、断じて許すことができない。
このたび、同大学が上記脅迫行為に屈せず、元記者の雇用継続を決めたことは、日本国憲法が定める学問の自由、大学の自治、表現の自由を守り抜いたものとして高く評価する。
当連合会は、同大学に加えられたような卑劣な脅迫行為を断固許さない意思を表明するとともに、取材・報道の自由及び知る権利、そして民主主義社会を守るべく、今後も全力を尽くすことを改めて確認する。
2014年(平成26年)12月25日
日本弁護士連合会
会長 村 越 進
.....日弁連佐々木亮弁護士の懲戒請求者に対する「おとしまえをつけてやる」という脅迫行為もやめさせなさいよ。
匿名希望
戦時の軍事的性的奴隷制問題に関する報告書」に関する声明
昨日、国連人権委員会「女性に対する暴力とその原因及び結果に関する特別報告官」ラディカ・クマラスワミ氏による、朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国及び日本への訪問調査に基づく「戦時の軍事的性的奴隷制問題に関する報告書」が発表された。その内容によれば、「従軍慰安婦」問題の解決のために、極めて率直にその解決を提言するものである。
報告書によれば、日本政府への勧告として、(1)「慰安婦」制度が国際法の下で、その義務に違反するものであることを承認すること、(2)害者に対して、ファン・ボーベン報告の基準に基づく補償をすること、(3)「慰安所」に関連する全ての文書・資料を完全に開示すること、(4)名乗り出た被害者女性に対して、公的に謝罪すること、(5)歴史教育を実践すること、(6)「慰安所」への徴募及び収容に関与した犯行者を特定し、処罰することを掲げている。
日弁連は、昨年1月に、「従軍慰安婦」問題に関する提言を発表し、その中で、「慰安婦」問題解決のために、真相究明、公的謝罪、被害者個人への賠償、歴史教育の徹底、常設仲裁裁判所の利用等を提言してきた。今回のクマラスワミ氏の報告書は、日弁連のこの提言を是とするものであり、意を強くするとともに、また、被害者の女性達が求めてきたもの、ICJ(国際法律家委員会)をはじめとするNGOからの提言にあるものとも大方で一致する。これは、この勧告の内容にあるものが、国際社会の中で、「従軍慰安婦」問題の解決の方向を一致して指し示すものとなったことを意味する。
現在、進められている「女性のためのアジア平和国民基金」が、日弁連の提言を満足させるものでないことをこれまでも述べてきたが、今回の報告書の内容は、国際社会の中でも同様に考えられていることをより明らかにした。
日弁連は、この報告書が、国連人権委員会で採択されることを強く望むものであるが、日本政府が、国連人権委員会の正規の勧告がなされるのを待つことなく、自主的にこの報告にそった解決に着手することを求める。いまや解決の方向は指し示された。その実行を逡巡することなく、政府が一日も早く解決への一歩を踏み出すことが、国際社会の中で、日本が名誉ある地位と評価を得る最後の機会であると考える。日弁連は、本問題の解決のために今後とも尽力することを誓うものである。
1996年(平成8年)2月7日
日本弁護士連合会
会長 土屋公献
匿名希望
レッド・パージ国家賠償請求訴訟大阪高裁判決に関する会長談話
本年10月24日、大阪高等裁判所は、日本共産党の党員又はその同調者であることを理由とする免職処分又は解雇を受けた3名が国に対して国家賠償を求めた裁判で、控訴を棄却する判決を下し、3名の請求を棄却するとの結論を維持した。
本判決は、マッカーサー書簡は共産党員又はその同調者を排除すべきことを要請する指示であると解釈した上で、その指示は占領下において超憲法的効力を有していたから、3名に対する免職又は解雇は有効であること、講和条約発行後に日本政府が救済すべき作為義務が発生するのは、日本政府が実質的に当該レッド・パージを主導し、連合国最高司令官の強大な権限を積極的に利用したような場合に限られるが、本件レッド・パージは日本政府がレッド・パージを主導して行ったものと認めるに足りる証拠はないなどを理由として、国家賠償法上の国の責任を否定した。
当連合会は、レッド・パージにより免職又は解雇された申立人らからの人権救済申立事件について、これまで2度にわたり、レッド・パージは憲法で保障された思想良心の自由、法の下の平等という民主主義の根幹に関わる人権の侵害であり、占領下の連合国最高司令官といえどもかかる人権侵害は許されないこと、日本政府も占領下でレッド・パージを積極的に推し進めようとしていたと認められること、そうである以上、平和条約発効後に主権を回復した日本政府は自主的にレッド・パージによる被害の回復を図るべき責任があったこと等を前提として国の人権侵害性を認め、可及的速やかに、被害回復のための名誉回復や補償を含めた適切な措置を講ずるよう勧告してきた。
本判決は、国家賠償法上の賠償責任を否定したが、これまで当連合会が2度にわたり勧告しているとおり、レッド・パージにおける日本政府の責任は重大であるといわざるを得ない。また、国は当連合会の勧告を受けたにもかかわらず、関係機関が判明しなかったとして何らの検討すら行っていなかったことが今回の訴訟手続において明らかとなった。誠に遺憾であり、当連合会は、政府に対し、改めて、当連合会の勧告の趣旨を踏まえて、レッド・パージの被害者の被害回復のための適切な措置を講ずることを求める。
2012年(平成24年)11月1日
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司
匿名希望
臨時総会・「弁護人抜き裁判」特例法案に関する決議
1970年代の次の項目へ
(決議)
刑事裁判における弁護人の活動は、適正な手続きによる公平な裁判を確保するため、必要・不可欠であり、被告人が専門的知識と資格を有する弁護人の弁護をうける権利は、いついかなる場合においても保障されなければならない。
政府が今国会に上程した「刑事事件の公判の開廷についての暫定的特例を定める法律案」は、憲法が保障する被告人の弁護人依頼権を侵し、民主主義社会において確立している刑事裁判制度の根幹を揺るがすものである。
われわれは、国民の基本的人権をまもり抜く立場からこの法律案に対して強く反対する。
さらにわれわれは、裁判所の強権的な訴訟指揮の傾向に対し反省を求めるとともに、憲法のもとにおける刑事弁護の正しいあり方について不断の努力を尽すことを表明する。
右決議する。
1978年(昭和53年)5月9日
臨時総会
提案理由
1.憲法第37条第3項は「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。」と明記して弁護人依頼権を保障している。
刑事裁判における弁護人制度が、公平・適正な裁判手続を確保し、国民の人権を保障するために不可欠なものであることは、民主主義社会においては、疑問の余地のない普遍の原理とされている。およそ、弁護人抜きの刑事裁判は、民主主義社会における裁判の名に値しない。この意味において専門的知識と資格を有する弁護人による弁護をうける権利は、いついかなる場合であっても、またいかなる被告人からであっても、奪うことの絶対に許されない憲法上の権利である。
今国会に上程されたいわゆる弁護人抜き特例法案は、刑事被告人が憲法上有する権利のうちでも最も基本的なものとされる弁護人依頼権を被告人の意に反して剥奪するものである。
法務省は、被告人の弁護人依頼権は放棄できるとの前提に立って、特例法案は弁護人依頼権の放棄と認められる場合を定めたものであると言うが、弁護人依頼権を放棄し得るとの立場をとるにしても、この権利は公正な裁判のため必要不可欠とされている基本的人権であるから、その放棄は少なくとも被告人の明示の意思によることを要する。米国連邦最高裁判所が、弁護人依頼権については、被告人が権利の内容を知悉した上で、放棄に伴う利害得失を考量し、なおかつ弁護人依頼の意思がない場合に限り、瑕疵のない明示の意思表示によりはじめて放棄することができるものとし、放棄の擬制を断じて認めないとしているのは、まことに理由があるのである。
2.この立法措置の必要性の根拠として法務省が主張している一部刑事事件の「異常事態」の原因は、裁判所が実質的な弁護活動を無視して、無理な期日指定などの訴訟指揮を強行したことによるものが多い。
そして、これらの事態も、現に訴訟関係人及び弁護士会などの努力によりそれぞれ解決されており、今日、立法による解決を必要とするような状況はみられない。
にもかかわらず政府が、ハイジャック防止対策を口実として、あくまでも特例法案の成立をはかろうとしている背景には、裁判所の職権のみを強化し、裁判所・検察官の都合だけを考慮して、被告人・弁護人の防禦権・弁護権を制約し、侵害する「訴訟促進」方策があることを看過することができない。法案は、このような方策を具体化したものにほかならない。
当連合会は、かねてより、かかる「訴訟促進」方策に反対するとともに、具体的な刑事事件において裁判の進行に重大な支障が生じた場合については、関係弁護士会の従来の地道な努力の成果に立脚しつつ、訴訟関係人の協力と法曹三者の真剣な協議によってねばり強く解決に当たるべきものであること主張し、提案してきた。
今後も右のような基本姿勢を堅持しつつ刑事訴訟手続の進行における裁判所・検察官の不当な措置については、つねに、これを的確に批判し、是正していくことがますます重要であると考える。
3.われわれは、民主主義憲法下にふさわしい法廷慣行の確立に努力し、かつ弁護士間において知識・経験を交流し相互批判を強めることが必要であると考える。また、法廷における弁護活動のあり方について、憲法・刑事訴訟法・弁護士法の精神に照し間然するところのないよう研鑽と自戒を怠ってはならない。そして、憲法のもとにおける刑事弁護の正しいあり方について不断の努力を尽し、さらに弁護士自治の実質をたえず高めていく決意である。
日本弁護士連合会は、国民の基本的人権を守り抜く立場から、当初より一貫してこの法案に強く反対してきた。
ここに、総会を開き、全弁護士の総意を結集して、右反対の意思を宣明する次第である。