本件事案の総括
本件は、弁護士会が、弁護士行政機関という公的性質を顧みず、政治団体化・北朝鮮の代理人化して大量会長声明を発出した問題につき、多くの国民が懲戒請求という形で是正を求めたところ、弁護士会が対象弁護士一人につき3億円の損害をわざわざ発生させ、対象弁護士が法律のしろうとの懲戒請求者を法廷に引きずり出して多額の金員を支払わせて「血祭り」「落とし前」をつけ(甲116)、もって弁護士会批判を封じ、弁護士会の政治団体化、北朝鮮の代理人化の問題を棚上げにしたままという事件である。
弁護士会は弁護士の懲戒を司る目的で法が設立を義務付けた懲戒制度の専門家である。一方、懲戒請求者は一般人であり懲戒制度の知識は無い。
懲戒請求を呼び込んだのは弁護士会の大量会長声明であり、秘密に処理されるべき懲戒請求を「大量懲戒請求問題」に膨らませ損害を異常拡大させたのも弁護士会であるから、対象弁護士1人に生じた3億円もの損害は、これを発生させた弁護士会が負担するのが社会正義に叶う。
訴状 3/5
ウ 損害を発生させた被告神奈川県弁護士会の違法行為p11
a) はじめにp11
b) 弁護士法違反p11
c) 他士業及び裁判官における個人情報保護p12
d) 個人情報保護法違反p13
あ)「利用目的の達成に必要な範囲」に本件提供は含まれないことp13
い)懲戒請求者らの同意がないことp14
う)「法令に基づく場合」に該当しないことp15
え)「財産の保護のために必要がある場合」に該当しないことp16
お)小結p18
e) 本件提供の対象弁護士に対する不法行為性p18
ウ 損害を発生させた被告の不法行為責任
a) はじめに
嶋﨑弁護士が主張した以上の「利益相反確認の負担」「大量性の苦痛」の損害は、懲戒請求者が多数いる(=大量懲戒請求である)という情報、及び懲戒請求者全員の住所氏名という個人情報が、被告神奈川県弁護士会から嶋﨑弁護士に提供されたこと(以下「本件提供」という)に因って初めて発生したものである。
尚、後述の佐々木弁護士と金竜介弁護士も「利益相反確認の負担」「大量性の苦痛」を主張しており、金哲敏弁護士も「大量性の苦痛」の損害を主張している。そこで、以下には被告東京弁護士会が各弁護士に懲戒請求者の個人情報を提供したことも合せて「本件提供」と呼び、合せて主張する。
b) 弁護士法違反
弁護士法及び個人情報保護法上、同一事案の懲戒請求者が1人なのか複数なのか多数なのかという情報、あるいは懲戒請求者の住所氏名という個人情報(見ず知らずの人か否か、全国に散在するか否かという情報)は、対象弁護士に提供されるはずのない情報である。
弁護士法は、対象弁護士に通知すべき内容として「事案の内容」「(決定の)理由」を挙げるのみであり(64条の7第1項1号2号)、懲戒請求者の人数や個人情報を通知するとの規定は存在しない。
加えて、弁護士には守秘義務がある(同法23条)。みなし公務員である会長、副会長、懲戒委員、綱紀委員(同法35条3項、54条2項、66条の2第4項、70条の3第4項)には、公務員としての守秘義務もある。
つまり本件提供は弁護士法に違反する取扱いである。
誰が懲戒請求したかという情報が対象弁護士に筒抜けになるようでは、報復を恐れて必要な懲戒請求も萎縮してしまう。法律事務所内のセクハラやパワハラを懲戒事由とする場合を考えれば、懲戒請求者の個人情報の秘匿の必要性は容易に理解できる。
また、懲戒請求者が誰であるか、あるいは1人であるか多数であるかによって、綱紀委員会ないし弁護士会の取扱いや判断が左右されることはあってはならない。またそれを知ることに因って、対象弁護士に無用な精神的負担を与えてもいけない(たとえば有名な暴力団の組長が懲戒請求者だった場合を考えられたい)。そうであるから、対象弁護士に懲戒請求者の人数や個人情報を通知することを弁護士法は定めていないのである。
被告ら弁護士会は、対象弁護士の防御権の保障のために、懲戒請求者が誰かという情報が必要であると反論するかも知れない。しかし、防御権を保障するためには、事実認定に用いる証拠や証人について、証拠の提出者や証人が誰であるかを対象弁護士に知らせて弾劾の機会を与えれば足りる。それら証拠の提出者や証人が懲戒請求者であるか否かという情報は必要ない。
ましてや被告神奈川県弁護士会は嶋﨑弁護士に弁明を求めもせずに調査開始の翌日には議決をし、被告東京弁護士会も金竜介弁護士と金哲敏弁護士に弁明を求めもせずに調査開始の翌日に議決をし、各々、懲戒しない決定を送る際に本件提供を行ったのであるから、防御権の保障のための提供でないことは明らかである。
c) 他士業及び裁判官における個人情報保護
実際、弁護士以外の法律士業や裁判官について、懲戒情報提供者の個人情報は守られている。
一般人が懲戒事由だと思料した情報を懲戒権者に提供する制度は、各士業や裁判官に共通して存在する(税理士法47条3項、公認会計士法32条1項、社会保険労務士法25条の3の2第2項、司法書士法49条1項、行政書士法14条の3第1項、裁判官弾劾法15条1項等)。
これら他士業や裁判官について、情報提供者の個人情報は対象者に秘匿されている(甲98ないし103)。その制度趣旨は、①公務員の守秘義務、②情報提供者が対象者から逆恨みされることを防止するため、③逆恨みを恐れて情報提供が委縮することを防止するため、であると思料される。
この理は、弁護士においても全く同様である。弁護士の場合は、国家権力の監督権を排して自治が認められていることから来る弊害(懲戒案件の握りつぶし、身内のかばい合い)を防止するため、懲戒請求者に異議の申出権が認められるなどの制度の修正がなされているだけである。そのような制度の修正によって、懲戒請求者の個人情報を対象弁護士に筒抜けにしてよいことになるものではない。
したがって本件提供は、弁護士法64条の7第1項1号2号に違反する違法な取り扱いである。
d) 個人情報保護法違反
本件提供は、個人情報保護法にも違反する違法な取扱いである。以下、詳述する。
あ)「利用目的の達成に必要な範囲」に本件提供は含まれないこと
被告各弁護士会は個人情報取扱事業者であるから、個人情報は特定された利用目的の達成に必要な範囲で取り扱うことを要し、取得した個人情報を本人の同意なく目的外に利用したり第三者に提供することは原則として許されない(個人情報保護法15条、16条、23条)。
本件提供は「利用目的の達成に必要な範囲」ではない。
個人情報保護委員会のガイドライン(以下「ガイドライン」という。甲104)には、
「あらかじめ、個人情報を第三者に提供することを想定している場合には、利用目的の特定に当たっては、その旨が明確に分かるよう特定しなければならない(3-4-1(第三者提供の制限の原則)参照)」(3-1-1)
「あらかじめ、個人情報を第三者に提供することを想定している場合には、利用目的において、その旨を特定しなければならない(3-1-1(利用目的の特定)参照)」(3-4-1)
「法第15条第1項の規定により特定された当初の利用目的に、個人情報の第三者提供に関する事項が含まれていない場合は、第三者提供を行うと目的外利用となるため、オプトアウトによる第三者提供を行うことはできない。」(3-4-2-1の(※5))
と、繰り返し書かれている。
このことは、被告東京弁護士会も自ら「個人情報等保護方針」において「すべての個人情報について、利用目的を厳格に特定し」「特に、個人情報を本人以外の第三者に提供する場合は、本人の同意を得ることを原則とし、同意を得ずに提供する例外的な場合を厳格に限定する運用を心がけます。」と明記して公表している(甲105の1頁)。
被告神奈川県弁護士会も「収集した個人情報の利用は、収集目的の範囲内で行い、原則として本人の了解なしに、目的外に利用したり、第三者に提供したりすることはありません。」と明記して公表している(甲106)。
そして、個人情報取扱事業者は特定した利用目的を公表または通知しなければならないところ(個人情報保護法18条)、被告東京弁護士会が同条にもとづき公表した利用目的は、「弁護士法・本会の会則・規則・細則に定めのある事務手続きに従い、事務の管理及び会員による非行等の防止及び早期発見を目的として必要な範囲で利用します」というにとどまる(甲105の2頁)。個人情報を第三者(対象弁護士)に提供することに全く触れていない。
被告神奈川県弁護士会も「懲戒請求データ」の利用目的は「弁護士法・当会の会則・会規・規則・細則に定めのある事務手続に従い、事務の管理を目的として必要な範囲で利用します。」というにとどまり、第三者(対象弁護士)に提供することに全く触れていない(甲106)。
したがって、本件提供が「利用目的の達成に必要な範囲」に含まれると解する余地はない。
仮に本件提供が被告各弁護士会の会規等に定める手続きに拠っていたとしても結論は同じである。単に会規が違法だからそれに則った第三者提供も違法であるというだけである。
以上により、懲戒請求者の個人情報を対象弁護士に提供することは、「利用目的の達成に必要な範囲」に含まれない。したがって、本件提供には懲戒請求者らの同意が必要であった。
い) 懲戒請求者らの同意がないこと
個人情報保護法は、目的外利用、第三者提供が許される要件として「本人の同意」と規定している(16条1項、23条1項)。ガイドライン(甲104)は次のように述べる。
「『本人の同意』とは、本人の個人情報が、個人情報取扱事業者によって示された取扱方法で取り扱われることを承諾する旨の当該本人の意思表示をいう(当該本人であることを確認できていることが前提となる。)。
また、『本人の同意を得(る)』とは、本人の承諾する旨の意思表示を当該個人情報取扱事業者が認識することをいい、事業の性質及び個人情報の取扱状況に応じ、本人が同意に係る判断を行うために必要と考えられる合理的かつ適切な方法によらなければならない。」
「 【本人の同意を得ている事例】
事例1)本人からの同意する旨の口頭による意思表示
事例2)本人からの同意する旨の書面(電磁的記録を含む。)の受領
事例3)本人からの同意する旨のメールの受信
事例4)本人による同意する旨の確認欄へのチェック
事例5)本人による同意する旨のホームページ上のボタンのクリック
事例6)本人による同意する旨の音声入力、タッチパネルへのタッチ、ボタンやスイッチ等による入力
(ガイドライン2-12)
本件提供で、上記のような同意は一切ない。
よって、本件提供は個人情報保護法23条1項に違反する違法な取り扱いである。
う) 「法令に基づく場合」に該当しないこと
同法23条は、例外的に個人データを第三者に提供することが許される場合として、法令に基づく場合を挙げる。
本件は、被告各弁護士会が、懲戒請求書を受領したことによって懲戒請求者らの個人情報を取得した。したがって、弁護士法に、懲戒請求者の個人情報を第三者に提供することを定める規定があれば問題ない。
しかし前記のとおり弁護士法上、懲戒請求者の住所氏名を対象弁護士に通知すべきことを規定した条文は存在しない。
ガイドライン(甲104)で、「法令に基づく場合」として想定されているのは、次のような例である。
事例1)警察の捜査関係事項照会に対応する場合(刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第197条第2項)
事例2)裁判官の発する令状に基づく捜査に対応する場合(刑事訴訟法第218条)
事例3)税務署の所得税等に関する調査に対応する場合(国税通則法(昭和37年法律第66号)第74条の2他)
事例4)製造・輸入事業者が消費生活用製品安全法(昭和48年法律第31号)第39条第1項の規定による命令(危害防止命令)を受けて製品の回収等の措置をとる際に、販売事業者が、同法第38条第3項の規定に基づき製品の購入者等の情報を当該製造・輸入事業者に提供する場合
事例5)弁護士会からの照会に対応する場合(弁護士法(昭和24年法律第205号)第23条の2)
事例6)保健所が行う積極的疫学調査に対応する場合(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第15条第1項)
事例7)災害発生時の停電復旧対応の迅速化等のため、経済産業大臣の求めに応じて、一般送配電事業者が、関係行政機関又は地方公共団体の長に対して必要な情報を提供する場合(電気事業法(昭和39年法律第170号)第34条第1項)
(ガイドライン3-4-1が参照する3-1-5)
上記の法令はいずれも、公的機関が個別具体的事情において客観的に必要性があると判断して情報提供等を求めることができることを明示的に定める法令である。そのような求めに応じて情報を提供することが「法令に基づく場合」として許されるのである。
また提供する相手は原則として公的機関である(事例4だけは公的機関から命令を受けた製造・輸入事業者)。つまり個人情報が保護され、かつ利用目的が限定されていることが担保されている。
個別具体的な事情の如何にかかわらず一般的抽象的に個人情報の提供を認める例は一つもない。
本件提供は、上記のように公的機関から照会を受けてなされたものではない。弁護士法に何ら規定がないにもかかわらず、被告各弁護士会が自ら制定した会規に基づき、内容や必要性の如何によらず全件無条件に対象弁護士に個人情報を提供したものである。したがって、「法令に基づく場合」に該当しないのは明らかである。
え) 「財産の保護のために必要がある場合」に該当しないこと
個人情報保護法23条1項2号は、例外的に本人の同意なく第三者提供が許される場合として、「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。」と規定する。
被告各弁護士会は、対象弁護士の懲戒請求者に対する損害賠償請求権という財産の保護のために、個人情報の提供が必要であるなどと強弁するかも知れないが、もちろん失当である。
(1)全件無条件に対象弁護士に提供するのであれば、それはあらかじめ利用目的の1つとして明確に特定し公表通知して、懲戒請求者の同意を得る必要がある。しかし被告各弁護士会はそれをしていないことは前述のとおりである。
(2)ガイドラインは、同条項は「人(法人を含む。)の生命、身体又は財産といった具体的な権利利益の保護が必要であ」る場合と述べる。
そしてガイドラインがその例として挙げるのは次のような場合である。
事例1)急病その他の事態が生じたときに、本人について、その血液型や家族の連絡先等を医師や看護師に提供する場合
事例2)大規模災害や事故等の緊急時に、被災者情報・負傷者情報等を家族、行政機関、地方自治体等に提供する場合
事例3)事業者間において、暴力団等の反社会的勢力情報、振り込め詐欺に利用された口座に関する情報、意図的に業務妨害を行う者の情報について共有する場合
事例4)製造した商品に関連して事故が生じたため、又は、事故は生じていないが、人の生命若しくは身体に危害を及ぼす急迫した危険が存在するため、当該商品の製造事業者等が当該商品をリコールする場合で、販売事業者、修理事業者又は設置工事事業者等が当該製造事業者等に対して、当該商品の購入者等の情報を提供する場合
事例5)上記事例4のほか、商品に重大な欠陥があり人の生命、身体又は財産の保護が必要となるような緊急時に、製造事業者から顧客情報の提供を求められ、これに応じる必要がある場合
事例6)不正送金等の金融犯罪被害の事実に関する情報を、関連する犯罪被害の防止のために、他の事業者に提供する場合
(ガイドライン3-4-1で参照される3-1-5)
以上のように、具体的な権利利益の保護の必要があり、かつ危険が急迫しており緊急を要する場合だけである。
本件では、被告各弁護士会は、対象弁護士が懲戒請求者に対し損害賠償請求権を有するかどうかにかかわらず、全件無条件一律に、何の緊急事態でもないのに、個人情報を提供しているのであるから、個人情報保護法23条1項2号の財産の保護のために必要がある場合に当たらないことは明白である。
お)小結
以上のとおり、本件提供は個人情報保護法にも違反する、違法な個人情報の漏えいである。
e) 本件提供の対象弁護士に対する不法行為性
本件は、同一事案でありながら、インターネットで呼びかけられたことにより、全国から同内容の懲戒請求書が大量に寄せられたという特徴を有する。しかし懲戒請求書は被告各弁護士会に送られたのであるから、本件が大量懲戒請求であるということは、被告各弁護士会でなければ知る由もない。
対象弁護士が、全国の見知らぬ多数人から懲戒請求されたと知らされればある種の精神的動揺を覚えるであろうことは、通常予見可能である。
また、弁護士法及び日弁連の会規に規定のある利益相反確認の負担など、法律のしろうとである一般人は知る由も無いが、被告各弁護士会は当然熟知し、その徹底を図る立場である。したがって利益相反確認の負担が生じることも被告各弁護士会には予見可能である。
弁護士法上、対象弁護士に通知すべきは、調査開始時は事案の内容、懲戒しない決定時はその理由だけである。わざわざ懲戒請求者の個人情報や、全国の多数人からなされた大量懲戒請求であることを知らせる必要も義務も全く無い。
したがって、被告各弁護士会は、予見できた損害を回避するために、懲戒請求者の人数及び住所氏名の個人情報を対象弁護士に通知してはならないという不作為の義務を負い、その義務の実行は容易であった。
それにもかかわらず、被告各弁護士会は、本件提供を行ったのである。
したがって、被告各弁護士会の本件提供は、対象弁護士に対する不法行為を構成する。
尚、本件提供が被告各弁護士会の会規会則に基づいたものであるとしても結論は変わらない。会規会則が違法だからそれに則った本件提供も違法というだけである。
当該不法行為の結果、案の定、予見可能だった損害が対象弁護士に発生したというのであるから、被告各弁護士会は、対象弁護士に対する損害賠償責任を負う。原告らがその損害賠償を履行したから、被告各弁護士会は、原告らに対し、求償債務を負う。
求償割合は、懲戒制度を司るのは被告各弁護士会であって懲戒請求者ではないこと、被告各弁護士会が懲戒請求者の個人情報を対象弁護士に提供することを懲戒請求者は予見できないこと(個人情報保護法、被告ら各個人情報保護方針等。甲105,106)から、100パーセントである。