あしながおばさん
≪朝鮮学校補助金:住民監査請求≫
検索で引っかかった中で、BLOGOSの赤池議員の一覧表に関連する主題の請求を集めてみました。これ以外では、固定資産税の減免や経理処理の不正などに関するものがありました。
すごいなと思ったのが、H21年の「川崎市朝鮮学校研修費補助金」。これ、教師の研修の補助金です。研修場所が「ピョンヤン」だってw それだけでも大問題ですが、普通は住所を番地まで書いて○○会館とか具体的に書くのにそれがない、領収書がついてない、記載金額も間違ってる、と運用に問題があるとした請求に対して、「事業実績報告書の提出」は求めているけれども「領収書等の証拠書類の提出」は求めてないので棄却、だそうです。例のガイドラインを公表した川崎国の名の通り、ブッ飛び具合がヤバすぎる。(←闇の深さに、その後のことを調べたら膨大な時間を費やしそうな気がしたので放置してます)
提出or受理 結果 監査対象部局
——————————————————————————–
京 都 府 H22.12.16 棄却 文化環境部
大 阪 市 H23. 5.16 棄却 総務局
札 幌 市 H23. 6.23 棄却 総務局国際部
東大阪市 H23.11. 9 棄却 教育委員会事務局
神 戸 市 H24. 2. 1 棄却 市長室国際交流推進部
兵 庫 県 H24. 7.23 棄却 企画県民部
大 東 市 H25. 7.16 棄却 教育委員会学校教育部
千葉市① H27.10.27 棄却 こども未来局
葛 飾 区 H28.10.19 棄却 地域振興部地域振興課
千葉市② H29. 3.29 合議不調 こども未来局
京 都 市 H29.10.18 ← new!
新しい京都市は西村齊さんが出していらっしゃいます。旧仮名遣いの気合いの入った請求書が西村さんのサイトに出ています。
ttp://hitoshi-club.sakura.ne.jp/index.html/topics/%E4%BD%8F%E6%B0%91%E7%9B%A3%E6%9F%BB%E8%AB%8B%E6%B1%82/
こうしてみると、千葉市の2回目が合議不調となったのは、なかなか画期的なことだったと言えるかもしれません。
住民が監査請求で要求することは、「公金など公の財産の扱いに違法または不当があることを証拠を付けて指摘するから、是正のための必要な措置を取れ」(地方自治法242条をざっくりと)ということなのですが、「違法または不当」を判断するときに、首長や議会が認めている「公益上の必要性」の是非の判断までしなければらないとなると、結構ハードルが高くなります。
地方自治法199条「監査委員は、普通地方公共団体の財務に関する事務の執行及び普通地方公共団体の経営に係る事業の管理を監査する」とあり、単に事務的な手続きなどを審議するもの、ということに重きを置くかどうかという態度の違いも影響してきます。
ゆえに、公益性については首長や議会に逆らわないように、屁理屈をこねくりまわし、逃げまくる、という展開となります(ま、ちょっと同情の余地はあるかも、とは思いますが、一方で一国民としての矜持はどうしたの、とも思います)。
一例として、赤い(北の)恋人札幌市の請求から一部抜粋してみます。
———————
4p「補助金の交付決定に当たっては、『市長が必要と認めたときは、地方自治法第221 条第2項の規定により随時状況の調査を行い、又は必要事項について報告させることがある。』ことを通知しているが、国際部が補助金の使途を確認するために本件法人から提出を求めているのは、上記の収支決算書及び事業実績報告書のみであり、経理関係書類の実地調査などは行っていない。」
6p「請求人は、朝鮮学校で一般に用いられている歴史教科書の記載内容が史実を歪曲していることや、反日的な教育内容となっていることなどから、本件学校への補助金交付には公益性がなく、相互理解や友好親善を深める目的を果たしていないと主張している。
確かに、請求人が提出した歴史教科書(日本語訳をされたもの)の写の記述中には、請求人の指摘する内容のものが見られ、これらは請求人の主張に沿うものと言える。しかしながら、上記の記述や請求人の陳述から、直ちに本件学校において日本の公益に反する教育活動が行われているとまで断定することは困難であり、他にこの認定を左右するに足る証拠はない。」
7p「監査対象部である国際部においては、本件学校の教育内容等について直接調査等を実施したことはなく、その具体的内容を把握していないものの、北海道知事が本件法人や本件学校に対して法令違反行為があるとして行政指導や命令を行った事実がないことから、地域との交流事業などを行っている本件学校への補助に一定程度の公益性があるとする市長の判断に、明確な違法があるとは認められない。」
—————–
「北海道知事が・・・略・・・法令違反行為があるとして行政指導や命令を行った事実がないことから・・・略・・・一定程度の公益性があるとする市長の判断に、明確な違法があるとは認められない」???
ふと「殺人で捕まってないから万引きもしてない」というフレーズが浮かんだのですけれども。。。
~*~*~*~ ファンタジータイム ~*~*~*~
札幌市「この人は、過去に殺人を犯して捕まったりしたことはありませんので、万引きなどしていません」
住民「いやいや、スーパーで怪しい行動を見た住民が何人もいるんですよ。きちんと調べてください」
市「この人は、定職に就き、家賃も支払い、普通に社会生活を送っています。だから万引きなどしていないのです。地域の行事には積極的に参加し、賃貸アパート契約の連帯保証人は北海道知事ですので、信用できる、公益性のある人物です。スーパーを管理している雇われ店長の札幌市国際部は、この人がレジを通して商品を購入したことがあるのを確認しているので、それ以上調べる必要はないと言っています」
住「調べる必要に足る状況証拠があると言ってるんですよ」
市「確かに目撃者がいる、とおっしゃることは承知しています。しかしそのことは、この人が地域に貢献しているということを否定するだけの根拠にはなりません」
住「もし万引きしていたら、それこそ地域に貢献していないことになるんです。私たちスーパーのオーナーにとっての損失ですよ。調べないと公益性の判断はできないでしょう」
市「他のオーナー様の中には、この人の地域への貢献を高く評価している方々もたくさんいらっしゃいます。疑いの目で見ることは、この人への差別になります」
住「差別ではなく、根拠に基づいた指摘をしているんです」
⇒以下ループぐるぐる
~*~*~*~ おしまい ~*~*~*~
こんな感じかなw もちろん万引きなんてカワイイものではないけれど。
なお、赤い(北の)恋人札幌市は、去る2017年5月22日~25日、市役所1階ロビーで「北海道朝鮮初中高級学校 児童・生徒絵画展」を開催しました。主催は、超党派の市議でつくる「札幌市議会日朝友好促進議員連盟」。結成40周年を記念し、同校への理解を深め、日朝の友好親善を推進しようと10年ぶりに開いたそーーーです。
■憲法89条の判断
これについては、判断を下した自治体(札幌市、神戸市、兵庫県、大東市)と、避けた自治体(京都府、大阪市、東大阪市:違憲性の判断は監査委員の権限になじまないなど)、争点にしていない自治体(千葉市、葛飾区)に分かれます。
【憲法89条】
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
争点になっているのは「公の支配」の部分です。これについては、
———————-
◆東京高等裁判所判決(平成2年1月29日)
その程度は、国又は地方公共団体等の公の権力が当該教育事業の運営、存立に影響を及ぼすことにより、当該教育事業が公の利益に沿わない場合にはこれを是正しうる途が確保され、公の財産が濫費されることを防止しうることをもって足りるものというべきである(神戸市の請求より転載)。
◆政府答弁(平成22年3月23日答弁257号)
平成22年3月15日浅尾慶一郎衆議院議員提出の「外国人学校に関する質問主意書」に対し、公が学校の閉鎖命令、法人の解散命令、収容人員の是正命令、予算の変更勧告、役員の解職勧告等ができる故、朝鮮学校は憲法89条のいう公の支配下にあるといえる、としている(大東市の請求より転載)。
———————-
という判例、答弁を用いて「公の支配」にある、という判断がなされています。つまり、セーフティネットの整備がされていればいいんじゃない、としています。
一般の感覚では、「日本国ではなく北朝鮮が支配してるじゃないか」と思いたくなりますが、法律的な解釈ではこのようになっています。
また、下の答弁では言及していませんが(原文確認済)、上の判例では「公の利益に沿わない場合にはこれを是正しうる途」というように、「公益性」について言及しています。
実際の補助金支出に関しての判断の根拠は下記です。
【地方自治法232条の2】
普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。
———————
◆広島高等裁判所判決(平成13年5月29日)
公益上の必要性に関する判断については、普通地方公共団体の長に合理的裁量権が認められ、その断に裁量権の逸脱又は濫用が認められないかぎり、当該補助金の交付は違法または不当と評価されることはないと解される(札幌市請求より転載)。
◆千葉地方裁判所判決(平成21年4月24日)
公益上の必要性の存否については、地方公共団体の議会あるいは執行機関において、社会的、地域的諸事情を総合的かつ合理的に勘案して判断すべきであって、その裁量の範囲は相当広範なものと解されている(札幌市請求より転載)。
———————
判例や答弁で示されているセーフティネットは、是正されるべき対象が学校の不正等であればともかく、「公の支配」たる主体自身が補助金の公益性の判断を誤った場合、弁護士会と同じような感じで、自分で自分を是正するためには発動できない、という欠陥があります。
現状、都道府県が公益性の判断を誤れば、地方自治法違反と同時に憲法89条違反となります。市区町は「公の権力」を持っていないため、公益性の判断を誤れば、単に地方自治法違反です。そして、「公の権力」たる都道府県が、市区町の公益性の判断の誤りを是正することは、セーフティネットには規定されていないはずです。
東大阪市は、
【そもそも市及び東大阪市教育委員会は各種学校に関する許認可及び教育内容の指導監督に関して何ら権限を有しておらず、政治的中立性の違法性又は不当性については本監査請求に係る監査委員の職務権限になじまないと考える】
と言い、大体市区町は何かと都道府県のせいにし、都合よくその判断を追認しますが、葛飾区請求で指摘されている【小池東京都知事は、平成28年9月8日に「拉致問題などが解決されていない状況下で、朝鮮学校に公金を支出することはない」旨の方針を公表した】
に対しては、東京都の全区市が従ったという話は聞こえてきません。
自治の名の下に、市区町の暴走も、もうどうにも止まらない状態となっています。
——————
住民にとって頼みの綱である監査請求も、監査委員はほぼ自治体寄りであり、支出が規定に違反するかどうかをチェックするのが本来のあり方である以上、要綱などの規定そのものが歪んでいる現状においては、とても信頼できるセーフティネットとはなり得ません。
それでも一矢を報い、結果を得たいとするならば、正面切って憲法89条違反を問うのはあまり意味がなく、個々の実情の不具合を突きつつ(千葉市の要綱の不備など)、地方自治法232条の2の「公益上の必要性」の否を主目的とし、その後の行政訴訟も視野に入れる、というくらいの意気込みが必要になるかもしれません。
千葉市のケースで示された、
【対象団体が受領した補助金を、運営経費に充てるか、補助事業の経費に充てるかは単に概念上の区別でしかない。したがって、補助事業の場合には対象団体の財政的健全性について何の確認も考慮もしないとする担当部局の主張は是認できない。】
【監査対象部局は、本件補助金は、学校が行う地域交流事業を対象とする事業補助だから、事業の公益性や効果については審査しているが、朝鮮総連との関係については確認していない、と説明している。しかしながら、朝鮮学校は、「北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総連が、その教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしている。」との政府見解は、文部科学大臣通知でも示されており、また、千葉市議会では、平成28年第1回定例会において「北朝鮮による核実験及び弾道ミサイルの発射に対し厳重抗議する意見書」が全会一致で議決されているのであって、千葉朝鮮学園に対する補助金支出を疑問に思う市民も一定程度存在するであろう状況下において、朝鮮総連との関係については確認しないとの主張は、是認することができない。】
【公益性についてどの様な視点、認識のもとに検証したのか、公益性について厳密に確認されたかが不透明である。以上のことから、本件補助金の支出に公益上の必要性があると判断することもできない。】
【千葉市は顧問弁護士から同補助金の今回の支出について「裁量権の逸脱や乱用にあたり、地方自治法に違反する恐れがある」との厳しい指摘を受けていたことを明らかにした。(新聞記事)】
という内容はこれまでに見られない展開となっています。「公益上の必要性」を崩すのに、徹底した調査が必要なこと、公金を出さなくても教育権の侵害にはならないということ(2008年11月27日大阪高裁の判例:稿を改めて触れます)、逆に出すことは外患罪の適用も視野に入る、ということなどを明確にするのも現時点ではポイントになることかなと思います。