悪徳弁護士トリオプラスワン」「悪徳弁護士詐欺集団」「在日コリアン弁護士プラス反日弁護士集団」「諸悪の根源日弁連」......。
神原元、佐々木亮、北周士、嶋﨑量君、みなさん、おはよう。元気かね。
それにしても、和解者に謝罪させ、金を取った上に提訴とは、まさに鬼畜、法匪のなせるわざである。この件、一歩間違えば、戦後最大のスキャンダル、造船疑獄レベルまで発展しかねない。安倍総理の指揮権発動が楽しみだね。
訴訟において、原告が犯罪を犯した場合に、その代理人の責任がどこまで及ぶか非常に興味がある。訴因に関与している場合の割合である。
今般、和解金詐欺事件が発生した。直接には「令和元年(ワ)第16126号損害賠償事件」であるが、代理人に嶋﨑量がおり、この関係には「和解のご提案」なる怪文書を送付している西川治、山岡遥平のような弁護士がいる。刑法犯であることは間違いないが罪状の特定が難しい。
すでに、代理人弁護士を含めて、全員が告発済みである。
佐々木亮、北周士、嶋﨑量、神原元、金竜介、宋恵燕、姜文江、西川治、山岡遥平、兒玉浩生、倉重公太朗、田畑淳、向原栄大朗、山田祥也。
告発という以上、もちろん刑法犯であるが、それぞれの行為に合った罪状で告発している。
事実証拠で固めており、法のプロとはいえ、逃げるのは難しいだろう。
<(2) ヘイト・スピーチ(憎悪扇動表現)は、段階を踏んで侵害の程度が深まる。当初は民事的にも違法性を伴わないものであるが、段階を経て民事的違法性を帯び、刑事的違法性を帯び、最終的には虐殺に繋がる。>
<なお、仮に本件大量懲戒請求が共同不法行為と認められない場合、
個別の懲戒請求について、それぞれ単独不法行為が成立することとなる。
その場合であっても、既述のとおり、個別の懲戒請求がそれぞれ人種差別目的でなされたことにかんがみれば、それぞれによって原告らに生じた精神的苦痛及び名誉毀損について、これを慰謝するに相当な金額は 、どのように控えめに見積もっても50万円を下ることはない 。>
<「徹底して隠蔽されてきた戦後の彼らの蛮行の歴史」、
「あぶり出された日本国民の敵」、
「在日朝鮮人に組みするものは日本人ではない。有事には熾滅を念頭に対処されたい。」
といった極めて強い憎悪扇動表現が用いられていた。
そして、本件大量懲戒請求における懲戒事由として具体的に摘示 された事実も、原告らが本件声明に賛同したこと、また原告らが人種差別に反対する活動を行うことを目的とする団体の代理人として行動したこと、の2つであり、要するに、原告らが人種差別の根絶を目指す活動を行っていることをターゲットにしたものであった。
以上の事実関係からすると、本件大量懲戒請求は、人種差別目的のものではないと理解することのほうが著しく困難であり、明白に、在日朝鮮人に対する人種差別目的で行われたものといわなければならない。>
<(イ)しかしながら 、まず本件大量懲戒請求において懲戒事由として挙げられているところの「ツィッター・ジャパンに対する通知書代理人については国際テロリストとして告発されている弁護士が含まれており」との記載部分については、そもそも相代理人中のどの弁護士を指しているのかすらも明らかではなく、また実際にそのような告発がなされたのか否かも不明である。
なお付言するに、既述のとおり本件ブログにおいては繰り返し外患誘致罪等の罪名による告発の呼び掛けがなされていたため、相代理人中に、このような告発の対象とされた弁護士がいる可能性はある。>
<そうした中で、あえて原告らが本訴を提起し、御庁の判断に期待をするのは、本件大量懲戒請求が 、差別的意図に基づくマイノリティ支援者への攻撃であることを明快に認定していただくことにある。>
<本訴提起は、原告ら及び原告ら代理人にとって、新たな懲戒請求の原因となる可能性がある。本訴を担当する裁判官もまた、厳しい攻撃の対象となりうるかもしれない。しかし、だからこそ、目の前にある差別に徹底して向き合わなければならない。毅然とした司法の対応を望むものである。>
.....まあ、二言目には「虐殺」なんて言葉が出てくる。少なくとも日本人的発想ではない。被害妄想もここまでくると薬では治らない。入院治療をお勧めする。
全体に、腰が引けており、すり替え理論も中途半端である。
正しいことをやっているんなら裁判所に期待する必要はあるまい。何かうしろめたいことをやっている意識があるんだな。
<本訴提起は、原告ら及び原告ら代理人にとって、新たな懲戒請求の原因となる可能性がある。本訴を担当する裁判官もまた、厳しい攻撃の対象となりうるかもしれない。>
訴 状
2019年(令和元年)8月23日
札幌地方裁判所民事部御中
原告ら訴訟代理人弁護士 佐藤哲之
同 長野順一
同 佐藤博文
同 川上有
同 小野寺信勝
同 山田佳以
同 橋本祐樹
同 桝井妙子
その他は稿末に掲載。
令和元年(ワ)第1671号
事者の表示 別紙当事者目録及び別紙代理人目録記載のとおり
損害賠償請求事件
訴訟物の価額 8 5 8 0 万 円
貼用印紙額 2 7 万 8 0 0 0 円
訴状趣旨
(主位的請求)
1 被告らは、原告池田賢太に対し、連帯して金550万円及びこれに対する2018 年(平成30年)3月22日以降支払済みまで年5分の割合による金員を支払え
2 被告らは、原告島田度に対し、連帯して金550万円及びこれに対する2018年(平成30年)3月22日以降支払済みまで年5分の割合による金員を支払え
3 被告らは、原告皆川洋美に対し、連帯して金550万円及びこれに対する2018年(平成30年)3月22日以降支払済みまで年5分の割合による金員を支払え
4 訴訟費用は被告らの負担とする
との判決並びに仮執行の宣言を求める。
(予備的請求)
1 被告らは、原告池田賢太に対し、それぞれ金55万円及びこれに対する2018年(平成30年)3月22日以降支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え
2 被告らは、原告田度に対し、それぞれ金55万円及びこれに対する2018年(平成30年)3月22日以降支払済みまで年5分の割合による金員を支払え
3 被告らは、原告皆川洋美に対し、それぞれ金55万円及びこれに対する2018年(平成30年)3月22日以降支払済みまで年5分の割合による金員を支払え
4 訴訟費用は被告らの負担とする
との判決並びに仮執行の宣言を求める。
請求の原因
第1 はじめに(事案の概要)
1 本件は、弁護士である原告らが、960名もの大人数からいわれのない懲戒請求を受けたことについて、懲戒請求者らに対して損害賠償請求を行うものである。
2 2017年(平成29年)11月、「余命三年時事日記」と題するインターネット上のウェブサイト(以下「本件ブログ」という)による扇動の下、960名の者が、弁護士である原告らに対して、懲戒請求を行うという事態が発生した(以下、これらを総称して「本件大量懲戒請求」という)。
3 本件大量懲戒請求の大きな特徴の一つは、インターネット上のウェブサイトの主導の下に、960名もの大人数の人間が実際に懲戒請求を行ったという点にある。これら960名は、日本各地に居住している者らであり、特に相互に人的なつながりもないようであるが、そうであるにもかかわらず、本件ブログの呼び掛けに呼応して本件大量懲戒請求を行ったということになる。
なお、実際の本件大量懲戒請求の懲戒請求書の文面の作成、作業、懲戒請求書のとりまとめ、送付作業については、いずれも本件ブログの運営者(以下「本件ブログ運営者」という)が行った。
4 本件大量懲戒請求のもう一つの大きな特徴は、本件大量懲戒請求が、明白な人種差別目的で行われているということである。これは、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の活動に対する攻撃そのものである。人種差別に抗することや被差別者に対する支援活動は、まさに基本的人権の擁護活動そのものだからである 。
後述するとおり、本件ブログは、在日朝鮮人に対する差別的投稿を繰り返し行っている。
また、そもそも原告らが本件大量懲戒請求の対象として選定された理 由も、後述するとおり、原告らが弁護士として人種差別に抗する活動をしていたことにあるものであり、本件大量懲戒請求の文面中においても、原告らの業務活動が懲戒事由として摘示されている。
このように、本件大量懲戒請求には、在日朝鮮人等のマイノリティの権利擁護を目指す弁護士の活動を攻撃する意図に基づくものであることが明白である。
5 原告らとしては、本件大量懲戒請求が、原告らへの業務妨害という攻撃であり、懲戒請求という形を取りながら、その実、弁護士の基本的人権の擁護活動、具体的には日本におけるマイノリティである在日朝鮮人の人権擁護活動を攻撃しようとしたものであること、さらにこれが日本全国の約1000名もの大人数により行なわ れたものであるということについて、大きな危機感を抱いたため、提訴に至ったものである。
なお、既に述べたとおり懲戒請求者らは960名もの大人数であるところ、本件においては北海道在住の者のみを被告としている。
第2 当事者等
1 原告ら
原告らはいずれも札幌弁護士会に所属する弁護士である。
2 被告ら
被告らはいずれも、札幌弁護士会に対し 、原告らにかかる弁護士法58条1項に基づく懲戒請求を行った者のうち、本件大量懲戒請求を行った当時北海道内に居住していた者たちである。
3 その他(本件ブログについて)
(1) 本件ブログの特徴
本件ブログは、次のような特徴を有している。
すなわち、本件ブログにおいては、いわゆる「コメント欄」(ブログ閲覧者が自由にブログ記事についてのコメントを書き込むことができるスペース)は設けられていないが、閲覧者が本件ブログ運営者に宛ててコメント投稿の送付を行うことができる様式になっていた。そして、本件ブログ運営者は、自身に送付されたこうした閲覧者のコメント投稿について、ブログ記事内にこれらのコメント投稿を数多く引用した上で必要に応じてコメント投稿への回答等をも記載する、という形式のブログ記事を多く作成していた。
このような形式であるため、本件ブログ閲覧者が送付したコメント投稿の内容は、そのまま本件ブログ記事の一部となり、他のブログ閲覧者に読まれることとなった。
そして、本件ブログにおいて引用されるコメント投稿の件数は著しく多く、本件ブログにおいては、コメント投稿の引用自体が重要なコンテンツの一部を形成していたと評価できる。場合によっては、コメント投稿とこれに対する回答を掲載するだけといった形式の記事すらも数多く作成されていたものである。
(2) 本件ブログは本件ブログ運営者と閲覧者が一体となって作成していたものであること
このように、本件ブログの記事は、本件ブログ運営者自身の記事に加えて、本件ブログの閲覧者の大量のコメント投稿も欠くべからざる重要な 構成要素となっていたものであるから、本件ブログの一連の記事は、本件ブログ運営者を中心としつつ本件ブログの閲覧者が一体となって作成していたものと評価できるものであり、そのように評価すべきである。
そして、本件ブログ記事がこのような構成であることから、本件ブログは、本件ブログ運営者と本件ブログ閲覧者、あるいは本件ブログ閲覧者相互間において、情報交換、意見交換等を密に行うことができる特異なプラットフォームとして機能していた 。
本件大量懲戒請求の行為についても、本件ブログ運営者と本件ブログの閲覧者がこの行為について相互に強い賛同の意を繰り返し表明することによって、お互いに動機を強め合った結果として行われたものであるといえる。
(3) 本件ブログが現在は閉鎖されていること
なお、本件ブログは現在は閉鎖されており、一般には閲覧できなくなっている 。これは、本件ブログが利用している サーバーを運営する企業において、本件ブログ内の記事(おそらくは本件大量懲戒請求等を扇動した記事など)が不法行為を構成すると判断されたために閉鎖されているものと思料される。
ただし、本件ブログに掲載されていた一切のブログ記事については、バックアップサイトが作成されておりそちらに全く同内容の記事が保存されているので、本訴状においては、このバックアップサイトに掲載されている記事を書証として提出することとしている 。
第3 事実経過
1 2016年(平成28年)7月29日、日本弁護土連合会は「朝鮮学校に対する補助金停止に反対する会長声明」(以下「本件声明」という )を発表した(甲1 ) 。
2 2017年(平成29年)2月ころ、本件ブログ運営者は 、「第四次告発」と称して、各都道府県知事、在日コリアン弁護士協会会員弁護士等を対象に、外患誘致罪、外患援助罪、内乱罪等 の罪名における告発状提出の呼びかけを行った(「1537 告発状ダウンロード」と題する投稿、甲 2 ) 。
本件ブログの記載によればこれに呼応して約3万5000通もの告発状が本件ブログ運営者に送付され、本件ブログ運営者により、各地方検察庁に提出されたが、全て、罪となるべき事実の特定がなされていないといった理由により受理されず返送されたとのことである(甲3 ) 。
3 2017年(平成29年)6月ころ、本件ブログ運営者は、「第五次告発」と称して、本件声明と同趣旨の内容の声明等を発表した各地弁護士会の当時の理事者(会長及び副会長)に対し、懲戒請求をするよう呼 びかけを行った (「1641 告発状第五次までの資料」と題する投稿、甲4) 。
本件ブログの記載によればこれに呼応して本件ブログの読者による懲戒請求がなされたが、同年11月頃までに、全て懲戒委員会に事案の審査を求めない旨の議決がなされたとのことである。
4 2017年(平成29年)9月25日、原告らは、人種差別に反対する活動を行うことを目的とする権利能力なき社団である(「Counter-R acist Action Collective」(以下「C.R.A.C.」と いう)の代理人と して、C.R.A.C.のツィッターアカウントが凍結されたことに抗議する内容証明郵便をツィッター・ジャパン社に送付した。
この内容証明郵便送付の事実は、C.R.A.C.のホームページにおいても公開された(甲5 ) 。
5 2017年(平成29年)9月29日、本件ブログにおいて、本件ブログ運営者は、「1921 第六次告発確定概要」と題する記事の投稿を行った(甲6 ) 。
当該記事の末尾には「240 札幌弁護士会3名懲戒請求書」と記載されており、これは原告らに対する懲戒請求を呼び掛ける趣旨であった。
6 2017年(平成29年)10月22日、原告らは、札幌市内で開催されたヘイトスピーチの根絶を目指すイベント「SAPPORO AGAINST RAC ISM~タウンミーティング Vo1. 0 ヘイト スピーチのない札幌へ」にパネリストとして参加した。
7 翌23日、本件ブログにおいて、本件ブログ運営者は、上記イベントについての記事 (「1976 2017/10/23 アラカルト」と題するもの)を投稿し、当該記事中において、「この方たちは余命ブログを読んでいないようだね。
180 札幌弁護士会懲戒請求書
220 野間易通テロリスト告発状
共謀罪が成立しているから、テロリストの仲間はテロリストだからな。札幌地検で告訴されなくても外圧があるからね。要ご注意!!」
と記載した(甲7) 。
8 2017年(平成29年)10月下旬から12 月上旬にかけて、被告らを含む960名の者が、原告らに対して懲戒請求を行った(本件大量懲戒請求)。
懲戒請求書の文面は全て同一の文面であった(甲 8 ) 。
各被告ごとの懲戒請求の日付は、訴状添付別紙一覧表記載のとおりである。
なお、本件大量懲戒請求の懲戒請求書は、懲戒請求者が{固々に札幌弁護士会に提出したものではなく、①懲戒請求者らが 、それぞれ作成した懲戒請求書を本件ブログ運営者の指定した郵送先に郵送する 、②本件ブログ運営者において 懲戒請求書を取りまとめ、960名分を一括して札幌弁護士会に郵送する、という手順で提出がなされたものであった。
9 2018年(平成30年)3月22日、原告らのもとに、本件大量懲戒請求の調査開始通知書が送付された。
1 0 2018年(平成30年)4月23日、原告ら3名は本件大量懲戒請求に対する弁明書を提出した。
1 1 本件ブログにおいて、本件ブログ運営者は、2018年(平成30年)5月16日から同年7月27日までの間に、「日本人と在日朝鮮人の戦いが始まった」と題する投稿を50回以上行った。
その最初の投稿である「2519 日本人と在日朝鮮人の戦いが 始まった」において、本件ブログ運営者は、「5 月16 日 は在日朝鮮人と 反日勢力が日本人に対して宣戦布告した記念すべき日となる。徹底して隠蔽されてきた戦後の彼らの蛮行の歴史が暴かれ、あぶり出された日本国民の敵が公に姿を現す日である。」
「すでに外患罪で告発している在日や反日勢力が相手であるから、有事には単純に敵となる。在日朝鮮人に組みするものは日本人ではない。有事には繊滅を念頭に対処されたい。」
といった記載を行った(甲9) 。
1 2 2018 年(平成30年)6月29日、札幌弁護士会綱紀委員会は、原告らについて懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする旨の議決を行った。
第 4 本件大量懲戒請求が原告らに対する不法行為に該当すること
1 懲戒請求が不法行為を構成する基準
弁護土法58条1項は、「何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。」と規定する。
これは、広く一般の人々に対し懲戒請求権を認めることにより、自治的団体である弁護士会に与えられた自律的懲戒権限が適正に行使され、その制度が公正に運用されることを期したものと解される。
しかしながら、他方、懲戒請求を受けた弁護士は、根拠のない請求により名誉、信用等を不当に侵害されるおそれがあり、また、その弁明を余儀なくされる負担を負うことになる。
そして、同項が、請求者に対し恣意的な請求を許容したり、広く免 責を与えたりする趣旨の規定でないこと は明らかであるから、同項に基づく請求をする者は、懲戒請求を受ける対象者の利益が不当に侵害されることがないように、対象者に懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について調査、検討をすべき義務を負うものというべきである。
そうすると、弁護士法58条1項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において、請求者が、そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには、違法な懲戒請求として不法行為を構成する (最高裁平成19年4月24日判決)。
2 本件へのあてはめ
(1) 懲戒請求書の前段について
ア 懲戒請求の内容
本件大量懲戒請求の懲戒請求書の前段の記載は、「日本弁護士連合会会長 中本和洋名で発出された、違法である朝鮮人学校補助金支給要求声明に賛同し、その要求活動の実現を推進する行為は、傘下弁護士の確信犯的犯罪行為である」(別紙⑨ 、 原文ママ)というものである。
イ あてはめ
(ア)原告らは、日本弁護士連合会の役員ではなく、あるいは本件声明の作成に携わる所管委員会に所属していたこともないので、本声明の実際の作成作業自体には一切関与はしていない。しかし、本件声明で謳われている内容については強く賛同する立場にあり、一弁護士として、本件声明への賛意は随時表明してきたものである。
この点、そもそも朝鮮学校に通う在日朝鮮人に対して様々な差別が行われてきた歴史的経緯に鑑みれば、原告らが本件声明への 賛意を表明したとしても、当該行為が、基本的人権の擁護と社会的正義を実現することを使命とする弁護士個人の行動として許容され、法の下の平等の実現に資することは明らかである。
したがって、本件大量懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠くことは明らかである。
(イ) 本件と同種訴訟の判決である平成31年4月12日東京地裁判決も、これと同様の争点について、「被告ら(略) は、本件声明が憲法89条、13条、14条、26条に違反するものであり、本件訴訟は良心の自由に基づいて行動した被告らの権利を侵害するものであると主張する。
しかしながら、東京弁護士会の会長は、本件声明において、文部科学省が出した本件通知に対し、生徒の学習権や教育を受ける権利の観点から意見を述べ、朝鮮学校への補助金交付に関して文部科学省及び地方公共団体に対する要望を述べたものであるところ、かかる声明を出すこと自体が憲法に違反することとなる余地はないというべきである。また、本件声明に対する意見の表明は自由であるとしても、それを当該弁護士会に所属する弁護士に 対する懲戒請求という手段で行うことが正当化されるものではない。したがって、被告らの主張を採用することはできない。」と判示し、結論として懲戒請求の不法行為該当性を認めている。
(ウ) そして、既述のとおり、被告らは、本件ブログが「第五次告発」と称して 、本件声明と同趣旨の声明を出した各単位会の理事者らに対する懲戒請求の取りまとめを行ったが、結果として全て懲戒委員会に事案の審査を求めない議決がなされていたことも当然に知っていたか、少なくとも容易に知り得たものである。
したがって、本件大量懲戒請求についても、これが事実上又は法律上の根拠を欠き不相当であることについては、当然に知り得たものである。
(エ) 以上のとおりであるから、本件大量懲戒請求の懲戒請求書前段記載の懲戒事由については、これが不法行為を構成することは明らかである。
(2) 懲戒請求書の後段について
ア 懲戒請求の内容
本件大量懲戒請求の懲戒請求書の後段の記載は、「また、任意団体「Counter-Racist Action Collective」(対レイシスト行動集団。
「C.R.A.C.」のツィッター・ジャパンに対する通知書代理人については国際テロリストとして告発されている弁護士が含まれており、公序良俗に反する品行のみならず、テロ等準備罪に抵触する可能性まであると思量する。(」原文ママ)と いうものである。
イ あてはめ
(ア)既述のとおり、原告らがツィッター・ジャパンに対して C.R.A.C.の代理人として通知文を送ったことは事実である。
(イ)しかしながら 、まず本件大量懲戒請求において懲戒事由として挙げられているところの「ツィッター・ジャパンに対する通知書代理人については国際テロリストとして告発されている弁護士が含まれており」との記載部分については、そもそも相代理人中のどの弁護士を指しているのかすらも明らかではなく、また実際にそのような告発がなされたのか否かも不明である。
なお付言するに、既述のとおり本件ブログにおいては繰り返し外患誘致罪等の罪名による告発の呼び掛けがなされていたため、相代理人中に、このような告発の対象とされた弁護士がいる可能性はある。
しかし、このような告発が検察庁において全て不受理の扱いとなっていることもまた本件ブログには記載されているのであるから、いずれにせよ、この記載部分が懲戒事由となり得ないものであり、事実上又は法律上の根拠を欠くことは明らかである。
そして、被告らも当然にそのことを知っており、あるいは容易に知り得たものである。
(ウ)また、「公序良俗に反する品行のみならず、テロ等準備罪に抵触する可能性まであると思量する 。」との記載部分については、そもそも具体的に原告らのいかなる行為について指摘しているのかすらも全く明らかではない。
なお付言するに、ツィッター・ジャパンに対する通知文の記載内容については、文面をみれば明らかなとおり、至って常識的かつ穏当な内容であり、これをもって「公序良俗に反する品行」あるいは「テロ等準備罪に抵触する可能性まである」と評価することはおよそ不可能である。
そして被告らも、いかに法的知識を有しない一般人といえども、上記の限度であれば容易に理解し得たはずである。
(エ)以上のとおりであるから、本件大量懲戒請求の懲戒請求書後段記載の懲戒事由についても、やはりこれが不法行為を構成することは明らかである。
第 5 本件大量懲戒請求が共同不法行為であること(主位的請求)
1 本訴状冒頭でも述べたとおり、本件大量懲戒請求は、960名もの大人数で行われたこと、さらにこれらが人種差別的意図に基づくものであることが大きな特徴である。
とりわけ、懲戒請求者が1000名に迫る大人数であることは、それ自体が懲戒請求の対象弁護土にとっては極めて強い督威を感じさせるものである。そして本件ブログの各記載を見れば、懲戒請求者らも、まさにそのような効果を企図して本件大量懲戒請求を行ったことは明らかである。
以上からすると、各懲戒請求者の法的責任を、各懲戒請求者個人がそれぞれ行った個別の懲戒請求によって生じた責任の範囲のみに限定することは不相当であり、各懲戒請求者は、それぞれが、本件大量懲戒請求によって生じた損害の全部について連帯して賠償する責任を負うべきである。
2 この点、既述のとおり、本件大量懲戒請求は、本件ブログ運営者の「第六次告発概要」との記事の呼び掛けに呼応して行なわれたものであり、960件の懲戒請求書が、全く同一の文面であり、かつ、札幌弁護士会の郵送提出も、各懲戒請求者が個々に行ったのではなく、一旦本件ブログ運営者宛に郵送したうえで、本件ブログ運営者においてこれを取りまとめて札幌弁護士会に提出するという形式でなされたものであった。
以上の経緯からすると、たしかに被告らを含む本件大量懲戒請求の懲戒請求者らは、相互に住所氏名を把握しておらず、このため直接相互に連絡を取り合うような間柄では必ずしもなかったとしても、本件ブログの記事を読み、またそれぞれが本件ブログヘ投稿を行うといった行動を通じて、本件大量懲戒請求を行うことを共謀したと評価することは十分に可能であるから、主観的関連共同性が認められる。
また、仮に主観的関連共同性が認められないとしても、既述のとおり懲戒請求書の文面が全く同一であること、また札幌弁護士会への提出についても本件ブログ運営者の取りまとめによる960名一括提出の方法に拠っていることからすると、少なくとも客観的関連共同性は優に認められるものである。
3 以上からすると、本件大量懲戒請求は民法719条の共同不法行為を構成するというべきである。
そして、共同不法行為を構成する以上は、後述のとおり、本件大量懲戒請求の目的、行為の悪質性、損害の大きさ等の評価に際しては、本件大量懲戒請求が 行われるうえで不可 欠であった、本件ブログの一連の記事の記載内容をも踏まえて評価がなされなければならない。
第 6 損害
1 平穏な生活の侵害及び業務妨害について
(1) はじめに
これまでに弁護士に対する懲戒請求が不法行為に該当すると判示された裁判例において、多くの場合に損害として摘示されているのは、社会的評価の低下、弁明書の作成の負担、登録替え等ができなくなること、といったものである。
もちろん本件においてもこれらの損害は生じているものであるが、本件大 量懲戒請求においては、原告らの平穏な生活の侵害及びこれを原因とした弁護士としての業務妨害という要素がとりわけ重要であると思料されることから、まずはこの点について述べることとする。
(2) 弁護士の職務の特性
弁護士業務は、紛争処理という業務の本質的性格上、どうしても相手方等の事件関係当事者から反感を持たれる場面も生じうるも のであって、これが昂じて事務所への襲撃や名誉棄損行為などが行われることがあり、究極的には弁護士の殺害といった悲惨な結果が生じることもある。
弁護士として職務を行う以上、こういった事態に対処するため、当事者対応等に注意を尽くすこと、あるいは事務所の警備費用を支出すること等の負担については、ある程度は受忍せざるを得ないものといえる。
(3) 本件大量懲戒請求の特殊性
もっとも、これが通常業務に伴うものであれば、業務を行う上で事案の性質や当事者の属性、性格等についての情報をある程度は得られるものであるから、弁護士において、当事者への対応を工夫し、事務所内において要注意当事者についての情報を共有し、また時として警察に対する援助依頼を行うなど、一定の防衛策を講じることが可能である。
しかしながら、本件大量懲戒請求は、全国各地から960名という大人数で行われたものであり、原告らは懲戒請求者らと事件処理上の関わりが全くないため、懲戒請求者らの外見、年齢、職業、性格、行動様式等についての情報を全く持ちえない。
強いて言えば本件ブログによる扇動に呼応して、全く面識も関わりもない弁護士に対して安易に懲戒請求を行ってしまうような人物たち(すなわち、原告らに対して不法行為を行うか否かの予測可能性が全く担保されない人たち)が数多くいるということだけがわかっているにすぎない。
(4) 原告と被告らの非対称性
原告らはいずれも、職業上の必要性から、勤務先である法律事務所を公に明らかにし、また事務所のホームページで顔写真を公開している。
また原告らは弁護士業務の一環として社会的耳目を集める裁判等に関与することも多く(例えば原告島田については新卒看護師過労自死事件、原告池田については南スーダンPKO派遣差止訴訟、原告皆川についてはいわゆる同性婚訴訟など)、マスメディアの取材を受けることも比較的他の弁護士に比べて多いものであり、かかる活動に関連して、道内各地での講演を含む社会的活動にも従事している。
このため、被告らにとっては、街中で原告らと接した場合に、原告らであることを認識・把握することは極めて容易である。
他方で被告らについては、住所氏名こそ原告らに開示されているものの、外見、職業等の属性は、原告らには全く明らかにされていない。
このため、原告らが被告らに接することがあったとしても、原告らとしては、相手が本件大量懲戒請求の懲戒請求者らであることを認識・把握することは極めて困難である。
(5) 原告らの平穏な生活の侵害
これは、原告らにとっては、自分たちに違法な懲戒請求を行うような人物が数多く存在し、それらの人物が原告らの住居や勤務先周辺などの生活圏内にも容易に立ち入って原告らに接することが可能であるにもかかわらず、原告らからはこれらの者を判別できない、という状況に置かれたことを意味する。
懲戒請求者らは、原告らが接する医療従事者、あるいは飲食店の店員、あるいはタクシーの運転手、あるいは理容師等であるかもしれないし、また、原告本人ではなく原告らの配偶者や子ども等、原告の家族に密に接する立場の人間である可能性もある。
原告あるいは原告の家族の生命身体の安全に関することをゆだねざるを得ない人間が、同時に原告に対して躊躇なく不法行為を行う人間かもしれないという恐怖は、筆舌に尽くしがたいものである。
このような状況に置かれたとき、原告らとしては必然的に業務上のみならず私生活の全てにおいて、 接する人間に対して警戒的にならざるを得ず、常時切迫的かつ現実的な恐怖を感じざるを得ない立場に置かれたものである。
(6) 原告らに対する業務妨害
本件大量懲戒請求が行われた動機は、まさに原告らにこのような恐怖を感じさせることにこそあったものであることは明らかである。
本件ブログにおいても、「あぶり出された日本国民の敵」、「在日朝鮮人に組みするものは日本人ではない。有事には激滅を念頭に対処されたい。」といった、極めて攻撃的で対象者が強い恐怖を覚えざるを得ないような言辞が繰り返し用いられている。
本件大量懲戒請求の企図すると ころは、まさに「大量」の懲戒請求とすることによって、原告らに職務上のみならず私生活上においてまでも極めて強い恐怖を感じさせ、これによって、原告らの弁護士としての職務行為、とりわけ原告らが取り組んできた基本的人権の擁護と社会的正義を実現すべき職務行為を委縮させ、これらを行わせないようにすることにあったものと言わざるを得な い、
(7) 小括
以上にかんがみると、本件大量懲戒請求によって生じた平穏な生活の侵害及び業務妨害という損害は、極めて大きいものと評価せざるを得ないものである。
2 社会的評価の低下
本件ブログ運営者は、本件ブログにおいて、本件大量懲戒請求をブログで扇動したにとどまらず、さらにその後も、本件ブログヘの投稿を転載する形式において、懲戒請求の調査過程まで逐ーブログに記載している 。
そもそも弁護士が1000名に近い人数から懲戒請求を受けているという事実は、詳細な事情を知らない者を、当該弁護士側に何らかの問題があるのではないかと誤解させるに足りるものであるから、対象となった弁護士の社会的評価の低下の程度は、個別の懲戒請求とは比較にならないほど大きいというべきである。
加えてこのように本件ブログ上において繰り返し本件大量懲戒請求の事実を取り上げることにより、原告らの社会的評価はさらに毀損されたものである。
したがって、この点も本件大量懲戒請求によって生じた大きな損害の 一つというべきである。
3 利益相反についての確認作業の負担について
原告らは、本件大量懲戒請求を受けたことから、960名分の住所氏名について依頼者や相手方あるいは利害関係人がいないかどうかの確認作業を行うことを強いられた。
懲戒請求者の中に現在進行形の受任事件依頼者がいるとすれば、そもそも当該事件の進行に関する 信頼関係が 維持できるのか慎重に判断しなければならないし 、相手方が含まれる場合にはさらなる警備体制の強化を判断しなければならない。利害関係人が含まれる場合も同様である。
幸いにして、懲戒請求者及び被告らの中に、現時点での原告らの事件依頼者や相手方、利害関係人は存在しなかったものの、その確認作業には膨大な時間と労力を費やした。
そしてこれは、原告らが今後法律相談を受ける事件、あるいは受任する事件についても全て同様であり、その都度、利益相反についての確認作業を経なければならないものである。
このような膨大な事務作業が発生するのも、本件大量懲戒請求が「大量」であるがゆえの特殊性というべきであり、この業務負担も本件大量懲戒請求による損害というべきである。
4 弁明書の作成の負担
札幌弁護士会においては、懲戒請求がなされた場合は一律に綱紀委員会に事案の審査を求めており、仮に懲戒請求が請求者から取り下げの申し出があったとしても、綱紀委員会の結論が当該請求者に通知されない ことになるのみで、事案の審査は継続される。
そして、本件大量請求については併合されたため、原告らが作成した弁明書は各 1通の弁明書の提出にとどまっているものの、綱紀委員会からはその作成にあたり、紋切り型の認否ではなく具体的な事実の主張を求められたため、原告らにおいては、本件大量懲戒請求に対しても、紋切り型の弁明書ではなく、前段及び後段について、理由を付した弁明書を提出せざるを得なかった。
この弁明書の作成作業も本件大量懲戒請求による損害というべきである。
5 人種差別目的の不法行為について
(1) はじめに
本件大量懲戒請求により生じた損害のうち主要なものは以上に述べたとおりであるが、これに加えて、本件大量懲戒請求がなされた「目的」が人種差別目的のものであることも、損害の算定において大きく影響するので、本項ではこの点について述べる。
(2) 本件大量懲戒請求が人種差別目的のものであること
繰り返し述べているとおり、本件大量懲戒請求は本件ブログの呼び掛けに呼応して行われたものであるところ、本件ブログにおいては、本件大量懲戒請求よりも前に、朝鮮学校に対する補助金停止に抗議する趣旨の声明を発表した各地弁護士会の理事者に対する懲戒請求の呼び掛けが行われていた。
また、本件大量懲戒請求の手続と相前後して、「日本人と在日朝鮮人の戦いが始まった」と題する投稿がわずか2か月程度の間に50回以上も行われ、その投稿中では、在日朝鮮人に対し、
「徹底して隠蔽されてきた戦後の彼らの蛮行の歴史」、
「あぶり出された日本国民の敵」、
「在日朝鮮人に組みするものは日本人ではない。有事には熾滅を念頭に対処されたい。」
といった極めて強い憎悪扇動表現が用いられていた。
そして、本件大量懲戒請求における懲戒事由として具体的に摘示 された事実も、原告らが本件声明に賛同したこと、また原告らが人種差別に反対する活動を行うことを目的とする団体の代理人として行動したこと、の2つであり、要するに、原告らが人種差別の根絶を目指す活動を行っていることをターゲットにしたものであった。
以上の事実関係からすると、本件大量懲戒請求は、人種差別目的のものではないと理解することのほうが著しく困難であり、明白に、在日朝鮮人に対する人種差別目的で行われたものといわなければならない。
(3) 不法行為が人種差別目的であることは損害認定に際して十分に勘案されるべきこと
この点、日本が批准している人種差別撤廃条約の第6条は「締約国は、自国の管轄の下にあるすべての者に対し、権限のある自国の裁判所及び他の国家機関を通じて、この条約に反して人権及び基本的自由を侵害するあらゆる人種差別の行為に対する効果的な保護及び救済措置を確保し、並びにその差別の結果として被ったあらゆる損害に対し、公正かつ適正な賠償又は救済を当該裁判所に求める権利を確保する。」と規定している。
かかる規定に従い、不法行為が人種差別目的である場合は、そのことが損害の金銭評価においても十分に反映されなければならない)
この点、ヘイトスピーチを不法行為と認定したリーディングケースである、京都朝鮮学校襲撃事件の高裁判決である大阪高裁平成26年7月8日判決も、「人種差別撤廃条約の趣旨は、当該行為の悪質性を基礎付けることになり、理不尽、不条理な不法行為による被害感情、精神的苦痛などの無形損害の大きさという観点から当然に考慮されるべきである。」と判示している 。
(4) 支援者に対する攻撃も人種差別目的の不法行為となり得ること
なお、原告らは日本人であり、本件大量懲戒請求において差別の対象とされているマイノリティには直接該当しない。
しかしながら、人種差別目的の不法行為の矛先が、マイノリティに限られず、その支援者に向けられることは、類型的によく見られることである。
歴史的に著名な事件としては、1964年、アメリカにおいて公民権運動に携わっていた3名の学生(うちアンドルー・グッドマン、ミッキー・シュワーナーの2名が白人)が、人種差別団体であるクークラックスクラウンに殺害されている。
また翌1965年3月には、いわゆるワシントン大行進の参加者であった白人牧師ジェームズ・リーブが、やはり白人の人種差別主義者によって殺害されている。
近年では、2017年8月にアメリカ・ヴァージニア州のシャーロッツビルにおいて、白人極右集団の集会に抗議する活動に参加していた白人女性ヘザー・ハイヤーが殺害されている。
このように、人種差別目的の不法行為が、マイノリティの支援者を ターゲットにして行われることは一般によく見られることであり、このような不法行為は、支援者を攻撃することによって、支援活動を委縮させ、ひいてはマイノリティに対する人種差別を維持・固定化することを目的としたものであることは明らかであるから、マイノリティを直接のターゲットとした不法行為と同様に、人種差別撤廃条約の趣旨が反映され、損害の金銭評価においてもその点が十分に甚斗酌されなければならない。
この点、いわゆる徳島県教組事件の高裁判決である高松高裁平成28 年4月25日判決は、マイノリティの支援活動を行う労働組合に対する不法行為について、
「人種差別撤廃条約は、国法の一形式として国内法的効力を有するものの、その規定内容に照らしてみれば、国家の国際責任を規定するとともに、憲法13条、14条1項と同様、もっぱら公権力と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。しかし、その趣旨は、本件事案において民法709条等の実定法を解釈適用するに当たっても、十分に留意、尊重しなければならない。即ち、人種差別を撤廃すべきものとする人種差別撤廃条約の趣旨は、条約が「人種差別」として禁止し終了させる措置を求める行為の悪質性を基礎付けることになり、当該不法行為の違法性、非難可能性の程度を評価するにあたって十分に考慮しなければならない。」
「第1審被告らの本件各示威行動等やその映像をインターネット上に公開する行為は、(2) のとおり、第1審被告らが差別の対象とする在日朝鮮人ら を支援する者は第1審被告らから攻撃を受け、様々な被害を蒙るということを広く知らしめ、その支援活動に萎縮効果をもたらすことを目的としたものであり、前記認定事実のとおり、本件各示威行動等が行われ、その映像がインターネット上で公開された後、第1審原告組合の事務所に嫌がらせ電話が殺到し 、Mにアップロードした動画には視聴者による賜しい数の第1審原告らを非難中傷するコメントが書き込まれたことからも、その目的に沿う効果があったことは容易に推認できるところであり、人種差別撤廃条約1条に定義する、少数者の「平等の立場で の人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するもの」に該当し、強い非難に値し 、違法性の強いものというべきである。」
と判示しており、マイノリティの支援者に対する人種差別目的の不法行為についても、 人種差別撤廃条約の定義する人種差別行為に該当するものでありそれが損害算定にも反映されるべきことを判示している。
(5) 小括
以上のとおりであるから、本件大量懲戒請求も人種差別目的の不法行為であり、したがって、人種差別撤廃条約の趣旨が、損害の金銭的評価に際しても十分に反映されなければならない。
6 主位的請求についての損害評価
(1) 損害
既に述べたとおり、本件大量懲戒請求は共同不法行為であって被告らはこれによって生じた損害全てについて連帯して責任を負うべきであるところ、既に述べたとおり、このような大人数による懲戒請求は、大人数であることによって対象となった弁護士にとっては平穏な生活の侵害と業務妨害という重大な損害が生じている。
加えて、本件大量懲戒請求による原告らの社会的評価の低下、利害相反の確認作業、弁明書の作成作業等の事務負担の増加等の損害も生じている。
このような損害の大きさに加え、本件大量懲戒請求が先に述べた人種差別目的のものであることも考え合わせると、本件大量懲戒請求全体によって原告らに生じた精神的苦痛及び名誉毀損について、これを慰謝するに相当な金額は、どのように控えめに見積もっても500万円を下ることはない。
(2) 弁護士費用
原告らは弁護士ではあるが、本件のように自らが当事者となる事件について適切に権利を実現するには、別途代理人を選任せざるを得ないのであるから、弁護士費用50万円も因果関係のある損害となる。
(3) 小括
以上のとおりであるから、本件大量懲戒請求を共同不法行為と解した場合の損害は、550万円となる。
7 予備的請求についての損害
(1) 損害
なお、仮に本件大量懲戒請求が共同不法行為と認められない場合、個別の懲戒請求について、それぞれ単独不法行為が成立することとなる。
その場合であっても、既述のとおり、個別の懲戒請求がそれぞれ人種差別目的でなされたことにかんがみれば、それぞれによって原告らに生じた精神的苦痛及び名誉毀損について、これを慰謝するに相当な金額は 、どのように控えめに見積もっても50万円を下ることはない。
(2) 弁護士費用
原告らは弁護士ではあるが、本件のように自らが当事者となる事件について適切に権利を実現するには、別途代理人を選任せざるを得ないのであるから、個別の懲戒請求について、弁護士費用5万円が因果関係のある損害となる。
(3) 小括
以上のとおりであるから、本件大量懲戒請求をそれぞれ単独の不法行為と解した場合の損害は、55万円となる 。
第 7 まとめ
1 本訴提起の意義について
(1 ) 本訴は、原告らに対して行われた、「理由なき」懲戒請求に対する、損害賠償請求である。その意味で、弁護士業務に対する妨害に抗する訴訟である。
しかし、すでに明らかにした通り、原告らは、被告らが行った懲戒請求の背後には、明確な「理由」が存在するものと確信している。その明確な理由とは、自民族中心主義に根差した差別である。
(2) ヘイト・スピーチ(憎悪扇動表現)は、段階を踏んで侵害の程度が深まる。当初は民事的にも違法性を伴わないものであるが、段階を経て民事的違法性を帯び、刑事的違法性を帯び、最終的には虐殺に繋がる。
その意味で、この裁判は、単なる損害賠償請求ではなく、この社会における差別扇動を食い止める防波堤となりうる重要な訴訟である。
(3) 本件大量懲戒請求は、マイノリティの支援者に対する攻撃を通じた差別扇動を目的としたものであり、ヘイトスピーチの性格をも有している(もっとも、本件大量懲戒請求はそれ自体が不法行為を構成することから、ヘイトスピーチの次元を越えてヘイトクライムにまで達しているというべきである)。
ヘイト スピーチの本質はマイノリティに対する『差別、敵意又は暴カの扇動』(自由権規約20条)、『差別のあらゆる扇動』(人種差別撤廃条約 4条本文)であり、表現による暴力、攻撃、迫害である。
ヘイトスピーチは、単に人を不愉快にさせるというだけにとどまらない。被害者を打ちのめし、排除し、人としての尊厳や存在そのものを根底から否定する。併せて、全ての人が平等に共存する公正な社会をも根本的に破壊し、隣人に対する憎悪、さらには暴力やジェノサイドをも扇動する。
(4) 本件大量懲戒請求のような懲戒請求の対象とされた弁護士は、原告ら以外にも多く存するところ、全国各地の裁判所ではこれら大量懲戒請求の対象とされた弁護土らによる同種の損害賠償請求訴訟が数多く提起されており、それらのほとんどにおいて被害者である弁護士の請求を認容する判決が出ている。
そうした中で、あえて原告らが本訴を提起し、御庁の判断に期待をするのは、本件大量懲戒請求が 、差別的意図に基づくマイノリティ支援者への攻撃であることを明快に認定していただくことにある。
本件大量懲戒請求の意図を正しく認定することこそ、原告らの受けた損害の正しい評価につながるばかりではなく、日本における公正な社会の実現に寄与することになる。
本訴提起は、原告ら及び原告ら代理人にとって、新たな懲戒請求の原因となる可能性がある。本訴を担当する裁判官もまた、厳しい攻撃の対象となりうるかもしれない。しかし、だからこそ、目の前にある差別に徹底して向き合わなければならない。毅然とした司法の対応を望むものである。
2 よって書き
よって、原告らは、主位的に、被告らに対し、不法行為に基づく損害賠償金550万円及びこれに対する2018年(平成30年)3月22日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うこと、予備的に、被告らに対し、それぞれ不法行為に基づく損害賠償金55万円及びこれに対する2018年(平成30年)3月22日から支払済みまで年 5 分の割合による遅延損害金を支払うことを求めるものである。
以上
原告
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