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2018-02-01 22:05
2346 ら特集岡山弁護士会②(0)
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岡山弁護士会
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「共謀罪」と実質的に変わらない,いわゆる「テロ等準備罪」を創設する
組織犯罪処罰法改正法案の国会提出に反対する会長声明
1 当会では,昨年だけでも1月,11月と,二度にわたり,いわゆる「共謀罪」を内容とする法案の国会提出に反対する声明を発表しているが,現在の国会での議論状況及び報道を踏まえ,過去に3回も廃案になった「共謀罪」と実質的に変わらないいわゆる「テロ等準備罪」を創設する組織的犯罪処罰法改正法案を国会に提出することに強く反対する。
2 政府が本国会に提出しようとしている新法案(以下,「提出予定新法案」という。)の内容は,報道によれば,犯罪主体を組織的犯罪集団に限定した上で,特定の犯罪実現の計画に加え,準備行為を要件としているという。そして,政府はこれらの変更点から,提出予定新法案を従来の「共謀罪」とは全く異なるテロ対策のための法案であるとしてきた。
しかし,組織的犯罪集団の定義は曖昧であり,捜査機関の恣意的な解釈によって通常の市民団体や労働組合等が組織的犯罪集団と認定される危険性を孕んでいることから,主体がテロ組織等に限定されているとは言い難い。政府もテロ等準備罪について,「一般の方々がその対象になることはあり得ない」としながら,「団体の性質が一変することはある」と述べるなどその態度は一貫しておらず,テロ等準備罪が通常の市民団体や労働組合等に適用されるおそれは払拭されていない。
また,「計画」及び「準備行為」についても,何をもって「計画」がなされたと判断するのか基準が明確になっていない上に,「準備行為」も現行法上の予備罪における予備行為以前の危険性の乏しい行為を含むものであり,政府や捜査機関などの恣意的な運用により思想・信条の自由はもちろん,表現の自由,集会・結社の自由等の憲法上保障された基本的人権を侵害する危険性が含まれていることは平成28年11月9日発表の当会会長声明において述べたとおりである。
3 政府はこれまで,国連越境組織犯罪防止条約(以下,「条約」という。)締結のためにいわゆる「共謀罪」を創設する必要があるとしており,そのためには,条約において「4年以上の懲役・禁固の刑が定められている罪」について共謀罪を創設することが求められている以上,対象犯罪を減らすことはできないとの見解を示していた。それにもかかわらず,今回,何ら合理的な理由を示すことなく対象犯罪を600超から277にまで絞り込んだことは,政府の過去の説明と矛盾する。これは,従前の法案の内容でなければ条約を批准できないという政府の説明が誤りであること,及び条約の批准のために新たにテロ等準備罪を創設する必要のないことの証左である。
4 また,我が国の国内法においては,爆発物取締罰則,化学兵器禁止法,サリン防止法,航空機強取処罰法,銃砲刀剣類所持等取締法など,未遂以前の共謀や予備の段階からの処罰が可能となっており,しかも,これらについて講学上の共謀共同正犯も認められる以上,テロ対策のために新たにテロ等準備罪を創設する必要はない。加えて,我が国は,テロ対策のために制定されたテロ防止関連諸条約(13本)を締結している。これらの条約は,一定のテロリズム行為を国内法上の犯罪として,その犯人の処罰,引渡し等を行うことを定めることで,犯人を処罰しうる国際的な体制を取るものであり,国際的なテロリズムの行為の防止に関する国際協力の強化に資するものである。
これらの条約締結に際して,我が国は必要な国内法を整備しており,2002年に国連のテロ資金供与防止条約を締結した際には,国内法としてテロ資金提供処罰法(公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律)を制定し,公衆等脅迫目的の犯罪を実行しようとする者を援助する目的で資金等を提供する準備行為についても処罰の対象としている。
このように,我が国のテロ対策は十分に法的整備がなされており,国民の基本的人権を侵害する危険を冒してまで,新たに広範なテロ等準備罪を創設する必要はない。
5 このようにテロ等準備罪は,政府や捜査機関の恣意的な運用によって憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由などの基本的人権に対する重大な脅威となるばかりか,その制定の必要性に乏しいものであることから,当会は,いわゆるテロ等準備罪を創設する組織的犯罪処罰法改正法案を国会に提出することに強く反対する。
2017年(平成29)年3月8日
岡山弁護士会  会長 水 田 美由紀

改めて少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
1 当会は,この問題に関し,すでに平成27年5月13日付「少年法の適用年齢の引下げに反対する会長声明」を発表し,少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることに対して反対運動を重ねてきた。しかしながら,法務省は,平成28年12月,「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」取りまとめ報告書を発表し,少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げた場合に備えて若年者に対する刑事政策的措置に言及し,さらには法務大臣が少年法の適用年齢の引下げに関して法制審議会へ諮問したことが報道されるなど,少年法の適用年齢の引き下げの動きに向けた動きが進んでいる。
2 現行少年法は,少年の健全育成を目的に掲げて,その適用年齢を20歳未満と定め,全ての少年事件を家庭裁判所に送致したうえ,家庭裁判所及び少年鑑別所による科学的な調査と鑑別を踏まえ,少年に相応しい処遇を決する手続を採用している。かかる現行少年法の手続は,少年院などにおける個別的な指導と教育の処遇と相まって,少年の立ち直りと再犯の防止に有効に機能してきた。
この長きにわたり有効に機能してきた現行少年法の適用年齢を,いま引き下げる方向で見直さなければならない合理的な理由は存在しない。法律の適用年齢を考えるにあたっては,それぞれの法律の立法趣旨や保護法益に照らし,個別法ごとに慎重かつ具体的に判断すべきであって,国民のわかりやすさや整合性は適用年齢の一律引き下げの理由とはならない。
この点,民法の成人年齢引下げの議論は,公職選挙法との一致や,若年者の自己決定権を尊重することなどが理由とされている。しかし,これらは刑事手続において,若年者が,自己の権利を適切に行使して防御することが可能かどうか,あるいは今後いかに立ち直り更生することができるか,という場面とは,全く状況を異にするものである。仮に,契約を単独で行うことができることになっても,民法上想定されている通常の取引行為と,国家権力に対する防衛権を行使する必要がある刑事手続とでは,必要とされる知識,判断能力等は質・量ともに格段に異なる。
したがって,民法上の成年者であっても,社会的・精神的に未熟な18歳・19歳の者に対し,保護主義に基づき,家庭裁判所の後見的な処遇に委ねることには,合理性,必要性がある。
さらに,満18歳未満への適用年齢が引き下げられた場合,非行少年の多くが立ち直りに向けた十分な指導と処遇を受けられないまま放置されることになりかねない。現行少年法の下では,非行少年は家庭裁判所へ送致された後,家庭裁判所の調査官や少年鑑別所の技官などの専門家が,非行の背景や要因,少年の資質や環境上の問題点等の調査や分析を行い,少年院送致となった場合も,一人一人の少年の状態や問題点を踏まえて指導と教育が行われている。しかしながら,少年犯罪の約5割を占める18歳・19歳の非行少年が,少年法の対象外となった場合には,その多くが初犯であるため,不起訴処分,罰金刑,または執行猶予判決により施設収容されることなく手続を終了し,立ち直りに向けた十分な指導や処遇を受けられない。そもそも,18歳以上の非行少年の多くは,その発達過程で大きな問題を抱えており,成長発達権を保障されなかった子どもたちである。かかる非行少年にこそ,少年に可塑性を踏まえた個別的な指導と教育により,充実した「教化」が必要であり,その結果,非行少年の立ち直りと再犯の防止につながると考えられる。
加えて,少年犯罪の全体的な傾向は,増加も凶悪化もしていない。少年犯罪の検挙者数は,2004年以降減少を続け,凶悪犯罪も減少・横ばい傾向にあることを考えると,少年法の適用年齢を引き下げることによって,犯罪抑止効果が得られるということにはならない。
なお,法務省が発表した「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」取りまとめ報告書に記載されている若年成人層に対する刑事政策のあり方と少年法適用年齢の引下げに関する議論とは問題の所在を異にするため,区別してなされるべきである。若年成人層に関する刑事政策のあり方は,個別の問題点や必要性等から議論をつくし,慎重に判断されるべき事柄である。
3 以上のように,少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げるという議論は,少年の立ち直りを阻害しかねないものであって少年法の立法趣旨に反し,かつ,合理的な立法事実にも基づかないものである。
したがって,当会は,少年法の適用年齢を18歳未満まで引き下げることに改めて強く反対する。
2017年(平成29)年3月8日
岡山弁護士会  会長 水 田 美由紀

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆる「カジノ解禁推進法」)の成立に抗議し、法律の廃止を求める会長声明
「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(以下、「カジノ解禁推進法」という。)が、2016年(平成28年)12月15日成立した。
カジノ解禁推進法は、2013年(平成25年)12月に国会に提出されたものの、実質的な議論が行われないまま、一旦廃案となり、その後2015年(平成27年)4月に再提出されたものの、1年半以上もの間全く審議されなかった。
ところが、突如、2016年(平成28年)11月30日から法案の審議が始まり、わずか2週間後の12月15日未明に成立となった。
当会は、2014年(平成26年)10月22日、同法案に反対する旨の「カジノ解禁推進法案に反対する会長声明」を発しているところであり、その理由として、次のような点を指摘していた。まず、カジノは、刑法上の賭博に該当することは明白であることから、カジノの設置・運営を解禁しようとするならば、その違法性が阻却される根拠が必要である。しかし、カジノ解禁推進法では、民間事業者がカジノの経営を行うことを前提としており、違法性が阻却される理由は明らかでなく、これでは賭博罪の違法性が阻却され得ない。また、カジノ施設の設置により著しい弊害(ギャンブル依存症、多重債務者の増大、青少年の健全育成への悪影響、暴力団対策上の問題、マネー・ロンダリング対策上の問題)の発生が予見され、これらの点を考慮するならば、仮に喧伝されているような経済効果があったとしても推進すべきではないこと等を指摘した。
カジノ解禁推進法は、刑法が賭博を犯罪としている中で、民間賭博を認めることの法秩序全体の整合性を欠いていることに何ら変わりはない。また、カジノ解禁推進法第10条第8号では、「カジノ施設の入場者がカジノ施設を利用したことに伴いギャンブル依存症等の悪影響を受けることを防止するために必要な措置に関する事項」について、必要な措置を講ずるとしているが、当該規定は、抽象的な表現に留まっているだけでなく、我が国の実態に照らしても、何らカジノ解禁推進法を正当化するものではない。
そもそもギャンブル依存症とは、単に、ギャンブルが好きな傾向があるというものではなく、国際的に診断基準が定められ、深刻な行動障害を伴う疾患であるところ、我が国におけるギャンブル依存症の人数は推定で536万人以上、国民の中に占める依存症の有病率は4.8パーセントとされている。これは、米国や韓国などと比較して、突出して高い割合である(米国1.6パーセント、韓国0.8パーセント)。
つまり、もともと我が国はギャンブル依存症が深刻な問題でありながら、必要な対策が取られなかったため、ギャンブル依存症の割合が高い状態となっている。十分な対策を行うことは、当然に必要なことであり、民間賭博を解禁する代わりに、対策を行えば足りるというものではない。ギャンブル依存症が重篤な疾患であることを看過し、さらに民間賭博を解禁するならば、ギャンブルに接する機会が増加するのであるから、依存症患者が増加することもまた、容易に予測できる。ギャンブル依存症は、その疾患を抱える者だけでなく、家族を始めとする周囲にも深刻な影響を及ぼすのであって、これ以上、新たなギャンブル依存症患者が増加するような施策を採ることは、許されるものではない。
以上より、カジノ解禁推進法は、当会がかねてから指摘している問題点について解消策が講じられておらず、その審議経過も拙速といわざるを得ない。
よって、当会は、カジノ解禁推進法の成立に断固抗議し、その廃止を求める。
2017年(平成29年)3月8日
岡山弁護士会 会長 水 田 美由紀

死刑執行に関する会長声明
2016年(平成28年)11月11日、福岡拘置所において、1名の死刑確定者に対して、死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。
にもかかわらず、またしても死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国に上っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けており、2014年(平成26年)7月24日に発表された国際人権(自由権)規約委員会の総括所見においても、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等の勧告を受けたばかりである。
日本弁護士連合会(以下、「日弁連」という。)は、2015年(平成27年)12月9日には法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
さらに、日弁連は、2016年(平成28年)10月7日に福井市で開催された第59回人権擁護大会で、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年(平成32年)までに死刑制度の廃止を目指すべきであること、死刑を廃止するに際して死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑を検討すること等を国に対して求めた。
当会においても本年9月10日にシンポジウム「徹底討論、死刑。―考え悩む世論―」を開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行ったところである。
しかしながら、我が国においては、国際社会の趨勢に反し、当会及び日弁連の度重なる要請にもかかわらず、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
そこで、当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、直ちに死刑の執行を停止した上で、2020年(平成32年)までに、死刑制度の廃止を目指すことを要請するものである。
2016年(平成28年)12月1日
岡山弁護士会  会長 水 田 美由紀

いわゆる共謀罪法案の提出に反対する会長声明
1 政府は,過去に3回廃案になった共謀罪法案に関し,テロ対策の必要性を新たな提出理由に加え,「共謀罪」という名称を「テロ等組織犯罪準備罪」に変更した組織犯罪処罰法改正案を今後の国会に提出する方針であると報じられている(以下,「提出予定新法案」という。)。
2 当会では,従前政府から提案されてきた共謀罪法案に対して,2016年1月に,共謀罪法案の問題点を指摘して,これに反対する声明を発表した。
3 提出予定新法案は,共謀罪法案と比較していくつかの修正が加えられている。しかし,その内容は以下に述べるとおり,罪刑法定主義により導かれる明確性の原則及び刑事法体系の基本原則に反するものであり,政府や捜査機関などの恣意的な運用により思想・信条の自由はもちろん,表現の自由,集会・結社の自由等の憲法上保障された基本的人権を侵害する危険性が含まれている。
まず,提出予定新法案は,適用対象を「組織的犯罪集団」とし,その定義について,「目的が4年以上の懲役・禁固の刑が定められている罪を実行することにある団体」とした。そして,犯罪の「遂行を2人以上で計画した者」を処罰することとし,その処罰に当たっては,計画をした誰かが「犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の準備行為が行われたとき」という要件を付した。
提出予定新法案における「組織的犯罪集団」の定義は不明確であり,その認定は捜査機関が個別に行うため,解釈によっては処罰される対象が拡大する危険性が高い。また,処罰要件とされている「計画」及び「準備行為」についても,何をもって「計画」がなされたと判断するのか基準が明確になっていない上に,「準備行為」も現行法上の予備罪における予備行為以前の危険性の乏しい行為を含むものであり,例えば,預貯金口座から単なる団体の運営資金を引き出す行為も,捜査機関によって犯罪実行に向けた資金の準備行為と認定されれば立件されうることになる。
以上のように,提出予定新法案の処罰範囲は広範かつ不明確であり,今般の刑事訴訟法改正に盛り込まれた通信傍受制度の拡大と合わさることによって,テロ対策の名のもとに広く市民の会話が監視・盗聴され,市民社会の在り方が大きく変わるおそれさえあると言わなければならない。
加えて,「計画」とは,「犯罪の合意」を意味し,結局のところ,特定の犯罪を複数人で謀議したという「共謀」を処罰することと同じく,行為そのものではなく,「合意」の危険性に着目して処罰しようとするものに他ならない。これは,外形的行為のない「意思」を処罰しないとする刑事法体系の基本原則に反するものである。
4 政府は,国連「越境組織犯罪防止条約」(以下,「条約」という。)締結のためにいわゆる「共謀罪」を創設する必要があるとしているが,同条約は,締結国についてそれぞれ国内法の基本原則に基づく立法上・行政上の措置をとればよいことを定めており,締結国に対しては組織犯罪対策のために未遂以前の段階での対応を可能とする立法措置を求めているに過ぎない。そして,わが国では,既に現行法上刑法をはじめとする個別の法律により,組織的な犯罪集団による犯行が予想される重大な主要犯罪については,例外的に予備罪・陰謀罪が定められており,未遂に至らない予備・陰謀の段階での犯罪を処罰することも可能となっている。したがって,同条約を締結するためにいわゆる「共謀罪」を創設する必要があるとの政府の説明は全くあてはまらない。
5 また,提出予定新法案は,テロ対策の必要性を新たな提出理由に加えているが,条約は経済目的の組織犯罪を適用対象としており,宗教的・政治的目的のテロ対策は目的となっていないことから,条約締結とテロ対策は無関係である。
そもそも,テロ対策との側面から提出予定新法案を検討しても,同法案は適用対象犯罪を単に「4年以上の懲役・禁固の刑が定められている罪」と形式的に定めた結果,その対象犯罪は600を超え,テロ犯罪・組織犯罪との結びつきが必然でない一般犯罪についてまで対象とされてしまっている。このように形式的に適用対象を定めたことは人権に対する配慮を欠き,あまりにも杜撰であると言わざるを得ない。
6 提出予定新法案は,憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由などの基本的人権に対する重大な脅威となるばかりか,外形的行為のない「意思」を処罰しないとする刑事法体系の基本原則に反するものであるにもかかわらず,その制定の必要性に乏しいものであることから,当会は,いわゆる「共謀罪」を内容とする提出予定新法案の提出に強く反対する。
2016年(平成28)年11月9日
岡山弁護士会 会長 水 田 美由紀

沖縄における機動隊による地元紙記者排除に強く抗議する会長声明
1 沖縄県の米軍北部訓練場(東村高江など)の新たなヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設をめぐり,本年8月20日午前,工事車両の搬入を阻止するために県道上に座り込んでいた人たちに対し,警察官(機動隊員)が強制排除を始めたが,地元新聞社である琉球新報,沖縄タイムスの各記者がその模様を取材していた。
両新聞社を含む報道によると,その取材中に,琉球新報の記者は,機動隊員に両腕をつかまれ,背中を押されて約40メートルも移動させられた。その後,再度,機動隊員に両腕をつかまれ,警察車両の間に押し込められた。排除される際に,カメラに付けていた同社の腕章を示した上で,「新報の記者です。取材なんです。」と訴えたが,聞き入れられず,約15分間にわたって,取材の機会を奪われた。
また,沖縄タイムスの記者も,社員証を見せ,記者であることを訴えたにもかかわらず,琉球新報の記者と同様に,2度にわたって強制排除され,警察車両の間で身動きがとれない状況におかれるなどして,約30分間にわたって取材活動が制限された。
2 機動隊員による上記各行為は,憲法21条で保障されている国民の知る権利及びそれと表裏一体をなす報道の自由,同条の精神に照らして十分尊重されるべき取材の自由に対する重大な侵害である。
言うまでもなく,報道機関の報道は,民主主義社会において,国民が国政に関与するにつき,重要な判断の資料を提供し,国民の「知る権利」に奉仕するものである(最高裁大法廷昭和44年11月26日決定)。
今回の取材対象は,基地建設に抗議する市民を,国家権力である警察をもって強制排除する現場である。強制排除の法的根拠について疑問が示されるなか,国家権力の行き過ぎをチェックするため,現場取材から事実を報道し,広く国民に提供する報道機関の役割は極めて大きい。
3 また,特に沖縄の人々にとっては,近世まで独立国家として日本本土とは異なる歴史を歩み,太平洋戦争では住民を巻き込んだ大規模な地上戦が行われ,戦後米軍統治下を経て,昭和47年に本土復帰したという経緯から,米軍および日本政府が沖縄に対してどのような態度で臨んでいるのかを知ることは,沖縄の今後の在り方を考える上で極めて重要である。
地元紙2紙は,このような沖縄の歴史的な経緯を踏まえ,こうした沖縄の人々はもちろんのこと,広く国民に対しても,沖縄の抱える基地問題を考える上で不可欠な情報を継続的に提供し続けている。当会においても,2015年(平成27年)5月30日,沖縄の基地問題について,沖縄発の生の情報に基づき市民とともに考える,「沖縄と岡山から民主主義と安全保障を考える」と題した憲法講演会を開催したが,この集会により,沖縄で実際起きている事実や基地問題を巡る沖縄県民の感情を,多くの国民が知ることの重要性を再認識した。
4 当会は,今般,基地問題の最前線で起きている事実を伝えるという使命のもと取材を続けていた新聞記者が機動隊員により妨害され,報道の自由が侵害されたことに強く抗議し,今後同様の事態が発生しないよう強く申し入れるものである。
2016(平成28)年11月9日
岡山弁護士会  会長 水 田 美由紀

本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律に対する会長声明
1 2016(平成28)年5月24日,「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(以下「本法律」という。)が成立し,同年6月3日,施行された。
2 近年,特定の国籍や民族の人々の排斥を主張する,いわゆるヘイトスピーチが全国各地で繰り返し行われている。
ヘイトスピーチは,憲法で保障された個人の尊厳を著しく傷つけ差別意識を生じさせるものであり,その根絶が強く求められる。そのため,本法律が成立したことは,ヘイトスピーチ解消に向けた取組を前進させるものとして評価できる。
3 しかし,本法律は,「不当な差別的言動」の対象となる被害者を,「本邦外出身者」であって「適法に居住するもの」に限定しており,「本邦外出身者」以外の者や在留資格を有しない者に対するヘイトスピーチは許されるとの誤解を生じさせるおそれがある。そもそも在留資格いかんに関わらず,ヘイトスピーチは憲法14条が定める法の下の平等の精神に反し,国際人権規約(自由権規約)及び人種差別撤廃条約等国際条約が禁止する差別にあたるものであり許されない。本法律は速やかに改正すべきである。
4 また,本法律第4条は,地方公共団体に対しては努力義務を定めるにとどまっているところ,より実効的にヘイトスピーチを根絶するためには,地域に根差した地方公共団体による差別解消に向けた取組が欠かせない。
5 この点,衆議院法務委員会及び参議院法務委員会において,「『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』以外のものであれば,いかなる差別的言動であっても許されるとの理解は誤り」であること,「地域社会に深刻な亀裂を生じさせている地方公共団体においては」不当な差別的言動の「解消に向けた取組に関する施策を着実に実施すること」等の附帯決議がなされており,この附帯決議に沿って本法律を解釈運用することが求められる。
6 当会は,国や地方公共団体に対し,本法律に基づいてヘイトスピーチの根絶に向けた具体的な施策を講じることを求めるとともに,国会に対しては,必要な改正及びヘイトスピーチ解消に向けた更なる法整備を速やかに行うよう求めるものである。
2016(平成28)年8月9日
岡山弁護士会 会長 水田 美由紀

死刑執行に反対する会長声明
2016年(平成28年)3月25日、大阪拘置所と福岡拘置所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して、死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。
にもかかわらず、死刑に関する情報公開や国民的議論が行われないまま、前回の執行から約3か月後に死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国に上っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けている。2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けており、2014年(平成26年)7月24日に発表された国際人権(自由権)規約委員会の総括所見においても、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等の勧告を受けたばかりである。
日本弁護士連合会は、2015年(平成27年)12月9日には岩城法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
当会においても昨年1月にシンポジウムを開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行っているところである。
しかしながら、現実には、国際社会の潮流に反し、また、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
そこで、当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、我が国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2016年(平成28年)4月1日
岡山弁護士会  会長 水 田 美由紀

憲法尊重義務(憲法99条)を誠実に履行することを求める会長声明
2015年(平成27年)9月19日未明に参議院で安保法案は強行採決の末成立し、2016年(平成28年)3月29日、施行されるに至った。以後、自衛隊はこれまで経験したことのない領域に活動の範囲を拡大することとなり、戦後の防衛政策は一気にその性格を変貌することとなる。1954年(昭和29年)の自衛隊創設以来、一人の戦死者も出さず、一人の外国人も殺していない自衛隊が、安保法制の下でその危険に晒されることとなる。
われわれ弁護士、弁護士会は再三にわたって、集団的自衛権行使を容認する閣議決定の撤回及び安保法制反対を訴えてきた。なぜなら、まず、憲法9条のもとでは集団的自衛権は許されないとする歴代政権の解釈を、国民の意思を問うことなく一内閣の解釈で変更することは、立憲主義及び国民主権に反するからである。そして何よりも、集団的自衛権を認めることは、憲法9条及び前文で定める徹底した恒久平和主義に反するからである。したがって、昨年成立した安保法制は、明らかに憲法に反し無効な法律である。われわれ弁護士、弁護士会は、無効な法律の執行を許すことはできない。今後も、安保法制の違憲性を国民に訴え、その廃止を求める活動を国民とともに行う決意である。
ところで、安保法案が国会で審議される前の2015年(平成27年)4月頃から、安倍政権の日本国憲法軽視の姿勢が顕著になってきた。たとえば、文部科学大臣が国立大学に対し、国旗掲揚・国歌斉唱を要請すると答弁したが、これは明らかに憲法23条で保障された「学問の自由・大学の自治」を侵害する行為である。また、政権与党議員らによる放送局に対する干渉行為は、憲法21条で保障する「表現の自由・報道、放送の自由」に対する侵害である。
安保法制成立後は、さらに現憲法軽視の姿勢に拍車がかかり、放送局を所管する高市総務大臣の「電波停止発言」、立憲主義との関係で極めて問題のある緊急事態条項(国家緊急権)を、憲法上に組み込むべく憲法改正を行いたいとの発言等にみられるように、現憲法の理念や基本原則を無視あるいは軽視する言動が相次いでいる。
現憲法が占領下のもとでアメリカ合衆国に押し付けられたものであるので、憲法改正をして自主憲法を制定すべきと安倍晋三氏が個人として考える事、また、国務大臣が個人として安倍晋三氏の考えに同調するのは、それぞれに「思想・信条の自由」があるので本来自由である。しかし、憲法によってその権限行使に縛りをかけられている国家権力の中枢にいる内閣総理大臣や国務大臣には、その職責上、当然ながら憲法尊重義務が課されていることに鑑みると、上記のような現憲法を無視あるいは軽視する言動は、極めて問題であると言わざるを得ない。
よって、われわれ弁護士、弁護士会は、現憲法のもとで基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命(弁護士法1条)とされている立場から、現憲法の理念、基本原則を軽視あるいは無視するかのような言動を繰り返す安倍内閣総理大臣及び各国務大臣に対して、憲法尊重義務(憲法99条)を誠実に履行することを、強く求めるものである。
2016年(平成28年)3月30日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

国家緊急権の創設に反対する会長声明
安倍首相は、2015年(平成27年)11月開催の衆参予算委員会において国家緊急事態条項の創設に触れ、憲法改正に向けた姿勢を示した。
安倍首相が創設を目指す国家緊急事態条項とは、戦争、内乱、恐慌、大規模な自然災害など、平時の統治機構をもってしては対処できない非常事態において、国家権力が、国家の存立を維持するために、立憲的な憲法秩序(人権保障と権力分立)を一時停止して、非常措置をとる権限、つまり、憲法上のいわゆる国家緊急権のことを指している。安倍首相は、この国家緊急権は、東北大震災などの未曾有の災害時や、パリ同時多発テロ事件などの一連のテロ活動時に対しても、国民の生命・身体及び財産を守るために必要とする。
日本国憲法は基本的人権の保障を基本原理とし、立法、行政、司法の三権を分立することにより国家権力によって人権が侵害されないように規定している。憲法に国家緊急権を創設するということは、内閣総理大臣を長とする行政権力に対して人権保障及び権力分立制の停止権限を認めることであり、国家権力を制約して人権保障を実現しようとしている憲法の中に、人権を制約する権限を国家権力に付与する規定を創設する矛盾を含む。すなわち、国家緊急権の創設には、これを憲法的に厳格に枠づけようとすれば国家緊急権の意味をなさず、他方、国家緊急権を包括的・抽象的に定めれば国家緊急権に対する憲法による統制ができず人権侵害の危険性が増大するという問題がある。
日本国憲法が国家緊急権に関する規定を全く置いていないのは、一旦、国家緊急権が濫用されれば、憲法秩序の破壊や否定が容易に導かれるためであり、とりわけ我が国においては、過去、広範な国家緊急権を定めた大日本帝国憲法のもとで侵略戦争に邁進した過去を反省し、9条の戦争放棄条項により平和国家の確立を志向したためである。
また、日本国憲法が54条において参議院の緊急集会規定を置いた趣旨は、緊急時においても立法府による立法を可能にすることにある。
つまり、緊急時において人権を制限する法律を制定せざるを得ない場合においても、国民から選ばれた国会議員によることが必要であることを意味する。このことから、立憲主義に基づく憲法には安倍首相が考えているような国家緊急権は敢えて意図的に排除されていることを意味する。
歴史的にも、国家緊急権は国民の自由や権利を奪うことに使われてきた。ドイツでは、ワイマール憲法の国家緊急権の規定が濫用され、ヒトラーによる独裁に道を開くことになった。また、わが国でも、大日本帝国憲法の国家緊急権のひとつである戒厳宣告が関東大震災の混乱の中で発令され、この戒厳宣告がきっかけとなって軍隊により多くの朝鮮人・中国人が虐殺された事実がある(詳しくは2003年(平成15年)8月25日日弁連「関東大震災人権救済申立事件調査報告書」)。
以上より、一旦濫用されれば憲法秩序の破壊、否定に至る国家緊急権を、日本国憲法を改正して創設する必要は全くないのであって、外国からの武力攻撃、内乱、大災害などについては既に自衛隊法、警察法、災害対策基本法などが制定されており、これらによって対応すべきである。
よって、岡山弁護士会は、日本国憲法を改正して国家緊急権を創設することには断固反対する。
2016年(平成28年)3月9日
岡山弁護士会   会長 吉 岡 康 祐

高市早苗総務大臣をはじめとした政府並びに政権与党よる報道機関への圧力に強く抗議し、併せて高市早苗総務大臣の放送法に関する発言の撤回を求める会長声明
1 はじめに
高市早苗総務大臣は、2016年(平成28年)2月8日の衆議院予算委員会で、野党議員の質問に対し、「放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返し、行政指導しても全く改善されない場合、それに対して何の対応もしないと約束するわけにはいかない」と述べた上、政府が放送局に対し放送法4条違反を理由に電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性に言及した。
その際「政治的に公平」の意味として、「国論を二分する政治課題で一方の政治的見解を取り上げず、ことさらに他の見解のみを取り上げてそれを支持する内容を相当時間にわたり繰り返す番組を放送した場合」などと例示し、総務省は「政治的公平」の解釈について「一つ一つの番組を見て、全体を判断する」との政府統一見解を発表した。
また、これに先立つ2014年(平成26年)11月26日、政権与党である自民党報道局長福井照衆議院議員は、「報道ステーション(テレビ朝日)」の報道内容に関し、番組プロデューサー宛てに「アベノミクスの効果が、大企業や富裕層のみに及び、それ以外の国民には及んでいないかのごとく断定する内容」であり「放送法4条4号の規定に照らし、同番組の編集及びスタジオの解説は十分な意を尽くしているとは言えない」と批判する文書を送っており、2015年(平成27年)4月17日には、「報道ステーション」の番組内で古賀茂明氏が自身の番組降板を巡って官邸から圧力があったと発言したことについて、自民党情報通信戦略調査会が、テレビ朝日の幹部に対し、事情聴取を行っている。
高市早苗総務大臣の発言はもとより、政権与党の所属議員や自民党情報通信戦略調査会によるこれらの行為は、政権与党に批判的な言論を抑圧する意図に基づいており、以下のとおり、憲法21条及び放送法で保障される報道機関の報道の自由に対する重大な侵害行為であり、到底許されない。
2 表現の自由と報道の自由
(1)表現の自由の価値
そもそも、表現の自由(憲法21条)は、「表現」そのものが個人の人格を発展させるという価値とともに、近代市民革命の原動力となった重要な権利の一つとして政府に対する批判を核心部分として発展してきたものであって、「表現(言論)」を通じて国民が政治的意思決定に関与するという価値を有することから、国民主権制度の下では極めて重要で、かつ、不可欠な人権である。
また、「表現の自由」を含めた精神的自由権は、一旦傷つくとその回復が困難なことから、経済的自由権より優越した地位を有するとされ、原則として制限することはできず、制限が許されるとしても、必要最小限でなければならないとされている。そのため、憲法は表現の自由に対する事前抑制を原則として禁止している(憲法21条2項参照)。
(2)報道の自由の価値
また、情報の「送り手」であるマス・メディアが発達した現代社会においては、社会生活において情報の持つ意義が飛躍的に増大している。そのため、個人が多種多様な情報や思想を求め、受けることができてこそ、個人それぞれが自分の思想や意見を形成し、それを表現することができると考えられている。
したがって、憲法21条が保障する表現の自由は、思想や情報を発表し伝達する自由(送り手の自由)のみならず、多種多様な情報や思想を求め、受ける自由(いわゆる「知る権利」)も含むものとされている。
さらに、マス・メディアが発達し、情報が集中している社会においては、「報道機関の報道」は、民主主義を維持するための国民の「知る権利」に奉仕する極めて重要な意義を有している。そして、「放送の自由」は、「報道の自由」の一環として、当然ながら、憲法21条によって保障されているのである。
3 放送法の趣旨
(1)基本目的
放送法1条では、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を保障」し、「健全な民主主義の発達」を目的としている。これは、戦前の日本放送協会が国家権力の宣伝機関になっていったことの反省から、放送局が国家権力から独立したものになるように、国家権力の介入を防ぐために規定されたものである。それを受けて、放送法3条では、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、または規律されることがない」と規定している。この規定は、放送が周波数の割り当てという技術的理由によって無線局の免許という形で国家権力の介入を余儀なくされており、それゆえに国家権力による干渉や侵害の危険にさらされているところから、憲法21条の趣旨に照らして、当然のことをあえて明文化した規定である。
(2)放送法4条の趣旨
ところが、放送法1条で、「放送による表現の自由」が保障されているにも関わらず、放送法4条では、放送番組の編集に対し、「政治的公平」や、「多角的論点の提示」等の制約基準が示されている。これは、一般的には、放送は、新聞や雑誌と違って、放送の電波は限られており、放送局の数も制限されるので、放送局の放送が「公平でない場合」等の影響力が大きいからだと言われている。しかし、もし、この放送法4条が法的強制力を持つ強行法規で、同条に違反したら何らかの制裁を受けるとなると、同じ法律内に相矛盾する規定が存在することになるので、放送法4条は、放送局に対する倫理規範と解釈すべきであるとされている。すなわち、放送法4条で求められる「政治的公平」等の制約は、放送局側の自主的判断に委ねるという規定にすぎないのである。よって、放送法4条は、放送局に法的義務を課すものではなく、電波法76条1項や放送法174条の「違反したら電波停止や業務停止」にされる「法律」には含まれない。
4 高市早苗総務大臣及び与党議員や自民党調査会の行為の問題点高市早苗総務大臣が、放送法4条の「政治的に公平」という文言を行政指導の根拠とし、さらに違反した場合に電波法76条1項による電波停止の可能性にまで言及することは、放送事業者に対して「時の政府を批判する報道」を控えさせるに十分な言動であり、「重大な萎縮効果」が生じる。
さらに、政権与党所属の国会議員や自民党情報通信戦略調査会が、報道機関の報道内容を問題視して当該報道機関宛てに文書を送付したり、当該報道機関幹部に意見聴取を行ったりすることも、報道機関が、政権与党関係者らの出演を拒否され、あるいは放送免許を取り消される等の不利益を恐れて政権批判の報道を自粛することにつながる恐れがある。
したがって、このような行為は、実質的には政権批判報道を禁止するに等しく、報道・放送の自由に対する重大な侵害行為であると言わざるを得ない。
5 結語
よって、当会は、高市早苗総務大臣をはじめとした政府並びに、政権与党所属の国会議員及び自民党情報通信戦略調査会による報道機関への圧力に強く抗議するとともに、特に、高市早苗総務大臣に対しては、前記発言をすみやかに撤回することを求めるものである。2016年(平成28年)3月9日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

消費者庁・国民生活センター・消費者委員会の地方移転に反対する会長声明
現在,政府は「まち・ひと・しごと創生本部」の「政府関係機関移転に関する有識者会議」(以下「有識者会議」という。)において,消費者庁・国民生活センター・消費者委員会を徳島県に移転することを検討している。
東京一極集中を是正し地方を活性化させるため,政府関係機関を地方に移転するという政策は評価でき,これ自体に反対するものではない。しかし,消費者庁・国民生活センター・消費者委員会については,その果たすべき役割と機能に鑑みて,地方に移転する機関としては不適切であり,当会としてはこれに強く反対するものである。
そもそも有識者会議は,道府県等からの提案のうち,「中央省庁と日常的に一体として業務を行う機関」や「官邸と一体となり緊急対応を行う等の政府の危機管理業務を担う機関」に係る提案,「現在地から移転した場合に機能の維持が極めて困難となる提案」については受け付けないものとしている。
消費者庁は,従前多数の省庁に分散していた消費者行政を一元化し,その推進の司令塔的役割を果たすものとして創設された組織であるから,各種施策の実施や立法・法改正に当たっては関係する府省庁との密接な連携が不可欠な機関である。また,消費者の安全に関する重大事故の発生時には,官邸及び中央省庁等と一体となり緊急対応を行うことが求められている。
国民生活センターは,全国の消費生活相談情報を集約・分析し,消費者庁と連携して諸問題を検討して関連省庁に意見を述べ,地方消費者行政を支援し,消費者・事業者・地方自治体・各省庁に情報提供を行うという機能を有している。
消費者委員会は,消費者庁等からの諮問事項を審議するほか,自ら任意の問題を調査して他省庁への建議等を行うという監視機能を有している。他省庁からの諮問を受ける場合も建議等の監視機能を行使する場合も,他省庁や関連事業者,事業者団体からの事情聴取や協議が頻繁に行われている。
したがって,いずれの機関も有識者会議のいう地方移転の提案が受け付けられない典型例である。
さらに,消費者庁・国民生活センター・消費者委員会は,現在,長年にわたり消費者問題に関わり,豊富な知識経験を有する多くの任期付公務員,非常勤職員,審議会委員等により支えられているところ,遠隔地に移転した場合,現在と同様の人材を確保し,機能を維持することは極めて困難である。
以上からすれば,消費者庁・国民生活センター・消費者委員会が地方に移転した場合,国民の生命や健康にも密接に関わる消費者行政の円滑な遂行が大きく阻害されることは明白であり,その結果,消費者である日本全国の国民の安全や安心が脅かされる結果となれば本末転倒である。
よって,当会は,消費者庁,国民生活センター及び消費者委員会の地方移転について強く反対する。
2016年(平成28年)2月3日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

司法修習生に対する給費制の実現を求める会長声明
1 司法修習生とは,司法試験に合格後,裁判官・検察官・弁護士としての能力・素養を磨くために,最高裁判所所管の司法研修所に配属され,修習を1年間にわたり行う者をいう(司法修習制度)。司法修習生は,修習に専念する義務を負い,兼業(アルバイト)は原則禁止されている。また,裁判修習では法廷に立ち会い,検察修習では被疑者・被告人の取調べにも同席する。弁護修習では依頼者からの聴き取りにも同席する。したがって,当然のことながら,公務員や弁護士に課せられる守秘義務も負う。
戦後,司法制度改革の過程において,我が国の司法は,日本国憲法の下,三権の一翼として新たな役割を求められ,司法修習は,司法作用を担う将来の法曹(裁判官・検察官・弁護士)の養成のために,国家による法曹の統一的な養成制度(統一修習)として制度化された。したがって,三権の一翼を担う将来の法曹を養成する責任は国家にあり,司法修習制度発足後64年間にわたり,司法修習生には国家公務員水準の給費が支給されてきた。
2 しかし,司法制度改革により司法試験の合格者が大幅に増加したことに伴い,財政負担も増大することを主な理由として,2011年(平成23年)11月,新65期司法修習生より,従来の給費制を廃止し,貸与制(無給制)へと移行した。これにより,新65期以降の司法修習生は,1年間の修習期間,国から貸与を受けるか,貯金を取り崩すか,親族からの支援を受けるかして生活せざるを得なくなった。司法修習生は修習に専念する義務があり,アルバイトが原則禁止されており,また,修習生には十分な貯金もなく,親族からの支援を受けられる者も限られているので,多くの修習生は,国に貸与の申請をしているのが現状である。新65期から68期の修習生については,約70?90%の修習生が貸与の申請をしている(最高裁判所調べ)。修習生の平均貸与額は約300万円であり,さらに,法科大学院や大学時代の奨学金返還債務を合わせて負っている修習生も約50%弱存在し,1000万円の債務を負っている修習生も存在する(日本弁護士連合会調べ)。司法研修所を修了して法曹になった時点で,数百万円の借金を背負って社会に出るのである。それが,今の司法修習生の現実である。
それゆえ,たとえ司法試験に合格しても,修習期間は無給で,法曹になっても借金の返済が待っているとなれば,司法試験を目指す法曹志望者が減少するのは必然である。実際,司法修習生に対する給費制が廃止されて貸与制に移行した2011年(平成23年)の法科大学院受験生(20,497人)は,2004年(平成16年)の受験生(40,810人)の約半分に減少し,平成27年度の実際の入学者は過去最低の2,201人で,募集した54校のうち50校で定員割れとなっている。さらに,司法試験に合格しても,貸与制への不安から司法修習を辞退した者も現れている。
3 以上のように,法曹志望者減少の理由は,司法修習生に対する給費制の廃止が大きな要因となっていることは明らかである。このまま,修習生に対する貸与制を継続させると,ますます法曹志望者が減少するとともに,経済的に余裕のある家庭の者しか受験できなくなる可能性が高くなり,多種多様な人材が法曹になるべきとする司法改革の理念も実現できない。司法修習生に対する給費制の実現は,法曹志望者減少に歯止めをかけるためにも早急に実現されなければならない。
4 日本弁護士連合会や各単位会,あるいは若手弁護士や法科大学院生等で構成される任意団体であるビギナーズ・ネットは,司法修習生に対する給費制実現の活動を継続的に行ってきた。国会議員に対する要請や院内学習会も開催し,多くの国会議員がそれによって給費制に前向きな意識を持ってくれるようになった。衆参両院の717名の議員のうち過半数を超える議員から賛同のメッセージが日弁連に寄せられている。与野党を問わず,また世代を超えて賛同者が集まっている。司法修習生に対する給費の必要性に対する理解が得られつつあることの現れであり,当会としても心から歓迎する。
5 さらに,昨年6月30日,政府の法曹養成制度改革推進会議(議長:菅官房長官)が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において,「法務省は,最高裁判所等との連携・協力の下,司法修習の実態,司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況,司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ,司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする」との一節が盛り込まれた。
これは,これまでの法曹養成制度改革に関する政府組織での提言や決定等が「貸与制を前提」と明言していたことに比べて,一歩前進したものと評価する。6 三権の一翼を担う司法,それに携わる法曹を養成するのは国の責務である。国は,法曹養成のため司法修習生に対し給費を支給し,修習生が生活の心配をすることなく修習に専念できる環境を構築していく責任がある。
よって,当会は,国会に対しては,司法修習生に対する給費の実現を内容とする裁判所法の改正を早急に求めるとともに,内閣,最高裁判所に対しては,同法改正を実現するため,早急に必要な措置をとることを求めるものである。
2016年(平成28年)1月20日
岡山弁護士会 会 長  吉 岡 康 祐

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