山形県弁護士会
ttp://www.yamaben.or.jp/html/kai4.html
特定秘密保護法制定に反対する会長声明
ttp://www.yamaben.or.jp/html/semei_ketsugi/s013.html
1. 政府は,2013(平成25)年10月25日,特定秘密の保護に関する法律案(以下「本法案」という。)を閣議決定し,衆議院に提出した。当会は,昨年,秘密保全法制定について,その重大な問題を指摘し反対する旨の意見を表明した。本法案は,基本的に秘密保全法を踏襲するものであり,次に述べるとおり,主権者である国民の知る権利を侵害し,国政の重要な情報を隠して民主主義の根幹を揺るがすおそれがあると同時に,憲法が保障する国民の表現の自由,取材,報道の自由,プライバシーの権利などに重大な脅威を与えるものである。
2. まず,本法案では,「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」及び「テロリズムの防止」の4分野において,行政機関の長が「その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため,特に秘匿することが必要」と判断する秘密を「特定秘密」と指定することができるとされているが,広範かつ曖昧であるため,行政機関の恣意的判断で,本来国民に開示されるべき情報が隠蔽される危険性がある。そして,本法案は,特定秘密指定の有効期間を5年と定めているが,通算して30年まで延長できるほか,さらに,内閣の承認を得れば,それ以上の延長まで可能とされているため,一度特定秘密に指定されれば,半永久的に秘匿することが可能となる。
3. また,本法案では,「適性評価制度」を導入し,特定秘密を取り扱わせようとする者に対して,その適性があるかどうかを判断するため,本人のみならず家族や同居人のプライバシー情報の調査を許容するが,政府がプライバシー情報を収集,管理,利用することになれば,国民は思想信条による差別的取扱いの危険にさらされることになる。
4. さらに,本法案では,「特定秘密」の漏えい行為を処罰対象としているが,故意犯のみならず過失犯も処罰するうえ,さらに,共謀,教唆,扇動まで広く処罰する。「特定秘密」の概念自体が曖昧であることに照らせば,処罰範囲はさらに不明確かつ広範になり,罪刑法定主義に反するおそれがある。しかも,その法定刑の上限は,既存の関係諸法令に比して重罰化している。その結果,報道機関の取材活動に対する萎縮効果は計り知れず,報道機関の取材・報道の自由を侵害するとともに,主権者である国民の知る権利をも侵害することになる。
5. 上記の罰則規定は,国会議員も処罰の対象としているが,これによれば,特定秘密を知得した国会議員が当該秘密に関して他の議員や専門家と議論することすら封殺されかねない。議会制民主主義の否定ともいうべき重大な問題である。
6. 他方,特定秘密を漏えいして起訴された場合の裁判手続では,対象となる「特定秘密」の内容が明らかにならない状態で裁判が進められ,適正な裁判を受ける権利が侵害されるおそれがある。
1. このように本法案には到底看過することのできない重大な憲法上の疑義があるので,当会は,その制定に反対し,法案が国会で可決されないよう強く求めるものである。
2013年(平成25年) 11月19日 山形県弁護士会 会長 伊藤 三之
憲法第96条の改正に反対する会長声明
ttp://www.yamaben.or.jp/html/semei_ketsugi/s012.html
日本国憲法第96条は,「この憲法の改正は,各議院の総議員の三分の二以上の賛成で,国会が,これを発議し,国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には,特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において,その過半数の賛成を必要とする。」と定める。ところが近時,この憲法改正発議の要件を緩和し,衆参各議院の総議員の過半数で発議できるように憲法第96条を改正しようとする政治的な動きが現れている。憲法改正の発議要件を緩和しようとする動きには,それによってまず憲法改正をやりやすくし,その後,憲法第9条や人権規定,統治機構の条文等を改正しようとする意図がある。しかしながら,そもそも憲法は,国家権力を縛り,その濫用を防止して基本的人権を守ることを目的とする国の基本法である(立憲主義)。日本国憲法が,基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」として,現在及び将来の国民に与えられ,信託されたものと規定するとともに(憲法第11条,第97条),憲法を「最高法規」と定め,これに反する法律,命令等一切の効力を否定している(憲法第98条)のはそのためである。憲法第96条が憲法改正の要件を通常の法律に比べて格段に厳しくしているのも同じ理由からで,もしこの憲法を改正しようとすれば,まずは国民から選ばれ国民の代表たる国会議員が責任をもって改正案を熟議し,大多数の賛成のもとに国民に発議することが求められているのである。しかるに,もし憲法改正の発議要件を3分の2以上から過半数に改めるならば,この発議はきわめて容易となり,両院議員の過半数を握った時の政権与党が,立憲主義の観点からは縛りをかけられている立場にあるにもかかわらず,その縛りを解くための憲法改正案を簡単に発議することが可能となる。憲法第96条のこのような改正は,立憲主義の憲法の土台を掘り崩すものと言うべきであり,憲法による基本的人権の保障を大きな危険にさらすことになるのは明らかである。よって当会は,基本的人権の擁護を使命とする弁護士からなる団体として,憲法第96条を改正して発議要件を緩和することに強く反対し,国民に警鐘を鳴らすものである。
2013年(平成25年) 6月26日 山形県弁護士会 会長 伊藤 三之
給費制復活を含む司法修習生への経済的支援を求める会長声明
ttp://www.yamaben.or.jp/html/semei_ketsugi/s011.html
平成24年11月27日,第66期の司法修習が開始され,12名の司法修習生が山形に配属された。また山形修習12名の新第65期も無事司法修習を終えて法曹の仲間入りをすることとなった。司法修習生は,司法を担う法曹としての高い専門性を修得するため1年間司法修習に専念する義務を負い(裁判所法第67条第2項),兼業・兼職が禁止され,収入を得る道はない。また,司法修習生は,全国各地に配属され司法修習を行うため,現在の居住地とは異なる場所に配属され,引越費用や住居費などの出費を余儀なくされることもある。このような司法修習生の実態を踏まえ,新第64期及び現行第65期までの司法修習生に対しては,司法修習中の生活費等の必要な費用が国費から支給されていた(以下「給費制」という。)。しかし,平成23年11月から司法修習を開始した新第65期の司法修習生から,給費制は廃止され,司法修習費用を貸与する制度に移行した(以下「貸与制」という。)。日本弁護士連合会は,昨年6月,新第65期司法修習生に対し,司法修習中の生活実態を明らかにすることを目的としてアンケートを実施した。このアンケートの集計結果によれば,28.2%の司法修習生が司法修習を辞退することを考えたことがあると回答し,その理由として,86.1%が貸与制,74.8%が弁護士の「就職難」・経済的困窮を挙げた。すなわち,司法試験に合格していながら,経済的理由から法曹への道をあきらめることを検討した者が3割近くもいる実態が明らかになった。さらに,司法修習生の月平均の支出額は,住居費の負担がない場合が13万8,000円であるのに対し,住居費の負担がある場合は21万5,800円であった。司法修習の開始に伴い修習配属地への引越が必要だった司法修習生は,約6割を占め,この場合には,引越費用等で平均25万7,500円が別途必要になる。修習を終えた山形の新第65期司法修習生に対するアンケート結果においても11名が,引越費用や就職活動のための交通費等の負担での生活は大変であったと回答し,貸与制による借金を抱えての将来に対する不安を訴えている。また,修習が開始されたばかりの66期に対するアンケート結果においては,今後の修習生活費に対する不安,就職難に対する不安,将来借金返済が可能か不安に感じている者がほとんどであった。以上のとおり,新第65期司法修習生及び第66期司法修習生に対する生活実態アンケートにより,貸与制の不平等さや不合理さが改めて明確になった。司法修習生の多くは大学及び法科大学院の奨学金等の返済義務を負担しており,更に貸与制による借金が加算されることになる。こうした経済的負担の重さや昨今のいわゆる「就職難」が法曹志願者を減少させ,有為で多様な人材が法曹の道を断念する一因となっている。このような将来に対する不安を抱えながらの司法修習は,司法修習制度の目的実現にとって悪い影響となることは否定できない。そして,日本弁護士連合会の推計によると,司法研修所を卒業した新65期のうち,弁護士として活動するために必要な弁護士会への登録を行わなかったものがおよそ540人と過去最多になったということである。これは貸与制も含めた負担の増大と就職難が大きな理由と考えられる。昨年7月27日に成立した裁判所法の一部を改正する法律によれば,「司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から,法曹の養成における司法修習生の修習の位置付けを踏まえつつ,検討が行われるべき」ことが確認された。これを受けて,同年8月21日の閣議決定により法曹養成制度検討会議が設置され,現在検討が進められている。当会は,上記アンケートの実態を踏まえ,有為で多様な人材が経済的事情から法曹の道を断念することがないよう,早急に給費制復活を含む司法修習生に対する適切な経済的支援を求めるとともに,新第65期及び第66期の司法修習生に対しても遡及的に適切な措置が採られることを求めるものである。
2013年(平成25年) 2月14日 山形県弁護士会会長 村山 永
司法修習貸与制施行延期に関する「裁判所法の一部を改正する法律」成立にあたっての会長声明
ttp://www.yamaben.or.jp/html/semei_ketsugi/s009.html
2010年(平成22年)11月26日に,さらに1年間,司法修習生に対する貸与制の施行を延期する法律が国会で可決され成立いたしました。 これにより,同月27日から司法修習が開始される新第64期司法修習生に対して,従前の制度と同様の修習費用の給費が実施されることとなりました。今回の法改正の趣旨は,昨今の法曹志望者が置かれている厳しい経済状況にかんがみ,それらの者が経済的理由から法曹になることを断念することがないよう,給費制が継続される1年間のあいだに,法曹養成制度に対する財政支援の在り方について政府及び最高裁判所の責務として見直しを行うこととされております。また,附帯決議の2項では「法曹の養成に関する制度の在り方全体について速やかに検討を加え,その結果に基づいて順次必要な措置を講ずること」を求めています。このような改正法の内容は,給費制の完全な復活とはならなかったものの,「司法制度改革審議会意見書」(2001年(平成13年)6月12日)に基づき,この間取り組まれてきた司法改革を「第一次司法改革」と位置づけ,これをさらに検証・発展させ,市民目線で「第二次司法改革」に取り組んでいる日本弁護士連合会,そして山形県弁護士会の方針に一致いたします。困難な国会状況のなかで改正法の成立に並々ならぬ御尽力をいただいた各政党・国会議員の方々,最高裁判所,法務省の皆さん,この法改正のための活動に御協力いただいた市民団体,消費者団体や労働団体による「司法修習生の給与の支給継続を求める市民連絡会」や法科大学院生,司法修習生,新人若手弁護士らによる「ビギナーズ・ネット」に心から感謝いたします。今回の法改正の過程では,国会や政府,報道関係者の一部から「すべての法曹が公共的な職務を遂行しているといえるのか」「経済的に困難な者に対する支援はもっともだが,経済的に裕福な者に対してまで給費する必要性があるのか」といった問いかけを受けました。日本弁護士連合会,そして山形県弁護士会は,これまで以上に弁護士の公共的使命を自覚し,人権擁護,法律扶助制度の拡充や過疎偏在対策などに取り組んでいきます。日本弁護士連合会は,これまでにも,「新しい法曹養成制度の改善方策に関する提言」(2009年(平成21年)1月16日),「市民の司法を実現するため,司法修習生に対する給費制維持と法科大学院生に対する経済的支援を求める決議」(2010年(平成22年)5月28日)などの提言を行ってきましたが,この法改正を受けて,山形県弁護士会でも給費制の維持を含む法曹志望者に対する経済的支援の在り方を再検討するとともに,法科大学院を中核とする新しい法曹養成制度の理念をふまえつつ,法曹養成制度全体の見直しについて積極的に取り組んでまいりたいと考えます。
2011年(平成23年)1月25日 山形県弁護士会 会長 高橋健
全面的な国選付添人制度を求める会長声明
ttp://www.yamaben.or.jp/html/semei_ketsugi/s008.html
1.弁護士付添人は,少年審判において,非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう,少年の立場から手続に関与し,家庭や学校・職場等少年を取りまく環境の調整を行い,少年の立ち直りを支援する活動を行っている。少年審判において,心身ともに未熟な少年を受容・理解したうえで,少年に対して法的・社会的な援助をし,少年の成長・発達を支援する弁護士付添人の存在は,少年の更生にとって極めて重要である。
2.子どもの権利条約第37条は,「自由を奪われた全ての児童は,弁護人と接触する権利を有する」と規定し,身柄拘束を受けた少年には,弁護士と接触する権利が保障されなければならない,としている。又,少年鑑別所に収容された少年は,少年院送致や児童自立支援施設送致等の重大な処分を受ける可能性が高い。しかし,現実には多くの少年や保護者には,弁護士付添人を選任するための費用負担の資力がなく,又,保護者が少年のためにこれらの費用を負担することに消極的な場合が多い状況がある。
3.非行を犯したとして家庭裁判所の審判に付された少年は,2008年で年間54,054人であり,そのうち観護措置決定により身体拘束された少年は11,519人に上るのに対し,弁護士である付添人が選任されたのは4,604人であり,身体を拘束された事件のうち,40パーセントに過ぎない。
4.日本弁護士連合会は,少年が希望すれば無料で弁護士が面会する当番付添人制度を全国で実施するとともに,すべての会員から特別会費を徴収して少年・刑事財政基金を設置し,これを財源として弁護士費用を援助する少年保護事件付添援助制度を拡充してきた。 当会においても,当番付添人制度を実施するとともに,被疑者国選弁護人が選任された事件については,家裁送致後も引き続き付添人をして活動しうる態勢を整備してきた。特に,平成22年10月からは,観護措置により身柄を拘束された全ての少年について,本庁以外の全ての支部においても,当番付添人の制度を拡大して整えた。
2.既に,成人の被疑者・被告人については,広範囲で国費による弁護人が選任されている状況であることと比較すれば,より必要性の高い心身ともに未成熟な少年についても,本来,国費によって弁護士付添人を選任できる権利を保障すべきである。既に述べたとおり,観護措置決定により身柄を拘束された少年については,事件の軽重を問わず,弁護士付添人の援助は必要不可欠である。よって,当会は国に対し,少年法を改正し,少なくとも観護措置決定により身柄を拘束された全ての少年を対象とする,国費による国選付添人制度を創設することを求める。
2011年(平成23年)1月17日 山形県弁護士会 会長 高橋 健
改正貸金業法の早期完全施行等を求める会長声明
ttp://www.yamaben.or.jp/html/semei_ketsugi/s006.html
経済・生活苦での自殺者が年間7000人に達し,自己破産者も18万人を超え,多重債務者が200万人を超えるなどの深刻な多重債務問題を解決するため,2006年12月に改正貸金業法が成立し,出資法の上限金利の引下げ,収入の3分の1を超える過剰貸付契約の禁止(総量規制)などを含む同法が完全施行される予定である。改正貸金業法成立後,政府は多重債務者対策本部を設置し,同本部は①多重債務相談窓口の拡充,②セーフティネット貸付の充実,③ヤミ金融の撲滅,④金融経済教育を柱とする多重債務問題改善プログラムを策定した。そして,官民が連携して多重債務対策に取り組んできた結果,多重債務者が大幅に減少し,2008年の自己破産者数も13万人を下回るなど,着実にその成果を上げつつある。他方,一部には,消費者金融の成約率が低下しており,借りたい人が借りられなくなっている,特に昨今の経済危機や一部商工ローン業者の倒産などにより,資金調達が制限された中小企業者の倒産が増加しているなどを殊更強調して,改正貸金業法の完全施行の延期や貸金業者に対する規制の緩和を求める論調がある。しかしながら,1990年代における山一証券,北海道拓殖銀行の破綻などに象徴されるいわゆるバブル崩壊後の経済危機の際は,貸金業者に対する不十分な規制の下に商工ローンや消費者金融が大幅に貸付を伸ばし,その結果,1998年には自殺者が3万人を超え,自己破産者も10万人を突破するなど多重債務問題が深刻化した。改正貸金業法の完全施行の先延ばし,金利規制などの貸金業者に対する規制の緩和は,再び自殺者や自己破産者,多重債務者の急増を招きかねず許されるべきではない。今,多重債務者のために必要とされる施策は,相談体制の拡充,セーフティネット貸付の充実及びヤミ金融の撲滅などである。そこで,9月1日に発足した消費者庁の所管乃至共管となる地方消費者行政の充実及び多重債務問題が喫緊の課題であることも踏まえ,当会は国に対し,以下の施策を求める。
1.改正貸金業法を早期(遅くとも本年12月まで)に完全施行すること。
2.自治体での多重債務相談体制の整備のため相談員の人件費を含む予算を十分確保するなど相談窓口の充実を支援すること。
3.個人及び中小事業者向けのセーフティネット貸付をさらに充実させること。
4.ヤミ金融を徹底的に摘発すること。
2009(平成21)年9月15日 山形弁護士会 会長 半田 稔
消費者庁・消費者委員会の人事に関する会長声明
ttp://www.yamaben.or.jp/html/semei_ketsugi/s005.html
1.2009年(平成21年)5月29日,消費者庁関連三法が成立し,消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に向けて,消費者の利益の擁護及び増進を目的とする消費者庁が設立され,また,独立した第三者機関として消費者行政全般に対する監視機能を有する消費者委員会が設立され,両者が,相互に協力して職務に当たることが定められたことは,当会としても高く評価するところである。
2.ところで,次に問題になるのは消費者庁及び消費者委員会の人事である。消費者庁長官,消費者委員長,そして消費者委員人事が適正に行われなければ,せっかくの消費者庁設置による消費者主権の実現は,画餅に帰する結果となってしまう。これらのポストには,消費者庁設置の経緯・趣旨を理解し,あるべき消費者行政のビジョンを持っている人,そしてなにより,消費者事件の経験が豊富であって消費者事件に精通し,消費者の目線を持った人が選任されることが期待される。
3.特に,消費者委員会は,政府や官僚の意向で動く従来の行政とは決別した真に消費者のための組織運営が期待されているのであるから,その委員長人事には,国や政府,大臣は介入せず,法の規定に則り,各委員の自由な意思に基づく互選により委員長が選任されなければならない。
4.よって当会は,政府に対し,以下の各事項を要求する。
(1)消費者委員長については,委員の互選により決定されるものであることを改めて確認するとともに,これまで積極的に消費者問題に取り組み,経験が豊富な見識ある人物を選任すること。
(2)消費者庁,消費者委員会及びこれらの参与会の議事をすべて公開とし,市民や報道機関の傍聴を認めること。
2009年(平成21年) 8月 27日 山形県弁護士会 会長 半田 稔
司法修習生に対する給与支給の継続を求める会長声明
ttp://www.yamaben.or.jp/html/semei_ketsugi/s004.html
1.平成16年の裁判所法改正と付帯決議
平成16年の裁判所法の改正により,平成22年11月1日から,司法修習生への給与支給(給費制)に代えて,修習資金を貸与する制度(貸与制)が実施されることとなった。この改正にあたり,衆参両議院共通の付帯決議がなされ,改革の趣旨・目的が「法曹の使命の重要性や公共性にかんがみ,高度の専門的能力と職業倫理を備えた法曹を養成する」ものであること(1項),「給費制の廃止及び貸与制の導入によって,統一・公平・平等という司法修習の理念が損なわれることがないよう,また,経済的事情から法曹への道を断念する事態の招くことのないよう,法曹養成制度全体の財政支援の在り方も含め,関係機関と十分な協議を行うこと」(3項)として,弊害の防止が明記された。
2.裁判所法改正後の事情変更
裁判所法改正後,法科大学院が多数設立され,司法試験合格率は,司法制度改革審議会が期待した7,8割をはるかに下回り,平成20年度は33%にとどまっている。法科大学院への志願者は,前年度に比べて約6000名も減少している。法科大学院への志願者が減少している背景には,合格率の低下に加え,法科大学院の学費と在学中の生活費の負担など経済的事情があることも看過できない。そのうえ,司法修習生への給費制が廃止され,貸与制になれば,経済的不安により,初めから法曹への道をあきらめざるを得ない事態に拍車をかけることになる。まさにこれは,衆参両院が付帯決議で懸念していた弊害の現れである。ところで,民間人である医師の養成制度については,平成16年,国家試験に合格した医師に2年間の研修を義務づけるとともに,研修中はアルバイトなしで研修に専念できるよう新たに国家予算を導入する措置がとられることとなった。この措置により,従前から給費制廃止の根拠とされた2つの理由,即ち,非公務員である司法修習生への公費支給は極めて異例であること,及び法曹資格取得という利益を得るのであるからそのために経済的な負担をするのも当然であるとの考えは,その根拠の大半を失うことになった。
3.貸与制を再検討する必要性
司法制度改革審議会は,弁護士の役割について,「国民の社会生活上の医師」であることを求め,弁護士に社会的責任(公益性)の自覚を求めるとともに,21世紀の我が国社会において期待される「国民の役割」として,「統治の主体・権利主体である国民は,司法の運営に主体的・有為的に参加し,プロフェッションたる法曹との豊かなコミュニケーションの場を形成・維持するように努め,国民のための司法を国民自らが実現し支えなければならない。」と述べている。司法修習生は,裁判官,検察官として公務員になるのか,弁護士として民間人になるのかを問わず,このような21世紀の我が国社会において期待される法曹として,社会的なインフラ(基盤)である。給費制は,有為な人材の確保,司法修習への専念,公共心の醸成された人材の育成,あるいは,弁護士になった者の社会への貢献・還元という点から法曹の養成に重要な役割を果たしてきた。貸与制の実施は,このような法曹養成の理念を損なうことになるというべきである。
4.結論
よって,当会は,国会,政府及び最高裁判所に対し,平成16年の裁判所法改正後の事情の変更,及び給費制が法曹養成に果たしてきた役割をふまえ,給費制に代えて貸与制を実施する時期を,平成22年11月1日から相当期間延期したうえで,給費制の継続の措置を講じられることを強く求める次第である。以上
2009年(平成21年) 8月 19日 山形県弁護士会 会長 半田 稔
消費者庁関連3法の成立に関する会長声明
ttp://www.yamaben.or.jp/html/semei_ketsugi/s002.html
2009年(平成21年)5月29日,消費者庁及び消費者委員会設置法,消費者庁及び消費者委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律及び消費者安全法の消費者庁関連3法が成立した。近年,悪質商法被害や多重債務被害など,多くの分野での消費者被害が次々と発生ないし顕在化しており,これら被害を救済・防止できない消費者行政の仕組みや体制の問題性が指摘されてきた。このような事態に対し,当会は,2008(平成20)年6月26日「消費者行政新組織の実現を求める会長声明」を発表し,山形県内においても,消費者行政新組織の実現を求める多数の署名が寄せられるなど,その実現が強く期待されていたものである。こうした中で,消費者庁関連3法が成立し,消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に向けて,消費者の利益の擁護及び増進を目的とする消費者庁が設立され,また,独立した第三者機関として消費者行政全般に対する監視機能を有する消費者委員会が設立され,両者が,相互に協力して職務に当たることが定められたことは,高く評価される。当会は,今後も引き続き,消費者被害の予防と救済に全力で取り組むとともに,今後の課題とされた,消費者行政の基本ともいえる消費生活センター及び市区町村の相談窓口の相談体制の充実に向けて,全力を尽くす所存である。
2009年(平成21年) 7月 1日 山形県弁護士会 会長 半田 稔
死刑執行に関する会長声明
ttp://www.yamaben.or.jp/html/semei_ketsugi/s001.html
2009年1月29日,東京拘置所において1名,名古屋拘置所において2名及び福岡拘置所において1名の計4名の死刑確定者に対して死刑が執行された。これは,森英介法務大臣が就任してから2度目,昨年10月の執行に続き,3か月という極めて短い期間で死刑を執行する姿勢を示したものであり,誠に遺憾である。我が国では,4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)について再審無罪判決が確定し,死刑判決にも誤判が存在したことが明らかとなっているが,このような誤判を生じるに至った制度上,運用上の問題点について,抜本的な改善が図られておらず,誤った死刑の危険性は依然存在する。また,死刑と無期刑の量刑につき,裁判所によって判断の分かれる事例が相次いで出され,死刑についての明確な基準が存在しないことも明らかとなっている。さらに,死刑判決事案ではないが,2009年5月8日には足利再審請求事件において,弁護側及び検察側それぞれが推薦した鑑定人がいずれも確定判決により服役している受刑者と被害者の着衣に付着していた体液のDNAが一致しない旨の鑑定結果を裁判所に提出していることが明らかとなった。この鑑定結果は,確定判決の有力な証拠とされていた事件当時のDNA鑑定の証拠価値を揺るがすものであり,科学鑑定を絶対的証拠としては評価することができない場合があることを示している。この点においても死刑の執行には問題があるというべきである。また,2009年5月21日から裁判員裁判制度が実施されるところであるが,多くの国民から死刑判決の判断をすることに対する不安と戸惑いが表明されている。そこで,死刑に関する国民的議論を更に深める必要があり,その意味においても死刑の執行を当面停止する必要がある。当弁護士会は,2002年11月に発表した「死刑制度問題に関する提言」及び2004年10月に採択された「死刑執行停止法の制定,死刑制度に関する情報の公開及び死刑問題調査会の設置を求める決議」において,死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし,また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間,死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱してきた。当弁護士会は,改めて政府に対し,死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間,死刑の執行を停止するよう,重ねて強く要請するものである。
2009(平成21)年5月19日 山形弁護士会 会長 半田稔