平成22年7月27日高校無償化法の平等な適用を求める会長声明
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1.2010年(平成22年)4月1日、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(以下、「高校無償化法」という)が施行され、いわゆる高校無償化制度が開始された。
高校無償化法は、公立の高等学校については授業料を不徴収とし、私立学校等については一定額の就学援助金を助成するというもので、中等教育の漸進的無償化を求める「子どもの権利条約」28条や「国際人権規約(社会権規約)」13条の趣旨に沿うものであり、評価できる。
2.ところで、高校無償化法の対象となる「高等学校等」には、「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定める」各種学校が含まれ、その中には外国人学校も規定されている(同法2条1項5号、同法施行規則1条1項2号)。ところが、文部科学省は高校無償化制度の対象となる外国人学校31校を告示し、これに東京韓国学校中・高等部や東京中華学校、横浜中華学院等を含みながら、朝鮮高級学校についてはこれに含めず、第三者機関を設置して最終判断をすることとした。
3.しかしながら、高校無償化法は、「高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的とする」(1条)ものであり、そのような「経済的負担の軽減」や「教育の機会均等」は、朝鮮学校に通う生徒・保護者等にとっても等しく保障されるべきものである。
また、日本全国に10校ある朝鮮高級学校は、それぞれ都道府県知事から各種学校の認可を受け、その際教育課程に関する情報も必要に応じ提出されている。現に日本国内の多くの大学が「高等学校を卒業した者と同等以上の学力がある」として朝鮮高級学校卒業生に大学受験資格を認めているし、全国高校ラグビー選手権大会、全国高校サッカー選手権大会の代表に朝鮮高級学校が選ばれるなどしている。朝鮮高級学校は、既に日本社会において高等学校に準ずるものとして評価され、高等学校とほぼ同等の取り扱いがなされているのである。
4.しかるに、日本の私立学校や他の外国人学校と区別し、朝鮮高級学校を高校無償化制度の対象から当面除外し最終的判断を先送りした政府の前記対応は、朝鮮高級学校に通う生徒に対する合理的根拠のない差別であって、重大な人権侵害であると言わざるを得ない。すなわち、法の下の平等を定める憲法14条に反し、国際人権規約(社会権規約2条2項、自由権規約26条)及び人種差別撤廃条約5条等が禁止する差別にも当たるものである。
また、本年3月9日、国連人種差別撤廃委員会は、教育制度において人種主義を克服するための具体的なプログラムの実施に関する情報が欠けていること、韓国・朝鮮学校に通う生徒らに対する露骨で粗野な発言と行動が相次いでいること、韓国・朝鮮等出身者の子孫のための学校が公的扶助、助成金、免税措置において差別的な取り扱いを受けていること、そして、朝鮮高級学校を高校無償化の対象から除外する動きなどについて懸念を表明している。
5.よって、当会は、内閣総理大臣及び文部科学大臣に対し、朝鮮高級学校を高校無償化法の対象から排除せず、直ちに本法律2条1項の指定をするよう強く求めるものである。
以上
2010年(平成22年)7月27日
岐阜県弁護士会 会長 山田秀樹
7・11緊急市民講座「本当に大丈夫?日本の平和は」
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岐阜県弁護士会は、5月25日の総会において、「安全保障関連法案に強く反対する総会決議」を採択しました。同決議にあるように、安全保障関連法案は、憲法第9条の恒久平和主義、国民主権の基本原理、立憲主義の理念に著しく違反します。そしてこのことは、この間の国会論戦において、ますます明らかになってきました。たとえば、政府関係者が、「憲法の解釈を法律に合わせる」「国政情勢が変わったから1972年政府解釈を変える」「判断するのは裁判所ではなく、国会である」などど発言するのは、とても憲法擁護義務のある者の言葉とは思えません。参考人の憲法学者全員が「違憲」と述べたのは当然のことです。
私たち弁護士及び弁護士会は、「基本的人権の尊重と社会正義の実現」を使命としています。そして、最大の人権侵害である戦争は絶対に阻止しなければなりません。同時に、市民の皆様への様々な情報を
発信するのも私たちの責務と考えています。
そこで、下記及びチラシ記載のように「7・11緊急市民講座」を開催することとしました。皆様方にあっては、是非お出かけいただくようお願い致します。また、可能な限り、ご家族や友人・知人の方々に参加を呼び掛けていただければ幸いです。
以上、どうか宜しくお願い致します。
日時:7月11日(土)午後1時30分~4時30分
場所:岐阜県弁護士会館 3階ホール
第1部[13:45~]・矢﨑暁子弁護士[愛知県弁護士会所属]
国会で次々と明らかになる「安全保障法制」。その危険性や違憲性などを鋭く解き明かす。
第2部[15:00~]・清末愛砂准教授[室蘭工業大学准教授:憲法学、女性学、平和学等]
軍事力で平和を作れるのか。真の平和は、テロもない、女性に対する暴力もない、人権が守られる社会ではないか。
岐阜県弁護士会 会長 森裕之
憲法委員会委員長 河合良房
*平成27年度のものだと思います。(会長名から判断)
平成20年5月20日自衛隊イラク派兵違憲判決に関する会長声明
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憲法記念日前日の5月2日、自衛隊がイラクで行っている空輸活動が憲法9条1項に違反していると判断した名古屋高裁判決が確定した。憲法9条に関する違憲判決が確定したことは初めてのことであり、歴史的意義を有する判決となった。
当会は、2004年(平成16年)1月及び同年6月の2度にわたって、自衛隊のイラク派兵に反対する声明を発表してきた。当会は、イラク派兵に反対する理由として、イラク特措法はイラクにおける自衛隊の武力行使を容認するもので、憲法前文及び第9条に違反するおそれが極めて大きいこと、イラクは戦争状態にあり、その全土が戦闘地域であって、イラク特措法2条にいう非戦闘地域は存在しないことをあげた。今回の名古屋高裁判決は、当会の過去2度の声明と基本的に同じ立場をとるものである。
名古屋高裁は、イラクの現状と自衛隊の活動を詳細に認定したうえで、自衛隊の空輸活動は、それ自体が武力行使にあたらないとしても、「多国籍軍の戦闘行為にとって必要不可欠な軍事上の後方支援を行っている」ものであり、「他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったと評価を受けざるを得ない行動である」と述べている。そして、「政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲とした場合であっても」憲法9条1項に反する活動が含まれていることを認めた。この違憲判断に至る論理は極めて明快である。これまで裁判所が憲法判断を回避する傾向にある中で、イラクの現実から目を逸らさずに正面から憲法判断を行ったことは、司法府としての責務を全うしたものとして高く評価されるべきである。
また、平和的生存権の具体的権利性を認めた点も高く評価されるべきである。判決は平和の基盤があってこそ憲法の保障する基本的人権が存立しうることを理由に、平和的生存権が、「全ての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利であるということができ、単に憲法の基本的精神や理念を表明したに留まるものではない」としている。これまで、「平和」が抽象的概念であること等を理由に具体的権利性が認められてこなかったが、名古屋高裁はそのような立場を批判して平和的生存権の具体的権利性を肯定しており、画期的な判決であるといえる。
このような歴史的意義を有する判決に対し、内閣総理大臣をはじめとする政府関係者や自衛隊幹部からは、「違憲判断は傍論にすぎない」「関係ない」などとしてこれを軽視・無視する発言が相次いでいる。しかしながら、イラク派兵が憲法違反かどうかは、国家賠償請求の要件である公務員の行為の違法性を判断するためのものであって、正に本論についての判断である。これを「傍論」と強弁するのは誤った評価であり、認められない。
憲法は国の最高法規であって、憲法に反する国家行為は違憲・無効であるがこの最高法規性を確保するため裁判所には違憲審査権が与えられている。他方、政府は憲法を尊重し擁護する義務を負っているのであるから、裁判所が違憲判断をした場合には、政府はこれを真摯に受け止め、自らの行為を憲法に適合するように是正しなければならない、しかし、判決以降の政府及び自衛隊関係者による発言は、違憲判断を真摯に受け止めるものではなく、むしろ司法を軽視すると同時に最高法規たる憲法をも軽視するものであって、到底看過することはできない。
当会は、政府及び自衛隊関係者による名古屋高裁判決を軽視・無視する一連の発言に対し、強く抗議する。また、当会は、日本政府に対し、司法府の憲法判断を尊重して違憲状態を解消し、自衛隊をイラクから即時撤退させることを強く求める。
2008年(平成20年)5月20日
岐阜県弁護士会 会長 幅隆彦
平成20年4月16日死刑執行に関する会長声明
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本年4月10日、東京拘置所で2名、大阪拘置所で2名の合計4名の死刑確定者に対して死刑が執行された。本年2月の3名に対する死刑執行後わずか2か月という短期間に執行されたものである。
国連は1989年12月に死刑廃止条約を採択し、また国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)が1997年以降毎年「死刑廃止に関する決議」を行い、その決議の中で日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面するものに対する権利保障を遵守するとともに、死刑の
完全な廃止を考慮するよう求める」旨の呼びかけを行った。こうした状況の下で、死刑廃止国は着実に増加し、2007年12月現在、死刑存置国62か国に対して、死刑廃止国は135か国(法律で廃止している国と過去10年以上執行していない事実上の廃止国を含む)と、存置国を大きく上回っており、死刑廃止が国際的な潮流となっている。
また、昨年5月18日に示された国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告において、我が国の死刑制度の問題が端的に示された上で、死刑の執行を速やかに停止すべきことが勧告された。
さらに、昨年12月18日には、国連総会本会議において、全ての死刑存置国に対して死刑執行の停止を求める決議が圧倒的多数で採択された。また、この決議に先立ち、同月7日、国連人権高等弁務官から我が国における死刑執行に対して強い遺憾の意が表明されるという異例の事態が生じた。
我が国の死刑確定者に対する度重なる死刑執行は、このような国際的な潮流に逆行し、我が国に直接向けられた批判にも耳を傾けない事を宣言するに等しいものであり、誠に遺憾である。
我が国では、過去に4つの死刑確定事件(免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)について再審無罪判決が確定し、また2007年4月には佐賀県内で3名の女性が殺害されたとされる事件(いわゆる北方事件)で死刑を求刑された被告人に対する無罪が確定するなど、死刑事件にも誤判や、誤った訴追がなされることが明らかになった。このような過誤を生じるに至った制度上、運用上の問題点について抜本的な改善が図られていない現状では、誤った死刑の危険性が依然として存在する。また、死刑と無期の量刑についても、裁判所によって判断の分かれる事例が相次いで出されており、死刑についての明確な基準が存在しない。
日本弁護士連合会は、2002年11月に発表した「死刑制度問題に関する提言」及び2004年10月に採択された「死刑執行停止法の制定、死刑制度に関する情報の公開及び死刑問題調査会の設置を求める決議」において、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱してきた。
今、我が国に求められているのは、死刑の執行を急ぐことではなく、国際的な動向も踏まえた冷静で開かれた議論を行うことである。特に、来年5月21日から開始される裁判員制度の下では、裁判員が死刑を含む量刑判断に参加することになることからも、死刑制度の運用と実態を国民が正確に知り、死刑制度の存廃について国民的議論を尽くすことの重要性はますます高くなっていると言わなければならない。
よって、当会は、政府に対し、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう強く求めるものである。
2008年(平成20年)4月16日
岐阜県弁護士会 会長 幅隆彦
平成19年4月14日憲法改正国民投票法案の慎重審議を求める会長声明
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当会は、2005年10月1日、憲法調査推進議員連盟の日本国憲法改正国民投票法案に若干の修正を加えた与党の法案骨子について、同骨子の問題点を指摘し、同案に基づく法案の国会上程に反対する声明を発表した。また、当会は、2006年10月16日、与党提出の法律案及び民主党提出の法律案に反対する声明を発表した。
その後、与党により民主党案をふまえた修正案の提出がなされ、今国会中にも法案成立の可能性が高いとの報道がなされている。修正案では広報協議会が行う広報において賛成意見と反対意見を平等に扱うものとし、国民投票運動禁止の範囲を限定するなどの修正がなされているが、それでもなお、問題点の解消は不十分であって、国民主権・基本的人権の保障という憲法の基本原則からして重大な問題点を残している。
具体的には、?国民投票までの期間が国会による発議後最短60日以内とされていて、国民的議論を尽くすには短すぎること、?A各条項ごと又は問題点ごとに個別の賛否の意思を問う投票方法をとることが明確にされておらず、一括投票の余地を残していて、国民の意思を正確に反映しないおそれがあること、?B罰則はないものの、公務員及び教育者の「影響力」を利用した国民投票運動が禁止されており、「影響力」というあいまいな文言による規制が表現行為の萎縮効果を生じさせかねないこと、?C広報協議会の構成委員を、各議院における各会派の所属議員数の比率により割り当てて選任するものとしていて、反対意見が適切に反映されないおそれがあること、?D最低投票率の定めがなく、少数の賛成によって憲法改正がなされるおそれがあること、?E投票日前14日間を除いて広告放送に何らの制約も設けられておらず、資金力のある者のみの広告放送によって、国民の冷静な議論による意思形成が妨げられるおそれがあること、?F国民投票無効訴訟の提訴帰還を30日以内とし、一審の管轄裁判所を東京高等裁判所に限定し、国民投票の無効事由も限定していて、不公正な憲法改正を防いで国民の権利を擁護する最後の砦である裁判所の機能が制限されていることなどの重大な問題点がある。
このように現在審議されている法案には問題があるので、当会は、憲法改正国民投票法の制定の必要性の有無及び国民主権主義に基づいた真に国民のための憲法改正国民投票法とはどういうものかについて議論を十分尽くすよう、慎重な審議がなされることを求めるものである。
2007年(平成19年)4月14日
岐阜県弁護士会 会長 渡邊一
平成18年10月16日憲法改正国民投票法案に対する会長声明
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教育基本法改正案が臨時国会で審理され、本年11月15日に衆議院特別委員会において与党単独で強行採決がなされ、今日にも衆議院を通過すると報道されている。
ところで、当会は、教育基本法改正案につき、本年6月3日に改正に反対する旨の会長声明を発しているところである。その趣旨は、第1に、教育基本法は教育の根幹に関わる基本的な法律であるところ、その法案化の過程で情報が十分国民に公開されておらず、国民の十分な議論が保障されていなかったこと、第2に、なぜ今教育基本法の改正が必要であるかの理由が明確でなく、「いじめ」などの深刻な問題が教育基本法の不備や欠陥によるとの検証がなされていないこと、第3に、改正案に、国と郷土を愛する態度を養うなどを教育の目標と掲げ、内心の自由に抵触する恐れがあること、公益や国益を強調し、個人の尊厳を後退させる恐れがあること、現行教育基本法10条の保障する「教育の独立・中立」を脅かす恐れがあることなどの看過できない問題点があることである。教育基本法改正に関するこれらの問題点は現在においても改善されていない。
最近、全国各地において、「いじめ」で生徒が自殺したり、高校において教育指導要領に反した授業が広く行われていた事例などが発生し、国民の間に教育及び教育現場のあり方について深刻な問題を投げかけており、これらを含めた教育問題全体についての協議が必要とされている。
しかし、今回の教育基本法の改正にあたり、わが国の教育問題をどのように解決し、そのためにこの改正案がどのような効用を有するのか、未だ国民に明らかにされているとは言えない。特に、これまでの改正論議では、国民に十分な情報を提供し、議論を尽くしているとはいえず、最近では、政府主催の教育改革タウンミーティングでの「やらせ質問」問題まで発覚した。
以上のとおり、当会としては、改正案には、憲法上の疑義や、未だ十分検討されていない事項もあり、政府は徒にその成立を急ぐことなく、国民的コンセンサスを得る努力を払うべきであり、今国会における拙速な可決・成立には強く反対する。
2006年(平成18年)10月16日
岐阜県弁護士会 会長 武藤壽
平成18年6月3日教育基本法の「改正」に反対する会長声明
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1.政府は、本年4月28日、教育基本法の全部を「改正」する法案を国会に提出した。今国会での改正法案の成立に向けて、衆議院においては、特別委員会が設置され、審議が開始された。
2.しかし、改正法案については、法案化に至る過程において、十分な議論が行われたとは言い難く、法改正の手続に重大な問題がある。
改正法案の元になった「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(最終報告)」は、2003年6月に設置された「与党教育基本法改正に関する協議会」及びその下の「検討会」において、精力的な議論を積み重ねたうえで取りまとめられたものとされるが、この間、2004年6月に中間報告が公表されたことを除いては、全て非公開にて議論が進められており、国民に向けて開かれた議論が行われたとは言い難い。
教育基本法は、憲法とともに戦後の平和的・民主的教育の原理を支え、戦後教育の基本方針となってきた法律である。この「教育の憲法」とも言われる教育基本法に関し、各界各層の広範かつ慎重な意見交換を経ないまま、与党協議会という極めて限定された密室審議をもとに改正法案を作成し今国会に提出したことは、手続的にも極めて不適切である。
3.そもそも、なぜ今教育基本法の改正なのか不明である。
「与党教育基本法改正に関する協議会」の設置に先立つ2003年3月、中央教育審議会が作成した答申においては、「教育の現状と課題」として、「いじめ、不登校、中途退学、学級崩壊などの深刻な問題が依然として存在」することが指摘され、そのような「危機的状況を打破し、新しい時代にふさわしい教育を実現するために」改正が必要であるとされている。改正法案は上記答申を受けたものであるが、しかしこれまでの間、上記答申が指摘するような教育現場の問題が教育基本法の不備や欠陥によるものであるとの検証は全くなされていない。
4.内容的にも、改正法案は、憲法及び現行教育基本法の理念に照らし、看過できない問題点を含んでいる。
(1)改正法案は、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する(中略)態度を養うこと」を教育の目標として掲げている。
しかし、国を愛するか否かを含め、国を愛する心情の内容は、個人の内心の自由に属する問題であり、国が介入し管理・支配してはならない領域である。公教育の場で「国を愛する」ことが当然であると教えることは、内心の自由を保障する憲法19条に抵触する恐れがある。
さらに、現行教育基本法は、明治憲法下の「愛国心」教育が軍国主義という国策のための教育となりこのことが戦争の惨禍の一因となったことを反省し、平和国家建設の決意により誕生したものであるが、「国を愛する態度」を養う教育が行われるとすれば、正に時代の流れに逆行するものである。
(2)改正法案は、その前文に、「公共の精神を尊び」、「伝統を継承し」、「新しい文化の創造を目指す教育を推進する」ことなどを盛り込み、教育の目標として、「公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと」を明記すると共に、現行教育基本法第1条の教育の目的から「個人の価値をたっとび」と「自主的精神に充ちた」の文言を削除している。
ここには教育の場において、公益や国益を強調して憲法や現行教育基本法の理念である個人の尊厳を後退させようとする意図が窺える。
(3)改正法案は、さらに第16条の「教育行政」に関して、現行教育基本法第10条1項の「教育は国民全体に対し直接の責任を負って行われるべきものである」との規定を削除し、それに代えて「この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり」との文言を加え、政府及び地方公共団体に対し、「教育振興基本計画」の策定を
義務づけている。この規定は、現行教育基本法第10条の保障する「教育の独立・中立」を脅かすのではないかと思われる。
(4)そのほか、義務教育について規定した現行教育基本法第4条から「9年間」の文言を削除しているため、義務教育期間の弾力化を通じて、教育の平等及び機会均等の理念を変質させるおそれがあること、現行教育基本法第5条の「男女共学」規定が削除されており、男女平等の理念を後退させるおそれがあることなどの問題点も指摘できる。
5.以上のとおり、改正法案は、法案化の手続において著しく拙速であるとともに、その内容においても重大な問題をはらんでいると言わざるを得ない。よって当会は、改正法案に基づく教育基本法の「改正」に強く反対する。
2006年(平成18年)6月3日
岐阜県弁護士会 会長 武藤壽
平成22年7月27日全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明
ttp;//www.gifuben.org/oshirase/seimei/seimei100727-2.html
少年審判手続きにおいて、弁護士は、「付添人」という立場で、裁判所の事実認定や処分決定が適正に行われるよう少年に対し必要な法的援助を行い、また家庭や学校等の環境調整を行うなど少年の立ち直りを支援する活動を行っている。心身ともに未成熟であり、また取り巻く環境に恵まれていない非行少年に対し、法的な援助・支援を行う弁護士付添人の必要性は極めて高い。とりわけ少年鑑別所で身体拘束を受けた少年は、成育歴や家庭環境に問題を抱えていることが多く、少年院送致等の重大な処分を受ける可能性も高いことから、付添人による法的援助の必要性は非常に高い。わが国が批准している子どもの権利条約37条(d)
においても、「自由を奪われた全ての児童は、・・・弁護人(及び)その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有する」と規定されているところである。
しかし、2008年度の統計によれば、少年審判手続きにおける弁護士付添人の選任率は、少年鑑別所に収容されて審判を受ける少年(いわゆる身柄事件)についてさえ約40%に過ぎない。成人の刑事裁判における弁護人選任率が98%であることに比べると、少年に対する法的援助は極めて不十分といわざるを得ない。
現在実施されている国選付添人制度の対象事件は、検察官関与決定あるいは被害者傍聴の申出がされた事件以外は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件か、死刑または無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪の事件(殺人、強盗等)に限定されており、しかも裁判所が必要と認めた場合に裁量で付すことができる限定的な制度に止まっている。
日本弁護士連合会では、身体拘束をされた少年の法的援助を受ける権利を保障するため、時限的な措置として、全会員から特別会費を徴収して少年・刑事財政基金を設置し、これを財源として国選付添人制度の対象とならない事件について少年・保護者に対し弁護士費用を援助する少年保護事件付添援助制度を実施してきた。そして、当会においては2009年6月から身柄事件全件に対する当番付添人制度を実施し、観護措置を取られた少年から当番付添人の希望があった場合は、弁護士が無料で面会に行き、その後の受任についても上記援助制度を利用することによって、少年や保護者が金銭的負担なく付添人を選任できる態勢を整えてきた。しかしながら、少年に対し適正手続きを保障し、更生の支援を行うという法的援助を少年に与えることは、本来、国の責務として行われるべきものであり、弁護士会の財政的負担によって支えられている援助制度に頼るべきものではない。
よって、当会は、国選付添人制度の対象事件を、少なくとも少年鑑別所で身体拘束を受けた全ての少年の事件に拡大することを強く求める。
2010年(平成22年)7月27日
岐阜県弁護士会 会長 山田秀樹