匿名希望
平等な高校無償化制度の実施を求める会長声明
公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援の支給に関する法律案 (いわゆる「高校無償化法案」)が今国会に提出・審議されている。
同法案の対象校には、高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省省令 が定めた各種学校が含まれているところ(同法案第2条1項5号)、朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁措置の実施などを理由に、日本国内の朝鮮高級学校をその対象から除外すべきとの意見が政府内からも出され、検討が行われている。
朝鮮学校は、各都道府県知事から各種学校としての認可を受けている。うち朝鮮高級 学校は日本国内に10校あり、2000人近くの生徒が学んでいる。そのカリキュラム等の教育課程は既に公表されており、日本国内のほぼすべての大学は、朝鮮高級学校の卒業生に「高等学校を卒業した者と同等以上の学力がある」としてその受験資格を認めて、高校卒業程度認定試験(旧大検)を免除している。また、朝鮮高級学校は、財団法人全国高等学校体育連盟(高体連)等のスポーツ大会への出場資格も認められ、今年度の全国高校ラグビー選手権では、大阪朝鮮高級学校が全国3位の成績を収めた。
このように、朝鮮高級学校において高等学校の課程に類する課程が置かれていること は周知の事実である。専修学校、インターナショナル・スクールや中華学校等の外国人 学校・民族学校と区別して、朝鮮高級学校に限りその対象から除外することは、法の下 の平等を定める憲法14条、子どもの権利条約・人種差別撤廃条約・国際人権規約などの国際条約にも強く抵触し、合理的理由のない差別であると言わざるをえない。また、そのような取扱の差異は「高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与する」との立法趣旨とも何ら整合性を有しない。
自らの属する民族の言葉によりその文化・歴史を守る権利が保障され、多民族・多文 化が共生する社会の実現が求められる時代において、政治的及び外交的理由により、子 どもたちの権利が侵害されることがあってはならない。
当会は、内閣総理大臣及び文部科学大臣に対し、高校無償化制度について、朝鮮高級 学校を除外することなく、平等な無償化政策を実施するよう強く要請するものである。
以上
2010年(平成22年)3月10日 大阪弁護士会
会長 守人
匿名希望
外国人学校の卒業生に対する受験資格の差別的取扱に反対する会長声明
本年(2005年)秋、大阪朝鮮高級学校(大阪府東大阪市所在)の女子生徒(18歳)が同高級学校の推薦を受けて、大阪市立大学医学部看護学科に公募推薦入試の出願をしたところ、同大学は、同高級学校は学校教育法に定められた「高等学校」に該当しないとの理由で出願を不受理とし、当該生徒の受験を拒否した。
しかし、現在、文部科学省が2003年9月に発した通知を受けて、国立大学はもとより、ほとんどの公立・私立大学において、朝鮮高級学校の卒業生(卒業見込者を含む)に対して受験資格が認められている。それは、朝鮮高級学校が、形式上学校教育法にいう「高等学校」に該当していなくとも、教育内容において実質的に「高等学校」と異なるところはないことが広く認められている結果である。現に、大阪市立大学においても、「一般入試」の出願資格については、従前から、「高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者」との補充規定を置き、朝鮮高級学校の卒業生は同規定に該当する者であるとして、受験を認めてきた。
ところが、大阪市立大学は、今般、「推薦入試」の出願資格について同様の補充規定が置かれていなかったことから、今回の不受理の措置をとったものであるところ、「一般入試」と「推薦入試」とにおいて出願資格を異にすべき合理的理由は見出しがたい。大阪市立大学において、「一般入試」において置かれている上記補充規定が「推薦入試」に置かれていない理由は不明であるが、たとえ「推薦入試」において、「一般入試」におけるような補充規定が欠けていたとしても、朝鮮高級学校の卒業生の受験資格に関するこれまでの経緯と現況に鑑みれば、「推薦入試」の出願資格における「高等学校」を、厳密に学校教育法上のそれに限定することなく、朝鮮高級学校を含むとする処理も可能であった。
大阪市立大学が、補充規定の不存在という形式的理由をもって、当該生徒に対する受験を拒否したことは、何ら合理性のない差別取扱いであり、且つ同人の教育を受ける権利および人格権を著しく侵害するものであって、重大な人権侵害であるといわざるを得ない。
また、国連自由権規約委員会、社会権規約委員会、人種差別撤廃条約委員会なども、日本政府に対し、朝鮮学校に対する差別的な対応の是正を勧告している。大阪市立大学の今回の受験拒否は、このような国際的な批判に対しても逆行するものである。
もとより、この問題は、単に、大阪市立大学だけの問題ではない。本会は、大阪市立大学がその推薦入試において朝鮮高級学校の卒業生に出願資格を認めなかったことに対し強く抗議し、かかる不合理な取扱いを直ちに是正することを求めるとともに、国立、公立、私立を問わず、受験資格の是正を怠っている全ての大学が、朝鮮学校を含め、「高等学校」と同程度の教育実態を有すると判断される外国人学校の卒業生に対する受験資格に関する差別的取扱を是正することを強く求めるものである。
2005(平成17)年12月8日
大 阪 弁 護 士 会
会 長 益田 哲生
匿名希望
特定の外国人学校に対する補助金停止に反対する会長声明
自由民主党は、本年2月7日、「北朝鮮による弾道ミサイル発射に対する緊急党声明」を発出した。同声明では、政府に対し、同党北朝鮮による拉致問題対策本部が昨年6月に提言した「対北朝鮮措置に関する要請」13項目の制裁強化策を速やかに実施するよう求め、その第7項においては、朝鮮学校に対する補助金の交付について、「朝鮮学校へ補助金を支出している地方公共団体に対し、公益性の有無を厳しく指摘し、全面停止を強く指導・助言すること。」とされている。
しかし、北朝鮮による弾道ミサイル発射に対し、日本政府が厳しい外交的態度をとることが必要であるとしても、外交問題を理由として各種学校のうちのもっぱら朝鮮学校のみを対象として補助金を停止するように指導することは、朝鮮学校の生徒らに対する重大な人権侵害であり、生徒らへの不当な差別を助長するものである。
すなわち、朝鮮学校に通う子どもたちが他の学校に通う子どもたちと異なる不利益な取扱いを受けることは、初・中・高等教育や民族教育を受ける権利にかかわる法の下の平等(憲法第14条)に反するおそれが高く、一人ひとりの子どもが、一個の人間として、また、一市民として成長、発達し、自己の人格を完成、実現するために必要な学習をする固有の権利である学習権(憲法第26条第1項、第13条)を侵害する結果となる。
また、外交問題を理由として朝鮮学校への補助金を停止するように指導することは、教育基本法第4条第1項の「人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」との規定に反するのみならず、我が国が批准する国際人権(自由権・社会権)規約、人種差別撤廃条約及び子どもの権利条約が禁止する差別に当たる。
既に一部の地方公共団体において行われている朝鮮学校に対する補助金の凍結もしくは継続的な縮減については、2014年(平成26年)8月29日に公表された国連人種差別撤廃委員会による総括所見においても、懸念が述べられている。
そして、自由民主党の声明の発出に伴う朝鮮学校への差別的取扱いの機運は、各地方公共団体へも重大な影響を与えており、3月4日には、名古屋市が、朝鮮学校の補助金について、新年度から一部か全額の支給を取りやめることを決定したと報じられている。
当会は、特定の学校に通う子どもたちに対する差別的な人権侵害が行われることを防ぎ、全ての子どもたちが教育を受ける権利を平等に享受することができるよう、政府に対して、外交問題を理由として朝鮮学校に対する補助金の全面停止を地方公共団体に指導・助言しないことを求め、また、地方公共団体に対しては、各種学校に対する補助金の支出について上記憲法上の権利、教育基本法の趣旨及び各種条約の趣旨に合致した運用を行うよう求めるものである。
2016年(平成28年)3月14日
大阪弁護士会
会長 松 葉 知 幸
匿名希望
大分監視カメラ設置事件に対する会長声明
大分県警察別府署の署員が、2016年(平成28年)7月の参議院議員選挙の公示前後、同県別府市にある野党支援団体の選挙対策事務所の敷地内に無断で立ち入り、同敷地内に監視ビデオカメラを設置していたことが発覚した。同県警は、他人の管理する敷地内に無断で侵入したことについては謝罪する一方で、カメラの設置自体については「個別の容疑事案で特定の対象者の動向を把握するため」と説明するだけで、県議会でも同県警本部長は「撮影行為は犯罪行為ではない」と答弁し、現在も謝罪していない。
しかし、本件の問題の本質は、他人の管理する敷地内に無断で侵入したことではなく、無断でビデオカメラを設置し撮影したことにこそある。
いうまでもなく、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有し、警察官であっても、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、現に犯罪が行なわれているような特段の事情の無い限り、憲法13条の趣旨に反し許されない(最大判昭和44年12月24日)。特に、隠しカメラによる隠し撮りは、常時監視する点でプライバシーに対する強度の制約であり、さらには、捜査対象とは関係のない情報をも同様に網羅的に収集するという特性もある。
大阪地裁平成6年4月27日判決(後に最高裁で確定)も、こうした理解を前提に、大阪府警察本部が特定の建物出入口に向けて設置した監視カメラを違法と断じ、その撤去を命じている。同判示は、現在においても当然妥当するところであり、むしろ、その後の撮影技術・顔認証技術の発達をも考慮すれば、より厳格に、その限界を画するべきである。
この点、警察庁が本件事件を受けて本年8月26日に発出した警察庁刑事局刑事企画課長通達(警察庁丁刑企発第97号)は、設置する土地又は建物管理者の承諾を求めるだけのものであり、隠し監視カメラの上記権利侵害の危険性への配慮に欠け、任意捜査として許容される基準も曖昧なものであり、不十分と言わざるをえない。
また、市民の政治活動の自由、表現の自由等が、民主主義社会において最も尊重されるべき権利であることは疑いないところ、警察が選挙対策事務所の出入口を撮影して監視するという事実自体、これらの権利行使に対する多大な萎縮的効果をもたらすものであり、政治活動の自由及び表現の自由、ひいては思想・良心の自由に対する重大な侵害である。
よって、本件監視カメラの設置及び撮影行為は、プライバシー権のみならず、市民の政治活動の自由、表現の自由、思想・良心の自由等を不当に制約するものであって、明らかに違法なものと断ぜざるを得ない。
当会は、今回の大分県警察本部による違法な監視カメラ設置行為および撮影行為につき厳重に抗議するとともに、今後、全国の各警察署において、こうした違法な監視カメラの設置・撮影が行われないよう法的規制等抜本的な防止策を講じるよう国に求めるものである。
2016年(平成28年)10月4日
大阪弁護士会
会長 山 口 健 一
匿名希望
憲法に緊急事態条項を創設することに反対する会長声明
未曾有の被害をもたらした東日本大震災の後、政府・自民党においては、災害対策を理由として、憲法を改正し緊急事態条項を創設しようとする動きがあり、憲法審査会でも議論が行われている。また、本年4月14日より発生している熊本地震の後、菅官房長官が緊急事態条項の創設について、極めて重く大切な課題だと述べたと報道されている。
この緊急事態条項は、大規模な自然災害、外部からの武力攻撃その他法律が定める緊急事態において、内閣総理大臣が閣議にかけ緊急事態の宣言を発することにより、内閣が法律と同一の効力を持つ政令を制定できること、内閣総理大臣が財政上必要な支出その他の処分を行うこと及び地方自治体の長に対して必要な指示ができること等を内容としている(自民党改憲草案第98条・第99条参照)。これは、いわば行政に立法権を付与するもので、国民主権・議会制民主主義・権力分立という憲法秩序が停止されることにより、政府への権力の集中と強化をもたらし、その結果、権力の濫用により国民の自由や権利が不当に奪われる危険性が高い一方、憲法に緊急事態条項が定められるため、裁判所の違憲審査権による統制が機能しないおそれがある。
そもそも大規模災害時において最も重要なことは、刻々と変化する被災現場の状況に応じて臨機応変に対応することができる被災自治体の権限を強化することであり、政府に権限集中を図ることではない。このことは、わが国のこれまでの数々の災害の経験から明らかになっている。東日本大震災の被災自治体に対する日弁連アンケート(2015年9月実施・24市町村回答)でも、災害対策の第一義的な権限は市町村主導とすべきであること、緊急事態条項の存しない現憲法が災害対策に障害となったことはないとの結果が示されているところである。
災害対策の基本原則は、平時に事前準備を十分に行っておくことである。事前に準備していないことはできないのであり、緊急時になって政府に強力な権限を集中させるのではなく、平時から法制度を整備しておくことこそが肝要である。この点、日本の災害法制では、大規模災害時の対処のために既に十分な整備がなされている。すなわち、内閣総理大臣は、災害緊急事態を布告し、生活必需物資等の授受の制限、価格統制等を決定できるほか、必要に応じて地方公共団体等にも指示ができるのである。また、都道府県知事及び市町村長に対する強制権の付与も規定されているし、都道府県知事等の要請を受けて防衛大臣が災害時に自衛隊を派遣できることも規定されている。今後の大規模災害への備えとして行うべきは、こうした災害法制を前提に、発災時に適切・迅速に活用できるよう平時から防災・減災のための対策・準備を充実させることにほかならない。
また、わが国では、武力攻撃やテロ行為が発生した場合等において、事態対処法その他の法律により内閣総理大臣を長とする対策本部を設置し内閣総理大臣に権限を集中させる等の対処の方法が既に規定されており、憲法に緊急事態条項を創設する必要性はない。ただし、現行法の武力攻撃事態等における権限集中等に関する規定は、憲法に定める統治構造を大きく変容させ、基本的人権保障の原理に反する事態を招来する危険性等がある。したがって、今なすべきことは、この観点からの現行規定の見直しであり、憲法に緊急事態条項を創設することではない。
ワイマール憲法下において独裁政権を許した例や大日本帝国憲法における緊急勅令等の例を挙げるまでもなく、緊急事態条項は、国家権力を担う者により濫用されてきた歴史がある。日本国憲法がこのような歴史を踏まえ、敢えて緊急事態条項を設けなかった趣旨(憲法制定議会議事録参照)を今一度想起すべきである。
以上のことから、当会は、憲法に緊急事態条項を創設することについて、災害対策としてはまったく必要がないばかりかむしろ有害であり、その他の事態への対策としては、立憲主義の根幹を変容させ、その濫用による国民の自由や権利を不当に奪う危険性に歯止めが効かなくなることから、これに強く反対するものである。
2016年(平成28年)6月21日
大阪弁護士会
会長 山 口 健 一
匿名希望
自由民主党石破茂幹事長発言に抗議し、特定秘密保護法案の強行採 を許さない会長
特定秘密保護法案(以下「本法案」という。)については、政府が公開すべき情報を恣意的に隠せること 、知る権利 報道の自由など憲法上の権利が侵害されることが懸念されることから、報道各社による世論調査でも多数の国民が不安を抱き今国会での成立に反対していると報道されている。また、福島市で実施された公聴会においても、与党推薦の意見陳述者を含めた全員が国会での慎重な審議を求める意見を表 している。
しかるに、衆議院では、上記の民意を無視して強行採 がなされた。
さらに、今国会での本法案の成立を意図している自由民主党の石破茂幹事長が、11月29日に、自身のブログで、議員会館付近での同法案に反対する市民のデモに対して「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらない」と発言した。その後、この発言に対する厳しい批判を受けてお詫びと訂正を行う事態となった。
しかし、国民のデモ 街宣活動などは、憲法第21条で保障された表現の自由であり、まさに民主主義の根幹をなす権利である。政府 国会は、本来、賛成であれ反対であれ国民の多様な意見に耳を傾けるべきであり、反対意見であるからといってその意見に耳を傾けないのは、まさに民主主義の否定にほかならない。
本法案では、「テロリズムの防止に関する事項」が秘密指定の対象とされているが、石破幹事長の発言によって、国民の正当な政府批判までもが「テロリズム」として本法案の対象となり得ることが らかとなった。
当会は、憲法上の権利であり民主主義の根幹でもある表現の自由及び国民主権を否定する石破幹事長発言に対して厳重に抗議するとともに、同発言によってさらに問題点があきらかとなった特定秘密保護法案は廃案とされるべきであり、参議院では、良識の府として慎重審議を尽くし、強行採決されないことを強く求める。
2013年(平成25年)12月4日
大阪弁護士会
会長 福 原 哲 晃
<国民のデモ 街宣活動などは、憲法第21条で保障された表現の自由であり、まさに民主主義の根幹をなす権利である。政府 国会は、本来、賛成であれ反対であれ国民の多様な意見に耳を傾けるべきであり、反対意見であるからといってその意見に耳を傾けないのは、まさに民主主義の否定にほかならない。>
川崎デモでは真逆のことを日弁連の弁護士がやっている。日弁連よ恥を知れ!
匿名希望
日本刑法の原則を否定する「共謀罪」新設に反対する声明
今国会で、「共謀罪」の新設を含む「犯罪の国際化および組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」が審議されている。
いわゆる先進国サミットにおいて「テロ対策」が至上命題とされるようになって以降、日本に対して「テロ対策立法」が強く要請されたことが、今回の「共謀罪」新設法案の要因となっている。
確かに、無差別に市民の生命・身体・財産を脅かすいわゆるテロ行為に対しては、それを未然に防止する有効かつ適切な対策が不可欠であると考えられる。しかしながら、「共謀罪」は、なんらの実行行為の着手のみならず予備行為さえも要件としない「共謀」をもって犯罪とするものであり、共謀の概念が不明確である以上、人の内心を処罰することに繋がりかねず、いきおい捜査も人の内心に踏み込んで、自白強要を招き、ひいては、えん罪を生み出しかねない構造上の欠陥を有している。
しかも、国連条約がもともと取り締まりの対象と予定していた「国境を越えた犯罪」や「犯罪組織の特定」が要件とされておらず、一般の市民団体や企業、労働組合、法律家団体等の活動でさえも取り締まりの対象となるおそれがある。対象となる犯罪は、刑法に定める罪のほとんどのみならず、市民の日常生活にも密接に関連する600以上の犯罪類型に及ぶものである。そのため、市民にとっては表現活動そのものが広く監視の対象とされることになり、無限定な監視社会をもたらし、市民生活を極めて萎縮させることにもなる。
「共謀罪」はそのほかにも数々の問題を含むが、ここに挙げた問題点は、根本的な欠陥として看過することができないものである。
なお、日本政府は、国連の国際的組織犯罪条約起草特別委員会に対する1999年3月の政府提案において、「すべての重大犯罪の共謀と準備の行為を犯罪化することは、我々の法原則と両立しない。」と言明し、実行行為に着手していない「共謀」それ自体を犯罪化することは、日本の刑事法制度と両立しないことを明らかにしていた。まさに、共謀罪の新設は、憲法の保障している思想・信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由などの基本的人権に対する重大な脅威となるとともに、日本政府も認めているこのような刑法の基本原則を葬り去りかねない危険性を有するものといわざるを得ない。
よって当会は、「共謀罪」の新設に反対する。
2005年(平成17年)7月29日
大阪弁護士会
会長 益田哲生