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テーマ【号外8721】
スラップ訴訟に対する法規制を要望する
ご要望
スラップは、訴訟先進国の米国で始まったもので、研究は米国が最も進んでいる。というより、日本も含めた他の国ではまだほとんど研究が進んでいないのが実情だ。
SLAPPという概念を提起したデンバー大学のジョージ・プリング教授とペネロペ・キャナン教授は、次のような定義を示している。
第一に、政府・自治体などが権力を発動するよう働きかける(裁判の提訴や捜査機関への告発など)。
第二に、そうした働きかけを民事訴訟の形をとって行う。
第三に、(政府、自治体、企業ではない)個人や団体(たとえば住民団体)を被告として提訴する。
第四に、公共の利益や社会的意義にかかわる重要な問題を争点とする(たとえば製品の安全性)。
両教授の立論を基に、スラップ訴訟の特徴をまとめると次のようになる。
(1)刑事裁判に比べて裁判化が容易な民事訴訟である。
被告にとっては刑事告訴がより深刻だが、民事訴訟は、紙一枚を書いて裁判所に行けば起こせ、相手にコストを負わせやすいという面がある。誰にでも使える合法的恫喝であり、だからこそ危険である。
(2)公的問題がメディア上など、公の場所での論争になっている。
(3)訴訟の原告あるいは被告は、その公的論争の当事者である。
(4)その公的問題について公的発言をした者が標的とされ、提訴される。ここで言う「公的発言」とは、マスメディアに寄稿することだけでなく、その取材に答えること、ブログや記事を公開すること、新聞の投書欄に投書すること、意見広告を出すこと、労働組合を結成すること、チラシを配布すること、合法的なデモをすることなどが含まれる。
(5)提訴する側は、資金、組織、人材などの資源をより多く持つ、社会的に比較強者である。
(6)提訴される側は、それらの資源をより少なくしか持たない比較弱者である。
(7)提訴によって金銭的、経済的、肉体的、精神的負担を被告に負わせ、苦痛を与える。
つまり、弁護士費用、時間の消費、肉体的・精神的疲労などを被告(被害者)に負わせ、疲弊させ、反対・批判を続ける意欲や能力を失わせる。それにより、被告が公的発言を行うことを妨害する。また、被告が団体の場合には、団結を乱し、分断し、分裂させることを狙う。
(8)訴えの内容、方法などに、合理的な訴訟ならありえないような道理に合わない点がある。
(9)訴えられていない反対者・批判者も、提訴された人たちが苦しむ姿を見て、公的発言をためらうようになる。これをchilling effect(冷や水効果)という。
(10)提訴した時点で批判者・反対者に苦痛を与えるという目的は達成されるので、原告側は裁判の勝敗を重視しない。つまり、訴訟に勝つことは必ずしも目的ではない。
日本では、スラップ訴訟の被告となってきたのは、ジャーナリストなどのメディア関係者が多いが、それ以外の例もある。
たとえば、あるマンション開発業者は、千葉県津田沼市でのマンションで建設に反対する運動を行った住民に対し、損害賠償請求訴訟を起こしている。
今後も、地元の反対運動を伴う開発事業や大型プロジェクトなどに、スラップ訴訟が反対運動抑圧の手段として使われる可能性がある。
スラップ訴訟を起こした者に対しては、被告側(スラップの被害者)が被ったさまざまなコスト(弁護士費用、通信・交通費、時間的損失、精神的苦痛など)を賠償する責任を法的に負わせるべきである。

参考:
toyokeizai.net/articles/-/3626
blog.goo.ne.jp/heo-koida/e/b6c7aa0a51f4629008f86e0196eb755f
www.kokusyo.jp/justice/12602/
legal-diary.jp/diary/弱い者いじめ?スラップ訴訟とは/
www.slapp.jp/usa

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