資料編である。諸悪の根源マンセー日弁連シリーズとダブルものがかなりある。実はこちらの投稿のほうが早かったのだが、こちらの都合でこうなってしまった。要ご容赦。
教育基本法改正に反対する緊急声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2006/04.html
2006年(平成18年)11月30日 札幌弁護士会会長 藤本 明
「君が代判決」と教育行政のあり方についての会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2011/03.html
2011年6月29日 札幌弁護士会 会長 山﨑 博
秘密保全法制定に反対する会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2011/06.html
1.政府は、「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」が2011年8月8日に発表した「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」(以下「報告書」という。)に基づきこれに沿った秘密保全法案を、国会に提出する方針を固めている。
しかし、報告書が提言する内容は、以下に述べるように多くの憲法上の諸権利・原理に対する重大な侵害を含むものであり、当会は秘密保全法の制定に反対するものである。
2.報告書は、対象となる「特別秘密」として、国の安全や外交のみならず公共の安全及び秩序の維持まで対象範囲をひろげており、これはかつて広範な国民の反対により廃案となった国家秘密法案以上のものとなっている。そして「特別秘密」の概念はあいまいであり、行政機関の恣意的指定を許すものとなっている。我が国においては、これまでも沖縄密約など政府に都合の悪い情報は国民から隠されてきた歴史があるが、これではよりいっそう時の権力にとって不都合な情報が処罰の威迫をもって国民から容易に秘匿されてしまいかねないのであって、国民主権原理に反する。
3.報告書は、「特定取得行為」と称する秘密探知行為を処罰対象とするが、いかなる行為が対象となるのかを画するにあたって「社会通念上是認できない行為」というあいまいな概念を用いており、さらに、独立教唆、扇動行為、共謀行為を処罰しようとしている。これにより、ジャーナリストの取材活動などに対する萎縮効果は極めて大きくなり、取材・報道の自由、ひいては民主主義の基盤である知る権利を侵害するものとなっている。
4.北海道においては、新聞等により、2003年ころから警察の報償費不正流用疑惑についての調査報道がなされたが、かような法制の内容からすれば、たとえば報償費の使途は公共の安全に関する秘密であるとされることも考えられ、その場合、取材は処罰の危険と背中合わせとなるため極めて困難なものになると予想されるなど、権力による濫用のおそれは否めない。
5.加えて、報告書は、秘密管理を徹底するためとして、特別秘密を取り扱う者及びその配偶者等を対象として「適正評価制度」を導入するとしている。その内容は、「我が国の利益を害する活動」への関与という思想調査につながりかねないものや、信用状態や精神問題に係る通院歴などの一般に他人に知られたくない情報に関する調査を含んでいる。このような調査は、対象者及び関係者のプライバシーを侵害するものであることは明らかであり、ひいては、思想信条の自由をも侵害するおそれがある。
6.かかる憲法上重大な疑念のある法律を制定する立法事実として、報告書は過去の「秘密漏えい事件」を指摘している。しかし、これらの事件はいずれも現行法によって対応がなされており、新たに憲法上の諸権利・原理を侵害するような立法を必要とする事情とは到底言えない。
7.以上の理由から、当会はかかる秘密保全法の制定に強く反対するものである。2012年(平成24年)3月23日 札幌弁護士会 会長 山﨑 博
特定秘密の保護に関する法律案の衆議院での採決の強行に抗議し、 参議院での廃案を求める会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2013/13.html
2013年(平成25年)12月2日 札幌弁護士会会長 中村 隆
特定秘密の保護に関する法律案の制定に反対する会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2013/12.html
2013年11月21日 札幌弁護士会会長 中村 隆
特定秘密の保護に関する法律の施行に抗議し、同法の廃止を求める声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2014/15.html
2014年12月10日 札幌弁護士会 会長 田村 智幸
北星学園大学及びその教員等に対する脅迫行為に関する会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2014/13.html
2014年5月及び同年7月、札幌市厚別区に所在の北星学園大学に対して、同大学の非常勤講師の退職を要求し応じなければ学生に危害を加える等の脅迫文書等が届き、警察が捜査中との報道がなされた。同大学のホームページ上の記載からは、元記者がいわゆる従軍慰安婦に関する記事を過去に書いたことに起因すると認められる。このような脅迫行為は極めて卑劣な犯罪である。とりわけ、学問の自由・大学の自治に対する重大な侵害行為であって、到底許されるものではない。さらに、インターネット上に元記者とその家族の氏名や顔写真が掲載され、脅迫文言が書き込まれるという事態に至っている。大学に対する脅迫行為、元記者個人と家族に対する脅迫行為等は、その大学や個人の問題にとどまらず、ひいては、学問の自由・大学の自治、言論・報道の自由を侵害し、民主主義の基盤を根底から覆しかねない。当会はこれまでも、様々な人権課題について会長声明や意見書等を通じて対外的な意見表明を行ってきた。今回の問題はとりわけ、民主主義社会の根幹をなす憲法上の権利に係る重大な侵害行為であり、緊急性のある憂慮すべき問題である。当会は、事態を一刻も早く終息すべく捜査が遂げられることを求める。併せて大学に対して、自治を守るため毅然と対応されていることに敬意を表する。当会は、このような人権侵害行為、ひいては憲法秩序への挑戦に対して、これを抑止・根絶するための取組みを推し進めていく所存である。2014(平成26)年10月10日 札幌弁護士会 会長 田村 智幸
「共謀罪法案」の衆議院での採決に抗議する声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2017/03.html
昨日(5月23日)、衆議院本会議において、組織犯罪処罰法案(共謀罪法案)の採決が強行され、同法案は衆議院を通過しました。「共謀罪法案」は過去に3度国会に上程されましたが、人権侵害の恐れが大きいとの理由で、ことごとく廃案になってきた経緯があります。この点、政府は、今回の法案について、「共謀罪」という罪名を「テロ等準備罪」に変更しつつ、テロ対策に必要不可欠であり、主体を組織的犯罪集団に限定し、共謀だけでなく準備行為も要件とするなどしたので、これまでの法案とは異なる、などと強弁しています。しかし、「組織的犯罪集団」の定義が曖昧であること、「準備行為」の概念も曖昧であること、対象犯罪が277もあり、中にはテロとは全く無関係な犯罪も多数含まれていること等から、テロ対策とは名ばかりであって、捜査機関による恣意的な判断の危険性や思想・信条の自由等の基本的人権侵害の危険性などは過去の法案と実質的に何ら変わらないものです。当会は、一貫して「共謀罪法案」に反対し、本年3月24日にも会長声明を発し、市民集会やパレードを行うなど、その危険性を指摘してきました。今国会の衆議院法務委員会における審議では、法案の問題点について質疑がなされました。しかし、安倍晋三総理大臣や金田勝年法務大臣らによる政府答弁は具体的な説明となるものではなく、むしろ捜査機関等の恣意的な判断により、一般人が捜査の対象となったり不当に処罰されたりする危険性を、より鮮明にするものでしかありませんでした。にもかかわらず、本会議に先立つ衆議院法務委員会では、徹底審議を求める意見が無視され、与党が質疑を一方的に打ち切って採決を強行しました。あのような混乱した中での採決を、私たちは、最近何度目にしたことでしょう。そして、遺憾なことに、同法案は衆議院を通過してしまいましたが、これはもはや多数の横暴というほかありません。当会は、「共謀罪法案」が横暴極まりない採決により衆議院を通過したことに強く抗議するとともに、引き続き、たゆむことなく「共謀罪法案」の危険性を訴え、廃案を目指して活動を続けていきます。2017年(平成29年)5月24日 札幌弁護士会 会長 大川 哲也
市民の皆様へ~「共謀罪」の制定について~
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2017/04.html
市民の皆様、私は札幌弁護士会会長です。
本日、いわゆる「共謀罪法案」が参議院で強行採決され、成立しました。5月23日には、衆議院で強行採決が行われました。翌日、当会は、これに強く抗議する会長声明を発しましたが、参議院では、あろうことか法務委員会の審議すら完結されず、「あれよあれよ」という間に成立してしまいました。当会は、「共謀罪法案」の危険性について何度も主張し、「共謀罪」の制定に反対してきました。集会やパレードの際には、たくさんの市民の方々からご賛同を頂戴いたしました。もちろん中には、「共謀罪法案」に賛成の方もいらっしゃるでしょう。でも、あのようなやり方については、どうお考えになりますでしょうか。十分な審議を尽くすことが、議会制民主主義の基本だと考えます。改めて、基本的人権を侵害するおそれの強い「共謀罪」の制定に抗議します。そして、議会制民主主義への挑戦ともいうべき横暴な強行採決にも、強く抗議します。「共謀罪」は制定されてしまいましたが、当会は、今後も、「共謀罪」が市民の権利を侵害する非常に危険なものであること、そして我が国の議会制民主主義がこの上ない危機に瀕していること、をたゆまず訴えていきます。2017年(平成29年)6月15日 札幌弁護士会 会長 大川哲也
いわゆる共謀罪の創設を含む組織犯罪処罰法案の閣議決定に関する会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2016/12.html
政府は、2017年3月21日、いわゆる共謀罪の新設を含む組織犯罪処罰法案(以下「新法案」という)を閣議決定した。いわゆる共謀罪法案は、これまで3度国会に上程され、いずれも廃案となっている。当会は、これまで、数度にわたり共謀罪法案に反対する会長声明を発してきた。そこでは共謀罪の本質的問題点について、思想・信条の自由の侵害の危険性、既遂処罰の原則への抵触、監視社会に結びつく危険性などを厳しく指摘してきた。そして、2016年12月14日に発した「いわゆる共謀罪法案の国会への再提出に反対する会長声明」では、「組織的犯罪集団」の定義が曖昧であり捜査機関による恣意的な判断を制限できないこと、対象犯罪数が600以上にのぼり対象犯罪が不当に広く人権侵害を招く危険性が非常に大きいこと、準備行為の内容及び範囲が具体的ではなく犯罪と無関係な行為も「準備行為」に含まれるものとされかねず処罰範囲を限定する機能を有さないことについて述べたところである。2017年3月21日に閣議決定された新法案では、政府がテロ対策と説明したことと整合させるために、「組織的犯罪集団」の例示として、「テロリズム集団その他の」との文言を挿入し、対象犯罪を277の犯罪に減らされた。また、準備行為について、計画に基づき行われる必要があるともされている。しかし、新法案には、「テロリズム集団」の定義がないばかりか、「テロリズム集団」は「組織的犯罪集団」の一例に過ぎず、「組織的犯罪集団」の定義が曖昧であることに変わりはないことから、「テロリズム集団その他の」という文言を付加することによって捜査機関による恣意的な判断を制限できると解することはできない。また、対象犯罪が減らされた点についても、依然として組織犯罪やテロ犯罪と無縁な広範な犯罪が対象とされており、人権侵害を招く危険性が大きいことにも変わりはない。さらに、仮に準備行為に至る経緯が限定されたとしても、準備行為自体は法益侵害への危険性を帯びる必要がないと説明されているため、犯罪と無関係な行為が「準備行為」とされる危険性は依然として存在し、処罰範囲を限定する機能を有するとはいえない。加えて、テロ対策としては既存の法律によって対処できるものと考えられ、仮に不十分な点があるのであれば、個別の立法事実を踏まえて個別の犯罪として立法化を検討すべきである。結局のところ、新法案は、テロ対策に名を借りて、過去に3度廃案となった際に批判された問題点を何ら解決せずに立法化するものに他ならない。そして、通信傍受制度の拡大が法制化されたことを考え合わせると、共謀罪の成立によって、テロ対策の名の下に、捜査機関によって市民の会話が監視・盗聴される社会を招来させるおそれが一層高まるといえる。当会は、テロ対策に不必要であり、憲法の保障する思想・信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由等の基本的人権を侵害するおそれが強い新法案に強く反対する。 2017年(平成29年)3月24日 札幌弁護士会 会長 愛須 一史
共謀罪法案の再提出に反対する会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2015/10.html
2015年10月5日 札幌弁護士会 会長 太田 賢二
いわゆる共謀罪法案の国会への再提出に反対する会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2016/07.html
2016年(平成28年)12月14日 札幌弁護士会 会長 愛須 一史
いわゆる「共謀罪」の制定に抗議し、速やかな廃止を求める会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2017/05.html
2017年(平成29年)6月23日 札幌弁護士会 会長 大川 哲也
緊急事態条項(国家緊急権)を憲法上創設することに反対する会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2016/09.html
現在、国会による憲法改正の発議が現実になろうとしている。
昨年11月からは、具体的な改正条項を検討するために衆参両院の憲法審査会で実質的な討議が行われており、とりわけ与野党の複数の会派から緊急事態条項(国家緊急権)創設の必要性が語られている。ここにいう緊急事態条項とは、戦争、内乱、恐慌、大規模な自然災害等、平時の統治機構をもってしては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために、立憲的な憲法秩序(人権保障と権力分立)を一時停止して非常措置をとる権限、いわゆる国家緊急権を、行政権力に認めるものである。このような条項の創設について、当会は断固反対する。なぜなら、緊急事態条項(国家緊急権)は、基本的人権の尊重に対する大きな脅威となる危険性が非常に高いばかりでなく、そもそもその必要性も認められないからである。まず、緊急事態条項(国家緊急権)は、行政権力その他の国家権力を制約して人権保障を実現しようとしている立憲主義体制を根底から覆すものであり、権力の濫用を生む危険がある。だからこそ、日本国憲法は、敢えて緊急事態条項(国家緊急権)を設けていないのである(帝国憲法改正案委員会における金森国務大臣の答弁)。歴史的に見ても、ドイツにおけるナチスの独裁は、緊急事態条項(国家緊急権)を利用して多数の国会議員を逮捕し、国会を機能停止に陥らせて全権委任法を制定、首相(ヒトラー)に権力を集中させるという方法で確立されたものであった。また、日本においては関東大震災時に「戒厳」の下で国民意識が誘導され、社会主義者や朝鮮人の大量虐殺が行われたこと等、緊急事態条項(国家緊急権)は、計り知れない危険性をはらんでいる。他方で、緊急事態条項(国家緊急権)は災害対策のためやテロ対策のために必要だとの主張がある。しかし、すでに日本の災害対策法制は精緻に整備されており、憲法に緊急事態条項(国家緊急権)を設ける必要はない。すなわち、非常災害が発生して国に重大な影響を及ぼすような場合、内閣総理大臣が災害緊急事態を布告し、生活必需物資等の授受の制限、価格統制を決定できるほか、必要に応じて地方公共団体等への指示ができるなど、内閣総理大臣への権限集中の規定がある。また、防衛大臣が災害時に部隊を派遣できる規定や、都道府県知事や市町村長の強制権など、国民・住民の権利を一定範囲で制限する規定も設けられている。必要論者からは、東日本大震災の際に緊急事態条項(国家緊急権)がなかったために適切な対応ができなかったとの主張もあるが、それは上記の法制度があるにもかかわらず日頃の十分な準備を怠り、適切に運用できなかったからであって、憲法に緊急事態条項(国家緊急権)がなかったからではない。また、テロは、政治的目的を持った特定の犯罪であるから、平時における警察機構による対処をすべきであり、実際、1995年(平成7年)に地下鉄サリン事件が起きた際にも、平時の警察活動、司法手続によって適切に対応することができた。このように、緊急事態条項(国家緊急権)は、濫用の危険が大きく、立憲主義を破壊して基本的人権の多大な侵害を引き起こす危険性を有しているばかりでなく、その必要性も認められないものであるから、当会は、緊急事態条項(国家緊急権)を憲法に創設することに、強く反対する。2017年(平成29年)1月24日札幌弁護士会 会長 愛須 一史
国際平和安全支援法案及び平和安全法制整備法案の衆議院での採決の強行に抗議し、参議院での廃案を求める会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2015/06.html
7月16日、衆議院本会議において、国際平和支援法案及び平和安全法制整備法案(以下、合わせて「本法案」という)の採決が強行され、可決した。当会は、昨年来、集団的自衛権の行使容認は憲法違反であり、これを具体化する本法案もまた憲法違反であることを繰り返し指摘し、その制定に強く反対してきた。そもそも、憲法前文及び第9条は、我が国が先の大戦とそれに先行する侵略と植民地支配によりアジア諸国をはじめ内外に多大な惨禍を与えたことに対する深い反省と教訓に基づき、戦争及び武力行使を放棄し、軍隊を保持せず、交戦権も認めないという徹底した恒久平和主義に立脚している。しかるに、本法案は、自国の防衛という範囲を大きく超えて武力の行使を可能とするものであり、この恒久平和主義に反することは明らかである。さらに、本年5月15日に本法案が国会に提出されて以降、国民の間には本法案の制定に反対し、あるいはその慎重審議を求める声が巻き起こり、最近の世論調査ではそれらの声が過半数を上回っている。また、衆議院憲法審査会では、与党推薦も含めた全参考人が本法案は憲法違反であるとの見解を述べ、さらには安倍首相自身、7月15日の審議において「まだ国民の理解は進んでいる状況にはない。」と述べた。このように、本法案には国民の間で反対・懸念の声が多数であり、そのことを首相自身が認識しているにもかかわらず、衆議院において採決が強行、可決されたものであり、民主主義の根幹を否定する暴挙と言わざるを得ない。当会は、このような衆議院における採決の強行に強く抗議し、本法案を参議院において廃案とするよう強く求める。加えて、当会は、国民・市民とともに参議院での廃案に向けた取り組みを全力で行っていくことをここに表明する。2015年(平成27年)7月16日 札幌弁護士会 会長 太田賢二
集団的自衛権行使等を定めるいわゆる新安保法制に反対する会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2015/01.html
2015年(平成27年)5月3日 札幌弁護士会 会長 太田 賢二
改めて安保法制改正法案の廃案を求める会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2015/09.html
2015(平成27)年9月16日 札幌弁護士会 会長 太田 賢二
安保関連法施行にあたりその適用・運用に反対し、廃止を求める声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2015/15.html
2016年(平成28年)3月29日 札幌弁護士会 会長 太田 賢二
安保関連法の成立から1年を迎えるにあたり、あらためてその適用・運用に反対し、廃止を求める声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2016/05.html
2016(平成28)年9月19日 札幌弁護士会 会長 愛須 一史
日本国憲法施行69周年の憲法記念日を迎えるにあたり改めて安保法制の廃止を求める会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2016/01.html
本日、日本国憲法は、施行から69周年を迎えました。かつて、日本は、アジア近隣諸国に対する侵略行為により、多くの人々に対し、言葉で言い表せない辛苦と惨禍を与え、かつ、日本国民に対しても多大な被害を与えました。とりわけ、広島・長崎へ原爆が投下されたことにより、人類が経験したことのない深刻で長期にわたる苦しみをもたらしました。日本国憲法は、このような戦争を真摯に反省し、二度と同じ過ちを繰り返さないという決意に基づき制定されました。日本国憲法は、一人ひとりの個人が、かけがえのない存在である(個人の尊厳)との考えから立憲主義・法の支配に則り、国民主権、基本的人権の尊重とともに恒久平和主義を原則として定めています。この恒久平和主義のもと、戦後71年目を迎える今日まで、日本は、海外において、ただの一度も、武力の行使により、他国民を殺傷することもなく、また戦争に巻きこまれることなく過ごしてきました。まさに、「平和のうちに生存する」(憲法前文)ことができたのです。しかしながら、昨年9月19日、国会において、多くの国民が反対するなか、十分な審議がなされないまま安保法制が成立しました。それは集団的自衛権の行使を容認するなど恒久平和主義に反し、実質的には、憲法改正手続によらずに、憲法9条を改変するものです。そして、この安保法制が最初に発動されるのは、北海道内の陸上自衛隊が派遣された南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)と言われていますが、現在、南スーダンは、国連の避難所においてさえ、戦闘により死者が出るような事実上の内戦状態にあると報じられています。かかる状況において、南スーダンで、安保法制によって認められた「駆けつけ警護」や安全確保業務等の新たな任務を遂行することは、自衛隊員が他国民を殺傷したり、反対に、自衛隊員の生命身体が危険にさらされる恐れがあり、ひいては、憲法9条の禁止する「武力の行使」にあたることになりかねません。そもそも、日本国憲法は、国際社会に対して、武力によらずに国際紛争の解決を図ることにより、世界平和の実現を目指すことを誓っています。今、日本に求められるのは、武力行使の道を進むのではなく、諸国民との協調による紛争解決です。当会は、このような問題意識に基づき、昨年5月22日の定期総会において、法案制定に反対する総会決議を採択し、さらに昨年度安保法制の制定、施行に反対する会長声明を4回発し、また、北海道弁護士会連合会並びに旭川、釧路及び函館の三弁護士会とともにパレ-ドを4回行なうなどして、市民の皆さんと共に安保法制に反対の意思を表明し続けてきました。日本国憲法施行69周年となる憲法記念日を迎えるに当たって、改めて、昨年9月19日に成立した安保法制を速やかに廃止することを強く求めます。2016年(平成28年)年5月3日 札幌弁護士会 会長 愛須 一史
高等学校等における生徒の政治的活動の自由を保障するとともに、教師の政治的教養の教育における専門的裁量を尊重することを求める意見書
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2016/14.html
第1 意見の趣旨
1. 当会は国に対し、2015年(平成27年)10月29日付文部科学省初等中等教育局長名の通知「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知)」(27文科初第933号)(以下「通知」という)及び上記通知に関するQ&A(以下「通知に関するQ&A」という)のうち、以下の点の見直しを求める。
(1)通知が、高等学校等の生徒の政治的活動について、授業その他の学校教育活動の場面では一律に禁止している点
(2)通知が、高等学校等の生徒の政治的活動について、放課後や休日の構内及び構外における活動に対しても制限・禁止を求めている点
(3)通知に関するQ&Aが、放課後や休日の構外での政治的活動を行う場合における学校への届出制を定める校則を認めている点
(4)通知が、高等学校等の教師に対して、政治的教養の教育の場面において無限定に「個人的な主義主張を述べることを避け」ることを求めている点
2. 当会は、北海道内の各教育委員会及び各高等学校等に対し、生徒の政治的活動等の自由を保障するとともに、教師の政治的教養の教育における専門的裁量を尊重することを求める。
第2 意見の理由
1. 通知及び通知に関するQ&Aの公表と問題点
(1)2015年(平成27年)6月17日に成立した公職選挙法等の一部を改正する法律により選挙権年齢が満18歳以上に引き下げられ、2016年(平成28年)7月10日に実施された参議院議員選挙においては18歳、19歳の有権者が初めて自らの判断で一票を投じた。文部科学省は、選挙権年齢の引き下げに伴い、2015年(平成27年)10月29日付通知を発出し、さらに通知に関するQ&Aを公表した。
(2)通知は、高等学校等の生徒が、国家・社会の形成に主体的に参画していくことがより一層期待されると指摘する一方で、政治的教養の教育に当たって「教員は個人的な主義主張を述べることは避け、公正かつ中立な立場で生徒を指導すること」とし、また、高等学校等の生徒の政治的活動等について「高等学校等の生徒による政治的活動等は無制限に認められるものではなく、必要かつ合理的な範囲内で制約を受けるものと解される」としている。さらに、通知に関するQ&Aにおいては、放課後、休日に学校の構外で行われる政治的活動等に際して学校への届出を義務付ける届出制の校則について、生徒による政治的活動等は高等学校の教育目的の達成等の観点から必要かつ合理的な範囲内で制約を受けるとして、一定の配慮の下に学校への届出を義務付ける校則を容認している(Q9)。
(3)上記通知及び通知に関するQ&Aは、高等学校等の生徒の政治的活動等の禁止や制限を広範に認めることにより生徒の政治活動の自由や表現の自由、思想・良心の自由等の基本的人権を制限し、また、「政治的中立性」の名の下に必要以上に教師の教育の自由を制限するものであって、容認できない。以下、詳述する。
2. 通知が高等学校等の生徒の政治活動の自由を侵害するものであること
(1)通知は、高等学校等の生徒の政治的活動の制限について、高等学校等の生徒による政治的活動等は「必要かつ合理的な範囲内で制約を受ける」とした上で、具体的には①学校の教育活動の場面、②放課後や休日等の学校の構内、③放課後や休日等の学校の構外のそれぞれの場面における政治的活動について必要な制約を挙げている。まず、通知は、①教科、科目等の授業及び生徒会活動、部活動等の授業以外の教育活動といった学校の教育活動においては政治的活動等を「禁止することが必要である」とする。そして、②放課後や休日等の学校の構内における政治的活動等については「制限又は禁止することが必要である」とし、さらに③放課後や休日等の学校の構外における政治的活動につき、違法若しくは暴力的な政治的活動等になるおそれが高いものについては「制限又は禁止することが必要」であり、それ以外についても「必要かつ合理的な範囲内で制限又は禁止することを含め、適切に指導を行うことが求められる」とする。しかしながら、通知による高等学校等の生徒の政治的活動の制限は広範にすぎ、政治活動の自由、表現の自由、思想・良心の自由等の基本的人権を侵害するものであり、憲法21条、19条に違反するおそれがある。
(2)まず、①学校の教育活動において一律に政治的活動等を禁止することになれば、授業で具体的な政治的事象に関するテーマを取り上げることを躊躇させることになりかねず、また、部活動の場などにおいて現実の政治的社会的事象に関する表現や学習が禁止されるおそれがある。また、②放課後及び休日の学校の構内における政治的活動の制限ないし禁止をなし得る根拠として、通知は政治的中立性の確保を挙げるが、教育基本法14条2項にいう政治的中立性の確保の要請は「学校」への要請であり、本来、放課後や休日等の生徒の活動に適用されるべきものではない。学校の構内であることを理由とする放課後及び休日の政治的活動の制限は、その制限の目的においても手段においても必要かつ最小限度のものであることが厳格に求められるべきである。さらに、③放課後及び休日の学校の構外における政治的活動は②の場合にも増して高校生の自由が最大限尊重されなければならず、一律に禁止することはもとより、個別の制限を課す場合であっても、他者の基本的人権との調整上真にやむを得ないと認められる場合に、必要最小限度の制約を課すものでなければならない。したがって、通知が高等学校における生徒等の政治的活動等について授業その他の学校教育活動の場面では一律に禁止し、放課後や休日の学校内外での活動についても必要最小限度の制約を超えた禁止や制限を認めている点は生徒の基本的人権を過度に制約し、憲法21条、憲法19条に違反するおそれがあることから、見直されるべきである。
3. 政治的活動等について届出制を認めるべきではないこと
通知に関するQ&Aにおいては、放課後や休日等に学校の構外で行われる政治的活動等について、届出制とすることを条件付きながら許容する回答が記述されている。生徒の政治的活動等を届出制とすることは、生徒に対し、届出を通じて自己の政治的関心や志向を明らかにすることを強いるものであり、生徒の思想・良心の自由を侵害する。ひいては、生徒に政治的活動等に関する萎縮効果をもたらしかねないものであり、表現の自由を侵害する。放課後や休日等の政治的活動等を届出制とする校則は、生徒の表現の自由及び思想・良心の自由を広く直接に侵害するものであるとともに、政治的表現の自由が教育現場において尊重されないことを示すものであり、教育基本法14条1項にも違反する。したがって、通知に関するQ&Aが、放課後や休日等に学校の構外で行われる政治的活動等を届出制とすることを容認している点は見直されるべきである。なお、北海道教育委員会は、現在のところ北海道内の高等学校等に対し、生徒の政治的活動等への参加につき届出制を内容とする校則制定を求めていないことは、一定の評価ができる。
4. 通知が教師の教育の自由を侵害するものであること
(1)教育には、教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じ、その個性に応じて行わなければならないという本質的要請がある(旭川学力テスト最高裁判決)。このような教育が実現するためには、教師の専門性に裏付けられた一定の裁量が認められ、憲法23条に基づく教師の教育の自由が十分に保障されなければならない。ところが、通知は「政治的中立性を確保」すべきことを強調し、教師が指導に際して「個人的な主義主張を述べることは避け、公正かつ中立な立場で生徒を指導すること」を要請し、通知に基づく指導資料においても教師は特定の見解を自分の考えとして述べることは避けることが必要であるとされている。
(2)北海道内においても、道立高校の教諭がいわゆる安全保障法制を授業で取り上げたことにつき、道議会議員から偏向教育ではないかとの指摘がなされたことを契機に、北海道教育委員会が調査を実施した経緯があった。通知の記載は、このような教育内容に対する行政の介入を招きかねず、ひいては教育現場の萎縮をもたらしかねない。
(3)いわゆる「政治的中立性」を要請する教育基本法14条2項が禁止するのは、直接に特定政党への支持又は反対を目的とするような政治教育及び政治的活動と解されるべきところ、教師が「個人的な主義主張を述べることを避け」ることを求める通知は「政治的中立性」の解釈を誤っているというべきである。政治的中立性の要請を理由に教師が「個人的な主義主張を述べることを避け」ることが要請されるならば、現実社会に生起し、種々の見解が主張される政治的論争のある問題を授業で取り上げることができなくなるおそれが高い。ますます複雑化し、高度化する現代社会において、実際に生起する社会的政治的問題に生徒が関心を持ち、自ら考え、議論し、課題を解決しようとすることは、主権者としての能力を育むことに貢献すると考えられるところ、「政治的中立性」の名のもとにこのような生きた素材からの学習が阻害されるべきではない。また、教師が自己の見解を述べることは生徒との人格的な接触を図るとともに、生徒に対しても一人ひとりが自ら考え、自らの意見を述べることを促すものとして、有益な指導方法の一つである。
(4)したがって、教師が自己の見解をことさらに生徒に押し付けるような手法によらない限り、政治的教養の教育については教師の専門的裁量が広く尊重されるべきであって、通知が教師に対して、個人的な主義主張を述べることを避けることを求めている点は見直されるべきである。
5. 通知の運用に際し、各教育委員会及び各高等学校には十分な配慮が求められること通知を受けて、実際に運用する各教育委員会及び各高等学校は、生徒の政治活動の自由や教師の教育の自由が侵害されることのないよう十分に配慮すべきである。各教育委員会は、教育基本法の趣旨に従い、教育の中立性・自立性を確保するために、教育に関わる教員を不当な干渉、介入から保護すべき義務を負い、教師の教育の自由が侵害されることのないよう配慮すべきである。各教育委員会、各高等学校は、生徒の政治的活動等の自由を保障するとともに、授業における教師の政治的教養の教育における専門的裁量を尊重すべきである。
6. 結論
18歳選挙権の実施により、若い世代が有権者として自ら考え、一票を投じることが可能となった。主権者であるというためには、単に一票を投じることにとどまらず、社会に生起する様々な問題に興味関心を持ち、自ら考え、行動することが必要である。学校教育における「政治的中立性」とは、特定政党の支持を押し付けないことを指すのであり、種々の見解があり得る政治的社会的事象から目をそらすことではない。政治的中立性の名の下に教育が現実の政治的社会的事象に触れることを避け、高等学校等の生徒の政治活動の自由や表現の自由、思想・良心の自由等の基本的人権が侵害されることはあってはならない。以上から当会は、国に対し、通知及び通知に関するQ&Aの見直しを求めるとともに、北海道内の各教育委員会及び各高等学校等に対し、生徒の政治的活動等の自由を保障し、高等学校等における教師の政治的教養の教育における専門的裁量を尊重することを求める。2017年(平成29年)3月29日 札幌弁護士会 会長 愛須 一史
ヘイトスピーチ対策法の成立を踏まえての会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2016/02.html
1.近時、わが国内において、排外主義的主張を標榜する団体による在日外国人の排斥等を主張する示威行動等(いわゆるヘイトスピーチ)が繰り返し行われている。ここ札幌においても、大通公園周辺や札幌雪まつり会場等において「朝鮮人を皆殺しにしろ」「身の回りでご不要な南朝鮮人、腐れ朝鮮人がございましたら、車までご合図願います、どんな状態でも処分いたします」といった、聞くに堪えない内容のヘイトスピーチが繰り返されている。
2.かかるヘイトスピーチは、対象となる人々を畏怖させ、憲法第13条が保障する個人の尊厳や人格権を根本から傷付けるとともに、憲法第14条に定める法の下の平等の理念をも踏みにじるものである。わが国が1979年に批准した国際人権規約(自由権規約)第20条2項は、「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道を法律で禁止する」ことを締約国に求めている。また、わが国が1995年に加入した人種差別撤廃条約の第2条1項(d)も、立法を含む全ての適当な方法により、いかなる個人、集団又は組織による人種差別についても禁止し、終了させることを、締約国の義務としている。このように、憲法および国際人権法からみても、国及び地方公共団体は、ヘイトスピーチを根絶するための積極的な法的措置をとる責務がある。
3.上記背景のもと、平成28年5月24日、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(以下「本法律」という)」が成立した。 本法律は、前文において、ヘイトスピーチの対象となっている人々が「多大な苦痛を強いられている」とした上で「このような不当な差別的言動はあってはならず」と宣言し、同第1条は、「不当な差別的言動の解消が喫緊の課題である」としている。ヘイトスピーチによる被害の甚大さを認め、これへの対処を緊急の課題と位置付けた本法律が制定されたことには、大きな意義がある。
4.とはいえ、本法律の内容についてはいくつかの懸念・課題がみられることも事実である。まず、本法律はヘイトスピーチが禁止されると明示的に宣言してはいないところ、これまで国や地方自治体がヘイトスピーチの抑制に極めて消極的であったことに照らすと、ヘイトスピーチの禁止を明示的に宣言していない本法律によるヘイトスピーチ抑止の実効性には、疑問なしとしない。また、本法律は、ヘイトスピーチの対象となる被害者について「本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの」と定義しているところ、かかる定義を設けたことは、例えばアイヌ民族等の少数民族等や、正式な在留資格が認められていない外国人等に対するヘイトスピーチであれば許容されるとの誤解を招きかねない。 加えて、本法律は、第4条において、国には不当な差別的言動の解消に向けた取組を行う責務があるとしながら、地方公共団体については努力義務のみにとどめているが、単なる努力義務では足りないというべきである。
5.以上のような懸念・課題に対して、参議院の法務委員会では、本邦外出身者に対する不当な差別的言動以外のものであればいかなる差別的言動であっても許されるとの理解は誤りであること、地方公共団体においても国と同様に不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策を着実に実施すること等を内容とする附帯決議がなされた。かかる附帯決議は、本法律の解釈運用の指針を示すにふさわしいものである。また、本法律の附則に「不当な差別的言動に係る取組については、この法律の施行後における本邦外出身者に対する不当な差別的言動の実態等を勘案し、必要に応じ、検討が加えられるものとする。」との規定が設けられており、今後、必要に応じて本法律の改正も検討されるべきである。
6.当会は、本法律の制定に尽力された関係者の方々に敬意を表するとともに、今後もヘイトスピーチの根絶に向けて全力を尽くしていく決意を表明する。2016年(平成28年)5月27日 札幌弁護士会 会長 愛須 一史
日本国憲法第96条に定める国会発議要件の緩和に反対する会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2013/07.html
2013年7月18日 札幌弁護士会 会長 中村 隆
行政書士法の改正に反対する会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2013/15.html
日本行政書士会連合会は,行政書士法を改正して,「行政書士が作成することのできる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求,異議申立て,再審査請求等行政庁に対する不服申立てについて代理すること」を行政書士の業務範囲とすることを求めて運動を推進してきており,自由民主党総務部会もその法案化を検討している。しかし,当会は,行政書士が行政不服申立ての代理人になることについて,下記の理由から強く反対するものである。第1に,行政不服申立制度は行政庁の違法又は不当な行政処分を是正し,国民の権利利益を擁護するための制度である。他方行政書士は「行政手続の円滑な実施に寄与すること」(行政書士法第1条)を目的として,その範囲で官公署に提出する書類を作成することを職務とするものである(行政書士法第1条の2第1項)。このように行政不服申立制度と行政書士制度とでは,その制度の目的が異なっている。また行政書士制度は,当事者の利害や利益が鋭く対立する紛争事件を取り扱うことを前提としていないことから,行政書士が行政不服申立ての代理人となることは,その職務とは本質的に相容れないものである。加えて行政書士制度には,行政庁たる総務省が監督官庁として存在する。この関係においても,行政書士が,行政不服審査制度の代理人としての職責をよく果たしうるか,制度上の疑問が残る。
第2に,本来,行政不服申立ての代理行為は,それが容れられなかった場合も想定し,行政訴訟の提起も視野に入れて行うべきものであるところ,行政書士は,行政訴訟の代理人たる資格を有していない。行政不服申立てを含めた法律事務の処理は,初期段階において最終的な訴訟段階での結論まで見据え,迅速かつ的確に対応することが重要であって,法律事務の初期段階で適切な判断を誤ると,直ちに国民の権利利益を害することにつながりかねないものである。行政書士は行政訴訟の代理人たる資格を有しておらず,この点について十分に検討しうるか疑問であることから,かかる行政書士に行政不服申立ての代理人となる資格が与えられるべきではない。
第3に,現状において,弁護士は,行政不服申立を始めとする行政手続においても代理人として活動しており,出入国管理及び難民認定法,生活保護法,精神保健及び精神障害者福祉法等に基づく行政手続等について,行政による不当な処分から社会的弱者を救済する実績を上げている。今次の司法改革において,弁護士数は着実に増加しており,その数は2013年(平成25年)10月1日現在3万3563人に上っている。これに加えて,直ちに弁護士以外の他職に行政不服申立の代理人たる資格を賦与すべき立法事実は認められない。以上のとおりであるから,当会は,行政書士に対する行政不服申立代理権の付与に強く反対する。2013年(平成25年)12月10日 札幌弁護士会会長 中村 隆
―所持品検査開始から2年を迎えて―
裁判所入庁者に対する所持品検査の中止を求める会長声明
ttps://www.satsuben.or.jp/info/statement/2014/17.html
札幌高等裁判所が、2013年(平成25年)3月1日、札幌高等・地方裁判所庁舎(本館・別館の玄関2箇所)において、入庁者に対する所持品検査を開始してから2年が経過した。これに対し、当会は、札幌高等裁判所に対し、所持品検査の中止を申し入れるとともに、同年8月7日には会長談話、2014年(平成26年)3月27日には会長声明を公表し、所持品検査の問題点を指摘し、その中止を求めてきた。それにもかかわらず、札幌高等裁判所は次年度も引き続き、所持品検査を継続することとなった。札幌高等裁判所の行っている所持品検査は、来庁者のプライバシーの制約を伴うものであるにもかかわらずその具体的な目的が十分に明らかにされていないこと、及び、来庁者が所持品検査に同意しなければ裁判所内に立ち入ることができない状況の下で来庁者を含め広く国民を裁判所から遠ざけている点で大きな問題があることは、これまで当会が指摘してきたとおりである。これに加えて、この2年間、札幌高等裁判所は、所持品検査を必要とする具体的な理由・事情等について一切公表していない。これでは、札幌高等裁判所が実施している所持品検査が、実施の目的とその手段において適正なものであるかどうか判断することはできない。また、東京と福岡を除き全国の他の裁判所で行っていない状況のなかで、札幌高等裁判所において一般的網羅的な所持品検査を実施することが正当かつ必要であるとする合理的根拠も見出しがたい。このような、目的も手段としての適正性も不分明である所持品検査に対し、高額な委託料を支払い続けることは、国費の適正な執行の観点からしても国民の支持が得られないことは明らかである。当会は、札幌高等裁判所に対し、改めて、国民に身近で開かれた裁判所の理念に逆行する所持品検査の実施に抗議し、直ちに所持品検査を中止することを求める。2015(平成27)年3月10日 札幌弁護士会 会長 田村 智幸