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2333 ら特集奈良弁護士会②(0)

引用元 

弁護士会会長声明の全国ツアーは量が膨大で大変であるが、諸悪の根源マンセー日弁連の問題部分をあぶり出し、大掃除するには必須の作業である。赤入れが間に合わなくて、チェックだけで出稿しているが、いずれ項目別に分類して処理することになる。
まあ、ローカル弁護士会だけのものもあるので、たまに赤字がはいる。今般も「国民の権利利益を擁護するため」なんてフレーズを平気で使っている。すでに既得利権の擁護集団に成り下がっている日弁連が何を言うかとしらけるばかりだな。

奈良弁護士会
ttp://www.naben.or.jp/

特定秘密保護法施行令等の閣議決定に対する会長声明
2014/11/07
奈良弁護士会 会長 中西 達也
1. 2014年(平成26年)10月14日、特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という。)の関係政令(施行期日政令、施行令、内閣府本府組織例等の一部を改正する政令)及び運用基準が閣議決定された。
2. この点、関係政令の素案及び運用基準の素案に対するパブリックコメント募集には、1ヶ月間という短い期間にもかかわらず、2万3820通の意見が提出された。しかし、これを受けて情報保全諮問会議が作成した施行令(案)及び運用基準(案)等の内容は、上記各素案とほとんど変わらないものであり、この各案がこのたび閣議決定された。そのため、多数の国民が、国民の知る権利、プライバシー権等の侵害のおそれに懸念を示していた秘密保護法は、法成立時の懸念が払拭されないまま本年12月10日に施行されようとしている。
3. 当会は、2013年(平成25年)11月18日付で「特定秘密の保護に関する法律の制定に反対する会長声明」を公表し、また同年12月3日付で「特定秘密の保護に関する法律の制定に反対する総会決議」を公表し、秘密保護法の様々な問題点を指摘し、同法の制定に強く反対してきたところであるが、その後成立した秘密保護法及び今回閣議決定された同法の運用基準には、依然として以下のような問題がある。
4. まず、秘密指定できる情報の範囲について、運用基準では、秘密保護法別表該当性を判断するための基準として55の「細目」を設けており、政府は、これにより行政機関の長による恣意的判断ができないよう基準が明確化されたと説明する。
しかし、上記「細目」においても、例えば「防衛に関し収集した電波情報、画像情報『その他重要な情報』」(別表第1号ロ)における「重要な情報」をいかなる基準により判断するかなどの具体的な定めはなく、秘密保護法別表と合わせて総合的に考慮してもその基準は曖昧であり、行政機関の長により恣意的に秘密指定が行われるおそれは解消されていない。また、上記「細目」自体は閣議決定で変更可能なものであり、基準としての明確性、安定性が十分に担保されているとはいえない。
5. また、特定秘密の指定・解除等が適正にされているかを検証・監察するために独立公文書管理監(以下「管理監」という。)が設けられ、管理監は、行政機関の長に対し、特定秘密である情報を含む資料の提出もしくは説明を求め、又は実地調査をすることができるとの定めもなされた。しかし、行政機関の長は、「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがない」(秘密保護法10条1項)とは認められない場合などには提供を拒絶することができるとされている。
さらに、内閣府本府組織令等の一部を改正する政令では、管理監は内閣府に置かれるものとされているため、政府から独立した組織とはされていない。また、どのような者が管理監を担当するかについては定めがなく、政府も明らかにしていないため、特定秘密を取り扱う行政機関の出身者が充てられる可能性も否定できない。
したがって、現制度の下では、管理監の独立性や権限行使の適切性は十分に担保されておらず、管理監による実効性ある検証、監察を期待することはできない。 6. さらに、取扱業務者等が、特定秘密の指定・解除等が秘密保護法等に従って行われていないと思料するときは、管理監の通報窓口に対し通報できるとの制度も設けられた。
しかし、通報を行う取扱業務者等は、一次的には当該特定秘密の指定・解除等に係る行政機関の通報窓口へ通報しなければならないものとされていること、通報の際には秘密の内容を漏らさないよう要約して通報することが義務づけられているため、要約に失敗し秘密の内容に触れてしまうと過失漏えい罪で処罰されるおそれがあることなどから、当該通報制度は通報者を萎縮させるおそれがあり、実効性ある公益通報制度とは評価できない。
7. 既に昨年の当会会長声明や総会決議でも指摘したとおり、秘密保護法には重大な欠陥が多数存在し、その制定は許されるべきものではなかった。そして今回の関係政令及び運用基準の閣議決定によっても、これらの重大な欠陥が解消されたとは到底言えない。そもそも関係政令や運用基準で定めた事項についても、本来は直接的に民主的基盤を有する国会において慎重に議論され結論を導き出すべきだったのであり、政府の手法は、かかる民主主義に基づく法制定のプロセスをも軽視したものといわざるを得ない。
8. よって、当会は、このように重大な問題を有する秘密保護法(運用基準等を含む。)を直ちに廃止するよう求める。

集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定に抗議し、撤回を求める会長声明
2014/08/07
奈良弁護士会 会長 中西 達也
1.  政府は、本年7月1日、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」と題する閣議決定を行った。これは、従前憲法上行使できないとされてきた集団的自衛権の行使等を、憲法9条改正のための国民投票も行わないまま、一政府の解釈によって認めようとするものである。当会は、本年4月16日、「解釈による集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明」を公にしているが、事の重大性に鑑み、重ねて、上記閣議決定に対する見解を明らかにするものである。
2. 当会は、上記声明において、(1)集団的自衛権の行使を認めるのであれば、少なくとも憲法96条に定められた手続により、国民投票によって国民の賛同を得なければならず、(2)立憲主義の観点からも、一内閣による「解釈」によって集団的自衛権の行使を認めることは到底容認できない旨を指摘した。
これに対し、政府は、今回の閣議決定は合理的な解釈の限界をこえる解釈改憲ではなく、これまでの政府見解の基本的な論理の枠内における合理的なあてはめの結果であり、立憲主義に反するものではない、と反論している。
しかし、今回の閣議決定は、歴代政権が一貫して行使できないとしてきた集団的自衛権の行使を認めている。さらに、首相答弁によれば、同決定により集団安全保障の武力行使も容認されるという。これは憲法9条を書き換えるに等しく、解釈改憲そのものである。
3. また、当会は、上記声明において、従前の憲法的解釈と異なるいかなる「限定」を加えようとも、武力行使に対する制限として実効性を欠くことを指摘した。
これに対し、政府は、国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置としての武力の行使の「新3要件」が憲法上の明確な歯止めとなるうえ、実際の行使は国会承認を求めることとし国会によるチェックの仕組みを明確にすると反論している。
しかし、従前の政府解釈にあって、恣意的な解釈を許さない明白な歯止めとなってきたのは、「我が国に対する急迫不正の侵害があること」という自衛権の発動要件と、「他国領土での行使は認められない」という地理的範囲の制限であった。
これに対し、「新3要件」にあっては、従前の発動要件が、「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」と改められている。「我が国の存立が脅かされ」る「明白な危険」という概念が加えられることによって、発動要件は大きく緩和され、かつ政府の恣意的解釈を許すものとなっている。また、政府は、「新3要件」が満たされれば自衛権行使に地理的限定はないという。従って、要件そのものを見ても、これが明確な歯止めになるとは到底言えない。
しかも、手続的に、「明白な危険」があるかどうかは、政府が全ての情報を総合して判断するとされている。だが、実質的な判断が行われるのは「国家安全保障会議」という密室においてであり、判断の基礎となる情報も「特定秘密」として公開されない可能性が高い。そのような状況では、たとえ国会承認を要件にするとしても、それに実効性があるとは解しがたい。
4. 今回の閣議決定に至るまで、国会での十分な論議はなされておらず、その内容は、実質的に、与党間の協議のみで決められた。そのため、国民に対する十分な説明がなされておらず、重要な点について誤解を与える説明がなされている。
(1) 例えば、首相は、今回の閣議決定によっても、「自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加することはない」と説明している。
しかし、閣議決定は、従前、「他国の武力行使と一体化」するため憲法上許されないとされていた「戦闘地域」における補給・輸送などの支援活動を他国軍隊に対して行うと明言している。これらはいわゆる「兵站(へいたん)」活動であり、国際法上の「武力行使」にあたるとの理解が一般的である。それゆえ、この活動は相手国からの攻撃の対象となるし、首相は、それに対して反撃する場合がありうることを否定しない。その際、多くの犠牲者が出る可能性もある。それを説明せず、「戦闘」と「戦争」ないし「武力行使」と言う言葉を使い分ける上記の説明は、極めて不誠実なものと言わざるを得ない。
(2) また、政府は、「なぜ、今、集団的自衛権を容認しなければならないのか」という問いに対して、「我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しさを増す中」「我が国を防衛するため」であると説明する。しかし、我が国が武力攻撃を受けた際に我が国が行使するのは個別的自衛権であって集団的自衛権ではない。また、我が国が集団的自衛権を容認せずとも日米安保条約によってアメリカが有事の際の共同対処義務を負っていることと、今回の閣議決定との関係は十分に説明されていない。さらに、政府は、集団的自衛権を認めることによる「抑止力」のみを強調するが、そのことによってかえって軍事的緊張が高まる危険性や、現実に集団的自衛権が行使された場合にいかなる事態が生じるかについて、十分な説明を国民に行っていない。
5. よって、当会は、今回の閣議決定に強く抗議し、その撤回を求めるとともに、今後の関係法律の改正が許されないことを明らかにし、反対するものである。以上

「ヘイト・スピーチ」に反対し、その根絶に向けて努力することを宣言する会長声明
2014/08/07
奈良弁護士会 会長 中西 達也
1. さる7月8日、大阪高等裁判所は、在日コリアンの子どもらが通学する京都朝鮮第一初級学校の付近において、「朝鮮人を保健所で処分しろ」、「スパイの子ども」、「日本から叩き出せ」、「ゴキブリ、ウジ虫、朝鮮半島へ帰れ」等と大音量で連呼して、在日コリアンに対するいわゆる「ヘイト・スピーチ」を行った団体及びその構成員らに対し、約1200万円という高額の損害賠償及び同校付近での街宣行為の差止めを命じる判決を一審京都地方裁判所に引き続いて言い渡した。
2. このようなヘイト・スピーチは近年特に社会問題化しているところである。奈良県においても、2011(平成23)年、御所市の水平社博物館前において「穢多、非人、非人とは人間じゃないと書くんですよ。おまえら人間なのかほんとうに」、「穢多とは穢れが多いと書きます。穢れた、穢れた、卑しい連中、文句あったらねえ、いつでも来い」等と被差別部落出身者を差別・侮蔑する街宣活動が行われるという事件が発生した。そして、この街宣活動を行った者に対し、奈良地方裁判所は150万円の損害賠償を命じる判決を言い渡している。
そのような社会的状況の中、上記大阪高裁判決は、ヘイト・スピーチが憲法及びわが国も批准する人種差別撤廃条約の趣旨に照らして許されないと初めて明確に判断した点で、高く評価することができる。
3. 特定の人種、民族や社会的地位等にある者に対する憎悪を表明し、差別を助長・煽動するヘイト・スピーチにつき、直接の法的規制、特に刑事罰を定めることが可能か、また、これをすべきかという点では、憲法上極めて重要な基本的人権とされている表現の自由の保障(21条1項)との関係で未だ様々な議論があるところである。
しかし、ヘイト・スピーチは、特定の人種、民族や社会的地位等にある者について、一律に差別し、その尊厳を否定し、罵倒して傷つけるものである以上、憲法が保障する個人の尊厳(13条)や法の下の平等(14条1項)に全くそぐわないこと自体は明らかである。
4. したがって、ヘイト・スピーチは根絶されるべきであるが、そのためには、これを直接批判することに加え、ヘイト・スピーチが特に社会におけるマイノリティに対する差別意識に基づくものであることから、マイノリティが直面する種々の法的問題に対する救済や、子ども・市民に対する法教育の更なる広がり・深まり等も重要であり、当会にもこれに取り組む使命があると考える。
そこで、当会は、ここで改めて、ヘイト・スピーチに反対する態度を明らかにするとともに、あらゆる差別が根絶され、多様な個人がそれぞれ自分らしく共生できる社会を真に実現するために、当会及び各会員が様々な分野で引き続き努力していくことを、宣言する。以上

行政書士法の改正に反対する会長声明
2014/05/13
奈良弁護士会 会長 中西 達也
日本行政書士会連合会は、行政書士法を改正して、「行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る認可等に関する審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立てについて代理すること」及び「ADR手続において代理すること」を行政書士の業務範囲とすることを求め、そのための運動を推進してきており、行政書士法改正案が議員立法として今通常国会に提出される可能性がある。
しかしながら、行政庁に対する不服申立やADR手続(以下「行政不服申立等」という。)における代理権を行政書士の業務範囲に加えることは、以下に述べるとおり、国民の権利利益の擁護を危うくする恐れがある。
よって、当会は、行政書士法を改正して行政書士に行政不服申立等の代理権を付与することに反対する。
1.行政不服申立等の代理業務は行政書士業務と相容れないこと
 そもそも、行政書士の主な職務は、行政に関する諸手続の円滑な実施に寄与して国民の利便に資することを目的としており、その主な内容は、官公署に提出する書類等の作成及びその作成や提出を代理人として行うことであって、その性質から紛争性の存しない職務が中心である。
しかるに、行政不服申立制度は、行政庁の違法または不当な行政処分を是正し て国民の権利利益を擁護するための制度であり、紛争解決制度であるADR手続と共に、本来的に紛争性を内在していて、行政書士の主な職務とは、その内容を本質的に異にしている。特に、行政不服申立制度においては国民と行政庁が鋭く対立することが予想されるところ、行政手続の円滑な実施に寄与することを主目的とする行政書士が、行政庁の行った処分についての是正を求めることは、その職務の性質と本質的に相容れない。
たとえ代理権の範囲を行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する不服申立に限定したとしても,行政書士には紛争性のある書類作成業務が認められておらず,そもそも不服申立手続を代理する前提を欠いている。
2.行政不服申立等の代理権を行政書士に付与することは国民の利益を損なうこと 都道府県知事による監督を受ける行政書士が、国民と行政庁が鋭く対立する行政不服申立等の代理人となることは、行政書士にその監督者と鋭く対峙することを求めることにならざるを得なくなることから、適正に業務を遂行することができるのか疑問であり、国民の権利及び法的利益の実現を危うくする恐れが極めて大である。
また、行政不服申立等の代理行為は、その後の行政訴訟の提起や同訴訟での結論も充分に視野に入れての判断が必要となるところ、行政書士は、行政不服審査法が行政書士試験において必須科目とされてはいるものの、行政訴訟における高度な専門性と判断に関する能力が担保された状態にはなく、訴訟実務にも精通していない。司法制度改革において行政書士以外の各士業に与えられた行政不服申立代理権は,各分野における高度な専門性に対して付与されたものであるところ,行政書士には他士業のような専門的な分野は存しない。
このような行政書士に行政不服申立等の代理権を付与することは、行政庁の違法または不当な行政処分を是正して国民の権利利益を擁護するはずの行政不服申立制度において、国民の側に立ってその権利や法的利益の擁護のために最善を尽くすことのできない代理人の存在が許容されることになるところ、国民の権利や法的利益の保護が全うされない事態の発生は、厳に避けなければならない。
3.行政書士には紛争性の存する職務を取扱い得る職業倫理が確立していないこと 紛争性を内在している行政不服申立等の代理行為を行うには、当事者の利益が鋭く対立する場面における職業倫理が確立されていることが必要不可欠である。常に紛争性が高い事件の取扱いを主な職務とする弁護士には、これを前提とした弁護士職務基本規程が定められている。
しかるに、行政書士について定められている倫理綱領は、その内容において抽象的に国民の権利擁護を掲げるのみであり、行政書士においては、紛争性の存する職務を取扱うだけの職業倫理が確立しているとはいえない。
4.行政書士法の改正が必要となる立法事実が存しないこと
国民による行政不服申立等を代理する資格者が充分に確保できていないという事実は実証されておらず、従って、行政書士に行政不服申立等の代理権を付与する前提として立法事実を欠いている。
これまでも、弁護士は、生活保護法、出入国管理及び難民認定法、精神保健及び精神障害者福祉法等に基づく行政手続等の様々な分野で、行政による不当な処分から社会的弱者を救済する実績を上げている。そして、今後も、弁護士人口の増加等により、行政不服申立の分野にも弁護士が一層関与していくことが確実に予想される状況にあるから、行政書士法を改正して行政書士の業務範囲を拡大する必要性はない。
また、当事者の権利義務の存否が問題となる民事紛争解決手続の一つとしてのADRについては、この面での専門性を全く欠いている行政書士に代理権を付与する余地はない。
よって、当会は、行政書士法を改正して行政書士に行政不服申立及びADR手続に関する代理権を付与することに、断固として反対する。

解釈による集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明
2014/04/16
奈良弁護士会 会長 中西 達也
1. 安倍晋三首相は、本年2月20日の衆議院予算委員会において、集団的自衛権行使容認に向けた憲法解釈の変更を「閣議決定する方向になる」と答弁し、閣議決定にて解釈変更を行う考えを明らかにした。しかし、以下に見るとおり、集団的自衛権の行使を容認することは、憲法の「解釈」としては不可能である。また、実際上、これを認めることは、平和国家としてのあり方を大きく変え、国民の将来を大きく左右することになる。
2. そもそも、多くの国の憲法に平和主義が規定され、国連憲章をはじめとする国際法において戦争の禁止が謳われるようになったのは、総力戦となった現代の戦争において「国家が勝つこと」に全てを集中する「戦争」が、最大の人権侵害であるとともに、立憲主義そのものを麻痺させる危険を有しているからである。その意味で、日本国憲法第9条の「戦争を放棄し、戦力を保持しない」という徹底した恒久平和主義は、平和への指針として世界に誇りうる先駆的意義を有するものである(当会の平成18年5月20日総会決議)。
従前の政府解釈にあっても、「自衛隊」は「軍隊」ではなく、9条の存在を前提にしたものであるとされてきた。その論理は、要するに、9条とて、国民の生命・財産が外部からの武力攻撃によって侵害される状況となったときには、国家固有の自衛権の行使として、それを排除するために必要最小限度の実力の行使をすることを否定するものではなく、そのための実力組織(自衛隊)を保有することを禁じるものではない、というものである。
だが、そのことは、論理必然的に、自衛隊には、それ以上の活動が憲法上許されないことを意味する。それゆえ、自衛権発動の要件として、(1)わが国に対する急迫不正の侵害があること、(2)この場合にこれを排除するためにほかの適当な手段がないこと、(3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、という「3要件」が必要とされる。また、他国の領土、領海、領空における武力の行使も、自衛のための必要最小限度を超えるものであり、許されないとされる。
このように、憲法9条は制限規範として、党派を超えて大きな意義をもっている。そして、わが国は、これを遵守してきたからこそ、「戦争をしない国」として、国際的信用を得ることができた。
集団的自衛権についても、政府は、昭和56年(1981年)、これを「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」と定義し、このような集団的自衛権は、わが国を防衛するための必要最小限度の範囲を超えるため、わが国は、憲法上行使できないと答弁している。これは、自衛隊の活動に関する政府の憲法解釈を踏襲した、当然の結論である。
3. 従って、集団的自衛権の行使を認めるのであれば、少なくとも憲法96条に定められた手続により、国民投票によって国民の賛同を得なければならない。それを無視して、閣議決定のみにより、解釈の名の下に実質的な改正を行うことは、国民主権原則に真っ向から反する。
4. また、憲法の基本理念たる立憲主義の観点から見ても、一内閣による「解釈」によって集団的自衛権の行使を容認することは、容認できない。
そもそも憲法は、「すべての人々が個人として尊重されるために、最高法規として国家権力を制限し、人権保障をはかる」という「立憲主義」を基本理念とする(当会上記総会決議)。
すなわち、憲法は権力制限規範であることに、その存在意義がある。また、現憲法下では、憲法解釈の権限は最高裁判所にある。時々の内閣が憲法を恣意的に「解釈」し、その制限を免れることが許されるならば、憲法はその存在価値を失ってしまう。
上記のように、憲法9条は、権力者に対して集団的自衛権の行使を禁止している。それを、内閣が公然と無視することは、こと9条の問題に限らず、憲法の存在意義ひいては法治国家としてのあり方そのものを危うくする。
5. 以上の点を意識して、集団的自衛権の行使は日本の安全保障に大きな影響を与える場合等に限って容認することとし、個別の事例ごとに是非を判断すべきであるとの意見もある。しかし、従前の憲法的制約と異なるいかなる「限定」を加えようとも、それは従前の要件に比して曖昧にならざるを得ず、しかも一内閣の閣議決定に過ぎないのであって、実効性を欠く。さらに、場面を「限定」したところで、それが集団的自衛権の行使である以上、現憲法の規定との法的整合性を説明することは不可能である。
6. 戦後、わが国は、9条を遵守し、一度たりとも戦争をせず、「平和国家」としての信用を築いてきた。ところが、正規の手続にもよらず、「解釈」により集団的自衛権の行使を容認することは、従前の「解釈」が誤っていたと宣言するに等しい。それは、北東アジアの政治的・軍事的緊張を高め、かえって、わが国の安全を損ねるとともに、従前築いてきた国際的信用を大きく損ねるものである。
7. よって、当会は、解釈による集団的自衛権の行使容認に強く反対するものである。

司法修習生に対する給費制の復活を求める会長声明
2014/03/17
奈良弁護士会 会長 以呂免 義雄
1. 裁判所法67条1項は、法曹(弁護士、裁判官、検察官)資格を得るために、司法試験に合格した後、1年間の司法修習を経ることを定めている。司法修習は司法の現場で実際の事件に携わることにより、法曹となるための基本的な知識・技法のほか、法曹倫理、識見等を身に付けることを目的としており、そのために裁判所法67条2項では「司法修習生は、その修習期間中、最高裁判所の定めるところにより、その修習に専念しなければならない」という修習専念義務を定めている。
 我が国では、戦後長い間、この修習専念義務を実質化し、質の高い司法の担い手を育成するために、司法修習生に対し、医療保険や年金制度を含む身分保障を与え、司法修習期間中の生活費等の必要な資金を国費から支給する、いわゆる給費制をとってきた。
2. しかるに、国は、多くの弁護士会や一般国民からの強い反対を押し切り、将来年間3000人合格とすることによる財政負担を理由に、2011年11月から修習を始めた65期の司法修習生以降,給費制を廃止するとともに、修習資金を貸与することができるように裁判所法の改正を施行した(裁判所法67条の2)。しかしその後、合格者数について、国は3000人目標を撤回し、現在年間約2000人で推移しており、貸与制移行への根拠はなくなったと言わなければならない。
3. 日弁連が63期司法修習予定者に対して行ったアンケート調査では、法科大学院在学中に奨学金や教育ローンを利用した人は51.2パーセントに及んでいる。また、65期司法修習生に対して行ったアンケート調査では、司法修習生になることを辞退しようと考えたことのある人は28.1パーセントに達し、その理由として貸与制を理由に挙げた人が86.1パーセントにのぼっている。
この調査結果から窺われるように、経済的に余裕のある人しか、法曹の道を選べなくなっている。それにもかかわらず、貸与制が今後も継続されるとなれば、法曹志願者数が減少し、有意かつ優秀な人材の確保が困難となって、ひいては司法制度を危うくすることになる。
そして、司法制度は人権保障の砦として個人の尊厳を実現する極めて重要な役割を担っており、これを支えるのは法曹であることに照らすと、法の支配を実現するのに必要なインフラである法曹の養成を国費で賄うのは国の当然の責務である。
4. ところで、医師も法曹も、高度な専門知識や経験、倫理を必要とする専門職である。そして、国は、医師になるための専念義務を課された研修医に対し、医療機関が研修医に支払う給与について国費からその一部を補助金として支給している。然るに、国が司法修習生に対し給費制であったのを貸与制に切り替えたのは、不公平、不合理な政策であり到底許されない。
5. 以上の次第で、全国に配属される司法修習生が経済的不安を負うことなく修習に専念できるよう、速やかに給費制を復活すべきである。

家族法の差別的規定の全面的改正を求める会長声明
2014/01/07
奈良弁護士会 会長 以呂免 義雄
昨年9月4日、最高裁大法廷は、婚外子の相続分を婚内子の2分の1とする民法第900条4号ただし書前段(以下「本件規定」という。)について、「遅くとも平成13年7月」(他の1件の決定では同年11月)「当時において、憲法14条1項に違反していた」とする2件の決定を行った。これを受けて国会は、昨年12月5日、本件規定を改正し、婚外子の相続分の不平等規定を削除した。
これは,当会の2010(平成22)年6月22日付会長声明や従来からの日本弁護士連合会の主張と軌を一にするものであって、高く評価する。
しかし、改正すべき点は本件規定にとどまらない。これまで自由権規約委員会及び女性差別撤廃委員会は、日本政府に対し、選択的夫婦別姓を認めていないこと、女性のみに6か月の再婚禁止期間を定めていること、婚姻年齢に男女の差を設けていることについて繰り返し懸念を示し、対策を早急に講じるよう要請してきた。そして、法制審議会は、1996(平成8)年に決定した「民法の一部を改正する法律案要綱」において、本件規定以外にも、男女とも婚姻適齢を満18歳とすること、女性の再婚禁止期間を短縮すること、選択的夫婦別姓を導入すること等、民法における差別的規定の改正を答申した。また、2010(平成22)年には、政府が上記要綱と同旨の法律案を準備した。しかし、これらに関する民法改正は、いまだなされていない。
当会は、昨年9月4日の最高裁決定を契機に、国会に対し、家族法全体についても見直しを行い、本件規定のみならず、そもそも出生届の際に嫡出子・非嫡出子の届出を要求する戸籍法49条2項1号、婚姻適齢に男女の差を設ける民法731条、女性について不合理な再婚禁止期間を定める民法733条及び夫婦同氏を強制する民法750条等の差別的規定についても、速やかに改正するよう強く求めるものである。

犯行時少年の被告人の実名報道に関する会長声明
2013/06/17
奈良弁護士会 会長 以呂免 義雄
本年4月12日付け奈良新聞は、当時奈良地方裁判所において公判が進行中であり当会会員が弁護人を務めた裁判員裁判の被告人について、当該被告人は犯行当時少年であったにも拘わらず、その氏名、年齢、職業及び住所の一部を記事中に掲載した。
これは、少年のときに犯した罪により起訴された者について、氏名等を明らかにすることにより、その者が当該事件の本人であることを推知することができるような報道をすることを禁じた少年法61条に反するものであり、極めて遺憾である。
少年法61条が実名報道を禁じたのは、少年法がその目的として掲げる「少年の健全な育成」(1条)の理念に基づき、少年のプライバシーが広く社会にさらされることにより少年の更生・社会復帰が阻害される事態を防止するためである。このような趣旨は犯行当時少年であったが現在成人している者についても等しく妥当し、それゆえに少年法61条は「少年のとき犯した罪により公訴を提起された者」についても同様に保護の対象としているのである。
確かに報道の自由は重要な基本的人権のひとつであるが、しかし、裁判に関する報道において、私人であるもと少年の実名等が不可欠な事実要素とは必ずしもいえない。むしろ、様々な事情から未成年ながら罪を犯してしまった者に対し、その成長を支援し地域社会全体で立ち直りを支える必要性が、優越するというべきである。
奈良新聞社は、この実名報道に対する奈良地方裁判所からの注意及び弁護人からの抗議を受けて、上記記事を掲載した翌日の紙面で「おわび」を掲載し、記事中の氏名部分について削除することとした。このように、直ちに自らの過誤を認め当該被告人のプライバシー回復に努めた姿勢は評価できるものの、しかし、実名報道はひとたびこれがなされてしまえば、その者のプライバシーはもはや完全には回復されず、社会復帰を妨げる可能性は結局残るといわざるを得ないことにも留意しなければならない。
したがって、当会は、奈良新聞社に対し、改めて今回の件を深刻に受け止めることを求めるとともに、同社を含むすべての報道機関に対して、今後、少年法の趣旨を十分に理解したうえこれに沿った事件・裁判報道を行うべきことを切に要望するものである。

憲法第96条の憲法改正発議要件の緩和に反対する会長声明
2013/06/17
奈良弁護士会 会長 以呂免 義雄
1.現在、憲法改正手続について定めた憲法第96条第1項の発議要件を、衆参各議院の総議員の3分の2以上の賛成から過半数の賛成に緩和すべきとの憲法改正論議がなされている。
2.しかし、憲法は、国の基本的な在り方を定めるとともに、国民の基本的人権を保障するために、国家権力の濫用を防止することに重要な意義を有する法規範である。そのため、憲法は、国のあらゆる法律、命令、詔勅、国務に関するその他の行為の上位にある「国の最高法規」と定められ(憲法第98条)、その改正要件も、法律の制定・改正よりも加重され、衆参各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会により発議され、さらに国民の過半数の賛成を得ることが必要とされている(憲法第96条第1項)。
3. この点、憲法改正の発議要件を衆参各議院の過半数に緩和した場合、時々の政治的多数派が容易に憲法改正の発議を行うことが可能になり、国の基本法が安易に変更され法的安定性を損なうとともに、国家権力の濫用から基本的人権を保障するという憲法の役割を形骸化し、ひいては多数決によっても奪われてはならない国民の基本的人権を侵害するおそれすらある。
4.また、憲法の改正は、その重要性に鑑み、まずは国民の代表である国会議員が、十分かつ慎重な議論を重ね、少数派の人権にも配慮し様々な意見の調整を図り、できるだけ広いコンセンサスを得た上で国民に提案することが必要である。この観点からも、衆参各議院の総議員の3分の2以上の賛成を必要とすることが合理的であり、発議要件を安易に緩和すべきではない。憲法改正がなかなか実現しないからといって、発議要件の緩和を先行させようとする態度は、国会の場で熟議し、できるだけ広いコンセンサスを得る努力を放棄するものであり、断じて許されるべきものではない。
5.さらに、諸外国の規定を見ても、ほとんどの国では、法律の制定・改正に比べ憲法改正に厳格な改正手続が定められている(硬性憲法)。
このうち、議会の3分の2以上の議決を要求する国としては、日本以外にもアメリカ、ドイツ、スペイン、ポルトガル、ルーマニア、韓国等がある。また、フィリピン等の日本国憲法よりも厳しい要件を要求している国もある。さらに、議会による再度の議決を要求する国もある。
このように、諸外国には様々な憲法改正規定が存在するが、日本国憲法第96条の改正手続は、これら諸外国の規定と比較しても特別厳しい要件を規定しているものではない。よって、諸外国の規定を根拠として発議要件の緩和を正当化することはできない。
6.また、日本国憲法では、憲法改正発議のほか、院内の秩序を乱した議員に対して除名の議決をする場合(第58条第2項)など重要な事項について議決する場合(第55条、第57条第1項、第59条)には3分の2以上の議決を必要としているが、その中でも特に重要性の高い憲法改正発議の場合には「総議員」の3分の2以上の議決という最も厳しい要件を規定している。
しかし、今回の発議要件緩和の意見は、憲法改正発議以外の手続要件には何ら検討を加えずに、憲法が最も厳しい要件を課した憲法改正発議要件のみを議員の「過半数」の賛成にまで緩和しようとするものである。そもそも多数決により決議を行う場合には、重要な問題についてはより熟議を尽くすよう、問題の軽重に比例して手続要件を加重すべきであり、上記の発議要件緩和の意見は、問題の軽重と手続き要件の均衡を欠く提案と言わざるを得ない。
7.よって、当会は、憲法第96条第1項を改正し、憲法改正発議要件を衆参各議院の総議員の過半数の賛成に緩和することに強く反対する。

全面的国選付添人制度の実現を求める集会決議
2013/02/23
奈良弁護士会主催シンポジウム
「全面的国選付添人制度実現にむけて~全ての少年に付添人を~」 参加者一同
家庭裁判所で審判が行われる少年事件では、少年達のために、様々な観点からの支援が必要です。
弁護士が行う支援は、付添人活動です。付添人活動とは、少年をえん罪から守ることや少年の意見を調査官や裁判官に伝える手助けをすること、少年が立ち直り、健やかに成長して欲しいと願って、家庭や学校・職場などに働きかけて少年を取り巻く環境の調整をすることなど、さまざまな活動を含むものです。これらのうちとりわけ少年の立ち直りのためには、弁護士自身が付添人としての質を向上させることだけでなく、弁護士以外の大人たちが様々な立場から少年の立ち直りのために支援することが必要です。現在も、弁護士以外の大人たちが、親や教師など、様々な立場から少年の立ち直りのための活動をしています。弁護士は、これらの大人たちの助力を得つつ相互に協力して付添人としての活動をしています。
このように、付添人が少年事件において果たす役割は極めて重要ですが、少年自身やその保護者には付添人の費用を支払えるお金がなく、あるいはそもそも保護者が少年のために費用を支出する気持ちがないという場合も少なくなく、国費によって付添人を選任できる制度でなければ、現実的には全ての少年が付添人の助力を得られることにはなりません。
しかしながら現在、国の費用で弁護士を付添人とすることができる国選付添人の対象となる事件が、殺人や強盗などの重大事件で、かつ、家庭裁判所が必要と判断する事件に限定され、少年鑑別所に収容されている少年のうちの4%未満にとどまっています。
このような状況のもとで、弁護士費用が支払えない少年に私選付添人をつけるために、日本弁護士連合会では全ての弁護士会員が特別会費を出して費用をまかない、少年に費用の負担をさせないようにしてきました。また、奈良弁護士会では、少年鑑別所に収容された少年が希望すれば、無料で弁護士が面会をして少年が拒否する場合を除いて上記制度を利用して弁護士付添人をつけるようにしてきました。弁護士会のこれらの活動によって、弁護士付添人が約8割の少年につくようになりました。しかし、これは本来国が負担すべき費用を支出しないため、やむなく弁護士会員がいわば自腹を切って支えている臨時的な制度であり、永久的に続けていけるものではありません。
観護措置決定を受けて少年鑑別所に収容された少年は、特にその成育歴や家庭環境に大きな問題を抱えたケースが多く、少年院送致という処分を受ける可能性も高く、支援が不可欠です。したがって、事件の軽重を問うことなく、少年鑑別所に収容された全ての少年が、あまねく国選付添人による援助を受けられるようにすべきです。
よって、私たちは、国に対して、速やかに少年法を改正し、国選付添人制度の対象を観護措置決定によって少年鑑別所に収容された全ての少年の事件にまで拡大することを求め、ここに決議します。以上

生活保護基準の引下げに強く反対する会長声明
2012/11/21
奈良弁護士会 会長 山﨑靖子
 政府は、2012(平成24)年8月17日、「平成25年度予算の概算要求組替え基準について」を閣議決定した。そこでは、同月10日に成立したばかりの社会保障制度改革推進法(附則2条)において、「給付水準の適正化」を含む生活保護制度の見直しが明文で定められていることを受け、社会保障分野も聖域視せず、生活保護の見直しをはじめとする合理化・効率化に最大限取り組み、極力圧縮に努めることが明記されている。
 一方、生活保護基準については、2011(平成23)年2月に設置された社会保障審議会生活保護基準部会において、学識経験者らによる専門的な検討が続けられているが、厚生労働省が本年7月5日に発表した「『生活支援戦略』中間まとめ」では、「一般低所得世帯の消費実態との比較検証を行い、今年末を目途に結論を取りまとめる」ものとされている。そして、同省が公表している平成25年度の予算概算要求の主要事項には、生活保護費を抑制するための「生活保護基準の検証・見直しの具体的内容については、予算編成過程で検討する」と記載されている。
これら一連の事実からは、来年度予算編成過程において、生活保護法8条に基づき生活保護基準を設定する権限を有する厚生労働大臣が、生活保護基準の引下げを行おうとすることは必至である。これは、最近の報道によれば、財務省においても、生活保護費の削減を求める方針を示しているとされる。
しかし、憲法25条は「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しているところ、生活保護基準は、我が国における生存権保障の水準を決する極めて重要なものとなっている。さらに、例えば、生活保護基準が下がれば、事実上、最低賃金の引き上げ目標額が下がるという形で、生活保護を利用していない労働者の労働条件にも大きな影響が及ぶ。また、生活保護基準は、地方税の非課税基準、介護保険の保険料・利用料や障害者自立支援法による利用料の減額基準、就学援助の給付対象基準など、福祉・教育・税制などの多様な施策の適用基準にも連動している。生活保護基準の引下げは、現に生活保護を利用している人の生活レベルを低下させるだけでなく、市民生活全体に大きな影響を与えることになる。
 現在、生活保護制度の利用者数は増加を続けており、200万人を超過していることは事実である。しかし、例えば、働いても働いても日々の生活が精一杯な状態から脱出できないワーキングプアの問題は、生活保護利用者が拡大する一つの要因と考えられるが、これに対して、特に有効な対策がとられたわけではない。いわゆる労働者派遣法の改正は小規模な範囲に留まり、最低賃金の引き上げもなかなか進んでいない。また、ケースワーカーの不足は解消されておらず、生活保護利用者毎に異なる事情を十分にフォローする態勢も確保されていない。単に、生活保護基準を引き下げるだけでは、根本的な問題は何ら解決しないのである。
このような状況の下で、財政目的、あるいは政治的な思惑に基づき、生活保護基準の引き下げを決めることは許されるものではない。むしろ、上記のような生活保護基準の重要性に鑑みれば、その在り方は、上記の生活保護基準部会などにおいて純学術的観点からの慎重な検討を踏まえるとともに、生活保護制度の利用当事者の声を十分に聴取して決されるべきであると考える。
よって、当会は、次年度予算編成過程において生活保護基準を引き下げることに強く反対する。

秘密保全法制定に反対する会長声明
2012/11/21
奈良弁護士会 会長 山﨑靖子
1.2011年(平成23年)8月8日、「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」が、「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」と題する報告書(以下「報告書」という。)を政府に提出し、これを受けた政府は、現在法案化作業を進めており、次期国会への提出も予想される状況となっている。
2.しかし、報告書が提案する秘密保全法制は、以下に述べるとおり、民主主義の根幹をなす国民の知る権利を侵害し、また「適性評価制度」のもと国民のプライバシーや思想・信条の自由を侵害し、さらには国民の裁判を受ける権利を侵害するおそれもあるなど、憲法上の重大な問題を有している。
3.まず、秘密保全法制では、(1)国の安全、(2)外交、(3)公共の安全及び秩序の維持に関する情報で「特に秘匿する必要性の高い情報」を「特別秘密」と指定し、これの漏えい行為等に対し刑罰を課すことにより、「特別秘密」を保護するものとしている。
しかし、特に「(3)公共の安全及び秩序の維持」との概念は曖昧で、非常に広範囲に及ぶ可能性がある。また、何が「特に秘匿する必要性の高い情報」に当たるのかは「特別秘密の作成・取得の主体である各行政機関等」が判断するものとされていることも考慮すれば、行政機関が保有する重要な情報、行政機関にとって知られたくない情報のほとんどが恣意的に「特別秘密」に指定されるおそれがあり、主権者である国民が知るべき重要な情報が、国民から秘匿されてしまう危険性がある。
4.さらに、「特別秘密」の概念が非常に曖昧かつ広範なことに加え、その情報の漏えい行為については、過失犯、共謀、独立教唆、扇動、さらには「社会通念上是認できない態様」による「特定取得行為(取扱業者等からの特別秘密取得行為)」までが処罰の対象とされており、マスコミの取材活動を含め国民の様々な行為が処罰の危険にさらされるおそれがある。このように、処罰対象行為が非常に広範囲に及び、しかも「特別秘密」の概念が曖昧かつ広範であることは、罪刑法定主義に反するのみならず、特にマスコミの取材活動を萎縮させ取材・報道の自由を侵害し、ひいては国民の知る権利にも重大な悪影響を及ぼすことになる。
5.また、秘密保全法制では、秘密情報を扱う者の「適正評価制度」の導入を提案しているが、適正評価のための調査は、人定事項や学歴・職歴に加え、外国への渡航歴、信用状態、精神の問題に係る通院歴などの重大なプライバシーに関する情報から、思想・信条に関わる事柄まで非常に広範囲に及ぶことが予定されている。そして、調査対象となる情報管理者は、公務員に限らず民間事業者の職員等も含むものとされており、さらには、その配偶者など「対象者の身近にあって対象者の行動に影響を与え得る者」も調査の対象とすることが考えられており、調査対象は国民の広範囲に及ぶ可能性がある
このように、秘密保全法制は、国家が、多くの国民のプライバシーや思想・信条に関する情報を広範囲に調査・取得することを可能とするものであり、国民のプライバシーや思想・信条の自由を侵害するおそれが極めて高い。
6.さらに、秘密保全法制が予定する秘密漏えい行為等に関する罪に問われた者の刑事裁判においては、「特別秘密」が実質秘に当たるかの審理を公開の法廷で行う場合には原則として「特別秘密」を公開する必要が生じる。しかし、反対に「特別秘密」の内容を公開せずに裁判ができるとすれば、公開の法廷で裁判を受ける権利を保障した憲法37条1項、82条の趣旨を没却するとともに、被告人の防御権を害し公平な裁判を受ける権利を侵害するおそれがあるという矛盾が生じる。この点、報告書では、この矛盾点をいかに解消するかの記述はなされていないため、十分な検討もないまま裁判を受ける権利を侵害する内容の立法がなされるおそれもある。
7.よって、当会は、このように憲法上の重大な問題を有する秘密保全法の制定に強く反対する。

マイナンバー法制定に反対する会長声明
2012/10/18
奈良弁護士会 会長 山﨑靖子
本年2月14日、政府は、「マイナンバー法案」(正式名称「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」)を国会に提出した。本年9月7日に閉会した通常国会では継続審議とされたが、次期臨時国会で成立することが予想される。
この法案は、すべての国民と外国人住民に対して、社会保障と税の分野で共通に利用する識別番号(マイナンバー)をつけることにより、現在、行政のデータベースに別々に管理されている個人情報(納税情報、健康保険情報、年金情報)等の名寄せ・統合(データマッチング)を、情報提供ネットワークシステムを通じて可能にする共通番号制度を創設しようとするものである。
この共通番号制度がデータマッチングの対象に想定している情報は、氏名、住所、生年月日、性別といった基本情報だけでなく、年金、福祉、税務等のセンシティブ情報を含む広範囲なものであり、これら個人情報が本人の知らない間に集約され分析されることになれば、プライバシー権が侵害される危険性は極めて高い。
また、一旦データベースから情報が漏洩してしまえば、さらに芋づる式に関連情報の漏洩を招くおそれがあり、これにより対象者に回復困難な損害が生じる危険性が高く、漏洩した情報を利用した他人による「なりすまし」の危険性も否定できない。そして、これらの危険は、第三者機関の設置や違法行為に対する厳罰化では防止できない。
これまで、政府は、共通番号制度の導入を、「正確な所得捕捉」と「税と社会保障一体改革」のために必要だと説明している。しかし、政府は,昨年6月30日に発表された「社会保障・税番号大綱」において、共通番号制度を導入しても「正確な所得捕捉」が非現実的であることを自ら認めた。また、本年6月15日になされた「税と社会保障一体改革」の三党修正合意では、消費税増税を先行させ、所得税・相続税等の累進課税強化は先送りされた。他方、社会保障の充実の具体的内容は明らかにされていない。
このように「税と社会保障一体改革」の行方が混沌としている中で、その手段である共通番号制度を導入することは本末転倒であり、膨大な税金の無駄遣いになりかねない。以上のとおり「マイナンバー法案」が創設しようとしている共通番号制度は、個人の尊厳や自己決定権に深く関わるプライバシー権を著しく侵害するという面でも、その目的や理念の面でも問題が大きい。したがって、当会は、「マイナンバー法」の制定に強く反対する。

生活保護制度に関して慎重な報道と行政の適切な対応を求める会長声明
2012/07/26
奈良弁護士会 会長 山﨑靖子
1.現在、人気芸能人の親が生活保護を利用していたという報道を契機として、テレビや週刊誌を中心に、生活保護制度に関連したバッシングが断続的に続いている。
 小宮山洋子厚生労働大臣は、上記のような状況の中で、事実上、扶養の有無を生活保護利用の要件とするような法改正や生活保護基準の引き下げを検討する考えを示している。
2.ここで、確認しておかなければならないのは、生活保護法が、親族による扶養ができないことを保護開始の要件とはしていない事実である。これは、生活困窮者の中には、DVや虐待などで親族関係に問題を抱えている人が少なくなく、扶養を強制してしまうと、本当に必要な人に保護が行き届かなくなる恐れがあるからである。
 上記のような断続的な報道は、こうした点についての正確な理解を欠くものであり、不正(又は不適正)受給が過度に強調されることで、あたかも生活保護制度全般、利用者全般に問題があるといった誤った認識を押しつけかねない。3.ところで、上記のようなバッシングの背後には、生活保護制度の利用者の増加は問題であるとの考えや、不正受給が横行しているとの見方があると思われる。 しかし、厚生労働省による調査によれば、わが国の貧困率は、じわじわと上昇を続けており、既に16%に達している。これに対して、日本の生活保護制度の利用率は、2008年のリーマンショック以降、特に増加しているといっても全人口の1.6%にすぎない。他の先進諸国(ドイツ9.7%、イギリス9.3%、フランス5.7%)と比べても極めて低く、捕捉率(生活保護利用資格のある人のうち現に利用している人の割合)も20~30%にすぎないと言われている。また、「不正受給」そのものは許されないが、その割合は、全国で0.4%程度、奈良県でも0.6%程度に留まっている(金額ベース)。
むしろ、依然として問題なのは、本当に生活保護制度の利用が必要な人に対して、これを利用させないという「漏給」に関してである。奈良県内においても、生活保護制度の利用を申請している人に対し、自治体の窓口が「2回目は受給できない」、「同一自治体内で親族が保護を受けている場合は受けられない」などの誤った教示を行っている例が確認されている。
4.そもそも、我が国では、最低賃金額の大幅な改善はなされず、非正規雇用労働者の割合も35%を超過したままである。本年、ようやく労働者派遣法の改正がなされたが、派遣労働者の保護は、ほとんど前進していない。わが国の貧困率が、上昇を続けるなか、貧困問題に関する抜本的な対策を行うことなく、逆に生活保護制度の利用の「引き締め」を進めれば、貧困は固定化し、社会全体が疲弊することになりかねない。
むしろ、現在求められているのは、多数の生活保護制度の利用者を生み出している貧困そのものへの対策であり、また、必要なときにすぐに利用でき、利用開始後はできるだけ速やかに受給状態から自立できるような生活保護制度の確立である。
5.以上のような状況を踏まえ、当会は、奈良県内においても、報道機関に対しては、生活保護制度の利用者に対する感情的なバッシングが誘発されることのないよう慎重な報道を求めるとともに、県下各自治体の窓口においては、生活保護制度の利用を必要としている人が、不当に排除されることのないよう適正な取扱いを求める。

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