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2355 ら神奈川弁護士会②(0)

引用元 

神奈川県弁護士会
ttp://www.kanaben.or.jp/index.html

横浜市及び川崎市に対し、学校法人朝鮮学園に対する、補助金予算の執行停止 及び予算の減額の措置を見直すことを求める会長声明
2015年06月12日更新
神奈川県は、2013年2月、朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」という。)の核実験を理由として、学校法人神奈川朝鮮学園(以下「学園」という。)が運営する県内5校の朝鮮学校への運営費補助金を打ち切った。これをきっかけに、横浜市及び川崎市は、既に2013年度予算に計上されていた学園が経営する学校や保護者への補助金支給を凍結した。
 横浜市は2013年10月に「横浜私立外国人学校補助金交付要綱」を改訂し、「国際情勢を鑑み、補助金を交付することが、前条第1項に規定する趣旨(国際交流の増進及び私学教育の進行を図る)に反すると市長が認めた外国人学校にあっては、補助の対象としない」との条項(以下「条項」という)を追加し、2014年度も学園への補助金を予算計上したものの、同条項を根拠に執行しなかった。同市は2015年度予算にも、学園に対する補助金を計上しているが、執行される見通しは立っていない。
 一方川崎市は、2014年度以降、従前の教材費、教員の研修費・授業料等に関する補助金は予算計上せず、新たに「外国人学校児童等健康・安全事業補助金」と「外国人学校児童等多文化共生・地域交流補助金」の支給を始めているが、補助金全体の金額は従前の補助金の額に比べて3分の1以下に減少している。
このような両市の対応の原因が、日本と北朝鮮の国際関係の悪化にあることは明らかである。しかし両市の対応は、国際関係には何らの責任のない学園に通う子どもや保護者に経済的負担をかけるばかりではなく、日本の社会の中で自分たちが疎外されているという精神的な傷を負わせている。こうした事態は、憲法26条が保障する子どもの教育を受ける権利にも影響を及ぼしかねず、わが国が1994年に批准している子どもの権利条約28条及び29条が保障する、教育における機会平等、財政的援助並びに文化的アイデンティティの尊重にも違反するものである。
 2014年8月28日に開催された国連人種差別撤廃委員会の会議で採択された「日本の第7回~9回定期報告に関する調査最終見解」において、「委員会は以下の状況を含む締約国の法規定及び政府活動によって、締約国における韓国・朝鮮系の子どもたちの教育を受ける権利が疎外されていることを懸念する。a)朝鮮学校が高等学校就学支援金対象から除外されていること、b)自治体による朝鮮学校向け財産支援の割り当ての継続的縮小あるいは差し止め(第2条及び第5条)」「委員会は締約国がその立場を見直し、自治体による朝鮮学校への資金提供を再開させ…ることを推奨する」との指摘がなされている。この指摘は尊重されなければならない。
 神奈川県は、学園の児童・生徒に対するしわ寄せが及んでいる状況を見直し、平成26年度から補助金に代わるものとして、外国人学校生等支援事業を開始し、学園に通学する児童・生徒に対しても同事業に基づく外国人学校児童・生徒学費軽減制度事業補助金の支給を実施している。
 以上から当会は、横浜市に対しては凍結されている学園に対する補助金予算の執行を求めるとともに、川崎市に対しては、学園及び保護者に対し従前支給されていたのと同額程度の補助金の支給を求める。
2015(平成27)年6月11日
横浜弁護士会  会長 竹森 裕子

調停委員・司法委員および人権擁護委員についての実質的な国籍要件に関する意見書
2015年07月09日更新
趣 旨
1. 当会は、最高裁判所が、「弁護士となる資格を有する者、民事もしくは家事の紛争の解決に有用な専門的知識を有する者または社会生活の上で豊富な経験知識を有する者で、人格識見の高い年齢四十年以上七十年未満の者」であれば、日本国籍の有無にかかわらず、等しく民事調停委員及び家事調停委員に任命することを求める。
また、司法委員についても、最高裁判所に対し、日本国籍を有することを選任要件とする取扱を速やかに変更し、日本国籍の有無にかかわらず、適任者を選任する扱いとするよう求める。
2. 人権擁護委員については、人権擁護委員法6条は、憲法14条に違反するので、国会においてただちに見直すことを求める。
理 由
1. 人権としての「公務就任権」
当会には、外国人(日本国籍を有しない者を指す。以下同じ。)の会員で、調停委員・司法委員に相応しい人格識見を有しながら、これまでの最高裁判所の運用からして、調停委員・司法委員に任命されることはないと予測される会員がいる。また、人権擁護委員としても適任でありながら、外国人の会員であるため、市町村議会の議員の選挙権を有しておらず、法律上、人権擁護委員への就任が認められない会員がいる。
このような取扱いは、弁護士だけでなく、一般の市民であっても同じであり、調停委員・司法委員あるいは人権擁護委員に適任であったとしても、外国人であれば、これらの委員への就任は認められていない。
そもそも、憲法14条は法の下の平等をうたい、また、マクリーン事件最高裁大法廷判決(最大判昭和53年10月4日)でも、「憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきである」とされている。
 「公務就任権」は、職業選択の自由(憲法22条1項)の一つであり、また個人がその能力・個性等を発揮しつつ社会において活動するなど自己実現の面においても極めて重要であり人格権(憲法13条)としての側面も有している。したがって、「公務就任権」は原則として、外国人にもその保障が及ぶと解すべきであり、日本国籍を有しないことを理由として不合理な区別を行うことは、法の下の平等に反し、許されない。もっとも、国民主権の原理により、一定の公務については、外国人の公務就任権が制限されることもあると解される。
この点、最高裁判所は、国民主権の原理に基づき、国及び普通地方公共団体による統治のあり方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条、15条1項参照)に照らし、「住民の権利義務を直接形成し、その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とするもの」(以下「公権力行使等公務」という。)に、外国人が就任することは、日本の法体系の想定するところではないという判断を示している(最大判平成17年1月26日)。
この判決については、日本弁護士会連合会も、2009年3月18日に「外国籍調停委員・司法委員の採用を求める意見書」を公表し、「広範な範囲の公務員について、その具体的職務内容を問題とすることなく公権力行使等公務員として当然に外国人の就任を拒絶することを認めるものであり不当である」と意見を述べているところであり、その内容について疑問がないわけではない。その点についてはここでは措き、以下では、上記最高裁の平成17年大法廷判決に基づき、公務の内容が「公権力行使等公務」にあたるかどうかを基準に、外国人が、調停委員・司法委員および人権擁護委員へ就任することが制限されていることについて、憲法14条に反するかどうかを判断する。
なお、これらの委員のほかにもさまざまな公務について、外国人がそれに就任することが制限されているが、本意見書においては、弁護士会が推薦に関わっているこれらの委員に絞って、検討し、意見を述べることとする。
2.  調停委員・司法委員について i.  法律等の規定について
民事調停委員及び家事調停委員規則(以下「調停委員規則」という。)1条は、調停委員の採用について、「民事調停委員及び家事調停委員は、弁護士となる資格を有する者又は社会生活の上で豊富な知識経験を有する者で、人格識見の高い年齢四十年以上七十年未満の者の中から、最高裁判所が任命する。ただし、特に必要がある場合においては、年齢四十年以上七十年未満であることを要しない。」と定めている。また、同2条では、欠格事由を定めているが、ここでも国籍等を欠格事由とする規定はない。
また、司法委員については、司法委員規則1条においてその選任要件について「良識のある者その他適当と認められる者であること」と定めがあるだけである。同規則2条では、欠格事由を定めているが、ここでも国籍等を欠格事由とする規定はない。
すなわち、法律にも、調停委員規則・司法委員規則にも、民事調停委員・家事調停委員及び司法委員について、国籍を要求する条項はない。
ii.  現在の運用
 現在、各弁護士会は、地方裁判所・家庭裁判所の推薦依頼に基づいて、調停委員候補を推薦し、各家庭裁判所又は地方裁判所より調停委員候補を最高裁判所に上申し、その上申を受けて最高裁判所が任命する扱いがなされている。司法委員については、各地方裁判所からの推薦依頼を受けて、各弁護士会が司法委員候補を推薦し、各地方裁判所が任命する扱いになっている。
そして、これまで兵庫県弁護士会・仙台弁護士会・東京弁護士会・大阪弁護士会等が外国籍の会員を調停委員ないし司法委員の候補者として推薦したところ、調停委員については最高裁に上申しない等の回答が各地方乃至家庭裁判所からなされ、あるいは司法委員については地方裁判所からその採用が拒否されている。
iii.  最高裁判所の考え方
これを受けて、日弁連が、最高裁にその理由を照会したところ、最高裁判所事務総局人事局任用課は、2008年10月14日付で、「照会事項について、最高裁判所として回答することは差し控えたいが、事務部門の取扱は以下のとおりである。」として、法令等の明文上の根拠規定はないとしながらも、「公権力の行使に当たる行為を行い、もしくは重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とする公務員には、日本国籍を有する者が就任することが想定されていると考えられるところ、調停委員・司法委員はこれらの公務員に該当するため、その就任のためには日本国籍を必要と考えている。」との回答があった。
iv.  検討
 調停制度の目的は、市民の間の民事もしくは家事の紛争を、当事者の話し合いおよび合意に基づき、裁判手続に至る前に解決することにある。
その中にあって、市民の調停委員の本質的役割は、専門的知識もしくは社会生活の上での豊富な知識経験を活かして、当事者双方の話し合いの中で、助言や斡旋、解決案の提示を行い、合意を促して、当事者の互譲による紛争解決を支援することにある。
このような職務の内容に鑑みれば、調停委員の職務は、「公権力行使等公務」にあたるということはできないというべきである。
 確かに、調停調書は確定判決と同一の効力を有するが、それは「調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したとき」(民事調停法16条、家事事件手続法268条)であり、当事者間の合意による紛争解決の意思が尊重されるのであり、当事者の合意が得られない場合には調停は不成立となる。また、調停に代わる決定(民事調停法17条)ないし調停に代わる審判(家事事件手続法284条)もあるが、調停委員は意見を聞かれるだけであり、あくまで決定ないし審判は裁判所が行うこととされている。したがって、これらのことを理由に調停委員が「公権力行使等公務」にあたるということも適当でない。
また、司法委員に関しては、裁判所が必要と認めるときに、和解の補助をしたり、事件について意見を述べたりすることが認められるにすぎず、その職務の内容は純然たる裁判官の補助機能にすぎず、やはり、「公権力行使等公務」には当たらない。
とするならば、外国人であることを理由に調停委員・司法委員への採用を認めない最高裁判所の運用は、法の下の平等を定めた憲法14条に違反する。
さらに、何ら法律等の規定もないのにかかる運用をしているのは、法治主義にも反するというべきである。
なお、最高裁判所は、1974年(昭和49年)から1988年(昭和63年)までの間、日本国籍を有しない台湾籍の大阪弁護士会会員を西淀川簡易裁判所民事調停委員に任命し、定年退職時には大阪地方裁判所所長より表彰を受けたという実例が存在しており、かかる事実は、外国人の弁護士が調停委員となって何ら不都合がないことを如実に示している。
なお、国連の人種差別撤廃委員会は、2010年3月9日第3ないし第6回の日本政府報告書の審査の総括所見において、日本国籍を有しない者を家庭裁判所の調停委員から排除する日本政府の立場に懸念を表明し、さらに2014年8月28日には、第7ないし第9回の日本政府報告書の審査の総括所見において、かかる日本政府の立場に改めて懸念を表明している。
3.  人権擁護委員について  i.  使命・職務
 人権擁護委員は、人権擁護委員法第2条により、その使命は、「国民の基本的人権が侵犯されることのないように監視し、若し、これが侵犯された場合には、その救済のため、すみやかに適切な処置を採るとともに、常に自由人権思想の普及高揚に努めること」とされている。そしてその職務は、同法11条により、「①自由人権思想に関する啓蒙及び宣伝をなすこと②民間における人権擁護運動の助長に努めること ③人権侵犯事件につきその救済のため、調査及び情報の収集をなし、法務大臣への報告、関係機関への勧告等適切な処置を講ずること ④貧困者に対し訴訟援助その他その人権擁護のため適切な救済方法を講ずること ⑤その他人権の擁護に努めること」とされている。
ii.  選任
 人権擁護委員は、市町村長が、その市町村の議会の議員の選挙権を有する住民で人格識見高く、広く社会の実情に通じ、人権擁護について理解のある社会実業家、教育者、報道新聞の業務に携わる者等及び弁護士会その他婦人、労働者、青年等の団体であって直接間接に人権の擁護を目的とし、又はこれを支持する団体の構成員の中から、その市町村議会の意見を聞いて委員候補者を法務大臣に推薦をし、さらに都道府県弁護士会及び同人権擁護委員連合会の意見を聴いた上で、その適任か不適任かを決め、適任者を委員に委嘱して、選任される(人権擁護委員法6条)。
iii.  検討
 上記人権擁護委員の職務の内容を検討するに、①②④⑤は、その性質上明らかに「公権力行使等公務」とはいいがたいが、③についても、そこでいう適切な処置は具体的に以下のように講じられることからして、その職務の内容は、「公権力行使等公務」にはあたらない。
すなわち、人権侵犯事件において、人権擁護委員は、調査が終了次第、遅滞なく口頭又は文書で法務局長又は地方法務局長に結果を通報し、処理について協議し、その後、法務局長又は地方法務局長等が、委員の調査結果を基に被害者の救済のため、事案に応じた適切な処置を執ることとされている。このことからすれば、人権侵犯事件について、適切な処理を執る権限を有しているのは、法務局長または地方法務局長等であって、個人としての人権擁護委員ではない。人権擁護委員はあくまで法務局長又は地方法務局長の職務を補佐するにすぎないものである。さらに、人権擁護委員は、法務大臣の指揮監督にも服する(人権擁護委員法14条)こととされており、その意味でも、その枠内で公務に従事するにすぎないのである。
これらのことからするならば、人権擁護委員の職務は、「公権力行使等公務」には当たらないというべきであり、その職務への就任に日本国籍を要件とすることは、合理的な理由のない差別であり、憲法14条に違反するというべきである。
4.  結論
 日本には現在多くの外国人が生活しており、グローバル化が進む中、多民族・多文化共生社会の形成が不可欠である。多民族・多文化共生社会の形成にとって、できるだけ広く外国人にも公務就任の機会を保障することも重要である。
また、我が国に暮らす外国人の中には、在日コリアンなど、サンフランシスコ平和条約の発効に伴う通達によって日本国籍を失ったまま日本での生活を余儀なくされた旧植民地出身者及びその子孫などの特別永住者も多数存在する。これらの人々にとっては、いまや日本こそがその生活の基盤であり、日本人とかわらない生活実態を持っており、歴史的な経緯等に鑑みても、日本国籍を有しないというだけで、調停委員・司法委員及び人権擁護委員の公務に就任することが一切認められないということは、合理的な理由がないというべきである。
また、外国人であるというだけで、これまで社会のさまざまな分野で十分な経験を積み、高い能力、識見等を有しながら、それを調停委員、司法委員、人権擁護委員という仕事において発揮するチャンスを奪われているのは、社会にとっても有用な人材を登用できないという意味で大変大きな損失である。
さらには、調停制度の利用者には多くの外国人が含まれていることからも、外国人の調停委員が採用される意味合いは大きく、また、現在地域社会において多くの外国人が生活している実態に鑑みれば、その地域社会において外国人が人権擁護委員として活動する意義も大きい。
これらの理由から、当会は、意見書の趣旨のとおり実現することを求める。以上
2015(平成27)年7月8日
横浜弁護士会      会長 竹森 裕子 

会長声明・決議・意見書(2017年度)
ttp://www.kanaben.or.jp/profile/gaiyou/statement/index.html

死刑執行に抗議する会長声明
2018年01月26日更新
昨年12月19日、東京拘置所において、2名の死刑が執行された。
死刑は国家が人間のかけがえのない命を奪う制度であり、人間の尊厳を軽視する非人道的なものであるとして、多くの国ですでに廃止ないしその執行が停止されている。2016年12月末日現在、法律上または事実上の死刑廃止国は141か国に及び世界の3分の2以上を占めている。しかも、実際に死刑を執行した国はさらに少なく、2016年の死刑執行国は日本を含め23か国のみである。
 2016年12月の国連総会は、加盟国193か国中117か国の賛成により、死刑存置国に対する死刑執行停止を求める決議を採択した。当会でも、これまで、死刑執行の度に抗議する会長声明等を発出してきたところである。日弁連も、2016年10月7日に開催された第59回人権大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、その中で2020年までに死刑制度を廃止すること等を国に求めた。
また、今回死刑が執行された2名はいずれも弁護人がついて再審請求中であり、そのうち1名は、犯行時19歳の少年であったが、これらはいずれも看過できないことがらである。まず、再審請求中にもかかわらず死刑を執行することは、再審という裁判を受ける権利を政府が奪うことであり、極めて問題である。この点、2014年7月24日に国際人権(自由権)規約委員会も、同規約の実施状況に関する第6回日本政府報告書に対する総括所見において、再審請求には死刑の執行停止効を持たせるべきであると勧告している。次に、少年は、成育環境の影響を受けやすく、本人にのみ全責任を負わせることは酷である。この点、国連総会で採択されている少年司法運営に関する国連最低基準規則(いわゆる北京ルールズ)は、「少年とは各国の法制度の下において、犯罪について成人とは違った仕方で取り扱われている児童又は若者をいう」と規定し、「死刑は少年が行ったいかなる犯罪についてもこれを科してはならない」としているところである。
さらに、今日、死刑をめぐる多くの情報が公開されておらず、その中で死刑が執行され続けていることは、民主主義の社会において大きな問題であるといわなければならない。 当会は、改めて、今回の死刑執行に強く抗議するとともに、政府が死刑の廃止に向けて、広く情報を開示し、全社会的な議論と検討を開始すること、そしてその間すべての死刑執行を停止することを強く求めるものである。
2018(平成30)年1月25日
神奈川県弁護士会   会長 延命 政之

当会の多数の会員に対する懲戒請求についての会長談話
2017年12月26日更新
今般,特定の団体が,神奈川県弁護士会所属弁護士全員を懲戒することを求める書面を,約1,000名からとりまとめ,神奈川県弁護士会に送付しました。
しかしながら,これらの書面は,日本弁護士連合会が会長声明を発したことを理由とするもので,弁護士法に基づき個々の弁護士の非行を糾す弁護士懲戒制度にはそぐわないものです。
このため,神奈川県弁護士会は,これらの書面を,この声明に対する反対のご意見としては承りますが,懲戒請求としては受理しないことといたしました。
 弁護士は,弁護士法第1条に基づき,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命としており,訴訟や提言等を行うことで,ときには国家権力と対峙しなければなりません。もし国家権力が弁護士に対する懲戒権限を有すると,このような活動が萎縮し,基本的人権の擁護がままならなくなるおそれがあります。このため,弁護士会には自治権が認められ,弁護士に対する懲戒権限は,弁護士会が有しているのです。
 市民のみなさまにおかれましては,このような弁護士懲戒制度の趣旨をご理解下さるようお願い申し上げます。また,神奈川県弁護士会といたしましては,懲戒権限を引き続き適正に行使する所存です。
2017(平成29)年12月26日
神奈川県弁護士会    会長 延命 政之

犯罪被害者のプライバシー尊重を求める会長談話
2017年11月17日更新
なぜ、犯罪の被害に遭うと、被害者や遺族はその意に反して実名や顔写真をさらされなければならないのか。
 私たち神奈川県弁護士会は、2015(平成27)年3月26日に、犯罪被害者のプライバシー尊重を求める会長声明を発表し、これまでこの問題について考え続けてきました。
 今年の10月、神奈川県座間市内の住宅で9名のご遺体が発見されるという事件が起きました。ご遺体全員の身元が判明した今月10日未明からは、新聞やテレビで被害者の名前や写真が流され続けています。
 警察が報道機関に被害者氏名等を発表する際、ご遺族が顔写真の公表や実名報道をやめてほしいと申し入れていても、未だにそのような報道は行われている状況です。
 報道する側にも理由があるのでしょう。犠牲者の痛みを共有するためとか、社会全体で事件について考えるために、実名であることが必要だと言う方もいます。私たちとしても、「報道の自由」や「取材の自由」の重要性を否定しているわけではありません。
しかし、そこには、犯罪被害者、遺族のプライバシーがなぜ暴力的に奪われるのか、なぜ本人や遺族の同意なしに生活状況を書き立てられ、勝手に写真を使われるのか、なぜ自宅を報道陣に囲まれて帰宅できないような生活を強いられるのかについての答えはありません。
プライバシーの権利とは、自分についての情報を適切にコントロールする権利と理解されています。「知られたくないことは知られない権利」「放っておかれる権利」ともいえます。
 犯罪被害者には、遺族には、プライバシーはないのですか。報道の正義のために、社会全体の理解のために、犯罪被害者、遺族のプライバシーが損なわれることが許されるのでしょうか。
これまでも、過熱した報道によって、遺族の心や、被害者の尊厳が傷つけられてきました。
私たちは、この問題について、もう一度考えてもらいたいです。
神奈川県弁護士会は、報道機関や社会の人たちすべてに、被害者や遺族のプライバシーを尊重するよう求めます。
2017(平成29)年11月17日
神奈川県弁護士会    会長 延命 政之

年年齢を引き下げる民法改正に反対する意見書
2017年11月08日更新
第1 意見の趣旨
成年年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正に反対する。
第2 意見の理由
 1 現在、政府は、民法が定める成年年齢について、現行の20歳から18歳に引き下げることを検討している。
しかしながら、民法が定める成年年齢を引き下げることについては、以下のような多数の法的な問題が存する。
 2 キャッチセールス、アポイントセールス、連鎖取引販売、過量販売等の消費者被害は、20代前半の若者や高齢者等の判断能力が不十分な層に多発している。
 現行民法では、成年年齢は20歳とされ、20歳未満の未成年者は、契約を締結する際に親権者の同意を要し、これを欠く場合、未成年者取消権を行使することができ、消費者被害に遭った際の救済手段となっているが、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げると、このような救済手段を18歳以上20歳未満の若年者から奪うことになる。
 18歳以上20歳未満の若年者は、卒業前の高校生まで含まれ、大学又は専門学校に進学したとしてもまだ学生であり、社会人として活動している者も、いまだその経験は浅い。親元を離れて進学等のため初めて一人暮らしをする者も多い。それにもかかわらず、未成年者取消権という消費者被害に遭った際の救済手段がないとなると、悪質な業者による格好の標的となることは必定である。
 現状では、義務教育・高等学校教育における消費者教育はいまだ十分といえず、民法の成年年齢を引き下げ、これに伴い18歳以上20歳未満の者が締結する契約を、未成年者取消権や親権者による同意権の対象外とすることは、消費者被害の観点から非常に危険である。
また、18歳以上20歳未満の若年者に対して、過剰与信が行われることも懸念される。
 3 仮に民法の成年年齢を引き下げるのであれば、最低限、キャッチセールス、アポイントセールス、連鎖取引販売、過量販売の被害について、消費者契約法及び特定商取引法改正により、若年層保護の手当てをするとともに、割賦販売法、貸金業法を改正の上、若年層に対する与信を厳格化し、若年層の保護を行うことが必要不可欠であるが、現行法上、このような手当はほとんど行われていない。
 即ち、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げるのであれば、若年者保護の観点から、最低限でも、消費者法の分野において、
① 消費者契約法を改正し、判断力、知識、経験等の不足に付け込んで若年者等に契約を締結させた場合に、同契約を取消すことが出来る制度を設けること、
② 特定商取引法を改正し、18歳以上20歳未満の若年者に特定商取引法所定の特定商取引を行う場合には、事業者に、当該若年者の知識、経験財産状況に照らし、不適当でないことの確認を義務付け、かつ同確認を怠った場合の取消制度を設けるとともに、これが訴訟で争われた場合には、同確認を行ったことの立証責任を業者側に負わせること、
③ 特に弊害が予想される、連鎖取引販売について、18歳以上20歳未満の若年者に対する勧誘を禁止すること
④ 貸金業法、割賦販売法を改正し、18歳以上20歳未満の若年者に与信をする場合に、過剰与信にならないよう資力要件と確認要件につき厳格化を図り、これらの要件を欠く与信を行った業者は元本を含めた返還請求ができないこととすることを含めた若年者保護の制度を設けること、等が必要である。このような制度が全くない現行法下で、民法の成年年齢が引き下げられると、若年者に消費者被害が多発することになりかねない。
 4 以上のような消費者被害の観点以外にも、離婚の際の養育費について、成年に達したときを支払終期とすることが多かった家庭裁判所の実務に照らせば、民法の成年年齢が引き下げられることによって養育費の支払終期が早まり、いまだ稼働に至らない18歳以上20歳未満の若年者の生活や教育について経済的な悪影響がもたらされることが懸念される。
また、いわゆるブラックバイト問題に対して有効な、労基法58条が定める未成年者に不利な労働契約の解除権も、民法の成年年齢が引き下げられることによって18歳以上20歳未満の若年者が行使できなくなってしまう。
このように、民法の成年年齢の引き下げは、18歳以上20歳未満の若年者の権利擁護の観点から、懸念が大きい。
 5 さらに、民法の成年年齢の引き下げは、少年法の適用年齢の引き下げと論理的に直結するものではないが、少年法に関する議論においても、「民法上の『成年者』として親権に服さない者に国が類型的に後見的な介入をするのは過剰な介入ではないか」との意見があること等からすれば、少年法の適用年齢の問題にも事実上大きな影響を及ぼす懸念がある。
 6 したがって、民法の成年年齢の引き下げは、民法その他未成年者の保護を図る各法律の趣旨・目的を踏まえた慎重な検討が必要不可欠であり、成年年齢の引き下げによってもたらされるこれらの不利益に対する手当もないまま、成年年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正には反対する。以上2017(平成29)年10月19日
神奈川県弁護士会 会長 延命 政之

当会会員に対する懲戒処分についての会長談話
2017年09月07日更新
本日,当会は,平成29年8月16日付懲戒委員会の議決に基づき,当会の林敏夫会員に対し,業務停止1年6月の懲戒処分を言い渡し,同処分は即日効力を生じました。
 同会員は,弁護士でない懲戒請求者が弁護士法第72条に定める,報酬を得る目的で法律事件に関し法律事務を周旋することを業とする者に該当し,同条で禁止された非弁行為を行っている者であることを認識した上で,その者が依頼者と面談し,委任契約を締結することを認容し,弁護士報酬の金額を含む委任契約の内容についても自由に任せていました。
また,同会員は,懲戒請求者がウェブサイトで集客した相談者の事案について紹介を受け,その事務の処理をすることで,懲戒請求者に対して一定金額の支払いをしていました。
さらに,同会員は,懲戒請求者の依頼に基づき,自らが受任する事件と関係のない住民票や戸籍謄本等の職務上請求を行い,懲戒請求者に対してその対価として1通あたり1万8000円の費用を請求していました。
 報酬を得る目的で法律事件に関し法律事務を周旋すること(非弁行為)は,当事者その他の関係人の利益を損ね,社会生活の公正円滑な営みを妨げ,ひいては法律秩序を害することになるものであり,弁護士法第72条により禁じられているところです。
そして,そのような非弁行為を行う者と提携すること(非弁提携行為)も,非弁行為を助長するものであり,断じて許されるものではありません。
また,住民票や戸籍謄本等の職務上請求は,弁護士としての業務の遂行に必要な場合に限り認められているものであり,弁護士ではない者の依頼に基づき業務外の目的でこれを行うことも言語道断です。
 同会員が行った上記の各行為は,弁護士法第56条第1項に定める「品位を失うべき非行」に該当するものであり,今回の懲戒処分に至ったものであります。
 同会員の各行為は,弁護士の職務に対する市民の皆様の信頼を大きく損なうものであり,極めて遺憾であります。
なお,同会員による非弁提携行為は,弁護士法第27条に違反する違法行為であり,当会としても,これを断じて許すことはできず,厳正な刑事処罰を求めて,同会員及び同会員が所属する「弁護士法人クローザー法律事務所(旧:弁護士法人エレフセリア法律事務所)」について,同法違反(非弁提携行為)容疑で横浜地方検察庁に告発状を提出していることを付言します。
 当会としては,これを機に,不祥事の事前抑制・被害拡大の防止等に,より一層努力する所存です。
2017(平成29)年9月7日
神奈川県弁護士会 会長 延命 政之

死刑執行に抗議する会長声明
2017年08月14日更新
本年7月13日,大阪拘置所及び広島拘置所において死刑確定者各1名に対する死刑が執行された。
 金田法務大臣になって2度目の死刑執行であり,第2次安倍内閣になって合計19名の死刑が執行された。
 日本弁護士連合会は,2015年12月9日,岩城法務大臣に対し「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し,死刑の執行を停止するとともに,死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し,死刑制度に関する検討課題について国民的議論を行うための有識者会議を設置し,死刑制度とその運用に関する情報を公開すること,そのような議論が尽くされるまですべての死刑の執行を停止することを求めた。しかしながら,この間,有識者会議が設置されることもなく,死刑制度とその運用に関する情報公開は全く進んでいない。
 死刑執行については,いまなお多くの情報が非公開とされており,秘密主義との批判を免れない。今回,大阪拘置所で死刑が執行された死刑確定者は,報道によれば,再審請求中であったと言われている。再審請求中であるにもかかわらず,死刑が執行されたことは極めて異例のことであり,その理由についても法務省は明らかにしていない。
また,広島拘置所で死刑が執行された死刑確定者は,控訴を自ら取り下げたことで第1審判決のみで死刑判決が確定しており上級審の判断を得ていない事案であること,被害者が1名の事案であったことなどがどのように検討され,今回の死刑執行に至ったのか一切明らかにされていない。
 我が国においては,四つの死刑確定事件(免田事件,財田川事件,松山事件,島田事件)について再審無罪が確定している。死刑事件ではないが,布川事件,足利事件,東電OL殺人事件等で再審無罪判決が確定している。死刑確定事件である袴田事件については,2014年3月27日静岡地方裁判所が再審開始を決定し,死刑執行と拘置の停止を決定している。これらの事件が示すとおり,刑事裁判には,常にえん罪の可能性があり,ひとたび死刑が執行されてしまえば,取り返しはつかず,その不正義はまさに筆舌に尽くしがたい。
 日本弁護士連合会は,2016年10月に開催された人権擁護大会において「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,その中で,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを宣言した。
 当会では,これまでも,死刑執行のたびに,死刑の執行を停止し,死刑廃止について全社会的議論を始めることを求める会長声明・談話を発表してきた。
当会は,改めて,今回の死刑執行に抗議するとともに,死刑制度の廃止について全社会的議論を尽くすまでの間死刑の執行を停止するよう重ねて強く要請するものである。
2017(平成29)年8月10日
神奈川県弁護士会会長 延 命 政 之

共謀罪の強行採決に抗議する会長談話
2017年06月15日更新
本日,参議院本会議で,いわゆる「共謀罪」法が可決成立しました。
当会は,本法律が「共謀」という意思の連絡をもって犯罪を成立させることは罪刑法定主義に反すること,意思の連絡自体が捜査対象となるため盗聴・密告等を捜査の端緒とせざるを得ず,思想・良心の自由,表現の自由,通信の秘密及びプライバシー権といった憲法上の権利を侵害することなどから,極めて危険であることを訴えてきました。
かかる憲法違反の法律が,参議院法務委員会での審議も未了のまま委員会決議を省略して本会議での可決が強行されるという異例の手続きで成立したことも含めて,当会は本法律の成立に強く抗議します。
当会は,これからも本法律の廃止に向けて,あらゆる取り組みを強化し続けて行くことを表明します。
2017年(平成29年)6月15日
神奈川県弁護士会 会長 延命 政之

憲法記念日会長談話
2017年05月02日更新
本年5月3日で日本国憲法が施行されて70年になります。
国内外で多くの犠牲者を生んだアジア太平洋戦争への反省を踏まえ、私たちは、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義を3つの基本原則とする新しい憲法を制定しました。
 大日本帝国憲法の下では、人権は、臣民としての権利にすぎず、法律の定めによってどのようにも制限されるものでしたが、日本国憲法の下では、私たちは、ひとりひとりかけがえのない個人として尊重され、誰もが生まれながらに侵すことのできない基本的人権を持っているとされています。
しかしながら、この1年を振り返って、とりわけ、この神奈川県においても、川崎で在日コリアンの人々への差別や憎しみをあおるヘイトスピーチデモが行われたり、津久井やまゆり園で19人もの障がい者が殺害されるという痛ましい事件が発生した際に障がい者に対する差別的な言説が行われたり、福島原発事故避難者である子どもへのいじめに対し学校や教育委員会による適切な対応がなされなかったり、小田原で市職員が生活保護受給者を訪問する際に差別的な文言を印刷したジャンパーを着ていたことが発覚したりするなど、少数者の人権が侵害されるさまざまな事件が相次いでいます。
また、国政についてみると、現在国会で審議中の組織犯罪処罰法改正案は、いわゆる共謀罪の創設を含むものですが、内心の自由(思想良心の自由)や表現の自由等を侵害するおそれの極めて高いものです。
 人権を保障するために憲法により国家権力を制限する立憲主義も、危機に瀕しています。
 安全保障関連法をめぐって、昨年11月15日に、南スーダンの国連PKOに派遣されている自衛隊に対し、「駆け付け警護」などの新たな任務が付与されたことから、自衛隊が、政府軍、反政府軍を始めとする武装勢力と戦闘を行うという、憲法第9条の禁止する武力の行使へと発展しかねません。また、本年5月1日から、改正された自衛隊法95条の2に基づき、防衛大臣は自衛隊に対して米海軍の補給艦の武器等防護を命ずるに至りましたが、これは、まさに外国の軍隊のために、現場の自衛官の判断により敵対勢力に対する武器使用を認めるものであって、実質的な集団的自衛権の行使になりかねない、極めて危険なものです。安全保障関連法の適用・運用次第で、この国のあり方や命運が左右されかねない危険な状況があります。
そして、衆議院憲法審査会では憲法を改正し緊急事態条項を盛り込むべきか否かが議論されていますが、緊急事態条項は人権保障と権力の分立を一時的に停止する規定であり、立憲主義を破壊する危険性があり、慎重の上にも慎重な議論が必要です。
 日本国憲法施行70年を迎えるにあたり、神奈川県弁護士会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の団体として、こうしたさまざまな問題について、さらにいっそう真摯に取り組み、人権が十分に保障され、憲法が生かされる社会を目指して、努力を重ねていきたいと思います。
2017年(平成29年)5月3日
神奈川県弁護士会 会長 延命 政之

いわゆる「共謀罪」法案の廃案を求める会長声明
2017年04月27日更新
1. 政府は、本年3月21日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法一部改正案(以下「本法案」という。)を閣議決定し、衆議院に提出した。
 当会は、2016年12月8日付けで「いわゆる共謀罪新法案の国会提出に反対する会長声明」を発しているところであるが、それにもかかわらず本法案が提出されたことは極めて遺憾であり、改めて本法案に対する当会の意見を表明する。
2. 本法案では、①犯罪主体について、従前「組織的犯罪集団」とされていた規定が「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と改められており、また、②対象犯罪を676から277に減じたとされている。
①の「テロリズム集団」の文言は、テロ対策を標榜しつつテロとの関係が明らかでなかった政府原案に対する批判を受けて急遽追加されたものであるが、本法案には「テロリズム集団」の定義規定はない。「組織的犯罪集団」の意義が捜査機関によって恣意的に解釈され、摘発される対象が拡大する危険性が高いという問題点は何ら解消されていない。
すなわち「テロリズム集団」の文言が加わったとしても、処罰範囲の限定にならないことは明白である。
また、②についても、仮に対象犯罪が277に減じられたとしても、組織的犯罪やテロ犯罪と無縁のものも依然として対象とされている。共謀罪は、「行為」を処罰する我が国の刑法の基本原則を否定するものである以上、いかに対象犯罪数を減らそうとも、軽々に認められるものではない。
つまり、本法案は、過去3回も廃案になった共謀罪の問題点が何ら解消されていないのである。
3. 当会が従前指摘していたとおり、構成要件が不明瞭であって罪刑法定主義にも反する本法案は、共謀という意思の連絡自体が犯罪として捜査対象となるために、通信傍受の対象とされた場合監視社会化を招き、憲法の保障する思想・良心の自由、表現の自由、通信の秘密及びプライバシーなどを侵害し、基本的人権の行使に対して深刻な萎縮効果をもたらすおそれがある。
 当会は、本法案の閣議決定および衆議院提出に対して、改めて抗議すると共に、本法案の廃案を求めるものである。
2017(平成29)年4月26日
神奈川県弁護士会 会長 延 命 政 之

会長声明・決議・意見書(2016年度)
ttp://www.kanaben.or.jp/profile/gaiyou/statement/2016/index.html
川崎市に対し多文化共生を推進する人権条例の制定を求める会長声明
2017年03月23日更新
 川崎市の福田紀彦市長は,昨年12月27日に川崎市人権施策推進協議会が出した「ヘイトスピーチ対策に関する提言」を受けて,本年2月27日,川崎市議会第1回定例会において,人権を幅広く守る条例(以下,「本条例」という。)の制定に向けた調査に着手したことを明らかにした。当会としても,本条例制定の動きを全面的に支持するとともに,本条例中に人種差別を禁止し多文化共生を推進する包括的な内容を盛り込むよう強く求めるものである。
 本条例制定の動きの背景には,川崎市内で激しいヘイトスピーチを伴うデモが繰り返され,市民に対して深刻な被害を生じさせているという社会状況がある。また,市による公園使用不許可,裁判所の仮処分決定,法務省人権擁護局の勧告等,関係諸機関の努力にもかかわらず,川崎市内では未だヘイトスピーチ団体が講演会を開く等の動きがあり,インターネット上における特定の個人に向けた誹謗中傷といった人権侵害行為も継続している。日本が1995年に加入した「人種差別撤廃条約」2条1項dによれば,各締約国は,すべての適当な方法により,いかなる個人,集団又は団体による人種差別も禁止し,終了させるものとされている。ヘイトスピーチは人種差別の一形態であり,本条例の制定は,同条約の趣旨に沿うものである。また,地域の実情に応じたヘイトスピーチ解消施策をとるよう自治体に責務を課した「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」5~7条の趣旨に照らしても,本条例によるヘイトスピーチの規制は緊急の課題である。
 本条例制定にあたっては,これまで川崎市が行ってきた多文化共生社会推進の取組みの延長と位置づけ,人種差別を包括的に禁止し,多文化共生社会を推進する基本施策を定めた「人権条例」とすることが望ましい。川崎市は,1996年に川崎市外国人市民代表者会議条例を制定して同会議を設置し,2005年には川崎市多文化共生社会推進指針を策定しており,また,それ以前から外国人高齢者福祉手当及び外国人心身障害者福祉手当の支給,市職員採用の国籍条項の一部撤廃,川崎市在日外国人教育基本方針の制定,市営住宅入居資格の国籍条項撤廃,川崎市外国人市民意識実態調査の実施等,外国人に関する優れた政策を全国に先んじて行ってきた。本条例は,これらの施策を整理一本化し,入居差別,就職差別,その他あらゆる人種差別を禁止するとともに,施策審議と被害者救済を行う第三者機関の設置等を定めた包括的な内容とすることが望ましい。
 前述の人権施策推進協議会の提言においても,制定すべき条例の内容については,「ヘイトスピーチ対策に特化したものではなく」,「ヘイトスピーチ対策も含めた多文化共生,人種差別撤廃などの人権全般にかかるものが想定される」とされている。そこで,ヘイトスピーチ対策は本条例の一部と位置づけた上で,川崎市の社会状況を踏まえ,明確な禁止条項を定めるとともに,(インターネットを含む)被害の実態調査や,ネット上の人権侵害行為に対し継続的に削除要請を行うことのできる組織の創設などのネット対策,被害者に対する適切な相談窓口等を整備するべきである。
 川崎市は,2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催決定などを契機に,ますます海外との交流人口が増え,国際都市としてふさわしい多様性を活かしたまちづくりが求められている。世界から様々な人々を迎え入れるためには,人種や国籍を超えた多様な人々が共生できるまちづくりが急務である。国は未だ人種差別を包括的に禁止する法律を持たないが,川崎市は,この分野の施策で全国をリードしており,条例制定においても,他の自治体をリードし,世界に誇れるまちづくりを目指すべきである。
2017年(平成29年)3月23日
神奈川県弁護士会 会長 三 浦    修

南スーダンにおける国連平和維持活動(PKO)のために派遣 する自衛隊への「駆け付け警護」の新任務等の付与の撤回、 自衛隊の部隊撤収及び安全保障関連法の廃止を求める会長声明
2017年01月13日更新
政府は、2016年11月15日、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊の部隊に、2015年9月に制定された安全保障関連法に含まれる改正「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」(改正PKO法)に基づく新任務である「駆け付け警護」を付与する新たな南スーダン国際平和協力業務実施計画を閣議決定し、併せて「宿営地共同防護」の任務も付与する判断を行った。その結果、南スーダンに派遣された陸上自衛隊第9師団を主力とする自衛隊の部隊は、2016年12月12日以降これらの任務を遂行することが可能となった。
「駆け付け警護」は、PKO等の活動関係者の生命又は身体に対する不測の侵害又は危難が生じ、又は生ずるおそれがある場合に、緊急の要請に対応して行う当該活動関係者の生命及び身体の保護の活動であり、「宿営地共同防護」は、宿営地を共にする他国軍隊の部隊の要員に対し攻撃があった場合に、当該部隊の要員とともに武器を使用して対処する活動である。いずれの活動も戦闘行為に発展するおそれがあり、憲法第9条に抵触する可能性が高いものであって、到底容認することができない。
そもそも、我が国がPKOに参加する際にはPKO参加5原則の要件が堅持されていることが必要である。
しかし、冷戦終結後、PKOの変質に伴い、多くのPKOは住民保護等のために武力の行使を認められた紛争主体と化してしまっており、自衛隊がPKO参加5原則を堅持した状態で活動することは困難である。
とりわけ、南スーダンにおいては、大統領派と前副大統領派との間で、激しい内戦が生じている。2016年2月17日・18日の両日には、南スーダン政府軍兵士らが北部マラカルの国連基地内の避難民保護キャンプを襲撃し、略奪・焼き討ちを行い、国境なき医師団のスタッフ2名を含む18名が死亡し90人以上が負傷する事件が起きている。また、同年7月8日からは首都ジュバ市内でも300名以上が死亡する激しい内戦が勃発し、中国のPKO隊員2名も死亡している。反政府勢力の指導者である前副大統領自身が和平合意は崩壊したと述べ、同年11月1日に公表された国連特別報告書でも停戦合意は崩壊した旨断定されていることからすると、いまやPKO参加5原則のうち少なくとも「紛争当事者間で停戦合意が成立していること」という要件を充たしていないことは明らかである。
かかる状況下で「駆け付け警護」や「宿営地共同防護」の任務を付与することは、自衛隊が、政府軍、反政府軍を始めとする武装勢力と戦闘を行うという、憲法第9条の禁止する武力の行使へと発展する可能性がきわめて高い。そして、自衛隊員が実際に人を殺傷し、又は殺傷される危険が現実のものにもなりかねないのである。
よって、当会は、政府に対し、ただちに、南スーダンPKOに従事する自衛隊の部隊への新任務等の付与を撤回し、PKO参加5原則に従い自衛隊の部隊の撤収を行うことを求めるとともに、改めて改正PKO法を含む安全保障関連法の廃止を求めるものである。
2017(平成29)年1月12日
神 奈 川 県 弁 護 士 会 会 長 三 浦 修

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁 推進法案」)の成立に反対し廃案を求める会長談話
2016年12月12日更新
本年12月6日,衆議院本会議において,「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)が可決され,同日のうちに参議院に送付された。この法案は,平成25年12月に国会に上程されて廃案となったものが,ごくわずかの修正を加えて平成27年4月に再度,国会に上程されたものであり,その後,長期間にわたって審議のないままであったところ,本年11月30日に突如として内閣委員会での審議が開始され,わずか6時間の審議をしただけで同年12月2日に委員会採決が行われ,その直後に本会議での採決に至ったものである。
 当会は,これまで,平成26年10月9日に一部修正前のカジノ解禁推進法案についてその廃案を求める意見書を,さらに,平成27年7月8日にはこの法案について再度の廃案を求める会長声明をそれぞれ発出した。これらの中で廃案を求める理由として指摘したのは,カジノ解禁について,深刻なギャンブル依存の問題をさらに悪化させる危険性が高いこと,暴力団等の反社会的勢力の資金源となることやマネー・ロンダリングのおそれを排除できないこと,カジノ解禁がもたらす経済的効果に関しても,短期間のプラス面のみが喧伝され,病的ギャンブラーが生み出されること等による生産性の喪失や社会コストの増加については何ら検討されていないこと等である。
しかるに,これらの意見書及び会長声明で指摘した事項については,その後何ら具体的な検討がなされることもなく,また,一般国民のカジノに対する不安・懸念の声にも何ら耳を傾けることなく,このたび,極めて拙速かつ強引なかたちで衆議院での可決に至ったことは,誠に遺憾である。いわゆる5大新聞社(朝日・読売・毎日・日経・産経)も,このような形でカジノ解禁推進法案を成立させようとしていることについて,一致して反対する論調を展開している。
 現在,参議院での審議が行われているが,参議院においても十分な議論を尽くす姿勢のないまま,新聞報道等によれば,本年12月14日閉会予定の臨時国会での成立が目指されているとのことである。当会としては,以上に述べたように,極めて多くの問題点を抱えるカジノ解禁推進法案を,このように短期間で成立させようとしていることについて,断固反対するとともに,ただちに廃案とするよう,求めるものである。
2016(平成28)年12月12日
神奈川県弁護士会 会長 三浦 修

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