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2367 北山特集在日コリアン弁護士協会①(0)
引用元のソース

北山特集在日コリアン弁護士協会①
(※改行等修正を加えています。要約すると、戦後日本国籍を勝手に剥奪されたんだから日本人として扱え、でも日本人に同化するのは絶対に嫌、日本で生まれ日本語を話し日本人と同様の生活をしていても嫌、あと、拉致を政治利用するな、デモを妨害させろ。)
(※その①)(北山)
人種差別撤廃条約に基づき提出された 第7回・第8回・第9回 日本政府報告書に対するNGO報告書
2014年7月
報告団体名:Lawyers Association of Zainichi Koreans (LAZAK)
目次
1. 報告団体について
2. はじめに
3. 国民年金制度からの在日コリアンの排除
4. 外国人、主に在日コリアンに対する公務就任権の制約
5. 朝鮮学校の高等学校等就学支援金制度からの排除
6. 在日コリアンを攻撃対象とするヘイトスピーチ
I. 報告団体について
在日コリアン弁護士協会(LAZAK)は、2001年5月に設立され、現在は100名を超える在日コリアン弁護士及び司法修習生が会員となっている。なお、ここでいう在日コリアンとは、日本に生活しながら、大韓民国(以下「韓国」という。)又は朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」という。)の国籍を保有している者のほか、祖先が韓国・朝鮮系であり、帰化後もコリアンとしての民族性を有する日本国籍保有者を指す。
LAZAKは、これまで、日本における在日コリアンに対する差別撤廃と民族的人権の保障に向けて、在日コリアンの人権問題に関わる裁判において、法的支援を行ってきた。また、在日コリアンに関する書籍の出版、海外のコリアン弁護士との交流等の活動を行っている。これらの活動が評価され、2007年には、韓国国家人権委員会から人権賞を受賞している。
II. はじめに
1. 在日コリアンの歴史的経緯
2014年現在、日本国籍保有者を含めた日本に永住するコリア系住民の総数は、およそ100万人程度と推測される(日本国籍を保有するコリアンの総数に関する公的な政府統計はない。)。このうち、2013年12月の時点では、約43万人のコリアンが永住資格を持つ外国籍者として生活している1。この約43万人のうち約37万人は、20世紀前半の日本による朝鮮半島の植民地統治時代に日本での生活を余儀なくされた者とその子孫であり2、一般の永住資格とは区別された特別永住資格を認められている3。
1 法務省HP、在留外国人統計2013年12月版、表01‐1
<http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001118467>を参照。
2 同上。
3 日本には、永住資格として、一般永住資格と特別永住資格の二種類がある。Miki Y. Ishikida, Living Together: Minority People and Disadvantaged Groups in Japan, 3-2-1 (2005) 参照。:http://www.usjp.org/livingtogegther_en.html#mozTocId637851http://www.usjp.org/livingtogegther_en.html#mozTocId637851.
4 一例として、最大判昭和36年4月5日民集15巻4号657頁等。
上記のとおり、特別永住資格を持つ在日コリアン(約37万人)は現在外国籍者として日本に居住している。これらの者は、1910年に日本による朝鮮半島の植民地統治が開始してから1952年のサンフランシスコ講和条約により日本が独立を回復するまでの間は、日本国籍を有していた者とその子孫である。サンフランシスコ講和条約は、講和条約発効後も引き続き日本に在住する在日コリアンの国籍については規定していなかったが、日本政府は、同条約が在日コリアンと在日台湾人(いずれも日本の旧植民地)の日本国籍を喪失させる旨の規定を含んでいるとの解釈のもと、同条約の発効をもって、在日コリアン及び在日台湾人の日本国籍を剥奪した。日本政府によるこの剥奪措置(1952年4月19日の法務府民事局長通達による措置)は、日本に居住する旧植民地出身者の意思を無視した一方的な措置であった。のみならず、この剥奪措置は、当時の日本の人口(約8500万人)の一部の者(約50万人)についてのみ、彼らが朝鮮及び台湾出身者であるという民族的・種族的出身を理由として狙い撃ち的になされたものであった。従って、この剥奪措置は、人種差別撤廃条約発効前の措置とはいえ、人種差別的な措置であったということができる。さらに、日本政府によるこの剥奪措置は、法務府民事局長通達という政府通達によるだけで、法律に基づく措置ではなかった点で、国籍の取得・喪失要件は法律で定められなければならないとする日本国憲法第10条にも違反していた。もっとも、日本の最高裁判所は、一貫してこの国籍剥奪措置を是認する立場を示している4。
このようにして、サンフランシスコ講和条約の発効と同時に、当時日本に在住していたコリアンは一夜にして日本国籍を喪失した。そのうえで、日本政府は、日本国籍を有していないことを理由に、在日コリアンの人権を制約した。例えば、在日コリアンも一般の外国人と同様に退去強制の対象とされた。多くの社会保障及び社会福祉の分野で国籍条項が設けられ、また、多くの公職から在日コリアンを排除した。このような日本政府による外国人排除の論理は、民間における国籍及び民族的出身による差別を助長することとなった。
日本政府は、1991年に、1945年の日本の敗戦以前から日本に居住していた日本の旧植民地出身者(コリアン及び台湾人)並びにその子孫に対して、特別永住資格制度を設けた。しかし、日本政府は、特別永住者についても、日本国籍がないことを理由に、社会保障や公務就任等について差別している。なお、1945年以前から日本に居住していた旧植民地出身者及びその子孫の全員が特別永住資格を認められたわけではなく(1945年から1952年の間に日本を出国したことがあるなどの理由のため)、一部の者は、一般永住資格やその他の在留資格で日本に居住している点も忘れてはならない。
日本では、日本国籍は、国籍法によって決定される。日本の国籍法は、厳格な血統主義を基調とする国籍法であるため、ごく例外的な場合を除き、父母が外国籍である子は、日本で出生したとしても、日本国籍を取得しない。このため、1952年に民族的・種族的出身を理由に日本国籍を剥奪された在日コリアンの子孫は、両親のどちらかが日本人と結婚していない限り、日本国籍を取得しないことになる。日本の国籍法の血統主義は、民族的・種族的出身を理由として在日コリアンを日本国籍から排除するように機能しているのであり、この意味で、日本の国籍法は、民族主義的・種族主義的な国籍法であるといえよう。
このような国籍法の下では、4世、5世になっても外国籍のまま暮らす在日コリアンの例もある。実際、1952年に日本国籍を剥奪された在日コリアンの中には、100年以上にわたり日本に居住してきた家族もいる。
もちろん、日本の国籍法にも、帰化手続の規定がある。しかし、日本では、帰化手続もまた、民族主義的・種族主義的に運用されてきた。すなわち、帰化の許否については、日本政府が自由かつ広汎な裁量を持つところ、最近まで、日本風の姓名への変更を要求するなど、日本民族への民族的・文化的同化を帰化の条件とする運用がとられてきたのである5。日本社会では、帰化を、法的な国籍取得にとどまらない、日本民族への民族的・文化的同化を意味するものと理解する傾向が強い。また、ほとんどの旧宗主国が旧植民地出身者の帰化手続に関しては特別な定めを置いているのに対し、日本の国籍法には、これらの規定は置かれていない。
5 国連人種差別撤廃委員会の日本に関する総括所見(2010年4月6日)、CERD/C/JPN/CO/3-6(“CERD2010ConcludingObservations”)、パラグラフ16を参照。
2. 在日コリアンに対する国籍を理由とする区別は人種差別である
人種差別撤廃条約は、市民と非市民との区別等については適用されない(第1条第2項)。しかし、日本国籍がないことを理由として、特別永住者やこれに準ずる在日コリアンを区別することについては、第1条2項の適用はないというべきである。特別永住者やこれに準ずる在日コリアンへの区別的取扱いは、民族的若しくは種族的出身に基づく区別であり、「人種差別」(第1条第1項)に該当するというべきである。なぜなら、上記のとおり、これらの在日コリアンは、一方で、1952年に、民族的若しくは種族的出身を理由に日本国籍を剥奪されたが、他方で、その後も、民族主義的・種族主義的な日本の国籍法及び同法の運用により、民族的若しくは種族的出身を理由に日本国籍から制度的に排除されてきたからである。
1952年以降、在日コリアン及び彼(女)を支援する日本の市民社会の運動や、日本政府による国際人権規約や難民条約の批准などにより、在日コリアンの法的地位は改善された。しかし、前記のとおり、日本では、依然として社会保障の分野や公務就任など多くの場面で、特別永住者である在日コリアンは日本国籍がないことを理由とした差別を受けている。これらは、上記の理由で人種差別に該当する。
3. 近時の在日コリアンに対する差別の悪化
日本社会においては、植民地支配の過程で、コリアンに対する蔑視感情・優越感が醸成されてきた。包括的な差別禁止法の制定を含むコリアンへの差別感情を是正するための対応を日本政府が怠ってきたこともあり、今でも日本社会にはコリアンに対する差別感情が根強く残っている。
このような古くから残るコリアンへの差別意識に加えて、近時の日本と北朝鮮及び韓国との外交関係の悪化などの事情を背景として、近時在日コリアンに対する差別が悪化している。とりわけ、日本政府は、北朝鮮との外交関係の悪化を理由に、新たに導入された高等学校等就学支援金制度から朝鮮学校のみを排除した。また、排外主義団体による在日コリアンを対象としたヘイトクライム及びヘイトスピーチの問題が深刻化している。
4. 本報告書の構成
LAZAKの会員弁護士各人は、様々な在日コリアンの人権に関わる訴訟に代理人として参加している。本報告書は、LAZAKの会員弁護士が訴訟代理人又は当事者として関わってきた人権問題の中から、在日コリアンに対する差別問題、具体的には、(i)在日コリアン高齢者の年金制度からの排除、(ii)外国人に対する公務就任の制限、(iii)朝鮮学校の無償化からの排除、及び、(iv)在日コリアンを対象としたヘイトスピーチについて、情報提供を行うものであ
る。
LAZAKとしては、人種差別撤廃委員会が、在日コリアンの直面する人権侵害に懸念を表明し、日本政府に対し、国際人権法に適合した措置をとることを勧告するよう期待する。
国民年金制度からの在日コリアンの排除
I. 問題の要点
1986年4月1日時点で60歳以上であった在日コリアン、及び1982年1月1日時点で障害のあった20歳以上の在日コリアンは、国民年金に加入できず、老齢福祉年金・障害基礎年金の支給対象から排除されている。
このような在日コリアンの国民年金制度からの排除は、条約第5条(e)(iv)に違反する。日本政府は、上記の者にも年金が支給されるよう速やかに関連法規を改正し、救済措置を講ずるべきである。
II. 日本政府の報告の内容
政府報告書パラグラフ121が引用する第1回・第2回報告書には、国民年金法については国籍条項がないため人種、民族等による差別はない旨の記載がある6。しかし、第1回から第6回までの報告書と同様に、在日コリアン高齢者及び同障害者が国民年金の支給対象から排除されていることについては、言及がない。
6 人種差別撤廃条約第1回・第2回政府定期報告(2000年1月13日)、CERD/C/350/Add.2 (“Japan CERD Report 2000”) パラグラフ82。
7 人種差別撤廃委員会の一般的勧告30、パラグラフ3。
8 同上、パラグラフ7。
9 国連自由権規約委員会の日本国に関する総括所見(2008年10月30日)、CCPR/C/JPN/CO/5、パラグラフ30。
10 同上。
III. 法的枠組
1. 関連する条文及び一般的勧告
無年金問題に最も深く関連する条文は、第5条(e)(iv)である
一般的勧告30第2項は、「第1条第2項が、その他の文書、特に、『世界人権宣言』、『経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約』及び『市民的及び政治的権利に関する国際規約』において認められ、規定されている権利及び自由を減ずるように解釈されてはならないことを確認する」と規定する7。また、一般的勧告30第7項は、「立法の実施が市民でない者に差別的な効果をもつことがないよう確保すること」と規定する8。
2. 過去の国連の委員会の指摘事項
国連自由権規約委員会は、2008年10月31日、第5回日本政府報告書に対する総括所見において、
「委員会は、1982年の国民年金法の国籍条項の撤廃が遡及しない上、20歳から60歳の間に最低25年間年金制度に保険料を払い続けなければならないという要件のために、多くの外国人、主に1952年に日本国籍を喪失した韓国・朝鮮人が、事実上国民年金の受給資格から除かれてしまったことを、懸念をもって留意する。委員会は、国民年金法から国籍条項が撤廃された時に20歳以上であった、1962年以前に出生した外国人の障害者が、同様に障害年金の受給資格がないことについても、懸念をもって留意する。(第2条1及び第26条)」
とし9、日本政府に対し、「国民年金制度から外国人が差別的に除外されないために、国民年金法に定められた年齢要件によって影響された外国人に対して、経過措置を講ずべきである」という勧告を行った10。
また、「現代的形態の人種主義、人種差別、外国人嫌悪及び関連する不寛容」に関する特別報告者であるドゥドゥ・ディエン氏は、2006年1月24日、2005年7月に日本を訪問した結果として発表した報告書において、「政府は、就労年齢時に存在した国籍条項により年金の給付を受けることができない70歳以上のコリアンに対する救済措置を取るべきである」と勧告している11。
11 国連経済・社会理事会に提出された、「現代的形態の人種主義、人種差別、外国人嫌悪及び関連する不寛容」に関する特別報告者ドゥドゥ・ディエン氏による報告(2006年1月24日)。E/CN.4/2006/16/Add.2 at ¶56。
12 人種差別撤廃条約第7回・第8回・第9回日本政府報告(2013年1月14日)、CERD/C/Japan/7-9 (“Japan CERD Report 2013”)、パラグラフ35。
13 前掲注(1)、表02‐1<http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001118467>。
14 無年金障害者に関する「坂口試案」(2002年7月)。
15 人種差別撤廃委員会の一般的勧告14、パラグラフ2。
IV. 背景事情
1. 在日コリアン高齢者及び在日コリアン障害者の国民年金制度からの排除の経緯
1959年に制定された国民年金法には国籍条項が設けられており、外国人(その多くは、主に1952年に日本国籍を剥奪された在日コリアンである。)は国民年金に加入することができなかった。その後、日本が1981年に難民条約を批准したことに伴い、1982年には国民年金法から国籍条項が撤廃され、外国人であっても25年間以上の保険料を納付した場合には年金を受給できるようになった。1985年の法改正により25年間の年金受給資格期間に満たない外国人にも年金を受給する道が開かれたが、なお、1986年4月1日時点で60歳以上の外国人は、支給対象から排除された。
また、1959年の国民年金法の下では日本人の障害者には障害基礎年金が支給されるが、外国人は支給対象から排除されていた。1982年の法改正により国籍条項が撤廃されたが、1982年1月1日より前に既に国籍条項により受給資格を失っている者、すなわち、1982年1月1日において障害のあった20歳以上の外国人については障害基礎年金の対象から排除された。
日本政府が委員会の求めに応じて明らかにした国籍別外国人登録者の推移によれば、外国人全体に占めるコリアンの構成比は年々小さくなっているが、在日コリアンに対する差別が他の外国人差別と異なることは、年齢分布を比較すると一目瞭然である12。すなわち、日本人と同様に高齢化が進行している年齢分布は、在日コリアンだけであり、国民年金制度から排除された外国人高齢者のほとんどは、在日コリアンであった。例えば、2013年12月31日時点でさえ、日本に居住する80歳以上の外国人30,630人のうち、25,721人が韓国・北朝鮮国籍保有者である13。また、障害者についての比較資料は提供されていないものの、1982年1月1日において障害のあった20歳以上の外国人のほとんどは、在日コリアンであると推測
される。
上記の排除措置により、2002年7月時点において、在日コリアン高齢者約2万人、及び、在日コリアン障害者約5千人が、無年金生活を余儀なくされていた14。しかし、日本政府は、無年金生活状況にある在日コリアンの数や現状について調査を行うことさえしていない。年金の支給対象から排除されている在日コリアンの多くは、出生時から有していた日本国籍を1952年に一方的に剥奪された旧植民地出身者であり、彼(女)らに対する形式的な国籍を理由とする区別は、実質的には朝鮮半島出身者という民族的出身を理由とする人種差別である。彼(女)らは、日本国内で出生し、日本語を完璧に話し、日本社会において経済生活を営み、日本政府及び地方自治自体に納税し、日本人住民と全く異ならない社会生活を営んでいるにも関わらず、朝鮮半島出身者という理由で年金制度から排除され、不安定な老後の生活を強いられている。
2. 在日コリアンの年金制度からの排除は人種差別である
上述した一定の外国人高齢者及び外国人障害者を国民年金制度から排除する措置の影響は、主に旧植民地出身者及びその子孫である在日コリアンに対して及んでいる。これは、民族的出身によって区別される集団に対して、「その行為が正当化されない異質の影響」(一般的勧告14第2項)を有するものとして人種差別に該当する15。
外国人を排除する規定の正当性の根拠としては、国民年金の財源の維持や年金の健全運営の目的が考えられるが、このような目的達成のために、一定の年齢以上の外国人を一律排除する必要はない。例えば、日本に短期滞在する外国人ではなく、一定の期間日本に在留することが認められている定住外国人には排除規定の適用を行わないとか、 日本政府が1952年に出した通達により自己の意思によらずに日本の国籍を剥奪された在日コリアンには、排除規定を適用しないなど、外国人に対する権利侵害の度合いがより緩やかな方法を講じることもできたはずである。
在日コリアンに救済措置を設けないことの不当性は、一部の日本人に対して講じられた救済措置と比較するとより際立っている。例えば、小笠原は1968年に、沖縄は1972年に日本に返還されるまで日本の領土ではなかったので、両地域の住民は、国民年金制度が発足した1959年には、国民年金に加入することができなかった。日本政府は、小笠原及び沖縄の日本復帰後、それぞれの住民に対して、その間の保険料を国庫負担で免除するなどの特例措置を講じた。また、1996年からは、中国から帰国できなかった中国残留日本人に対して、2003年には、北朝鮮から帰国した拉致被害者に対して年金が受給できるようにそれぞれ経過措置を講じている。
最近の10年間を振り返ってみても、(1)2005年には、特別障害者給付年金制度が施行され、学生や主婦など国民年金加入が任意加入であったために、国民年金に未加入であった期間中に障害を負った無年金障害者の救済が図られ、また、(2)国民年金制度発足後に永住帰国したあとも保険料を納付していない中国残留日本人に対して、2008年から実施された老齢基礎年金満額支給のための未納保険料国庫補填の措置が講じられており、国民年金加入の機会があったにもかかわらず保険料を未納して無年金あるいは満額未満となっていた人に対する救済措置が実施されている。
ところが、これらの日本人向け救済措置の実施とは反対に、日本政府は、任意加入もできず保険料納付の機会もなかったがゆえに無年金状態に置かれた在日コリアン高齢者・障害者に対しては、彼(女)らが経済的・精神的損害を被ることを予見し得たにもかかわらず、在日コリアンを排除する立法措置を改めることがなかった。
3. 国内での司法救済が尽きたこと
在日コリアン高齢者及び障害者は、国民年金の国籍による差別には合理的理由は存在せず、日本国憲法第14条の平等原則、自由権規約第26条及び社会権規約第2条第2項の平等保護条項に反することを理由に、日本国内の裁判所に司法救済を求めて日本国を相手に複数の訴訟を提起し、最高裁判所の審理まで経たが、すべての訴えが棄却されて敗訴が確定している16。
16 2007年12月25日、最高裁は上告を棄却し、無年金高齢者である在日コリアンによる請求を棄却した大阪高裁の判決を維持した(判例集未搭載)。大阪高裁は、2005年12月25日、及び2009年2月3日と、在日コリアンの請求を棄却した。また、2014年2月6日、最高裁は、無年金高齢者である在日コリアンによる請求を棄却する旨の福岡高裁の判決を維持した(判例集未搭載)。
17 例えば、大阪高判平成18年11月15日等(判例集未搭載)。本判決は、平成19年12月25日に、最高裁判所によって維持された。
いずれの判決においても、年金制度から排除された在日コリアンの多くが、旧植民地出身者であり1952年に日本国籍を一方的に剥奪されたという事情は考慮されず、これらの在日コリアンも通常の外国人と同様に扱われた。その上で、立法府には、国民年金法改正の過程で、外国人に対する特例措置を講じるか否かにつき広範な裁量権があるため、一部の外国人の年金制度からの排除は、憲法にも、自由権規約及び社会権規約にも違反しないとされた17。
V. 提言
以上の問題点をふまえ、日本政府は、国民年金制度から外国人が差別的に除外されないために、国民年金法に定められた年齢要件によって影響された外国人に対して、経過措置を講じるべきである。

北山(※その②)(北山)
外国人、主に在日コリアンに対する公務就任の制約
I. 問題の要点
日本においては、在日コリアンをはじめとする外国籍者が、正当な目的なく、一定の公職への任用から排除されている。また、外国人の任用が認められている公職に関しても、正当な目的なく管理職への昇任が制限されている。
これらの公務就任に対する制限は、特に旧植民地出身者及びその子孫である在日コリアンとの関係では、民族的出身若しくは種族的出身を理由とする人種差別に該当する。日本政府は、旧植民地出身者及びその子孫である在日コリアンへの公務就任に対する制約を廃止するべきである。
II. 日本政府の報告内容
政府報告書パラグラフ48が引用する第1回・第2回報告書パラグラフ50には、「外国人の公務員への採用については、公権力の行使又は公の意思の形成への参画に携わる公務員となるためには日本国籍を必要とするが、それ以外の公務員となるためには必ずしも日本国籍を必要としないものと解されており、在日韓国・朝鮮人の公務員への採用についてもこの範囲で行われている。」との記載がある18。
18 前掲注(6)、パラグラフ30。
19 前掲注(7)、パラグラフ29。
20 前掲注(7)、パラグラフ33。
21 前掲注(5)、パラグラフ15。
22 同上。
III. 法的枠組
1. 関連する条文及び一般的勧告
在日コリアンの公務就任の制約に最も深く関連する条文は、第2条1(c)、第5条(c)、及び第5条(e)(i)である。
一般的勧告30第29項は、雇用の「分野における経済的、社会的及び文化的権利の、市民でない者による享有を妨げる障害を排除すること」と規定する19。また、一般的勧告30第33項は、「労働条約及び労働要件(差別的目的又は効果を有する雇用規則及び慣行を含む)に関して、市民でない者に対する差別を撤廃する措置をとること」を規定する20。
2. 過去の国連の委員会の指摘事項
人種差別撤廃委員会は、2010年3月9日、第3回.第6回日本政府報告書に対する総括所見15(2010年第76会期・日本政府報告書審査)において、「家庭裁判所の調停委員には公的な決定を行う権限がないことに留意し、委員会は、資格を有する非日本国籍者が紛争処理において調停委員として参加できないという事実に懸念を表明する。また公的生活での非日本国籍者の参加に関してデータが提供されていないことに留意する(人種差別撤廃条約第5条)」とし21、日本政府に対し、「調停処理を行う候補者として推薦された能力のある日本国籍を持たない者が家庭裁判所で活動できるように、締約国(日本政府)の立場を見直すことを勧告」した22。
IV. 背景事情
日本では、主として、以下の場面において、外国人の公務就任への制約がある。
1. 管理職への昇任制限
多くの地方自治体において、外国人公務員は管理職への昇任が制限されており、日本の裁判所はかかる取り扱いを是認している。例えば、特別永住資格を有する在日コリアンの保険師が管理職選考試験の受験を日本国籍でないという理由で拒否された事案において、最高裁は、「住民の権利義務を直接形成し、その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とするもの」(公権力行使等地方公務員)に外国人が就任することは、日本の法体系の想定するところではないという前提を立てる23。その上で、地方公共団体は、「公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度」を設けることができるとし、同制度において、「日本国民である職員と在留外国人である職員」とを区別して、日本国民である職員に限って管理職に昇任する措置を講じることも違法ではないとする。そして、この理は、「特別永住者についても異なるものではない」とされる。
23 最大判平成17年1月26日民集59巻1号128頁。
24 日弁連、「外国籍調停委員・司法委員の採用を求める意見書」
また、公立学校の外国籍教員について、文部科学大臣は、1991年に地方自治体に外国籍者の教員採用選考試験受験を認める通達を出したが、その身分については、「当然の法理」(公務員に関する当然の法理として、公権力の行使又は国家意思の形成への参画にたずさわる公務員となるためには、日本国籍を必要とするものと解すべきであるとする法理)に基づき、通常、日本人教員に適用される「教諭」ではなく、「任用の期限を附さない常勤講師」とすべきとした。管理職に登用される身分は「教諭」のみであるため、多くの自治体において、外国籍教員が管理職となることができない。
しかしながら、日本人と何ら変わることのない職務を担当し、同等の資質を兼ね備えた外国人公務員を管理職から一律に排除することは、外国人の職業選択の自由を過度に制約するものであり合理性がない。また、外国籍公務員の大部分は、1952年に国籍を一方的に剥奪された旧植民地出身者である在日コリアンとその子孫であるが、その多くは日本国内で出生し、日本文化の中で生活し、日本語を完璧に話し、日本人と同様の社会生活を営んでいる。このような在日コリアンに対する別異の取扱いは、形式的には国籍による区別の問題に見えても、実質的には民族的出身による差別であり、人種差別撤廃条約第5条(c)及び第5条(e)(i)に違反する。
2. 調停委員
日本では、民事事件及び家事事件については、訴訟手続とは別に調停制度が設けられている。調停制度においては、裁判官1名と民間から選ばれた調停委員二人以上で構成される調停委員会が、必要に応じて助言やあっせんを行い、当事者の合意によって実情に即した解決を図ることになる。弁護士である調停委員については、 弁護士会の推薦に基づき最高裁判所が任命することが通例である。
また、簡易裁判所の訴訟手続においては、裁判所は、必要があると認めるときは和解を試みるについて司法委員に補助をさせ、又は司法委員を審理に立ち会わせて事件につきその意見を聞くことができる。司法委員については、実務上、簡易裁判所から弁護士会に推薦依頼がなされ、弁護士会から推薦を受けたものが司法委員に委嘱されることが通例である。
2003年3月に、兵庫県弁護士会が神戸家庭裁判所に韓国籍の会員を家事調停委員候補者として推薦したところ、任命を拒否された。また、2003年3月に、東京弁護士会が在日コリアンの弁護士を司法委員に推薦したところ、任命を拒否された。以後、2014年7月22日現在の間に、各地の弁護士会が、合計25回、延べ31名の外国人調停委員又は司法委員(なお、外国人はすべて在日コリアンである。)の推薦を行ったが、すべて任命を拒否された。最高裁は「公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とする公務員には、日本国籍を有する者が就任することが想定されていると考えられるところ、調停委員及び司法委員はこれらの公務員に該当するため、その就任のためには日本国籍を有する者と解することが相当である」という立場を踏襲している24。
<http://www.nichibenren.or.jp/en/document/opinionpapers/20090318_2.html>。この本文中に、日弁連が、調停委員・司法委員の採用について日本国籍を必要とする理由について照会を行ったところ、最高裁判所事務総局人事局任用課より、本件回答を得たとある(2008年10月14日付)。
この点、調停委員及び司法委員の職務は、いずれも、法的知識や社会経験に基づいて当事者の合意形成を促し、裁判官に参考意見を述べる等の調整を行うものにすぎず、公権力の行使を担当するものではない。日本の社会制度や文化に精通し、高い識見のある人物であれば、国籍の有無にかかわらず調停委員及び司法委員の職務を果たすことができることは明らかである。調停委員としての任命を拒否された在日コリアンは、いずれも、日本社会の構成員として、長年日本で過ごし、日本の司法試験に合格して弁護士になった者であり、彼(女)らの調停委員への任命拒否に合理的な理由はない。また、旧植民地出身者及びその子孫である在日コリアンに対する、国籍を理由とする別異の取扱いは、民族的出身若しくは種族的出身を理由とする人種差別を構成することは上述のとおりである。
3. その他の公職からの排除
上記に加え、多くの自治体が消防職員のうち消火活動等の業務を行う者への就任を日本国籍を有している者に制限しているが、緊急時に私人の生命や身体の安全を確保し、財産を保護するという消防職員の職務に照らし、日本国籍を有することを必要とする正当な目的はない。また、人権擁護委員、民生委員、児童委員等の公職については、そもそも公権力の行使を行うものではなく、地域共同体の一員である定住外国人を排除する合理的な理由はない。
したがって、これらの公職からの旧植民地出身者である在日コリアンを排除することは、第5条(c)及び第5条(e)(i)に違反することは明らかである。
V. 提言
以上の問題点をふまえ、LAZAKとしては、人種差別撤廃委員会が日本政府に対し、下記の勧告をされるよう要請する。
・ 地方公務員の管理職に外国人が昇任することを禁止する法律、行政規則、及び制度運用を撤廃すべきである。
・ 調停委員、司法委員、消防職員等の公務員について、外国人の任用を禁じる内容の法律、行政規則、制度運用を撤廃すべきである。
朝鮮学校の高等学校等就学支援金制度からの排除
I. 問題の要点
日本政府は、高等学校等就学支援金制度から朝鮮学校を排除している。また、地方自治体の多くは、政治的理由により朝鮮学校に対する補助金を停止又は廃止している。かかる措置は、在日コリアンという民族的出身に基づき、朝鮮学校に通う生徒の教育を受ける権利を差別的に侵害するものである。日本政府及び地方自治体はこのような差別的取扱いを是正すべきである。
II. 日本政府の報告の内容
日本政府報告書は、人種差別撤廃条約第5条第5項(4)に関して132項、133項、134項で、「外国人学校は、その一部が各種学校として都道府県知事の認可を受けており、その自主性は尊重されている。」25「後期中等教育段階においても、家庭の教育費負担の軽減のため、2010年4月から公立高校の授業料を無償にするとともに、国立・私立高校等の生徒に支援金を支給する制度(公立高校授業料無償制・高等学校等就学支援金制度)を開始している。」26「この制度は、1)国公私立の高等学校、2)中等教育学校(後期課程)、3)特別支援学校(高等部)、4)高等専門学校(第一学年から第三学年)、5)専修学校高等課程、6)各種学校となっている外国人学校のうち高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学大臣が指定する学校に在学する生徒であれば、国籍を問わず制度の対象としている。なお、各種学校となっている外国人学校のうち高等学校の課程に類する課程を置くものとしては、a)大使館を通じて日本の高等学校の課程に相当する課程であることが確認できるもの、b)国際的に実績のある学校評価団体の認証を受けていることが確認できるもの、c)a及びbに掲げるもののほか、高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして、文部科学大臣が指定したものを対象と認めている。」27と報告している。
25 前掲注(6)、パラグラフ132。
26 前掲注(6)、パラグラフ133。
27 前掲注(6)、パラグラフ134。
28 The Government of Japan, Replies of Japan to the List of Issues of the Human Rights Committee (March 6, 2014), CCPR/C/JPN/Q/6/Add.1. (“2014 Japan’s Reply to the Human Rights Committee List of Issues”) at ¶29.
29 Id at ¶30.
30 前掲注(7)、パラグラフ29。
2014年3月、国連人権委員会の質問事項に対する政府回答において、日本政府は、朝鮮学校を高等学校等就学支援金制度から除外した理由について、「朝鮮学校が高等学校等就学支援金制度の対象適格を満たすかどうか審査したところ、朝鮮学校は、朝鮮総連と密接に関係しており、教育内容や人事、財政の面で、その影響を強く受けていることが明らかとなった。そのため、指定要件の一つである『法律や規則に基づく適切な学校経営』の要件を満たさないと判断し、本制度の対象適格を満たさないと結論した28。…将来的に、北朝鮮との外交関係が改善されれば、朝鮮学校の対象適格が見直される余地はある29」と説明している。
III. 法的枠組
1. 関連する条文及び一般的勧告
朝鮮学校の高等学校等就学支援金制度 に最も深く関連する条文は、第2条1項(a)及び(c)、並びに第5条(e)(v)である。
また、一般的勧告30第29項は、「教育の分野における経済的、社会的及び文化的権利の、市民でない者による享有を妨げる障害を排除すること」を勧告している30。
2. 過去の国連の委員会の指摘事項
人種差別撤廃委員会は、2010年3月9日、第3回.第6回日本政府報告書に対する総括所見22において、(1)締約国に居住する外国人及び韓国・朝鮮系、中国系の学校に対する公的支援や補助金、税制上の優遇措置に関する異なる扱い、及び、(2)締約国において現在国会にて提案されている公立及び私立の高校、専修学校並びに高校に相当する課程を置く多様な機関の授業料を無償とする法制度変更において、北朝鮮の学校を除外することを示唆する複数の政治家の姿勢(第2条及び第5条)を含め、子どもの教育に差別的な影響を及ぼす行為について懸念を表明した31。
31 前掲注(5)、パラグラフ22。
32 同上。
33 国連社会規約委員会の日本に関する総括所見(2013年1月10日)、E/C.12/JPN/CO/3、パラグラフ16。
34 同上。
35 前掲注(5)、パラグラフ22。
また、委員会は、「非市民に対する差別に関する一般的勧告30に照らして、教育機会の提供において差別がないこと、締約国の領域内に居住する子どもが学校への入学や義務教育就学において障壁に直面しないことを締約国が確保すること」、及び、「少数グループが自らの言語に関する教育や自らの言語による教育を受けられるように適切な機会を提供すること」
を勧告している32。
また、国連の社会権規約委員会は、2013年5月7日に出された総括所見パラグラフ27において、「公立高校授業料無償制・高等学校等就学支援金制度から朝鮮学校が排除されており、そのことが差別を構成していることに懸念を表明」した33。その上で、委員会は、「差別の禁止は教育のすべての側面に完全かつ直ちに適用され、すべての国際的に禁止される差別事由を禁止の事由に包含することを想起し、締約国に対して、高等学校等就学支援金制度は朝鮮学校に通学する生徒にも適用されるよう要求する」旨を勧告している34。
IV. 背景事情
1. 朝鮮学校
第二次世界大戦終了後、日本に居住するコリアン達は、自身の子どもたちを教育する施設として朝鮮学校を設立した。現在朝鮮学校は日本の各地に存在するが、日本と外交関係のない北朝鮮とも関係を維持している。朝鮮学校においては、基本的に授業は朝鮮語で実施され、朝鮮の歴史や社会についてもカリキュラムに盛り込まれている。他方日本史や日本社会の仕組みについての教育も行われるなど、日本の教育制度とも一定の相似性をもっている。
日本では、基本的に日本語で書かれた検定教科書を使用して授業を行う教育施設が「学校」とされているため(教育基本法第1条、第34条、第62条)、朝鮮学校をはじめとする外国人が母国語で独自の教育を行う施設は、「学校」として国の認可を受けることができない。但し、学校教育に類する教育を行うものは、「各種学校」として、自動車教習所等と同じく都道府県知事の認可を受けることは可能であるので、朝鮮学校を含む外国人を対象にした教育施設の多くは都道府県知事の認可を受け、「各種学校」という地位に置かれている。
朝鮮学校をはじめとする外国人学校は、高等学校等就学支援金制度による場合を除き、国庫からの助成金を受けられない。また、地方自治体からは、一定の補助金を受けているが(補助金の額は自治体に応じて区々である。)、その額は、地方自治体が日本の学校に対して支給する補助金に比べて大幅に少ない。
この他、朝鮮学校に対しては、(1)朝鮮学校の卒業生には当然には日本の大学の受験資格が認められない、(2)欧米系評価機関の認定を受けたインターナショナル・スクールに対する寄付金は税制的優遇措置の対象となるのに対して、朝鮮学校に対する寄付金はかかる優遇措置の対象外となる等、各種の差別的取扱いが存在する35。
2. 高等学校等就学支援金制度からの排除
II.に記載したとおり、日本では2010年4月から高等学校等就学支援金制度が実施され、各種学校として認可されている外国人学校についても制度の対象としているが、朝鮮学校だけが制度の対象から排除された。
高校無償化法施行当初、外国人学校は、II.の日本政府報告書記載の(a).(c)の3つの項目のいずれかに該当する場合に限り、高等学校等就学支援金制度の対象適格を有するとされた。朝鮮学校は、日本と北朝鮮との間に外交関係がなく教育課程が確認できないという理由で(a)の対象から外れているほか、国際的に実績のある学校評価団体の認証を受けていないため、(b)の対象にもならない。したがって、朝鮮学校に同制度が適用されるためには、(c)が規定する文部科学大臣の指定を受ける必要がある。
この点、指定の申請期限である2010年11月30日までに10校の朝鮮学校により申請が行われたにもかかわらず、文部科学大臣は2年以上も結論を出さなかった。その間、c)の対象に含まれるとして朝鮮学校よりも遅れて申請を行った他の外国人学校2校は、所定の手続を経て高等学校等就学支援金制度の対象となっている。
さらに、2013年2月20日、文部科学大臣は(c)を削除する省令改正を行い、朝鮮学校を制度の対象から排除した。省令改正にあたって文部科学大臣は、「朝鮮学校については、拉致問題の進展がないこと、朝鮮総連と密接な関係にあり教育内容、人事、財政にその影響が及んでいることを踏まえると、現時点では国民の理解を得られないと考えております」との見解を表明している。また、II.で上述したように、日本政府は、北朝鮮との外交関係が改善されれば、朝鮮学校の対象適格も見直される余地があると明確に述べており36、施行規則の改正が、北朝鮮との政治情勢の影響を受けたものであることは明白である。
36 前掲注(28)、パラグラフ29。
上記の措置により、これまでに朝鮮学校高級部の卒業生約3000人が高等学校等就学支援金制度の対象から排除され、2014年7月24日現在においても約1800人の高校生が同制度の対象から除外されている。
このように、高等学校等就学支援金制度からの在日コリアン学生の排除は、日本に居住するコリアンに差別的効果をもたらしている。児童たちには左右できない日本と北朝鮮間の政治情勢を理由にこのような差別的取扱いを行うことは許されない。
3. 地方自治体の補助金への影響
朝鮮学校に対しては、都道府県や市町村からの補助金が長年支給されてきたが、朝鮮学校の高等学校等就学支援金制度からの排除を背景にして、補助金の打ち切り・減少が相次いでいる。とりわけ、大阪府及び大阪市が2011年度に補助金を不支給にしたことを皮切りに、補助金の打ち切りや廃止の動きが全国に広がり、域内に朝鮮学校がある27都道府県のうち8都府県が、2013年度予算案に朝鮮学校への補助金を計上しなかった。また、市町村レベルにおいても、補助金の不支給の動きが続いている。これらの補助金の不支給に際しては、多くの自治体が、北朝鮮の核実験や拉致問題の進展がないことを理由として挙げており、不支給の決定に際して政治的な考慮が働いていることは明確である。
子どもたち自身がどうすることもできない国外の政治的な事件の責任を子どもたちに負担させることは、朝鮮学校に通う在日コリアンの教育を受ける権利を侵害するものである。
V. 提言
教育を受ける権利は、およそ子どもたちに普遍的なものであり、特定の国家間の外交関係に左右されるべきものではない。上述したところをふまえ、LAZAKとしては、人種差別撤廃委員会が日本政府に対し、下記の勧告をされるよう要請する。
・ 日本政府は、朝鮮学校についても高等学校等就学支援金制度の対象に含めるべきである。
・ 地方自治体は、朝鮮学校への補助金支給の停止及び廃止措置を撤回するべきである。
在日コリアンを攻撃対象とするヘイトスピーチ
I. 問題の要点
近時、民族的マイノリティ、主として在日コリアンを対象としたヘイトクライム及びヘイトスピーチの問題が深刻化している。しかし、日本政府は、ヘイトスピーチについての実態調査すら行っておらず、ヘイトスピーチの防止に向けた実効的な対策を何ら取っていない。ヘイトスピーチが蔓延する現在の状況は、社会の自浄作用により対処できるレベルを超えており、日本政府は第4条(a)及び(b)の留保を撤回し、ヘイトスピーチを規制する立法措置を講じるべきである。
II. 日本政府の報告内容
日本政府は、第4条(a)及び(b)に関して留保を付しており、2013年1月に委員会に提出した報告書には、「留保を撤回し、人種差別思想の流布等に対し、正当な言論までも不当に萎縮させる危険を冒してまで処罰立法措置をとることを検討しなければならないほど、現在の日本が人種差別思想の流布や人種差別の煽動が行われている状況にあるとは考えていない」旨の記載がある。また、日本政府はヘイトスピーチ規制については、「現行法で対処可能」とし37、法務省人権擁護局による啓発活動や外国人の権利についてのトレーニングを行う予定である38という従来の主張を繰り返している。
37 前掲注(12)、パラグラフ84。
38 前掲注(28)、パラグラフ80。
39 前掲注(15)、パラグラフ13。
40 同上。
III. 法的枠組
1. 関連する条文及び一般的勧告
ヘイトスピーチに最も深く関連する条文は、第2条第1項柱書及び同条(b)(d)、第4条及び第5条(a)(b)である。なお、第4条(a)、(b)については、日本政府は、憲法と抵触しない限度において、第4条の義務を履行する旨留保を付している。
また、一般的勧告35は人種的ヘイトスピーチに対するアプローチ全般について、一般的勧告30は外国人に対する差別に関して広範な規定を設けている。
2. 過去の国連の委員会の指摘事項
人種差別撤廃委員会は、2010年3月9日、第3回.第6回日本政府報告書に対する総括所見13において、第4条(a)及び(b)の留保の範囲の縮小及びできれば留保の撤回を視野に入れて検証することを慫慂している39。また、委員会は、以下の3点について具体的な勧告を行っている40。
(a)本条約第4条の差別を禁止する規定を完全に実施するための法律の欠如を是正すること
(b)憎悪的及び人種差別的言論に対しては、関与者の捜査や処罰を行うように努めるなどの追加的措置を含め、憲法、民法、刑法の関連規定が効果的に施行されるべく確保すること
(c)人種主義的思想の流布に反対する注意喚起・意識啓発キャンペーンを向上させるとともに、インターネット上でのヘイトスピーチや人種差別的プロパガンダを含む、人種主義的動機に由来する違反行為を防止すること
また、国連人権委員会は、2014年の総括所見において、「コリアン…などのマイノリティ集団の構成員に対する憎悪と差別を扇動する人種主義的言論が広がりをみせていること、及び、現行民法・刑法の枠組下の法的手当では、これらの言論からの保護は不十分であることについて、懸念を表明する。さらに、許可を得て行われる過激論者による示威行動の多さ、外国人学生をはじめとするマイノリティに対するハラスメントや暴力についても、懸念を表明する」とした41。とりわけ、委員会は、日本政府に対し、ヘイトスピーチを防止するため以下の3つの措置を採るよう勧告している42。
41 Human Rights Committee, Concluding Observations (Advance Unedited Version), Japan, (July 24, 2014) CCPR/C/JPN/CO/6 at ¶12.
42 Id.
43 在特会のウェブサイトは、http://www.zaitokukai.infoよりアクセス可能である。但し、会員登録は無料であり、メールアドレス以外の個人情報(住所や実名等)を提供する必要はない。
44 人種差別撤廃委員会の、日本に関する総括所見(2001年4月27日)、CERD/C/304/Add.144、パラグラフ12。
45 前掲注(5)、パラグラフ9。
(a)人種的優越又は人種的憎悪を唱道し、差別や敵意、暴力の扇動となるすべてのプロパガンダを禁止すること、また、そのようなプロパガンダの流布を意図した示威行動も禁止すること
(b)反人種主義の意識啓発キャンペーンに十分な資金配分を行うとともに、裁判官、検察官、警察官が、憎悪及び人種的動機に由来する犯罪を認識し、訴追・処罰できるような訓練を受けられるよう、一層努力すること
(c)人種主義的攻撃を防止するため、また、違反者に対しては、徹底した捜査と訴追の後に、有罪なら適切な刑罰が科されるようにするため、必要なあらゆる措置をとること
IV. 背景事情
1. 日本における排外主義の台頭
2000年代に入り、日本では、在日コリアンをはじめとする人種的マイノリティを対象とした排外主義の動きが急速に広がっている。インターネット上には、在日コリアンをはじめとする人種的マイノリティに対する匿名での差別的書き込みがあふれている。また、近時は、主に在日コリアンを攻撃対象とした街頭デモや集会が増えている。
排外主義団体は、インターネットを通じてメンバーを集め、在日コリアンに対する憎悪発言や威嚇にあふれたデモや集会を繰り返している。「在日特権を許さない市民の会」(在特会)は、このような排外主義団体の代表格である。2006年に設立された在特会は、戦前から日本に居住する在日コリアン及び在日中国人に付与されている特別永住資格の廃止を目的とし、在日コリアンに対する生活保護受給資格などの様々な権利付与に反対する。2014年7月24日現在、在特会の会員数は14,000人を超えており、日本全国に支部が置かれている43。
この団体は、他の排外主義団体とも共同して、主として、朝鮮学校やコリアンタウンなどの在日コリアンコミュニティを攻撃対象とする排外的なデモや集会を繰り返している(排外デモの事例については「2. 事例.ヘイトスピーチの過激化」を参照)。これらの団体は、事前にウェブサイトでデモを予告して参加を呼びかけ、現場での過激な暴言・暴行をビデオ撮影してウェブサイトで公開することにより、支持を拡大してきた。
このような排外主義団体の台頭を許してきた背景事情の一つとしては、日本政府が、在日コリアンに対する人種差別を防止するための効果的な対策を取らず、むしろ近時に至り、在日コリアンに対する制度的差別を強化してきたことがあげられる。例えば、日本政府に対する人種差別撤廃委員会による審査が始まった2001年当初から、在日コリアンに対する人種差別の問題については懸念が示され、人種差別の処罰化や政府高官による差別的発言の防止に向けた措置を採ること等の勧告がなされてきた44。しかし、日本政府が勧告に沿った措置を採ったことはなく、人種差別的政策や、政府高官による差別的発言がその後も続いた。2010年3月に出された「第3回~第6回政府報告に関する人種差別撤廃委員会の最終見解」においても、直接的・間接的人種差別を禁止する法案の制定や政府高官による差別的発言の防止措置実施を含む同様の勧告が出されている45。この間、2002年9月の日朝首脳会談において北朝鮮政府による日本人拉致問題が公的に明らかになったこと等を契機として、マスコミによる北朝鮮に対する憎しみを煽る報道が加熱し、2010年に始まった公立高校授業料無償制・高等学校等就学支援金制度から朝鮮学校が除外されるなど在日コリアンに対する制度的差別が強化された。以上のような、マスコミ報道と政府による在日コリアンに対する制度的差別の強化は、排外主義団体の活動の助長・促進につながっている。
2. 事例.ヘイトスピーチの過激化
在特会らの排外主義団体は、東京及び大阪のコリアンタウンの周辺に、数百人単位で集結し、ヘイトスピーチを用いたデモや街宣を行ってきた。研究者グループの報告によれば、2013年の1年間だけで、日本全国で少なくとも360件の排外的デモ行進や街宣車による街宣活動が行われている46。
46 のりこえねっとウェブサイト<http://wwwnorikoenet.org/fact.html>を参照。のりこえねっとは、在日コリアン人権活動家や、前首相、弁護士、研究者などを共同代表者として、2013年9月に設立された。
47 在特会による朝鮮学校襲撃事件を撮影したビデオ映像(英語字幕あり)については、
ttps://www.youtube.com/watch?v=8C1NbntRWDI参照。
48 本件ヘイトスピーチのビデオ映像は、<ttps://www.youtube.com/watch?v=xq8oAZ0sQLM>より視聴可能である。
これらのデモや街宣の様子は、主催者らによって撮影され、インターネット上に投稿される。2014年7月24日現在においても、その多くが閲覧可能である。以下、在日コリアンを攻撃対象としたヘイトスピーチの事例の一部を紹介する。
(1) 京都朝鮮学校襲撃事件
2009年12月4日、在特会の会員が京都朝鮮第一初級学校の正門前に押し掛け、マイクを用いたヘイトスピーチを行った。また、朝礼台やスピーカーなど、同校の備品の一部を破壊した。ヘイトスピーチの内容は、以下のようなものである47。
「朝鮮学校、こんなもんは学校でない」「朝鮮学校を日本から叩き出せ」「北朝鮮のスパイ養成機関」「約束というのは人間同士がするもの。人間と朝鮮人では約束は成立しない」「おまえら、うんこ食っとけ、半島帰って」
在特会は、2010年1月14日及び3月28日にも、同学校周辺でヘイトスピーチを用いたデモを行った。
これらのデモの際には、警官が学校周辺に集まったものの、在特会の言動を黙認した。
朝鮮学校側は、2009年12月21日に在特会のデモ参加者を刑事告訴し、2010年8月に、実行犯4名が威力業務妨害罪、侮辱罪、器物損壊罪で逮捕、起訴された。2011年4月に京都地裁は被告人らに対して1年~2年の懲役刑を言い渡したが、いずれも執行猶予が付された。この量刑は、人種主義的動機に由来しない同種事件と均衡しており、人種主義的動機については量刑に反映されなかったといえる。
この間、学校側は、在特会及びその会員に対し、損害賠償と将来の学校周辺での街宣等の差止めを求める民事訴訟も提起している。2013年10月17日、京都地裁は、損害賠償を認め、将来にわたる学校の半径200メートル以内における街宣等を禁止する判決を出した。判決においては、被告らの行為が人種差別的動機に基づくものと認定され、かかる人種差別的動機は、人種差別撤廃条約6条に照らし、損害賠償額を加重する要因となると判断された。他方で、ヘイトスピーチが不特定の集団全体に向けられた場合には、新たな立法なしに、現行民法に基づく救済を求めることはできない旨判示されている。この判決は2014年7月8日に出された控訴審においても維持されたが、在特会側が上告し、2014年7月20日現在も、最高裁において係属中である。
(2) コリアンの「大虐殺」が叫ばれた鶴橋でのヘイトスピーチ
2013年2月24日、排外主義団体は、大阪のコリアンタウン鶴橋において、ヘイトスピーチデモを行った。100人ほどの参加者が集まり、ハンドマイクを通じて、次のようなヘイトスピーチが発せられた48:
「ゴキブリチョンコを日本から叩き出せ」「お金のためなら何でもする売春婦、それが朝鮮人なんですよ」「在日朝鮮人は不法入国という犯罪者なんですよ」「へたれチョンコ、死にさらせカス」「いつまでも調子に乗っとったら、鶴橋大虐殺を実行しますよ」49
49 <https://www.youtube.com/watch?v=GoTBRpcaZS0>
50 本件ヘイトスピーチのビデオ映像は、<ttps://www.youtube.com/watch?v=4ySNSac_X_w>より視聴可能である。
51 在日コリアン青年連合「在日コリアンへのヘイトスピーチとインターネット利用経験などに関する在日コリアン青年差別実態アンケート(中間報告案)」、2014年6月。
これらのデモや街宣の際には、警察がデモや街宣の現場に臨場していたものの、デモ参加者の言動を黙認した。
(3) 「皆殺し」や「ガス室送り」が叫ばれた新大久保でのヘイトスピーチ
2013年2月9日、排外主義団体は、東京にあるコリアンタウン新大久保においてヘイトスピーチを行った。200人ほどが参加したデモと街宣では、スピーカーを通じて、次のようなヘイトスピーチが発せられた50:
「寄生虫、ゴキブリ、犯罪者。朝鮮民族は日本の敵です」「うじ虫韓国人を日本から叩き出せ!」「人殺し、強姦魔。それが朝鮮人ですよ」「朝鮮人を皆殺しにしろ」「新大久保を更地にしてガス室を作れ。ガス室に朝鮮人・韓国人を叩き込め」
これらのデモや街宣に際しても、臨場した警官はデモ参加者の言動を黙認した。同様の街宣は継続的に行われ、新大久保では、2013年1月から6月の間に、数十人から数百人規模でのヘイトスピーチデモ・街宣が少なくとも9件行われた。直近では、2014年5月11日に、新宿の、新大久保のコリアンタウンからわずか200メートルしか離れていない場所で、デモが行われた。
3. 被害実態
排外主義的団体によるヘイトスピーチを用いたデモ・街宣により、付近に居住する在日コリアンの多くが、生命身体の危険を感じ、恐怖感を抱いている。また、コリア系の学校に通うコリアン学生に対する心理的悪影響は極めて大きい。ヘイトスピーチの被害者は韓国国籍・朝鮮籍の保有者に限られない。親の世代ないし自身が帰化して日本国籍を取得し日本人として生きてきた人々も、在日コリアンに対するヘイトスピーチを自分自身に向けられた侮辱や攻撃としてとらえ、恐怖感や不安を覚えている。例えば、在日コリアン又はコリア系日本人の若者(ほとんどが30代以下)を対象に、在日コリアン青年連合が2013年6月から2014年3月にかけて実施したアンケート調査(回答者数は約200人)によれば、その約3分の1が、「日本人が怖くなった」「日本人に在日であることを知られるのを避けるようになった」「在日であることがいやになった」といったヘイトスピーチ回避傾向、自己肯定観の低下や喪失などを示す感想を示している51。
また、ヘイトスピーチを用いたデモや街宣が行われて以降、コリアンタウンを訪れる顧客が減少しコリアンタウンの飲食店・土産物店などの売上が落ちている。例えば、2014年度の新大久保のコリアンタウンへの日本人訪問客は、2年前と比べて3分の1を下回っており、この1年半の間に150件以上の飲食店・土産物店が廃業又はオーナーの変更を余儀なくされている。
4. 日本政府の対応は不十分である。
上述のとおり、近時日本においてはヘイトスピーチが蔓延し、在日コリアンは甚大な被害を受けている。にも関わらず、日本政府は、ヘイトスピーチの防止に向けた具体的な取り組みを何ら行っていない。
人種差別撤廃条約第2条第1項(b)(d)、第4条によって、人種差別を扇動する排外的団体に対しては、公的施設の利用を許可しないことも可能であるが、日本政府は、これらの規定を無視し、さらに、国内法令の適用をも避けることで、排外主義団体の活動を黙認・庇護している状況にある。
2014年3月、日本政府は、国連人権委員会の質問事項に対する答申の中で、法務省人権擁護局による様々な活動に取り組むほか、「トレーニングにおいて、外国人の権利問題をより頻繁に扱う予定である」と述べた52。
52 前掲注(28)、パラグラフ80。
53 人種差別撤廃委員会の日本政府報告審査に関する最終見解に対する日本政府の意見(2001年8月)、CERD/A/56/18、パラグラフ5・6。
しかし、これまで数十年以上にわたり、法務省人権擁護局は外国人の人権尊重等を内容とするトレーニングを行ってきているが、民族的マイノリティへの差別やヘイトスピーチを予防するには十分でなかった。むしろ、ヘイトスピーチは近年になって日本全国に広がっている。また、日本政府は、問題となっている排外主義的デモの呼びかけ内容や、参加人数、参加団体、日時場所、警察の対応等の情報を調査してもいない。日本政府の採る措置が、ヘイトスピーチを防止するのに十分ないし有効とはいえないことは明らかである。
日本では、今日に至まで、ヘイトスピーチを規制する法律はない。日本政府は、現行法で対処可能であることの根拠として、(1)特定人若しくは特定の集団に向けられたヘイトスピーチについては、刑法の名誉毀損罪、侮辱罪、脅迫罪又は信用毀損・業務妨害罪等の要件を満たした場合には適用が可能であり、(2)私人による差別について不法行為が成立する場合には、そのような行為を行った者に損害賠償責任が発生すると説明する53。
しかしながら、被害者が通常の民事訴訟を提起するには多大な負担がかかるため、裁判が提起される例は極めて少ない。通常の民事裁判は確定するまで通常数年はかかる。裁判費用や弁護士費用を被害者が負担しなければならない。被害者側が、不法行為の成立要件について主張・立証責任を負う。裁判をおこせば、被害者が公然化し、それによりまたヘイトスピーチなどの攻撃の対象となりうる。また、裁判となった場合でも、差別的な動機が考慮されて、賠償金額が通常より加重された例はほとんどない。
また、刑法は、特定の個人に向けられた発言のみを名誉棄損罪や侮辱罪による処罰の対象としているため、在日コリアンや中国人グループなど不特定の集団全体を対象とするヘイトスピーチは、刑法によって罰せられない。よって、東京や大阪のコリアンタウンで繰り返された、「朝鮮人を皆殺しにしろ」といった威嚇発言を含むヘイトスピーチを、現行刑事法で処罰することはできない。
たとえ、特定の個人や集団に向けられたヘイトスピーチであったとしても、現行法の枠組みでは、ヘイトスピーチの被害者を保護するには不十分である。被害者は、警察若しくは検察に告訴することはできるが、起訴をするかどうかの裁量を有する検察官は、ヘイトスピーチを起訴することに消極的である。加えて、行政や警察は、名誉棄損罪や侮辱罪、威力業務妨害罪等の現行刑事法が適用可能な状況にあっても、排外主義デモ参加者に対してこれを厳粛に適用することを回避する傾向がある。
さらには、2013年より活発化した日本国市民による集団的な反レイシスト運動に対してさえ、警察は、捜査・逮捕を行っており、このような警察業務の在り方が、民間団体による反レイシズム街宣活動の気勢を削ぎ、委縮させている。
多くのデモの現場においては、ヘイトスピーチデモにカウンター行動を行なっている者が近づけないように、警察官がズラリと並んでヘイトスピーチデモの行列を守っている。カウンター行動を行なっている者は、警察官が腕組みをして作った円陣の中に封じ込められ、抗議の声を上げると、直ちに5~6人の警察官に取り囲まれて、ヘイトスピーチデモから200メートル程度離れたところへ連れて行かれる。連れて行かれた先でも声を上げることを止めないと、「挑発行動は止めろ」という強い指示が出された後、それでも止めないと「これ以上、続けたら逮捕する」と警告される等、あたかも行政が排外主義デモを守り、これに抗議する市民たちを弾圧する構図になっている。現在に至るも、排外デモ・差別街宣の場で行われるヘイトスピーチは、行政による有効な対処策が講じられることなく庇護・放置されている状態である。
V. 提言
LAZAKとしては、以上の問題点をふまえ、日本政府に対し、下記の勧告をされるよう要請する。
・ 日本政府は、批准を留保している人種差別撤廃条約第4条(a)(b)に関する留保を撤回すべきである。
・ 日本政府は、人種差別撤廃条約第2条第1項柱書及び同条(b)(d)、4条(c)を遵守し、人種差別を助長・扇動する団体のデモ及び集会、公共の施設等の利用を禁止すべきである。
・ 日本政府は、ヘイトスピーチが蔓延している現状を直視し、ヘイトスピーチをはじめとするマイノリティに対する差別の実態調査を行うべきである。
・ 日本政府は、ヘイトスピーチが法律で処罰すべき違法行為又は犯罪であると認め、包括的差別禁止法やヘイトスピーチ禁止法の制定等、ヘイトスピーチと効果的に闘うための措置を採るべきである。
・ 日本政府は、ヘイトスピーチ根絶のため、国際人権基準を教えることを含む、具体的な人種差別撤廃教育の計画を立案・実行すべきである。

北山(※書き起こしです。)(北山)
在特会らによるヘイトスピーチ等に関する2013年10月7日京都地裁判決についての声明
2013年10月17日 在日コリアン弁護士協会(LAZAK)
2013年10月7日、京都地方裁判所は、在特会およびその役員、その他関係者(以下、「在特会ら」という。)が、2009年12月から2010年3月にかけて、京都朝鮮第一初級学校を標的に行った示威活動およびネットでの映像公開(以下、「本件示威活動等」という。)について、不法行為が成立するかなどが争われた民事訴訟事件において、本件示威活動等が業務を妨害し、また名誉を毀損する不法行為であり、かつ、人種差別撤廃条約の「人種差別」に該当するとして、被告在特会らに対し、不法行為に基づく損害賠償責任、街宣活動の差止めを認める判決(以下、「本件判決」という。)を下した。
当会は、本件判決を支持し、賛意を表する。
本件示威活動等に参加した在特会関係者らに対しては、先行する刑事事件において、既に威力業務妨害罪、侮辱罪、器物損壊罪の有罪判決が下され、刑が確定していたところであった。
京都地裁は、本件判決において、在特会らの発言を下品で侮辱的であると断じ、本件示威活動等が業務を妨害し、名誉を毀損する不法行為に該当すると認定したうえで、さらに、「本件活動に伴う業務妨害と名誉毀損は、いずれも、在日朝鮮人に対する差別意識を世間に訴える意図の下、在日朝鮮人に対する差別的発言を織り交ぜてなされたものであり、在日朝鮮人という民族的出身に基づく排除であって、在日朝鮮人の平等の立場での人権及び基本的自由の享有を妨げる目的を有するものといえる」として、日本が加入している人種差別撤廃条約1条1項所定の「人種差別」に該当する、と判示した。
そのうえで、本件判決は、在特会らの名誉毀損行為について、「専ら公益を図る」目的でされたものとは到底認めることができないとし、また、在特会らが、意見や論評であるとして法的な免責を主張した点についても、侮辱的な発言(いわゆる悪口)としか考えられず、免責を認めることはできない、と判示した。違法性が阻却されるなどの在特会らの主張を一蹴し、在特会らを厳しく糾弾したものである。
在特会らの示威活動は、在日コリアンという民族的少数者などに対する憎悪や敵対意識を強調し、在日コリアンなどに対する差別意識を周囲に表明する、いわゆる「ヘイトスピーチ」、「ヘイトクライム」にほかならず、歪んだ認識と、悪意、憎悪に満ちたものである。在特会らの差別的な発言が、憲法14条に平等原則を掲げ、人種差別撤廃条約に加入している日本の憲法下において、法的保護に値しないことはあまりにも明らかなことである。
裁判所が、基本的人権擁護の最後の砦として、在特会らの本件示威活動等を、不法行為であり、かつ、人種差別である明確に認定し、また、専ら公益を図る目的でなされたものでない、と判示したことは、良識に基づく妥当な判断であるといえる。加えて、本件判決が、業務妨害および名誉毀損による無形損害に対する賠償額について、人種差別行為に対する効果的な保護及び救済の観点から、比較的に高額な賠償を認めた点は、画期的である。
人種差別撤廃条約6条は、条約締約国に対して、人種差別行為に対する効果的な保護および救済措置を確保し、ならびに差別の結果として被った損害に対し、公正かつ適正な賠償または救済を裁判所に求める権利を確保する義務を課している。
当会は、少数者の人権侵害を救済することを本来的役割とする自らの使命を自覚して、被害を積極的に救済した京都地裁の姿勢を支持し、改めて賛意を表する。
原告らが強く主張した民族的教育権についての判断を示さなかったことなど、留意すべき点は残るものの、今回の判決は、在特会らによるヘイトスピーチが不法行為、そして人種差別に該当すると明確に認定した点、本件示威活動等に参加した者らには共同不法行為責任を認め、団体としての在特会には使用者責任を認めることにより、在特会および示威活動参加者らに連帯して比較的に高額な賠償の支払いを命じた点で評価に値する。東京・新大久保や大阪・鶴橋のような在日コリアンが多い地域等で今後も繰り返されるおそれがある在特会らのヘイトスピーチ、ヘイトクライムに対しても一定の抑止効果を期待することができる。
当会は、在日コリアン弁護士が結集する団体として、今後も、在特会らの活動およびヘイトスピーチ、ヘイトクライム問題に注視し、在日コリアンをはじめとする民族的少数者の基本的人権の擁護に必要な支援を行っていく所存である。
以上

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