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2227 愛知県弁護士会③(0)

引用元 

ちょこ
憲法施行70年を迎える日に寄せる会長談話
2017年5月 3日
今日、日本国憲法は70年目を迎えます。1947年(昭和22年)5月3日に施行された日本国憲法は、戦後わが国が平和のうちに繁栄し、国際社会から高い信頼を得るのに重要な役割を果たしてきました。主権者たる国民は、戦後憲法が施行されてから今日までの間、憲法の精神をはぐくむと共に、憲法と現実社会との相克の中で生じる困難を克服しようと行動してきました。また、私たち弁護士も、司法の一翼を担う者として、ときに生じる憲法違反の実態を是正しようと取り組んできました。
 昨年夏の参議院選挙から選挙権年齢が引き下げられ、18歳以上の若い人たちにも選挙権が認められました。若い世代と憲法の状況について語る時間を共に過ごしたいと思います。
 憲法は、国家権力の濫用から自由や権利を護るため主権者である国民が定めたきまりであり、国家権力を制限、拘束するものです。これを立憲主義といいますが、日本国憲法は、個人よりも国家が尊重され国民の自由や権利が侵害されてきた戦前、戦中の歴史に対する深い反省の下、立憲主義を理念として制定されたものです。世界人権宣言(1948年採択)に先駆けて豊富な人権規定を定め、世界に例をみない徹底した恒久平和主義を採用しています。日本国憲法は、私たち国民の自由や権利を護るために過去の反省を踏まえ、また未来への指針を示している大切な拠り所です。
 21世紀となった今日、私たちの社会は新たな課題を抱えています。貧困と格差の広がりにより、個人が尊厳をもって労働し生存する権利が脅かされるという極めて深刻な事態が常態化しています。また、他国と協調するという理由のもとに、恒久平和主義に反する集団的自衛権の行使を可能とした安保法制が敷かれ、立憲主義の危機ともいえる状況も生じています。最近の憲法改正をめぐる議論では、個人よりも国家を重視することや、緊急事態条項(国家緊急権)により一時的に権限を内閣に集中させるといった意見が発表されていますが、それらが認められれば、国民の自由や権利を護るため国家権力を制限するという立憲主義は大きく損なわれることとなってしまいます。
 私たち主権者が立憲主義を脅かす新たな問題を克服するためには、十分な情報が得られ、権力から監視されることなく自由闊達な議論ができ、熟慮のための十分な時間を与えられることが必要です。現在、国会では、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案が審議されています。監視社会につながるおそれがあると心配されます。今こそ、国民に知る権利と自由に議論をする場が十分に保障されることが大切です。
 私たち弁護士は、70年を振り返る今こそ、弁護士の使命として、一人ひとりが個性豊かに次の時代を志向する主権者たる国民のため、日本国憲法の理念に反する諸問題の克服に果敢に取り組んで行く最大限の努力をすることを誓い、主権者と共に考え行動していきたいと思います。
2017年(平成29年)5月3日
愛知県弁護士会 会長 池田 桂子

朝鮮学校に対する補助金停止に反対する会長声明
子どもたちは人類の未来を担うものであり、平和な社会を築くためには、その育ちを平等に保障することも、とても大切なことです。その対象は、朝鮮学校で学ぶ子どもたちも決して例外ではありません。日本国憲法第26条1項、同第14条、国際人権規約A規約第13条、子どもの権利条約第28条、同第30条、人種差別撤廃条約第5条は、子どもたちに普通教育及びマイノリティ教育を受ける学習権を保障しており、その保障に関しては平等原則に違反してはならないとされています。
ところが、自由民主党は、2016年2月7日、「北朝鮮による弾道ミサイル発射に対する緊急党声明」を出し、政府に対し、同党の北朝鮮による拉致問題対策本部が昨年6月に提言した「対北朝鮮措置に関する要請」13項目の制裁強化策を速やかに実施するよう求めました。同「要請」第7項は朝鮮学校に対する補助金の交付について「朝鮮学校へ補助金を支出している地方公共団体に対し、公益性の有無を厳しく指摘し、全面停止を強く指導・助言すること」としています。
 この声明は、地方自治体の運営に具体的な影響を及ぼしており、河村たかし名古屋市長は、2016年3月4日の名古屋市議会定例会の場において、「北朝鮮」政府による核実験等を理由に、愛知朝鮮学園に対する2016年度の補助金の全部又は一部の支給を停止すると表明するに至っています。
 国の行為による核実験等は極めて政治的・外交的事由であって、朝鮮学校で学ぶ子どもたちが責めを負うべきものであろうはずがありません。補助金は、地域で学び成長する子どもたちのために分け隔てなく支給されるべきものであって、朝鮮学校に通う子どもたちが他の学校に通う子どもたちと差別されることがあってはなりません。
 2014年8月に採択された国連人種差別撤廃委員会による「日本の第7回~第9回定期報告に関する最終見解」においても、日本国内で地方自治体による朝鮮学校向け補助金の割当ての継続的縮小あるいは停止が行われている現況について、「韓国・朝鮮系の子どもたちの教育を受ける権利が疎外されていることを懸念する」と指摘しており、日本政府が地方自治体に対し、朝鮮学校に対する補助金提供の再開あるいは維持を要請することを奨励しています。
 朝鮮学校に対する補助金停止措置は、政治的対立や恨みを次世代に負の連鎖として引き継がせるものです。これでは、決して平和な社会を築くことはできません。また、その措置は、朝鮮学校に通う子どもたちにとって、重い経済的負担を実質的に課すのみならず、地域社会からの疎外感を増幅させるものであって、これらを容認することは到底できません。
 これらの理由から、当会は、政府に対して、外交問題を理由として朝鮮学校に対する補助金の停止を地方公共団体に指導・助言しないよう求めるとともに、地方公共団体に対して、朝鮮学校に対する補助金の支出について、上記憲法上の権利、教育基本法の趣旨及び各種条約の趣旨に合致した運用を行うよう求めます。
2016(平成28)年3月28日
愛知県弁護士会 会長 川上明彦

少年事件の実名報道に対する会長声明
2017年3月22日 意見・声明の一覧
 本年2月8日発売及び同月23日発売の「週刊新潮」は、名古屋市で発生した殺人事件等について、被告人である元少年の実名を挙げ、顔写真を掲載しました。
 この実名報道は、少年の非行について、氏名、年齢、職業、容ぼうなど本人であるとわかる(推知できる)ような記事又は写真の報道を禁止した少年法第61条に明らかに違反する行為です。
 少年法は、成長の途上にあって将来の可能性ある少年について、たとえ大きな過ちがあったときも、その健全な成長を援助することを通じて(少年法第1条)、犯罪のくり返しを防ぐことを基本理念としています。それは、憲法第13条の個人の尊重、すなわち一人ひとりの「人間の尊厳」を認めあう民主的理念に由来しています。国際的にも、国連子どもの権利条約は、罪を問われる子どものプライバシーを尊重される権利を認め(第40条第2項(b)(ⅶ))、少年司法運営に関する国連最低基準規則第8条も「少年犯罪者の特定に結びつくいかなる情報も公表してはならない。」と定めています。
 重大凶悪な少年非行の原因背景をみると、少年たちは、非行に至る前に、大人たちの不適切な扱いや不良な環境によって、健全な成長を妨げられ、適切な人間関係を形成できない結果、他者に対する加害行為につながってしまっているというのが現実です。少年法は、そのような実態に対する科学的な認識に基づいて、少年の人格を尊重する扱いを通じて自己肯定感を回復し、成長発達を援助するための適切な扱いをすることを目的としています(子どもの権利条約第40条第1項もこのことを謳っています。)。少年の非行については、少年個人の責任に帰して済ませる問題ではなく、子どもの健全な育ちを保障すべき社会全体の責任の問題であると冷静に考えるべきです。
 そして、少年法第61条は、少年が犯した過ちの公表、暴露によって、その人格が否定されることがない社会環境においてこそ、少年法の精神は活かされ、少年の更生も可能になるという合理的な認識に基づいているのです。
 今回の実名報道は、以上のような少年法の精神や少年非行問題に関する国際規範に照らすと、何ら合理性も正当性も認められません。
 現実には報道以外のインターネット上で、既に実名等の情報が拡散されていますが、それもプライバシー権の侵害の違法行為であり、実名報道を正当化するものではありません。さらには、被害者側が実名等で報道されることとの対比も議論されますが、名誉・プライバシー権保護の理念は被害者とその遺族についても尊重されなければなりません。「週刊新潮」の今回の実名報道は被害者の遺影写真を表題に添付する無作法により被害者の名誉と肖像権を侵害し、そっとしておいてほしい遺族の感情を傷つけていることが懸念されます。したがって、被害者報道も少年の実名等の報道を正当化する根拠となるものではありません。
 報道の自由もまた憲法が保障する重要な権利ではあります。しかし、このような事件がなぜ起きたのか、その原因や背景を冷静に分析することが大切であり、実名を公表したり顔写真を掲載したりすることが社会の正当な関心に応える道ではありません。
 今回の実名報道は、元少年の人格を否定することに加えて、その周辺の人々と元少年との関係にも打撃を与え、元少年の社会との関係を断ち切り、更生を妨げかねないという意味において、メディアによる苛酷な私的制裁にほかなりません。一時の世論として犯人の人格さえも完全に葬りたいという処罰感情や排斥的感情が広がることがあっても、報道機関はひとりの人間の人格も否定してはならないという節度を保つことこそ、報道の使命であるというべきです。
 当会は、2005年11月10日付で「週刊新潮の実名報道に対する会長声明」を発表したほか、これまでなされた同様の報道に対し、少年法第61条を遵守するよう重ねて強く要請してきました。特に、本事件に関する「週刊新潮」による実名報道・写真掲載については、2015年2月6日付「少年事件の実名報道に対する会長声明」でも実名報道・写真掲載をすることのないよう要請していたところです。それにもかかわらず、その後も複数回同じ事態が繰り返されたことは極めて遺憾であるといわざるを得ません。
 このような「週刊新潮」の対応に鑑みれば、3月24日に予定されている判決の後にも同じ過ちを繰り返すことが強く危惧されます。
 当会として、今回の実名報道が、明らかに少年法に違反し、かつ、犯罪報道として適正さを欠いていることについて厳重に抗議するとともに、「週刊新潮」を含む報道機関に対して、少年法第61条を遵守し、今後同様の実名報道、写真掲載等がなされることがないよう強く要請します。
2017年(平成29年)3月22日
愛知県弁護士会
会 長 石 原 真 二

南スーダン自衛隊の駆け付け警護等の新任務の運用中止と 部隊撤収を求める会長声明
政府は、11月15日、南スーダンPKO活動(UNMISS 国連南スーダン共和国ミッション)に派遣される陸上自衛隊施設部隊に「駆け付け警護」及び「宿営地の共同防護」の新しい任務を付与する閣議決定を行った。新しい任務を帯びた陸上自衛隊施設部隊第11次隊の主力部隊が11月30日青森から出国し(残存部隊も12月には出国)、12月12日から第11次隊による新任務の運用が始まった。
 駆け付け警護は、離れた場所にいる国連やNGO(非政府組織)の職員等が武装勢力から襲われた場合に現場に駆け付けて救護に当たる活動であり、宿営地の共同防護は、自衛隊と他国の部隊の共同宿営地を武装勢力の襲撃等から防護する活動である。いずれも、昨年改正された「国連平和維持活動等に対する協力に関する法律」(改正PKO法)によって新たに認められた活動である。同法は、自衛隊が駆け付け警護等の活動を行う場合の武器使用の範囲を拡大し、自己保存型の武器使用だけでなく任務遂行のための武器使用を認めた。
 南スーダンでは、7月に首都ジュバにおいて政府軍と反政府勢力の大規模な武力衝突、戦闘があり、市民数百名や中国のPKO要員が殺害され、10月には同国東北部における政府軍と反政府勢力の戦闘で60人以上が死亡した等の報道がされている。このような情勢下で自衛隊が駆け付け警護等の新しい活動に従事するなら、自衛隊が戦闘に巻き込まれて、自衛隊員が他国の兵士や民間人を殺傷し、また殺傷される危険性が極めて大きい。PKO法に基づいて自衛隊を派遣するためには、①紛争当事者の間で停戦合意が成立していること、②受け入れ国及び紛争当事者が派遣に同意していること等が前提になる(いわゆるPKO参加5原則)。しかし、南スーダン政府と反政府武装勢力の間で停戦合意が維持されているとは考え難い。実際に、反政府勢力の指導者であるマシャール前副大統領は10月20日に「7月に起きた戦闘で、和平合意と統一政権は崩壊した」と述べ、また、UNMISSの軍司令官代理は11月24日に「和平合意が維持されているとは言えない」と述べている。
 このような南スーダンの現下の情勢のもとで、派遣部隊に駆け付け警護及び宿営地共同防護の新たな任務を付与することは、仮に改正PKO法が違憲でなかったとしても、同法に違反する。
 前記閣議決定は、反政府武装勢力が系統だった組織性を持たず、支配地域を確立したとは言えないから南スーダンには「国家に準ずる組織」はなく、武力紛争にあたらないとしている。しかし、現実にUNMISSに対する政府軍の襲撃も発生しており、自衛隊が駆け付け警護等の新任務の遂行のため南スーダン政府軍との間で銃火を交える可能性もあるから、仮に政府解釈の立場に立ったとしても、自衛隊が憲法違反の武力行使に至る可能性は否定できないと言わざるを得ない。
 当会は、上記の理由から、政府に対して、南スーダンに派遣された陸上自衛隊に駆け付け警護及び宿営地共同防護の新任務を運用することを直ちに中止するとともに、南スーダンからの自衛隊の撤収を求める。
2016(平成28)年12月13日
愛知県弁護士会 会長 石原真二

自由な社会のために!秘密保護法を阻止しよう
愛知県弁護士会 秘密保護法対策本部ニュース 第27号
秘密保護法対策本部
本部長  石原  真二
日頃より、弁護士会の活動にご協力いただき、誠にありがとうございます。
 政府は、多くの反対の声を押し切り、十分な議論をしないまま、2013年12月6日、特定秘密の保護に関する法律(以下、「秘密保護法」といいます。)を強行採決により成立させ、同法は、2014年12月10日施行されました。秘密保護法は、民主主義社会の根幹である国民の知る権利や報道の自由を侵害するものであり、国民主権を形骸化するものです。国会内の監視機関もその実効性に大きな疑問があり、重罰規定による報道機関等へのけん制もあって、秘密保護法の運用を監視する機能は十分とはいえません。
 衆議院情報監視審査会が本年3月30日に提出し公表された年次報告書には、「審査会において、特定秘密そのものではない事項についても、政府は『答弁を差し控える』旨の答弁をすることが多かった。情報が開示されないと審査会の任務である特定秘密の指定が適正かどうかの調査ができないとの発言が委員からなされているところである。(略)会長から、審査会は特定秘密に関する国民と政府との接点にあるとの観点から、国益と国民の利益をよく勘案し、より良い方向性を作っていけるように関係者が努力する必要がある旨の指摘が幾度もされているところである。(略)政府においては、特に、国会に対する説明責任と審査会に対する情報提供の在り方について改めて検討するべきである。」(報告書12頁)と記載されています。国民を代表する国会議員で構成される情報監視審査会に対しても情報が提供されないようでは、秘密保護法が適切に運用されているかチェックすることができず、ひいては、国民が主権者として重要な問題について判断することが困難となってしまいます。
 このように国民主権や民主主義に重大な問題を引き起こす秘密保護法は、絶対に廃止されなければなりません。
 愛知県弁護士会は、秘密保護法対策本部を設置し、秘密保護法制定前から現在に至るまで市民団体と共に集会を開き、街頭宣伝活動や秘密保護法反対のシンポジウムを開催するなどして一貫して同法に反対してきました。また、秘密保護法の運用を監視するためのシンポジウムを開催するなどして、市民と共に常に高い関心を持ち続ける運動もしています。
 施行2年目の本年度も、市民の皆様と共にこれまで以上に厳しく秘密保護法の運用を監視し、これまで以上に強く同法の廃止を求めて参ります。

 

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