富山県弁護士会です。
決議文・意見書・会長声明一覧
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2017.12.21
生活保護基準引き下げを行わないよう求める会長声明
2017.11.24
平成29年司法試験結果に対する会長声明
2017.09.22
地方消費者行政の一層の強化を求める会長声明
2017.08.29
民法の成年年齢引下げに反対する会長声明
2017.06.27
組織的犯罪処罰法の改定(いわゆる共謀罪の新設)に抗議する会長声明
2017.04.20
修習給付金を支給する制度を創設する裁判所法改正についての会長声明
2017.03.24
組織犯罪処罰法の改定(いわゆる共謀罪の新設)に反対する声明
2016.12.27
司法試験合格者数のさらなる減員を求める17弁護士会会長共同声明
2016.05.26
死刑執行に対する会長声明
2016.03.28
夫婦同氏の強制及び再婚禁止期間についての最高裁判所大法廷判決を受けて民法における差別的規定の改正を求める会長声明
2016.02.26
消費者庁・消費者委員会・国民生活センターの地方移転に反対する会長声明
2016.01.28
死刑執行に対する会長声明
2016.01.20
司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明
2015.09.24
安全保障関連法の採決に抗議する会長声明
2015.09.03
少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
2015.08.31
労働時間規制の大幅緩和を内容とする「労働基準法等の一部を改正する法律案」の成立に強く反対し,その廃案を求める会長声明
2015.07.23
事前拒否者に対する訪問や電話による取引の勧誘を禁止する制度の導入を求める会長声明
2015.07.08
集団的自衛権行使容認に反対し、安全保障法制関連法案の廃案を求める決議
2015.06.24
「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明
2015.05.28
集団的自衛権行使容認と安全保障法制改定法案に反対する会長声明
2015.02.18
司法試験合格者数の削減を求める決議
2015.02.05
商品先物取引法における不招請勧誘禁止緩和に抗議する会長声明
2014.11.28
特定秘密保護法の施行に反対し廃止を求める会長声明
2014.05.27
憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明
2014.04.23
商品先物取引法における不招請勧誘禁止規制の緩和に反対する会長声明
2014.03.17
「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明
2013.11.27
改正金融商品取引法施行令に商品先物取引に関する市場デリバティブを加え、 商品先物取引についての不招請勧誘禁止を維持することを求める会長声明
2013.10.30
特定秘密保護法案に対する会長声明
2013.10.30
生活保護の利用を妨げる「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める会長声明
2013.04.24
生活保護基準の引下げに強く反対する会長声明
2013.03.28
法曹人口の急激な増加を改め、司法修習生に対する適切な経済的支援を求める声明
2013.03.06
「福井女子中学生殺人事件」再審異議審決定に関する会長声明
2012.11.28
取調べの可視化を求める会長声明
2012.02.29
「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」に対する反対の会長声明
2012.02.10
全面的国選付添人制度の実現を求める決議
2011.11.30
「福井女子中学生殺人事件」再審開始決定に関する会長声明
2011.10.12
各人権条約に基づく個人通報制度の早期導入及びパリ原則に準拠した政府から独立した国内人権機関の設置を求める決議
司法修習費用の貸与制の施行を延期する法律成立にあたっての会長声明
生活保護基準引き下げを行わないよう求める会長声明
厚生労働省は,2017年12月8日の第35回生活保護基準部会において,2018年度から生活扶助基準本体や母子加算を大幅に引き下げる案(以下,「厚労省案」という。)を示した。2004年からの老齢加算の段階的廃止,2013年からの生活保護史上前例のない大幅かつ広範な生活扶助基準の引き下げ(一世帯当たり平均6.5%,最大10%),2015年からの住宅扶助基準引き下げ・冬季加算の削減に引き続くもので,特に,子どものいる世帯と高齢世帯が重大な影響を受ける。
厚労省案によれば,子どものいる世帯の生活扶助費は,都市部の夫婦・子2人世帯で13.7%(2万5310円)も削減され,母子加算が平均2割(都市部で2万2790円の場合4558円),3歳未満の児童養育加算(1万5000円)が5000円削減され,学習支援費(高校生で5150円の定額支給)が廃止される可能性がある。また,高齢(65歳)世帯の生活扶助費は,都市部の単身世帯で8.3%(6600円),夫婦世帯で11.1%(1万3180円),それぞれ削減される可能性がある。
今回の引き下げの考え方は,生活保護基準を第1・十分位層(所得階層を10に分けた下位10%の階層)の消費水準に合わせるというものである。
しかし,日本では,生活保護の捕捉率(生活保護を利用する資格のある人のうち実際に利用している人が占める割合)が2割以下といわれており,第1・十分位層の中には,生活保護基準以下の生活をしている人たちが極めて多数含まれている。この層を比較対象とすれば,際限なく生活保護基準を引き下げ続けることにならざるを得ず,合理性がないことが明らかである。そして,まさに今回の厚労省案は,この懸念が顕在化したものであり,際限ない生活保護基準引き下げの始まりととらえるべきものである。特に,第1・十分位の単身高齢世帯の消費水準が低すぎることについては,生活保護基準部会においても複数の委員から問題として指摘がなされている。また,同部会報告書(2017年12月14日付)も,検証結果を機械的に当てはめると子どもの健全育成のための費用が確保されないおそれがあること,一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準を捉えていると絶対的な本来あるべき水準を割ってしまう懸念があることに注意を促しているところである。
いうまでもなく,生活保護基準は,憲法25条1項がすべての国民に権利(生存権)として保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を具体化した基準であり,最低賃金,地方税の非課税基準,各種社会保険制度の保険料や一部負担金の減免基準,就学援助などの諸制度と連動している。生活保護基準の引き下げは,生活保護利用世帯の生存権を直接脅かすとともに,生活保護を利用していない市民生活全般にも多大な影響を及ぼすものである。
今般,厚生労働省は,大幅削減案に対する大きな反発を考慮し,削減幅を最大5%にとどめる調整に入ったとの報道もある。しかし,そもそも,従前の前例のない大幅かつ広範な生活保護基準の引き下げにより,憲法25条1項が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が侵害され違憲であるとして全国各地で生活保護基準引き下げ違憲訴訟が提起されている中で,そこからさらに,5%であっても削減を行うことなど許されないというべきである。また,削減の根拠に合理性がない以上,削減幅を縮小したから許されるというものではない。さらに今回の引き下げは,これまでの度重なる生活保護基準の引き下げによって既に「健康で文化的な最低限度の生活」を維持しえていない生活保護利用者を一層追い詰め,それだけでなく,市民生活全般の地盤沈下をもたらすものであり,容認できない。
よって,当会は,厚労省案の撤回は当然の前提として,本年末に向けての来年度予算編成過程において,いっさいの生活保護基準の引き下げを行わないよう,求めるものである。
2017(平成29)年12月20日
富山県弁護士会 会長 山 口 敏 彦
平成29年司法試験結果に対する会長声明
第1 声明の趣旨
1. 当会は,平成29年司法試験合格者数の決定にあたり「1500人程度」という政策上の人数確保ありきで「質の確保」という大前提が遵守されなかったのではないかとの疑義を表明する。
2. 当会は,政府に対し,法曹の魅力を取り戻し,法曹の質を確保するため,司法試験合格者数について直ちに見直し,年間合格者数を1000人以下とするように求める。
第2 声明の理由
1. 本年9月12日,平成29年司法試験結果が発表された。本年の受験者数は5967人と昨年の6899人より932人減少し,また,本年の合格者数は1543人と昨年の1583人から40人減少した。昨年より受験者数が大幅に減少したにもかかわらず,合格者数はほぼ昨年並みとされた結果,受験者全体に占める合格者の割合は昨年の22.9%に対し,本年は25.9%と上昇した。ところで,2015(平成27)年6月30日の法曹養成制度改革推進会議では,司法試験合格者について,当面「1500人程度」は輩出されるよう必要な取組を進めるとされた一方,輩出される法曹の「質の確保」が大前提とされていたところ,受験者数が大幅に減少したにもかかわらず合格者数は微減に止まったというアンバランスな結果は,本年の合格者数決定にあたり「1500人程度」という政策上の人数確保ありきで法曹の「質の確保」という大前提が遵守されなかったのではないかとの疑義を生じさせるものである。当会は同年2月の総会で司法試験合格者数を年間1000人以下にすることを求める決議をしているが,これに反する大量の合格者数は勿論のこと,このような受験者が大幅に減少した中での合格率上昇は,司法試験の選抜機能を損なわせ,法曹の質の低下を招く危険性が高く,極めて遺憾である。
2. 一方,2007(平成19)年から2013(平成25)年まで毎年2000人を超える司法試験合格者を輩出し続けた結果,司法修習を終了したものの12月の一括登録時点で弁護士登録せず,裁判官,検察官にもなっていない者(以下,「未登録者」という。)が急増し,その数は,2011(平成23)年から昨年まで毎年400人以上にも上っている。そして,昨年の司法修習終了者に占める未登録者の割合は25.8%という状況である。
また,法曹需要の増加が進まないため,新人弁護士の給与水準の低下,固定給のない採用形態(ノキ弁)や司法修習終了後の即時独立(即独)が増加するなど,新人弁護士の苦境が報道されるようになって久しい。各種統計上,弁護士全体の収入も大幅な減少傾向にあり,問題は新人のみに留まらない。
このような状況のなか,法科大学院適性試験受験者が,2011(平成23)年7249人,2012(平成24)年5967人,2013(平成25)年4945人,2014(平成26)年4091人,2015(平成27)年3621人,2016(平成28)年3286人,本年3086人と減少の一途を辿り,適性試験が開始された2003(平成15)年に比べ10分の1以下にまで激減しているように,有為な人材が法曹界を敬遠する傾向に歯止めがきかなくなっている。優れた人材が供給されなければ,将来的な弁護士の質の低下は必至である。
さらに,弁護士は基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命としている(弁護士法第1条)が,行き過ぎた弁護士増加は,その使命を果たすための前提となる弁護士活動の基盤と弁護士自治を破壊する。これにより最終的に不利益を被るのは国民である。
このような数々の悪影響は,司法制度改革による急激かつ大幅な合格者増員政策に起因するものであり,既に弁護士過剰となっている現状において,早急かつ大幅な司法試験合格者の減少が不可欠である。よって,引き続き当会は政府に対し,司法試験合格者数を1000人以下とするよう求める。
2017(平成29)年11月22日
富山県弁護士会 会長 山 口 敏 彦
地方消費者行政の一層の強化を求める会長声明
近年、全国の消費生活センターに寄せられる消費者被害等に関する相談件数は毎年90万件前後と高水準で推移している。しかも、高齢者についてのこの10年間の相談件数の推移を見ると、年齢が高い層ほど増加傾向が強く、判断力が低下した高齢者を狙った悪質商法や詐欺商法による被害が深刻さを増している。しかし、実際に消費者被害に遭った人の中で消費生活センター等の行政の相談窓口に相談・申出をした人はわずか7.0%にとどまる(消費者庁「平成28年版消費者白書」98頁)。年間90万件に上る相談件数はあくまでも氷山の一角に過ぎない。また、消費者庁の推計によれば、潜在的な被害を含む消費者被害の合計額は、2015年(平成27年)は約6.1兆円に上る(同白書135頁)。
このように消費者被害の実態が深刻さを増す中で、被害の発生を未然に防止し、また事後的に救済するために、地方消費者行政の一層の充実が求められている。とりわけ、地方消費者行政の体制を維持していく上で財政基盤を確保することが極めて重要であるところ、現在の地方消費者行政の財政基盤は、地方消費者行政推進交付金等の国の支援により支えられている。しかし、同交付金の適用対象は2017年度(平成29年度)までの新規事業に限定されており、このままでは地方消費者行政の体制確保が後退するおそれがある。
また、現在、地方公共団体が担っている消費者被害の防止・救済に関する事務の中で、消費生活情報のPIO―NETへの登録事務や違反業者への行政処分事務、消費者安全法に基づく重大事故情報の通知事務、適格消費者団体への支援事務等については、日本国内の消費者被害情報を集約し、広域的被害を防止するという意味合いを持つ。これらの事務は国と地方公共団体相互に利害関係がある事務であり、消費者被害防止・救済のために全国的な水準を向上させる必要性が大きいため、国が恒久的に財政負担を負うべきである。
さらに、今後の地方消費者行政の役割として、他部署・他機関との連携による高齢者見守りネットワークの構築や官民連携によるきめ細やかな消費者啓発・見守りの実施が重要である。また、違法な事業活動に対する法執行件数が減少しており、商品事故に関する原因究明や商品テスト担当職員が減少しているのも現状である。そのため担当職員の人員増加及び専門的資質の向上に向けて、国民生活センターによる研修実施や教材提供を一層拡充するなど、具体的な政策を検討すべきである。
そこで、当会は、消費者行政の体制整備を一層推進し、消費者被害の発生の防止を図るため、国に対し、以下の施策をとるよう求める。
1 地方消費者行政推進のための交付金の継続
国は、地方公共団体の消費者行政の体制・機能強化を推進するための特定財源である「地方消費者行政推進交付金」の実施要領について、2017年度(平成29年度)までの新規事業に適用対象を限定している点を、2018年度(平成30年度)以降の新規事業を適用対象に含めるよう改正するとともに、消費者行政の相談体制、啓発教育体制、執行体制等の基盤拡充に関する事業を適用対象に含めるよう改正し、同交付金を少なくとも今後10年程度は継続すべきである。
2 国の事務の性質を有する消費者行政費用に対する恒久的財政負担
国は、地方公共団体が実施する消費者行政機能のうち、消費生活相談情報の登録事務、重大事故情報の通知事務、違反業者への行政処分事務、適格消費者団体の活動支援事務など、国と地方公共団体相互の利害に関係する事務に関する予算の相当部分について、地方財政法第10条を改正して国が恒久的に財政負担する事務として位置付けるべきである。
3 地方消費者行政職員の増員と資質向上
国は、地方消費者行政における法執行、啓発・地域連携等の企画立案、他部署・他機関との連絡調整、商品テスト等の事務を担当する職員の配置人数の増加及び専門的資質の向上に向け、実効性ある施策を講ずべきである。以 上
2017(平成29)年9月20日
富山県弁護士会 会長 山 口 敏 彦
民法の成年年齢引下げに反対する会長声明
1. 当会は、若年者への消費者被害の拡大を防止する観点から、現時点での民法の成年年齢引下げに反対する。
2. 選挙年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げる公職選挙法の一部を改正する法律が2016年6月19日に施行された。これを受けて、政府は、現在、民法の成年年齢を20歳から18歳へ引き下げることを議論している。
しかし、民法の成年年齢を20歳から18歳へ引き下げることには多くの問題がある。
3. そのうちの大きな問題の一つは、18歳、19歳の若年者が、未成年者取消権を失うことにより、若年者への消費者被害が増加する可能性が高いことである。
若年者は、社会経験が不十分なことや被害にあったときの対応能力を十分に備えていないことから、様々な消費者被害に巻き込まれやすい。加えて、18歳、19歳という年齢は、就職、進学、転居等の人生における大きな節目を迎え、直接悪質業者の勧誘に曝され、高額の支払いを伴う契約を締結させられる機会が一気に増える時期である。
そこで、民法は、未成年者が単独で行った法律行為は未成年者であることのみを理由に取り消すことができるよう定め、未成年者の保護を図ってきた(民法第5条第2項)。
そして、未成年者取消権は、未成年者に違法もしくは不当な契約締結を勧誘しようとする悪質な事業者に対する大きな抑止力となってきた。このことは、未成年者取消権を失う20歳から消費者被害の相談件数が急増すると国民生活センターが報告していることから明らかである。
したがって、18歳、19歳の若年者が未成年者取消権を失えば、消費者被害に巻き込まれる可能性が高まることは確実であって、民法の成年年齢引下げは若年者への消費者被害の増加につながる大きな危険を有している。
4. また、若年者に対する消費者被害増加を防止するためには、若年者または消費者全般を保護するための法改正や、より一層の消費者教育の拡充が重要である。
しかし、我が国では、そのような施策の実施は現時点では十分であるとはいえず、そもそも、若年者の消費者被害の実態に対する理解も十分とはいえない。
成年年齢を引き下げる前に、こうした若年者への消費者被害拡大を防止し、若年者が安心して社会に出られるように施策が十分に準備されている必要がある。
そして、そのような施策が十分なものといえるかについて、国民全体で検討し、議論を重ねた上で、成年年齢引下げの是非を判断していくべきである。
5. 当会は、民法の成年年齢の引下げについては、若年者への消費者被害拡大を防止するための十分な施策の準備と、時間をかけた国民的議論を経た上で決定していく必要があると考える。
よって、これらが実現していない現時点において、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることには反対する。 以上
2017(平成29)年8月28日
富山県弁護士会 会長 山 口 敏 彦
組織的犯罪処罰法の改定(いわゆる共謀罪の新設)に抗議する会長声明
去る6月15日、参議院本会議において、いわゆる共謀罪(テロ等準備罪)の新設を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改定案の採決が行われ、同法案は賛成多数で可決成立した。参議院法務委員会での審議が尽くされないまま、委員会採決を省略して本会議での採決が強行されるという、異例の手続きによる成立であった。
これまで当会は、以下の理由から改定に強く反対してきたところである。即ち、第1に、テロ対策目的での共謀罪新設を必要とする立法事実は認め難いこと、第2に、処罰対象を絞り、あるいは捜査機関の権限濫用を防止するために犯罪成立要件が加重されたとは言えず、過去に3度廃案になった共謀罪法案とその本質は変わっていないこと、第3に、法益侵害に向けられた具体的な危険性がある行為を処罰対象とし、未遂犯すら例外とし、より前段階の予備罪や陰謀・共謀罪は重大な犯罪について極めて例外的に処罰することを原則としている我が国の刑事法体系を根本から覆すものであること、第4に、共謀罪の成立要件がきわめて曖昧であるため、捜査機関の恣意的な解釈・運用を許すものとなること、第5に、犯罪計画や目的といった内心の探求が不可欠となり、自白の強要や盗聴捜査等が横行し、プライバシー侵害と監視の中で市民の自由な活動が萎縮するおそれがあること、である。
共謀罪は、犯罪の「共謀」という内心を処罰対象とするため、人の内心を探求する捜査を拡大・助長するものであり、思想・良心の自由(憲法19条)、表現の自由、通信の秘密(21条)、プライバシー権(13条)といった憲法上の基本的人権を侵害するおそれが大きい。また、犯罪の成立要件が曖昧であるため、犯罪構成要件の適正さと明確性を求める適正手続条項(31条)にも抵触する可能性がある。この共謀罪の捜査及び処罰によって民主主義の過程そのものが回復不能なまでに傷つけられることを危惧せざるを得ない。
当会は、かかる憲法違反の疑いのある法律が成立したことに対し強く抗議するとともに、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする職能集団として、今後とも、本法律の廃止に向けた取組みを続けることを表明するものである。
2017(平成29)年6月21日
富山県弁護士会 会長 山 口 敏 彦
修習給付金を支給する制度を創設する裁判所法改正についての会長声明
2017年4月19日、司法修習生に対して修習給付金を支給する裁判所法の一部改正法が成立し、同年11月から修習を開始する司法修習生から、修習給付金が支給されることになった。
2011年に給費制が廃止され、修習資金を貸与する制度(貸与制)に移行してから司法修習生は、修習のために約300万円の貸与金を負担することとなり、法科大学院や大学の奨学金の債務も合わせて多額の債務を負担する者が少なくない。近年法曹志望者は激減しているが、このような経済的負担の重さが一因となっていることが指摘されており、当会でも2013年3月28日付の「法曹人口の急激な増加を改め、司法修習生に対する適切な経済的支援を求める声明」などにより、司法修習生の経済的支援の必要性を訴えてきたところである。
今回の裁判所法の改正により支給されることになる修習給付金は、貸与制導入以前の給費よりは金額は少ないものの、司法修習生が充実した司法修習を行うための経済的支援の制度として、大きな一歩を踏み出すものである。当会は、この制度の創設を歓迎し、この間、司法修習生に対する経済的支援の制度の創設に賛同しご尽力いただいた国会議員や、署名活動等に協力いただいた市民の皆様に対して、あらためて心より感謝申し上げる。
ところで、今回の改正では、2011年11月から2016年11月までに司法修習生に採用された者には、給付金制度が遡及的に適用されないことになっている。しかし、今回の法改正がなされるに至った背景として、近年、弁護士の所得が著しく低下している現実があることを忘れてはならない。すなわち、1年目の弁護士の所得の中央値は、2010年は524万円であったのに対して、2015年は317万円となっており、約40%も減少している。司法修習費用の貸与を受けている者の中には、大学や法科大学院の学費のための奨学金の返済を行わなければならない者もあることを考えれば、このような経済的状況において貸与金を返済することは、相当な困難を伴うものである。このような現実を踏まえて今回の法改正の背景を考えれば、既に司法修習を終え、また、現在司法修習を受けている貸与制世代に対しても、新たな制度と同等の経済的支援がなされなければならない。
そもそも、司法制度は、三権の一翼として、法の支配を社会の隅々まで行き渡らせ、市民の権利を実現するための社会に不可欠な基盤であり、法曹は、その司法を担う重要な役割を負っている。このため国は、司法試験合格者に法曹にふさわしい実務能力を習得させるための司法修習を命ずるとともに、司法修習生に修習専念義務を課して、原則として兼業等を行うことを禁止している。このような制度のもとに司法修習に専念して、司法を担う重要な役割を果たそうとする者に対して、多額の司法修習費用を負担させたまま放置することは、制度の趣旨にも反するものといえる。そこで、当会は、政府に対し、2011年11月から2016年11月までに司法修習生に採用された者に対して、少なくとも今回の法改正により創設される修習給付金と同等の経済的支援がなされるよう、さらなる法改正等の対応を行うことを求める。以 上
2017(平成29)年4月20日
富山県弁護士会 会長 山 口 敏 彦