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2347 ら特集岡山弁護士会③(0)

引用元 

岡山弁護士会
ttp://www.okaben.or.jp/index.html

夫婦同氏制を定める民法750条の規定を合憲とする最高裁判所大法廷判決に対する会長声明
2015年(平成27年)12月16日、最高裁判所大法廷は、夫婦同氏制を定める民法750条につき、夫婦同氏制は旧民法で採用され我が国社会に定着してきたこと、氏は社会の自然かつ基礎的な集団単位である家族の呼称として一つに定めることに合理性が認められること、民法750条は夫婦いずれの氏を称するかを夫婦となろうとする者の協議に委ねているのであって、文言上性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけではないこと、婚姻前の氏を通称として使用することまで許さないものではないことなどの諸事情を考慮すると、夫婦同氏制が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度であるとは認めることができず、憲法24条に違反するものではないと判示した。
ところで、氏名は個人の人格の象徴であって人格権の一内容を構成するものであり、個人は婚姻にあたり氏を自己決定する権利を有している。夫婦同氏制については,現行憲法制定当時としては、妻は家庭内において家事育児に携わるという家族生活が標準的な姿として考えられていたことから、妻が婚姻により氏を変更することに特に問題を生じることは少なかった。しかしながら、近年女性の社会進出が著しく進み、婚姻前のみならず婚姻後に稼働する女性が増え、その職業も家内的な仕事にとどまらず、社会と広く接触する活動に携わる機会も増加した。そのため、婚姻による氏の変更により、個人の識別、特定に困難を引き起こす事態が生じ、また、氏はその個人の人格を一体として示すものであるところ、氏を変更した一方は自己喪失感を持つに至ることもあり得るなど、夫婦同氏制が個人の人格的利益を侵害するに至っている。そして、現実に96パーセントを超える夫婦が夫の氏を称する婚姻をしており、氏の自己決定権の制約、個人の識別機能に対する支障、自己喪失感などの負担はほぼ妻のみに生じているため、個人の尊厳及び両性の本質的平等に反する事態が生じている。さらに、上記の不利益を避けるためにあえて法律上の婚姻をしないという選択をする者を生んでおり、夫婦同氏制によって婚姻の自由も制約を受けている。世界的に見ても、多くの国において夫婦同氏の外に夫婦別氏が認められており、現時点において、例外を許さない夫婦同氏制を採っているのは我が国以外にほとんど見あたらない。我が国においては、法制審議会が1994年(平成6年)に「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」を公表し、これをさらに検討した上で1996年(平成8年)に法務大臣に答申した「民法の一部を改正する法律案要綱」において、いわゆる選択的夫婦別氏制という改正案が示され、国会においても選択的夫婦別氏制の採否が繰り返し質疑されてきた。我が国が1985年(昭和60年)に批准した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」に基づき設置された女子差別撤廃委員会からも、2003年(平成15年)以降、民法に夫婦の氏の選択に関する差別的な法規定が含まれていることについて懸念が表明され、その廃止が繰り返し勧告されている。
今回の最高裁判決は、夫婦同氏制が憲法24条に違反しないと判断したが、上記諸事情に照らすと、別氏を望む夫婦にまで同氏を強制する理由はなく、民法750条は、女性が持つ氏の自己決定権並びに氏による個人の識別機能及びアイデンティティという人格的利益、あるいは婚姻の自由を実質的に侵害している。最高裁判決は、上記不利益は氏の通称使用が広まることにより一定程度緩和され得るとするが、通称は便宜的なもので、使用の拒否、許される範囲等が定まっているわけではなく、通称名と戸籍名との同一性という新たな問題を惹起することになるだけでなく、そもそも通称使用は婚姻によって変動した氏では個人の同一性の識別に支障があることを示す証左なのであり、通称使用が広まることは、夫婦が別の氏を称することを全く認めないことの合理的な理由とはならない。5名の裁判官(3名の女性裁判官全員を含む。)が述べるとおり、民法750条は個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超える状態に至っており、憲法24条に違反する。また、法制審議会による答申後、国会において選択的夫婦別氏制が議論されながらその立法化を長年放置しており、国会による立法不作為も違法といわざるを得ない。
したがって、岡山弁護士会は国に対して、夫婦の氏を同等に尊重し両性の本質的平等を実現するために、夫婦同氏規定を廃止し、婚姻前の氏を引き続き称することを望む者にこれを認める選択的夫婦別氏制の立法化及びこれに伴う戸籍法等の改正を強く求めるものである。
2016年(平成28年)1月13日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

共謀罪規定の新設に反対する会長声明
報道によれば、政府は、過去3度廃案となった共謀罪の規定(以下「共謀罪規定」という)を、改めて国会へ上程しようとしている。
しかし、当会は、以下のとおり、共謀罪規定は極めて問題の多く、かつ危険な規定であるので、その新設に断固反対する。
そもそも、共謀罪とは、団体の活動として犯罪の遂行を共謀した者を処罰するための刑罰法規である。
そして、共謀した者の内に、犯罪の実行の着手やその準備行為を行った者を含まなくとも共謀罪が成立するという点において、従来の共謀共同正犯とは全く異なっている。これは、思想ではなく行為を処罰するという刑事法体系の基本原則に根本的に矛盾するものである。
また、個人がどのような思想や信条を持ち、また、それをどのように表現するかを処罰の対象とすることは、憲法が保障する思想信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由を侵害する危険が極めて強い。共謀罪規定はその対象を暴力団等の反社会的組織に限定していないため、例えば、一般市民によって構成される市民団体や労働組合が政府の政策に反対し、首相官邸前での座り込みなどの行動について話し合っただけで、身体を拘束され、処罰されてしまう可能性がある(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律)。少なくとも、共謀罪規定が市民団体や労働組合等の活動に深刻な萎縮的効果をもたらすことは明らかである。現在検討されている共謀罪規定は、一定の法定刑(長期4年)以上の犯罪全てに適用され、600以上もの犯罪について一挙に共謀罪を新設する内容であることからすれば、共謀罪規定が国民に与えるであろう萎縮的効果は甚大である。
さらに、仮に共謀罪規定が導入された場合、捜査機関は、謀議を立証するため、取調べによる自白獲得の外、国民の私的な会話・通話・通信などを秘密裏に聴取・閲覧するなどの捜査活動に注力することが予想される。
そうであれば、通信傍受法の対象範囲拡大を前提に、通信傍受が広範かつ包括的になされる危険性も認められ、また、共同謀議を否認する被疑者に対しては捜査機関によって自白調書の獲得を目指して苛烈な取調べがなされる危険性は増大し、国民の基本的人権と深刻な対立を引き起こすおそれが増大する。
なお、先般のパリ同時多発テロ事件を受けて、テロ撲滅のために共謀罪規定が必要であるなどの意見もあるが、これは、無理やりなこじつけである。そもそも、政府は国際組織犯罪防止条約を批准することを目的として共謀罪規定の創設を提案しているところ、同条約の取り締まりの対象は、経済目的の組織的犯罪集団であって、その内容はテロ対策とはまったく関係ない。わが国では、組織的犯罪集団に関連した主要犯罪は既に未遂以前の段階から処罰できる体制がほぼ整っており、共謀罪規定の必要性はない。
以上のとおり、共謀罪規定は、刑事法体系の基本原則に矛盾し、基本的人権の保障と深刻な対立を引き起こすおそれが高いことから、当会は、その新設に断固反対する。
2016年(平成28年)1月13日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

死刑執行に反対する会長声明
2015年(平成27年)12月18日、東京拘置所と仙台拘置支所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して、死刑が執行された。
執行されたうちの1名は、裁判員裁判による死刑判決を受けた者として初めて死刑の執行をされた者である。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。
にもかかわらず、死刑に関する情報公開や国民的議論が行われないまま、前回の執行から約半年後に死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国に上っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。その中で、2014年(平成26年)に実際に死刑を執行した国は我が国を含め22か国しかない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けており、2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けており、2014年(平成26年)7月24日に発表された国際人権(自由権)規約委員会の総括所見においても、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等の勧告を受けたばかりである。
日本弁護士連合会は、2015年(平成27年)12月9日には岩城法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
静岡地方裁判所は、2014年(平成26年)3月27日、死刑判決が確定していた袴田巌氏の第2次再審請求事件につき、再審開始、死刑及び拘置の執行停止を決定したが、この決定は、この要請書が指摘した、絶対にあってはならない冤罪による誤った死刑執行がなされるおそれが現実にあることを示すものである。
当会においても2015年(平成27年)1月にシンポジウムを開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行っているところである。
しかしながら、現実には、国際社会の潮流に反し、また、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
そこで、当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、我が国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2016年(平成28年)1月13日
岡山弁護士会  会長 吉 岡 康 祐

面会室における写真撮影に関する東京高裁判決に対する会長声明1 本年7月9日,東京高等裁判所第2民事部は,弁護人が面会室内で写真撮影を行っていたことを理由に,拘置所職員が接見を中断・終了させた行為について,同弁護人の国家賠償法に基づく損害賠償請求を一部認めた原判決を取消し,同弁護人の請求を全て棄却する逆転判決を言い渡した。
2 原判決は,弁護人が行った面会室内での写真撮影は,将来,公判等において使用すべき証拠を収集,保持しておくという証拠保全を主な目的としており,接見交通権に含まれないとしながらも,接見交通権は憲法で保障された権利であるので,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律117条,113条に基づいて,弁護人に対して面会を一時停止または終了させることができるのは,未決拘禁者の逃亡のおそれ,罪証隠滅のおそれ,その他刑事施設の設置目的に反するおそれが生ずる相当の蓋然性があると認められる場合に限るとし,拘置所職員が接見を中断・終了させた行為は違法であるとした。
3 しかし,本判決は,刑訴法39条の「接見」と「書類もしくは物の授受」が区別されていること,同規定が制定された当時はカメラやビデオ等の撮影機器は普及しておらず,弁護人が被疑者・被告人を写真撮影したり動画撮影することは想定されていなかったことを理由に,写真撮影,動画撮影は接見交通権の範囲外とした上で,さらに,東京拘置所長は,庁舎管理権に基づいて面会室内へのカメラの持ち込みや撮影を原則として禁止することができるとした。そして,これに反する面会は,どのような場合でも,面会を一時停止または終了させることができると判示し,弁護人の請求を棄却した。
4 そもそも,接見交通権は,身体の拘束を受けている被疑者・被告人が外部の人物と面会等する権利であり,その中でも弁護人との接見交通権は,憲法34条で保障されている弁護人依頼権の中核をなす刑事手続上の極めて重要な権利である。弁護人は,面会室内で被疑者・被告人と立会人を置かずに接見でき,当然ながら被疑者・被告人から事情を聴取する際に弁護人がメモをとることを想定している。そして,弁護人が被疑者・被告人を面会室内で写真撮影をしたり動画撮影をすることは,それによって被疑者・被告人の話や所作等を記録するために行うのであるから,面会状況の記録という意味では何らメモと異なるところはない。従って,弁護人が被疑者・被告人を写真撮影したり動画撮影することは,接見交通権の範囲内の行為であると言うべきである。
また,被疑者・被告人が捜査官等から有形力の行使を受けたと訴えた場合には,その痕跡を直ちに保全する必要があり,写真撮影はそのための有効な手段である。この点,本判決は,かかる場合は刑訴法179条の証拠保全を行えば足りるとする。しかし,証拠保全の手続を待っていては証拠保全の目的を十分に達せない場合があり,本判決の指摘は妥当でない。
さらに,本判決は,被疑者・被告人の逃亡のおそれ,証拠隠滅のおそれ,庁舎内の秩序の乱れ,警備保安上支障をもたらすおそれ等を理由に,拘置所長の庁舎管理権に基づいて面会室内へのカメラ持ち込みや撮影を禁止できるとするが,いずれも抽象的危険にすぎず,カメラの持ち込みや撮影禁止の根拠たり得ない。かつ,本判決の論理によれば拘置所長の庁舎管理権の裁量をより広範囲で認めることとなり,接見交通権の侵害になるとともに,ひいては弁護人の弁護権の制約につながりかねず,本判決は極めて不当である。
5 以上より,本判決は,刑訴法39条の解釈を誤った判決であるとともに,拘置所長の庁舎管理権を広範囲で認める極めて不当な判決であるので,本会は強く抗議する。
2015年(平成27年)9月30日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

参議院の安保法案強行採決に抗議する会長声明
今月19日、参議院本会議は、自民公明などの賛成多数で、安保法案を強行採決した。長年維持されてきた憲法解釈を一内閣の判断で変更したうえ、多数の国民の意思を無視して行われた、立憲主義・国民主権の原則に反する強行採決に対して強く抗議する。
そもそも、安倍内閣は昨年7月、歴代内閣が継承してきた憲法第9条の解釈を変更して、集団的自衛権行使を容認する閣議決定を行い、続いて集団的自衛権行使を前提とする安保法案を今国会に提出した。この閣議決定は、憲法第9条の恒久平和主義に反するだけでなく、憲法改正手続を経ることなく一内閣の判断で憲法解釈を変更する点において立憲主義にも反している。日本弁護士連合会及び全国52すべての弁護士会が、この閣議決定を撤回するように何度も求めてきた。
衆議院での審議中、憲法審査会に出席した与党推薦者を含む3名及び全国90%以上の憲法学者、数名の元内閣法制局長官、数名の元最高裁裁判官も明確に安保法案の違憲性を公述している。しかし、政府は、そもそも集団的自衛権について念頭になかった1959年(昭和34年)の「砂川最高裁判決」を合憲性の根拠に持ち出すなど、法律家として到底容認できない反論を重ねてきた。
そして、多くの国民が今国会での成立に反対しているにもかかわらず、7月16日衆議院本会議は数を頼んで強行採決の暴挙にいたった。
その後、審議の場は参議院に移り、国民の反対の声は一層大きくなった。例えば8月26日、日弁連主催の市民集会においては、元内閣法制局長官及び元最高裁裁判官、全国108の大学の学者らが一堂に会し、安保法案の違憲性及び廃案を主張し、続いて同月30日には市民十数万人が国会議事堂前に集まり、同時に全国300箇所以上で、数千、数万人の市民が集まるなど、連日のように全国津々浦々で安保法案の廃案を求めて集会やパレードが行われている。参加者の年齢層も、高校生からお年寄りまで広がっている。そして、9月初旬には、山口繁元最高裁長官が、「砂川最高裁判決」は集団的自衛権行使容認の理由にはならず安保法案は違憲と明言し、同月9日にも同様に大森政輔元内閣法制局長官も違憲性を公述し、同15日には元裁判官75名が連名で安保法案が立憲主義に反するなどする陳情書を参議院議長へ提出した。
さらに、参議院の審議中、安保法案の問題点は以下のように一層明らかになった。すなわち、政府が合憲性の根拠とする「砂川最高裁判決」の成立以前に、田中耕太郎最高裁長官(当時)や藤山愛一郎外務大臣(当時)が米国駐日大使らと密会し、同判決の見込みなどについて報告した事実(米国公文書による)によって司法権の独立が改めて問題になった。そして、自衛隊の統合幕僚監部が安保法案成立を先取りした研究を行い、同様に、河野克俊統合幕僚長も、昨年12月、米軍幹部に対して安保法案の整備は今夏までには終了するなどと説明していたことなど国会の審議を軽視していたことが明らかになった。また、安保法案の法文上兵站活動の範囲について通常兵器はもとより核兵器の運搬も可能であることなど法案自体の欠陥も明らかになった。
多くの国民の世論を聞こうとせず、違憲と主張する圧倒的多数の憲法学者など専門家の見解にも耳を貸すことなく、強行採決したことは、憲政史上最大の汚点となることは明らかである。
我々弁護士及び弁護士会は、法の支配の下、人権擁護と社会正義の実現を使命とする立場から、平和主義、立憲主義、国民主権に反する違憲法案を衆議院に続いて参議院においても強行採決したことに怒りを込めて抗議する。
2015(平成27年)9月24日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

戦後70年を迎えるにあたっての会長談話
2015年(平成27年)8月15日、戦後70年を迎えます。先の大戦は、私たちの想像がつかないほど悲惨で、惨い戦争であったと、戦争を体験した父や母あるいは先輩たちから聞いています。一枚の赤紙で兵隊にとられ、夫や恋人、息子を失った者。戦死したら、お国のために命を捧げた英霊と崇められるだけで、遺骨も帰って来ない。国民は、日々空襲の恐怖と飢えに苦しみ、明日への希望も持てなかった。命をつないでゆくだけで必死だったと聞いています。また、出征した兵士は、片道切符の戦闘機や特殊潜航艇で特攻を命じられたり、玉砕覚悟の突撃を強いられたり、理不尽な戦闘行為によって命を奪われました。捕虜になることを恥とし、自決させられた者もいます。あるいは、飢餓や疫病で命を失った兵士、戦後シベリアへ抑留され帰還できなかった人も大勢います。国内では、沖縄においては激しい地上戦が行われ、兵士だけでなく多数の非戦闘員(民間人)が犠牲になりました。空襲も東京、大阪等の大都市だけでなく日本各地の都市におよび、広島・長崎では、原子爆弾によって、一瞬のうちに何万もの人々の命が奪われました。おそらく自分が何故死んでゆくのか理解しないまま、亡くなったものと思います。戦争によって亡くなった全ての人々の無念さを想像すると、筆舌に尽くし難い思いが募ります。
他方、日本は、先の大戦によって、アジア・太平洋地域の人々に対しても、多大な被害を加えています。無差別攻撃、一般住民や捕虜に対する虐殺、生体実験、性的虐待、強制連行、強制労働、財産の没収、文化の抹殺等、アジア・太平洋地域の人々の生命だけでなく、自由や財産や文化までも奪いました。先の大戦の評価についてはさまざまではありますが、戦後50年に出されたいわゆる「村山談話」では、率直に植民地支配に基づく侵略戦争であったことを認め、それに対して真摯に反省するとともに、被害者に対する謝罪を、日本政府は行っています。過去に犯した過ちを反省・謝罪し、今後再びこのような過ちを繰り返さない決意をすることは、何度してもけっして十分ということはありません。
私は、まず、この戦後70年を迎えるにあたって、先の大戦によって生命・自由・財産・文化を奪われた全ての国の犠牲者に対して、心から哀悼の意を表したいと思います。
戦後、われわれは、先の大戦の痛切な反省から平和憲法を定めました。その前文には、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起きることのないよう決意し」、憲法9条では「戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認」が謳われています。憲法施行後、自衛隊が創設されましたが、平和憲法の下で、自衛隊の活動は制約され専守防衛に徹し、この70年間、日本は戦争当事者となることなく平和国家としての道を歩んできました。戦争放棄を定めた憲法9条は、日本が国際社会の中で信頼を得る上で大きな役割を果たしてきたものと思います。そして、憲法9条を持つ日本国憲法の下で、法律家として仕事ができることを私は誇りに思っています。
ところで、日本政府は、日本を取り巻く国際環境の変化を理由に、戦後一貫して否定してきた集団的自衛権の行使を、憲法9条を改正することなく閣議決定で容認し、それに引き続いて、現在国会では集団的自衛権行使のための各種安全保障法制が立法化されようとしています。この動きは、戦後の恒久平和主義に立脚した我が国の70年の平和な存立の歴史とそのための努力を真っ向から否定するものであり、恒久平和主義に反するだけでなく、憲法に反する法律を、憲法を改正することなく成立させようとするもので、立憲主義にも反し、とうてい許されるものではありません。
軍事的抑止力によって平和がもたらされるという論理は、かつての歴史が明確に否定しています。日本国憲法前文で規定されているように、平和は、「諸国民の公正と信義に対する信頼」によってこそもたらされるものであることを日本政府は認識すべきです。文化・哲学・文学・芸術・芸能・映画・漫画・アニメ・音楽・経済・産業・医療・技術・観光・スポーツ・ボランティア活動等々、あらゆる分野で我が国は世界中の多くの国々とあるいは人々と国際交流を重ね、進展している状況に鑑み、日本政府は軍事力に頼らず、軍事力以外の分野での国際交流を通じて、平和外交の道を模索すべきです。そして何よりも、武力による威嚇外交ではなく、対話による平和外交を望みます。
1950年。日本弁護士連合会(以下「日弁連」という)は、第一回定期総会を原爆によって壊滅的被害を受けた平和都市「広島」で開催しました。それに引き続き行われた平和大会で、われわれ弁護士は、「平和と人権」を守る活動をすることを宣言しました。「基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命」とする弁護士の決意宣言です。「戦争は人権の最大の敵」であることを考えると、平和を守ることこそ弁護士の使命であると言っても過言でありません。  私は、岡山弁護士会会長として、憲法とりわけ憲法9条が危機的状況に陥っている今日、広島の「平和宣言」を再び思い起こし、日弁連及び全国の弁護士会そして平和を愛する国民の皆様とともに、日本国憲法の理念と基本原則を堅持し、戦争のない社会を構築するため、全力を尽くすことを誓います。
2015年(平成27年)8月12日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

衆議院の安保法案強行採決に反対する会長声明
本日、衆議院本会議において、自民公明など与党の賛成多数をもって安保法案は強行採決された。もとよりこの法案は、憲法9条違反であるにもかかわらず、安倍内閣が砂川最高裁判決を根拠にした独自の合憲解釈のもと、強行採決に踏み切ったものである。
そもそも、安倍内閣は、昨年7月、歴代内閣が継承してきた憲法9条の解釈を突如変更し、憲法9条のもとでも、集団的自衛権行使を可能とする閣議決定をなし、今国会にその集団的自衛権を前提とする安保法案を提出した。この閣議決定及び安保法案は、憲法9条の恒久平和主義に反するだけでなく、憲法改正手続を経ることなく一内閣が勝手に憲法の解釈を行ったという意味で立憲主義にも反するので、全ての弁護士会はこの閣議決定の撤回や安保法案の廃案を求めてきた。
しかも、安保法案の衆議院の審議中に、憲法審査会に出席した与党推薦者を含む3名の憲法学者全員が、提案された法案は憲法に違反すると公述したにもかかわらず、与党自民党の幹部は、「憲法学者が平和や安全を守ってきたわけではない」とか、「憲法違反と考えていない憲法学者もいる」とか、「違憲と考えている憲法学者の数が問題ではない」などと、全く不合理な反論を展開し、また、閣議決定や法案の合憲性については、集団的自衛権が争点になっていなかった砂川最高裁判決を持ち出すなど、法律家集団として到底容認できない反論を重ねてきた。
このような安倍内閣の不誠実な説明に対して、80パーセントを超える国民が十分な説明を受けていないと答えている。(7月6日毎日新聞)また、いまだ審理が尽くされていない論点も多数残されている。このように多くの国民が納得していない法案を、予定していた審議時間の経過という理由だけで強行採決することは、数の横暴以外の何物でもなく、国民主権にも反する極めて由々しき事態であり、到底認めることができない。
そもそも憲法に違反する法案について立法理由の説明がまともにできるはずはなく、審理が進むにつれて、益々、安保法案の違憲性が明らかになっていったことから、安倍内閣は、これ以上時間をかけて審理されたら、法案の違憲性が白日のもとになるため、早期に、数の力で押し通す以外に方法がないと判断したとしか考えられない。
国民の世論に耳を貸さず、違憲を主張する圧倒的多数の憲法学者の論にも耳を貸さず、自らの偏った考えだけで、国会運営を行い強行採決することは、憲政史上最大の汚点となることは明らかである。
当会は、法の支配の下、人権擁護と社会正義の実現を使命とする立場から、平和主義、立憲主義、国民主権に反して違憲立法を行う安倍内閣に対して、今一度、集団的自衛権行使を可能とする閣議決定の撤回を求め、参議院に対しては、安保法案の廃案を求めるとともに、いわゆる60日ルールを使って違憲法案を成立させることがないように、強く求める次第である。
2015年(平成27年)7月16日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

死刑執行に関する会長声明
2015年(平成27年)6月25日、名古屋拘置所において、1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、再三政府に対し要請してきた。前回の死刑執行の際にも、昨年9月17日付で死刑執行に抗議し、死刑に関する情報を開示した上で、国民的議論を行い、死刑制度の見直しを検討するよう求める「死刑執行に関する会長声明」を発したところである。
にもかかわらず、死刑に関する情報公開や国民的議論が行われないまま、前回の執行から約10か月後に死刑の執行がなされたことに対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。
国際社会においては、死刑廃止が趨勢となっている。最近では、死刑廃止又は事実上停止している国が140か国に上っているのに対し、死刑存置国は58か国に過ぎない。その中で、2014年(平成26年)に実際に死刑を執行した国は我が国を含め22か国しかない。我が国は、国連関係機関からも、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告を受けており、2013年(平成25年)5月31日に発表された国連拷問禁止委員会の総括所見においても、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けており、2014年(平成26年)7月24日に発表された国際人権(自由権)規約委員会の総括所見においても、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等の勧告を受けたばかりである。
日本弁護士連合会は、2013年(平成25年)2月12日に谷垣法務大臣に対し、2014年(平成26年)11月11日には上川法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまで全ての死刑の執行を停止することなどを求めた。
冤罪による誤った死刑執行は人権侵害の最たるものであり、絶対にあってはならない。静岡地方裁判所は、2014年(平成26年)3月27日、死刑判決が確定していた袴田巌氏の第2次再審請求事件につき、再審開始、死刑及び拘置の執行停止を決定したが、この決定は、この要請書が指摘した、絶対にあってはならない冤罪による誤った死刑執行がなされるおそれが現実にあることを示すものである。
当会においても本年1月にシンポジウムを開催し、死刑制度についての議論を深める企画を行っているところである。
しかしながら、現実には、国際社会の潮流に反し、また、当会及び日本弁護士連合会が求める死刑制度に関する十分な国民的議論とその前提となる死刑制度に関する情報公開が全くなされないまま、死刑の執行が続いており極めて遺憾である。
今回の執行についても、執行対象者の選定基準や死刑判決確定から死刑執行までの経過については法務省より何ら説明もなく、死刑執行に至る過程についての不透明さが改めて浮き彫りとなった。
そこで、当会は、改めて政府に対し、死刑の執行を停止し、我が国における死刑確定者の処遇、死刑執行対象者の決定手続と判断方法、死刑執行の具体的方法とその問題点等に関する情報を開示し、死刑存廃について国民の広範な議論を踏まえた上で、死刑制度の見直しを検討するよう、重ねて強く要請するものである。
2015年(平成27年)7月8日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

生活保護の住宅扶助基準、冬季加算の引下げに反対する会長声明h厚生労働省は、平成27年1月15日、平成27年度から生活保護の住宅扶助基準と冬季加算を引き下げるとの方針を発表し、同年3月9日、同省社会・援護局関係主管課長会議において、その具体的指針を現場に示した。この引下げにより、住宅扶助基準は平成27年7月から3年間にわたって総額約190億円、冬季加算は、平成27年度で30億円もの大幅な減額が行われようとしている。
これらの引下げに先行し、厚生労働省は平成25年1月、生活保護費のうち食費や光熱費などの生活費を賄う生活扶助基準について、3年間で総額670億円を減額すると発表し、実際に、平成25年8月、平成26年4月、平成27年4月の3度にわたり生活扶助の基準額を引き下げている。これに対して、日本弁護士連合会や当会を含む各弁護士会は、かかる一連の引下げは、最低限度の生活を保障する憲法25条に違反するとして強く反対する声明を繰り返し発してきた。同時に、生活保護受給者の最低限度の生活を行う権利が侵害されたとして、岡山をはじめ全国各地で減額処分の取消しを求める裁判が相次いで提起されている。
政府は、平成18年6月に施行された住生活基本法に基づき、平成23年3月に「住生活基本計画(全国計画)」を閣議決定し、「最低居住面積水準」を定めた。この最低居住面積水準とは、「健康で文化的な住生活を営む基礎として必要不可欠な住宅の面積に関する水準」であり、「単身者25平方メートル」「2人以上の世帯10平方メートル×世帯人数+10平方メートル」等と定められ、これらの水準未満の住宅については「早期に解消」するべきと決定された。この最低居住面積水準は、憲法25条が保障する「健康で文化的な生活」を住生活の面において数値化したものであり、「健康で文化的な生活」の具体化立法である生活保護法の実施にあたっても当然に守られなければならない。さらに、厚生労働省の諮問機関である生活保護基準部会は、生活保護受給世帯が居住する民営借家における最低居住面積水準の達成率に関して、一般世帯においては、単身世帯で76%、2人以上世帯で86%に対して、生活保護受給世帯においては、単身世帯で46%、2人以上世帯で67%と、生活保護受給世帯の水準は一般世帯に対してこれを大きく下回っているため、より適切な住環境を確保する方策が必要と指摘した(平成27年1月生活保護基準部会作成の報告書)。
しかし、厚生労働省は、今回の引下げに際して、この生活保護受給世帯の最低居住面積水準の実情を無視する姿勢を明確にし、住家賃物価の動向(全国平均△2.1%)を住宅扶助基準へ反映させることなどを理由に、住宅扶助基準の引下げを強行しようとしている。また、従前2人世帯の住宅扶助は単身世帯の1.3倍とされていたところを、今回の方針では1.2倍に引き下げるとしたため、単身世帯の住宅扶助基準が引き下げられた地域では、2人世帯の基準も大きく引き下げられる結果となった。しかも、生活保護受給世帯の住宅扶助の実績額(平均)は37,088円(2人以上の世帯)であって、一般低所得世帯(年収下位10%世帯、生活保護受給世帯や生活保護基準以下で生活する世帯も含まれる)の平均家賃額38,123円と比べても、なお低く、生活保護受給世帯が不当に優遇されているという実態はない。
また、冬季加算とは、冬季に暖房費などの出費のため、11月から3月までの期間、生活扶助基準に加えて、地域別、世帯人数別に定められた額を支給する制度である。上述の生活保護基準部会報告書では、季節要因等によって変動する現実の冬季増加費用が、冬季加算額によって実際に賄えるかを検証する必要があるなどと指摘した。しかしながら、厚生労働省の方針は、この指摘を無視したまま、11月から3月の一般低所得世帯における冬季増加費用と生活保護受給世帯の冬季増加費用を単純に比較するなどして、ほとんどの地域・世帯において冬季加算額を引き下げることを決めている。しかし、そもそも一般低所得世帯には生活保護受給世帯や生活保護基準以下で生活する世帯も含まれていることから、単純に比較すること自体きわめて不合理である。
これまでの3度にわたる生活扶助基準の引下げに加えて、今回の住宅扶助基準や冬季加算の引下げが実施された場合、生活保護受給世帯は、生活費の切り詰めや、家賃滞納で住宅の明け渡しを求められる等の危険が生じ、特に子どものいる多人数世帯の生活の場が不安定になることが懸念される。また、冬季加算の引下げは、平年以上に厳冬になった場合などは、寒冷地のみならず温暖地においてすら生命や身体への深刻な影響を招きかねない。
以上のとおり、今回の住宅扶助基準と冬季加算の引下げは、生活保護基準部会の専門的知見との整合性を欠くなどの点において、厚生労働大臣の裁量権を逸脱・濫用する点で生活保護法8条2項に違反し、同時に、生存権を保障する憲法25条にも違反するものであり、当会は、政府がこれらの引下げ方針を撤回するように、また、衆参両院に対しては、かかる厚生労働大臣の裁量権の逸脱・濫用行為を厳しく監視するように、強く求める。
2015(平成27)年6月10日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
選挙権年齢を18歳以上に引き下げる公職選挙法改正案が、今国会(第189回通常国会)に提出された。同案附則11条で、「少年法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされていることから、自民党は、少年法の適用年齢などの引下げについて検討するため、「成年年齢に関する特命委員会」(以下「特命委員会」という)を設置した。そして、2015年4月14日に開催された特命委員会の初会合において、「18歳から選挙権を持つようになることと関連付けて、果たす義務についても考えるべきであり、少年法の適用年齢も18歳未満にすべきではないか」という趣旨の発言があったと、報道されている。
しかし、法律の適用年齢を考えるにあたっては、それぞれの法律の立法趣旨に照らし、個別法ごとに慎重かつ具体的に検討すべきである。したがって、同じ適用年齢に関する問題であっても、法の立法趣旨によっては異なる年齢とすることも当然あり得、選挙権年齢が18歳以上となったからといって、少年法の適用年齢も当然に18歳未満に引き下げるということにはならないはずである。
そもそも、旧少年法では、適用年齢を18歳未満と規定していた。しかし、1948年に制定された現行少年法は、この程度の年齢(18歳、19歳)の者は、未だ心身の発達が十分でなく、環境その他の外部的条件の影響を受けやすく、「刑罰」を科するより保護処分によってその「教化」を図る方が、立ち直りのためには適切である場合が極めて多い(1948年6月25日付参議院司法委員会における佐藤藤佐政府委員の説明参照)ことを理由に、適用年齢を20歳未満に引き上げた。このように、少年法の適用年齢は、少年の「教化」という点を重視し、個人の権利義務とは異なる観点から定められたものである。したがって、少年法の適用年齢を考えるときに、選挙権年齢と関連して議論を開始すること自体が、少年法の趣旨に反し、許されない。
たしかに、現代の若年者は、身体的には早熟傾向にある。しかし、他方で、精神的・社会的自立が遅れたり、人間関係をうまく築くことができなかったりする傾向にあるとも指摘されている(2008年9月30日付法制審議会民法成年年齢部会第8回会議配布資料32)。かかる現代の若年者の特徴からすると、「立ち直り」のために必要とされるのは、「刑罰」による処罰ではなく、充実した「教化」であると考えるべきである。また、仮に少年法の適用年齢が18歳未満に引き下げられた場合、18歳、19歳の者については、現行少年法の下で行われている、犯罪の背景・要因となった若年者の資質や環境上の問題点の調査・分析が行われなくなり、「立ち直り」のための手当がなされず、極めて不当である。
さらに、特命委員会において、「続発する少年の凶悪犯罪に対処するために少年法の適用年齢を引き下げるべき」という趣旨の発言もあったと、報道されている。しかし、少年犯罪の件数は、2004年以降、減少し続け、凶悪犯罪も横ばいまたは減少傾向にある(警視庁「少年非行情勢」2014年1月?12月)ことを考えると、少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることによって、犯罪抑止効果が得られるという合理的な立法事実は存在しないというべきである。
以上より、選挙権年齢に合わせて少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げることは、少年法の立法趣旨に反し、かつ、合理的な立法事実に基づかないので、当会は反対を表明する。
2015(平成27)年5月13日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

「集団的自衛権行使容認の閣議決定」の撤回を求め、「新ガイドライン」及び「平和安全法制案」に反対する会長声明
1  日本国憲法9条は、戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認を定め、徹底した恒久平和主義をとることを全世界に表明した。これは、先の大戦の多くの被害と加害の両方を経験した日本国民の願いであり、世界に向けての不戦の誓いでもある。
戦後70年、憲法9条は幾たびか改変の危機に見舞われてきたが、これまでの政府は、憲法9条は個別的自衛権までは放棄しておらず、自衛隊は専守防衛に徹する必要最小限度の実力であるから憲法9条の「戦力」ではないという解釈のもとに、外交・防衛政策をとってきており、かろうじて憲法9条は堅持されてきた。 しかし、2014年7月1日に、これまでの政府見解を変更し、現行憲法9条の下でも集団的自衛権の行使は可能であるとする閣議決定がなされた。これに対し、日本弁護士連合会及び岡山弁護士会をはじめとする各単位会は、この閣議決定は恒久平和主義及び立憲主義に反するので撤回せよとの会長声明・総会宣言・決議を幾度となく出してきた。
2 ところで、政府は、本年4月27日、米国との間で、新たな「日米防衛協力のための指針」(以下「新ガイドライン」という)に合意した。この新ガイドラインによれば、緊急事態のみならず、平時、グレーゾーン事態を含むあらゆる状況において、切れ目のない緊密な日米の軍事協力により、大気圏外及びサイバー空間にも及んで、アジア太平洋地域及びこれを超えた全世界に及ぶ日米同盟関係を形成するものとなる。これは、日米及び極東の平和と安全の維持に寄与することを主眼としてきた従来の日米同盟の本質を根本的に転換するものであると言わざるを得ない。
すなわち、新ガイドラインは、日米両国が、米国又は第三国に対する武力攻撃に対処するため、日米両国が当該武力攻撃への対処行動をとっている他国とも協力することを取り決め、集団的自衛権に関しては、自衛隊が機雷掃海、艦船防護のための護衛作戦、敵性船舶の臨検及び後方支援を行うこと等を具体的に定めている。また、これまでの「周辺事態」にとどまらず、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」への対応、及びアジア・太平洋地域を超えたグローバルな地域の平和と安全のための対応として、自衛隊と米軍が、実行可能な限り最大限協力するとし、後方支援を行うこと等を定めている。
もとより、国家の安全保障・防衛政策は、日本国憲法前文と憲法9条が掲げる徹底した恒久平和主義に基づいて行わなければならない。集団的自衛権の行使はもちろん、世界中に自衛隊を派遣して米国等の戦争の後方支援をし、武力行使の道を開くことは、日米安全保障条約の範囲すらも超えて、明らかに恒久平和主義に反するものである。
のみならず、集団的自衛権行使を容認し、世界規模での自衛隊の活動を認める内容の新ガイドラインについて、憲法改正の手続きを経ることなく、単なる政府間の合意でなされることは、立憲主義の根本原則を踏みにじるものである。
しかも、新ガイドラインの合意に際し、日本政府は、まだ国会に上程されていない安全保障関連法(平和安全法制整備法案)について、今国会で成立させると米国に約束した。まだ、国会にも上程されておらず、かつ、法案の内容すらも明確になっていない段階で、米国との約束を先行させ、既成事実化しようとするもので、国権の最高機関である国会そして何よりも国民を完全に無視する態度と言わざるを得ず、民主主義・国民主権に著しく違背し、到底許されない。
3 自民、公明両党は、5月11日の与党協議会で、新しい安全保障法制を構成する11の法案の内容で正式に合意した。今後は、閣議決定を経て、15日には国会に提出し、5月下旬より国会審議に入ると報道されている。
自衛隊の海外派遣の恒久法である「国際平和支援法案」と、武力攻撃事態法改正案・重要影響事態法案(周辺事態法)・自衛隊法改正案・PKO協力法改正案等を含めた10法案の、合計11の法案は「平和安全法制」と命名され、これらの法案は、「日本の平和と安全」に関するものと、「世界の平和と安全」に関するものに分かれる。
前者の「日本の平和安全」については、武力攻撃事態法改正案に、集団的自衛権行使の要件として「存立危機事態」を新設し、日本が直接、武力攻撃を受けていなくても、日本と密接な関係にある他国が武力攻撃されて、日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態で、他に適当な手段がない場合に限り、自衛隊が武力行使できるように、また、従来の周辺事態法は「重要影響事態法」に変わり、「日本周辺」という地理的制限をなくし、世界中に自衛隊を派遣できるようにし、後方支援の対象も、米軍以外の外国軍に拡大している。
後者の「世界の平和と安全」については、「国際平和支援法」を新設し、国際社会の平和と安全を目的として戦争している他国軍の後方支援を、自衛隊が行うことを可能とする「恒久法」である。これまでは、自衛隊の海外派遣の度に特別措置法(時限法)を作ってきたが、この法案が成立すれば、国会の事前承認さえあれば、いつでも海外派遣することが可能となる。
以上のような内容の「平和安全法制」は、「平和」「安全」とは名ばかりで、まさしく「戦争法案」と評価せざるを得ず、日本国憲法前文及び憲法9条の徹底した恒久平和主義に反するもので、到底容認できるものではない。かかる内容の法案は、これまで、平和国家として日本がとってきた外交・安全保障政策や方針を180度転換するものであり、国民的議論を背景にした慎重な国会審議と直接に国民の意思を問う憲法改正手続を経ることがないまま、今国会の会期中で早急に審議し成立させるべき法案でない。米国との約束の履行より、国民の意思と覚悟の確認を先行させるべきである。
4 岡山弁護士会は、以上の通り、「集団的自衛権行使を容認した閣議決定」の撤回を再び強く求めるとともに、「新ガイドライン」及びその国内立法として、今国会(第189回通常国会)で審議予定の全ての「平和安全法制案」は、日本国憲法前文、憲法9条、立憲主義、国民主権という憲法の極めて重要な基本原則に違反し、我が国の平和国家としての根幹を揺るがすものとして、強く反対するものである。
2015(平成27)年5月13日
岡山弁護士会 会長 吉 岡 康 祐

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